1.12月の株式市場
12月2日:ISM製造業指数は48.1と前月から0.2ポイント下落、4カ月連続で50を割り込んだことで製造業の業績悪化が懸念されたことやブラジルやアルゼンチンからの鉄鋼輸入への追加関税による貿易摩擦の懸念も広がり、268ドル安(0.96%減少)。下げ幅は10月8日以来の大きさ。
12月3日:トランプ大統領が中国との貿易協議を先送りする可能性を示唆し、投資家心理が悪化、キャタピラーなど中国関連株を中心に売りが広がり、280ドル安(1.01%減少)。
12月4日:米中貿易協議で第1段階で撤回する関税額ンついて合意に近づいているとの報道から、147ドル高(0.53%増加)。
12月5日:米中貿易協議の行方を見たい投資家が多く、積極的な投資は控えられ、28ドル高(0.10%増加)。
12月6日:11月の米雇用統計は雇用者増加数が266,000人増で、市場予想の190,000人増を上回り(失業率は3.5%で前月より0.1%減少)、過去3か月分の雇用者数が200,000人を超えたこともあり、ハイテクや金融株を中心に買いが入り、337ドル高(1.22%増加)。
12月9日:前週末に大幅高となった反動もあり、米中制裁関税第4弾の発動日である15日の様子を見たいとの投資家の反応から、105ドル安(0.36%減少)。
12月10日:米中貿易協議をめぐる報道が交錯し、積極的な売買は控えられ、投資家は様子見の姿勢を強め、28ドル安(0.10%減少)。
12月11日:FOMCが金利据え置きを決めたことを受けて、低金利政策が今後も続くとの見方が強まり、30ドル高(0.11%増加)。
12月12日:米中の貿易協議が進展し、第一段階で原則合意したとの報道を受け、投資家心理が改善、キャタピラーなど中国関連株が買われ、220ドル高(0.79%増加)。
12月13日:米中が貿易交渉で第1段階の合意に達し、米政府が15日に予定の第4段階の関税の発動を見送ったことで好感されたが、第2段階の交渉が不透明感もあり、3ドル高(0.01%増加)。
12月16日:先週末の米中貿易協議の第一段階の合意を受けて、追加の制裁関税が見送られたことから、投資家の買い意欲が優勢で、101ドル高(0.36%増加)。
12月17日:米中が貿易交渉で第1段階の合意に達したことで、貿易摩擦による世界経済の懸念が和らいだものの、高値警戒感もあり、31ドル高(0.11%増加)。
12月18日:連日、過去値を更新したこともあり、相場の過熱感を警戒した売りが優勢で、28ドル安(0.10%減少)。
12月19日:米中の貿易合意で世界経済の減速リスクが低下する中で、企業業績への楽観的な見方が広がり、相場が上昇、138ドル高(0.49%増加)。
12月20日:米中の貿易協議の合意を受けて、相場の先高観が広がり、78ドル高(0.28%増加)。
12月23日:中国による輸入関税引き下げと経営責任を明確化したボーイング株が上昇し、96ドル高(0.34%増加)。
12月24日:前日まで連日過去最高値を更新していたため、クリスマス祝日前で利益確定売りが優勢で、36ドル安(0.13%減少)。
12月26日:米中両国から、貿易協議の合意書調印に前向きの発言が伝わったこともあり、協議進展の見方が広がり、106ドル高(0.37%増加)。
12月27日:米中の貿易協議が続いていることや米年末商戦が好調だったことから、買いが続き、24ドル高(0.08%増加)。
12月30日:期末を控え、運用実績を意識した機関投資家の一部が高値圏の銘柄を中心にリ家来角栄目的の売りを出したことから、183ドル安(0.84%減少)。
12月31日:日中は前日終値を下回って推移することが多かったが、取引終了にかけて主力株に買いの勢いが強まり、76ドウ高(0.27%増加)。2019年全体のダウ平均は22.3%の上昇。
米労働省が12月6日に発表した11月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比266,000人の増加で、市場予想の190,000人増を大きく上回りました。9月の雇用者数の確定値は193,000人で13,000人の増加、10月の改定値は156,000人で28,000人の増加となりました。今回の結果を踏まえた過去3カ月間の雇用者平均増加数は約205,000人で、好調の目安とされる平均増加数の200,000人を再び上回りました。なお、11月の失業率は3.5%で、前月より0.1ポイント改善しました。労働参加率は63.2 %で、前月より0.1%減少しました。11月の時間当たり賃金上昇率は前月比で7セント上昇し、前年同月比では3.1%増となりました。部門別では製造業が54,000人の増加、ヘルスケアが45,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が31,000人の増加となりました。
