Wednesday, July 1, 2020

コロナウイルス感染拡大の第2波懸念に揺れる市場














1.6月の実績
6月の株式市場は初旬が新型コロナウイルス感染拡大の懸念が低下し、経済活動再開への期待が高まり、株価は大きく回復しました。しかしながら、中旬以降は米国の南部や西部を中心に感染数が急増、第2波の懸念から市場は不安定な展開となりました。主要な動きは以下の通りでした。

61日:米経済活動の正常化への期待から、金融株が買われたが、白人系警官による黒人暴行死からへの抗議が全米に広がり、経済再開への懸念も出て、92ドル高(0.36%増加)。
62日:米経済活動の再開で、景気回復を織り込む買いが優勢となり、資本財や素材を中心に幅広い銘柄が買われ、268ドル高(1.05%増加)
63日:ADPが発表した5月の全米雇用レポートで非農業部門の雇用者数が前月比276万人と市場予想を大きく下回ったことやISM5月の非製造業景況感指数が45.4と市場予想の44を上回ったことで、米景気が回復に向かうとの期待感から、527ドル高(2.05%増加)。
64日:利益確定売りが先行したが、経済活動再開の広がりを好感した景気敏感株への買いが相場を支え、12ドル高(0.05%増加)
65日:5月発表の5月の米雇用統計で雇用者数が市場予想に反して250万人という急増で、米景気が早期回復に向かうとの楽観論が広がり、景気敏感株を中心に幅広い銘柄が買われ、829ドル高(3.15%増加)。
68日:米経済が早期に正常化するとの期待から、景気敏感株を中心に幅広い銘柄に買いが優勢となり、461ドル高(1.70%増加)。
69日:実体経済の回復以上に株価上昇が大きく、10日のFOMCの結果発表前に利益確定売りが優勢で、300ドル安(1.09%減少)
610日:FRB910日のFOMCでゼロ金利政策を2020年末まで続ける方針を示したこと、ニューヨーク連銀が毎月の国債購入額も800億ドルと市場予想の上限に近く、長期金利が低下して銀行株が大幅安となるなど、売りが優勢で、282ドル安(1.04%減少)。
611日:米国の新型コロナウイルス感染の第2波が現実味を帯び、経済活動の早期正常化への期待が後退、景気敏感株を中心に幅広く利益確定売りが広がり、1862ドル安(6.90%減少)
612日:前日に大きく下落した反動や米長期金利の上昇で金融株が買われことや、個人投資家を中心に押し目買いが入り、477ドル高(1.90%増加)
615日:FRBが個別企業の社債の購入を開始すると発表し、積極的な景気支援を好感した買いが
入り、158ドル高(0.62%増加)。
616日:5月の小売売上高が前月比17.7%増加となり、市場予想の7.7%を大きく上回ったため、景気改善を期待する買いが優勢で、527ドル高(2.04%増加)
617日:新型コロナウイルスの感染が一部地域で拡大、経済活動の再開が鈍るとの見方につながり、景気敏感株にを中心に売りが広がり、170ドル安(0.65%減少)、
618日:新型ウイルス感染の第2波への懸念と新規の米失業者申請が件数が市場予想を上回ったことで、40ドル安(0.15%減少)。
619日:新型ウイルスの感染拡大が米南部や西部を中心に再拡大し、米経済の正常化が遅れるとの懸念が強まり、午前の買いが午後の売りに転じ、209ドル安(0.80%減少)。
622日:新型コロナウイルスの影響を受けにくい主力ハイテク株が成長期待で買いが優勢で、153ドル高(0.59%増加)。
623日:米中関係への懸念が後退し、アップルなどのハイテク株が続伸し、131ドル高(0.50%増加)
624日:世界の新型コロナウイルスの感染拡大がしており、投資家心理が冷え込み、景気敏感株を中心に幅広い銘柄が売られ、710ドル安(7.2%減少)
625日:前日の大幅下落を受け自律反発狙いの買いが入り、米金融当局が2008年の金融危機後に導入した金融規制の一部緩和を発表、金融株が軒並み上昇、300ドル高(1.18%増加)
626日:米国で新型コロナウイルスの新規感染者が過去最多となるなか、テキサス州などが一部経済活動の規制を再び強化、米経済の正常化が遅れるとの懸念から、ハイテクや銀行など景気敏感株を中心に売りが膨らみ、730ドル安(2.84%減少)。
629日:運航再開が認められたボーイングが急騰、5月の仮契約住宅販売指数が前月比44.3%と大幅増加したことなどで、景気持ち直しがとの見方が強まり、580ドル高(2.32%増加)。
630日:6月の消費者信頼感指数が98.1と前月から急回復し、市場予想の91.0をを大きく上回ったことで、業績期待が高い半導体などのハイテク株に買いが入り、217ドル高(0.85%増加)。