FOMC会合が12月10-11日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。前回10月のFOMC会合後に得た情報によれば、労働市場は強さを保っており、経済活動は緩やかに拡大した。雇用増はここ数か月平均すると堅調で、失業率も低水準を保った。家計支出は力強く伸びたが、企業の設備投資および輸出は弱いままだ。全般的なインフレ率と、食品・エネルギーを除くインフレ率は2%を下回っている。市場で予測したインフレ値は依然弱く、アンケートによる調査では長期のインフレ予想はあまり変わっていない。
法律で定められた使命を達成するため、FOMCは雇用の最大化とインフレ率の安定に努める。
FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを1.50-1.75%に据え置くことを決定した。持続的な経済成長、力強い労働市場の情勢、目標の2%前後付近のインフレ率を支えるために、現在の金融政策スタンスが適切と考える。FOMCはFF金利の目標レンジの道筋を見極めるため、海外の動向や抑制されたインフレ圧力など、景気見通しに関する情報が意味するものを注視していく。
FF金利の誘導目標を調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは雇用の最大化とインフレ上昇率2%という目標との比較で経済情勢との実績と見通しを評価していく。労働市場状況に関する指標、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。
今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む10人のメンバーの賛成による。
なお、今回のFOMC会合では4会合ぶりに政策金利の据え置きを決め、声明では金融政策は現在のスタンスが適切と指摘しました。FOMCの参加者が政策金利の見通しで、来年いっぱいの金利据え置きをを示したことから、市場ではFRBは利上げを急がないとの見方が改めて強まり、安心感から28ドル高(0.10%増加)となりました。米中両国政府は12月13日に第1段階の合意に達したと発表しました。これによれば、米国政府は12月15日に予定していた中国製のスマートフォンやノートパソコンなどを対象に15%の関税を上乗せする第4弾の残り1600億ドル分の発動を見送ると同時に、9月に発動していたスマートウオッチなど1200億ドル分の関税率は15%から7.5%に引き下げるとしました。その一方、家電や家具などの第1弾から第3弾(2500億ドル)にかける25%の関税率は維持するとしました。これに対し、中国側は12月15日に予定していた報復関税の発動を見送る他、米国からの小麦やトウモロコシの輸入を大幅に拡大するとしています。
今回の合意内容は中国にとっては第4弾の追加関税を見送らせる一方、9月から発動していた1200億ドルの関税率を半分に引き下げさせた点で大きな成果があったと言えます。また、知的財産権の侵害や技術移転の強要などは対象になるものの、中国政府の最も懸念した国有企業への産業補助金など構造問題は含まれていないことでも、中国側にとって優位の内容になったと位置づけられます。この背景には、トランプ大統領が来年の来年の大統領選挙を控え、選挙民に具体的な成果を示したいという焦りがあり、これが中国にとって交渉を有利に展開できた背景になったと見られます。
12月12日に実施された英国の総選挙で、ジョンソン首相が率いる与党の保守党が過半数を超える365の議席を獲得しました。これに対して、最大野党の労働党は40議席減の203と惨敗しました。今回の総選挙ではEU離脱が最大の争点でしたが、3年半に及ぶ政治の迷走に英国民に離脱疲れが広がったことや労働党が離脱か残留かを明確にできなかったことが、保守党の大幅増加になったと見られています。これにより、来年1月中に英国議会が新離脱案を可決すれば、2020年末までの移行期間付きの離脱が決定します。その意味で、総選挙の結果、英国がEUから合意なき離脱をして、経済が大混乱する事態はとりあえずは避けられたことになります。しかしながら、2020末までの移行期間中に、英国とEUで新たな自由貿易協定がまとめられなければ、EUの単一市場や関税同盟についての合意がないまま、推移してしまうリスクが依然として残っています。