 
2.米国の雇用状況
米労働省が65日に発表した5月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比2,509,000人の増加で、戦後最大の増加となりました。雇用者数の増加は800万人の減少を見込んでいた市場予想をはるかに上回りました。20109月以来9年半振りとなりました。3月の雇用者数の確定値は1,400,000人で492,000 人の減少、4月の改定値はマイナス20,700,000人で、150,000人の減少となりました。なお、4月の失業率は13.3%で、前月と比べて1.4%改善しました。労働参加率は60.8%で、前月から0.6%増加しました。3月の時間当たり賃金上昇率は前月比で29セント減少しました。部門別では飲食業関係が1,400,000人の増加、レジャー・観光業が1,200,000人の増加、建設業が464,000人の増加、教育・ヘルス業関連が424,000人の増加となりました。

 
3.金利据え置き
FOMC6910日に開催されたFOMC会合を開き、米国債を制限なく購入する量的緩和策などの維持を決めました。会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練のときに米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定化の目標を推進するためにあらゆる手段を使うことを約束する。新型コロナウイルスの感染拡大は、米国と世界中に甚大な人的・経済的困難をもたらしている。ウイルスおよび公衆衛生を守るために取っている対策は、経済活動の深刻な落ち込みと急激な雇用喪失を引き起こしている。弱い需要と著しく低い石油価格が、消費者物価の上昇率を押し下げている。金融情勢は経済および米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、改善した。、現在続いている公衆衛生の危機は、短期的には経済活動、雇用、インフレにとって大きな重荷となり、中期的には経済見通しにとって深刻なリスクとなる。

こうした状況を考慮して、FOMCは(政策金利である)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを00.25%に据え置くことを決定した。経済が足元の状況を乗り切り、最大雇用と物価安定の目標達成に向け軌道にのったと自信をもてるようになるまで、この目標レンジを維持すると予測している。FOMCは、公衆衛生関連の情報も含めた経済見通し、海外の動向、抑制されたインフレ圧力についての情報の監視を続け、経済を支えるために、その手段を用いて適切に行動する。

金融政策のスタンスを調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは雇用の最大化と物価上昇率2%という目標との比較で経済情勢の実績と見通しを評価していく。労働市場の状況に関する指標や、インフレ圧力・インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。
家計と企業の信用の流れを支えるために、FRBは、国債、住宅および商業不動産ローン担保証券の購入を円滑な市場機能を支えるために必要なだけ続ける。そうすることで、より広範な金融情勢への政策の効果的な伝搬を促進する。加えて、公開市場デスクは、大規模なオーバーナイトおよびタームのレポ操作の提供を続ける。

FOMCは、市場情勢を注視し、適切にその計画を調整する準備をする。
決定はパウエル議長及びウィリアムズ副議長を含む10人のメンバー全員の賛成による。

今回の決定は、新型コロナウイルスの感染拡大による米経済の見通しが失業率の高止まりなど、経済の正常化には時間がかかるとの見方が市場で改めて強まり、長期金利の低下もあり、金融株など景気敏感株の売りが優勢で、282ドル安(1.04%減少)となりました。


4.新型コロナウイルス感染者数急増による第2波懸念と株式市場
6月中旬以降、米南部や西部を中心に新型ウイルス感染拡大が見られるようになり、第2波の懸念の見方も出てきています。特に、625日以降の米国の新たな感染者数はこれまでの記録を破り、 一日当たり40,000人を超える状況になっています。426日にトランプ政権でコロナウイルス感染拡大問題の責任者となっているペンス副大統領が記者会見をしましたが、彼の見方は最近の急増は若い世代に多く、年配層が多かった3月や4月の時期とは異なり、大きな懸念を持っていないとの立場でした。彼がトランプ政権の副大統領であることからすれば、現在のトランプ政権を擁護するのは当然ですが、感染拡大への具体的な対応策を示していないことへの批判が強くあることも事実です。それと同時に、感染者が急増している状況にもかかわらず、経済に関して少しでも前向きのニュースがあると、過剰な反応を示す現在の株式市場の実体経済とは乖離した投機性の強さへの懸念と警戒感を持つ必要性を感じます。
                     (202071日: 村方 清)