Thursday, April 1, 2021

大規模な追加経済対策とワクチンの急速普及で上昇傾向を強める株式市場








13月の株式市場

3月の株式市場は、バイデン政権による1.9兆ドルの大規模な追加経済対策とワクチンの急速な普によって、株式市場は一層の上昇傾向を強めました。主要な動きは以下の通りでした。

31日:ジョンソンエンドジョンソンの新たなワクチンが認可され、新型コロナウイルスのワクチン普及や追加経済対策の早期成立で経済活動の正常化が進むとの期待から、幅広い銘柄に買いが入り、603ドル高(1.95%増加)。

32日:前日に603ドル高を記録したこともあり、主要ハイテク株が総じて下落した他、目先の利益を確定する売りが優勢で、144ドル安(0.46%減少)。

33日:米長期金利が一時1.49%と前日から0.1%上昇、高株価収益率銘柄の相対的な割高感が意識され、ハイテク株が売られ、121ドル安(0.39%増加)。

34日:RBのパウエル議長の発言を受けて、長期金利が1.5%台に上昇、投資家心理が悪化、高株価収益率のハイテク銘柄を中心に売られ、346ドル安(1.11%減少)

35日:5日発表の2月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比379,000人増で市場予想の210,000人を大きく上回り、労働市場が改善しているとの見方が広がり、キャタピラー、アメリカンエクスプレス、ダウなど景気敏感株が買われ、572ドル高(1.85%増加)。

38日:米上院が可決した追加経済対策案が下院で再審議され、今週中に成立する見通しとなり、個人消費の押上が見込まれ、景気敏感株を中心に買いが優勢で、306ドウ高(0.97%増加)。

39日:米長期金利の上昇が一服し、前日まで軟調であったハイテクなどの成長株に押し目買いが入り、30ドル高(0.10%増加)。

310日:米下院は10日に1.9兆ドル規模の追加経済対策案を可決、12日にバイデン大統領の署名で成立することから、景気回復を加速させるとの見方から景気敏感株を中心に買われ、464ドル高(1.46%増加)。

311日:米政府の経済追加対策法案が11日に成立し、景気回復が勢いづくとの期待から、幅広い銘柄が買われ、長期金利の上昇が一服したこともあり、ハイテクなどの銘柄が大きく買われたこともあり、189ドル高(0.58%増加)。

312日:米政府の追加経済対策や新型コロナウイルスのワクチン普及による景気回復期待から、景気敏感株に買いが入り、293ドル高(0.90%増加)。

315日:前週に米政府の追加経済対策が成立したことから、景気回復が勢いづくと見る買いが消費関連株を中心に入り、175ドル高(0.53%増加)。

316日:前日までの7日間続伸で2000ドル程度上昇した反動で、短期的な過熱感を警戒した利益確定売りが景気敏感株を中心に出て、128ドル安(0.39減少)。

317日:FOMC2023年末まで現行のゼロ金利政策を続けるとの予想を示したことで、金融緩和の長期化が景気回復と株式市場へ資金流入を後押しするとの見方で、189ドル高(0.58%増加)

318日:FRBのゼロ金利政策の長期化でインフレが加速するとの見方で長期金利が12カ月振りに上昇、ハイテクなど高株価収益率の銘柄が中心に売られ、154ドル安(0.46%減少)

319日:FRBが新型コロナ危機に対応して導入した銀行の資本規制の緩和を延長しないことを表、投融資への影響が懸念され、金融株が下落、234ドル安(0.71%減少)

322日:米長期金利の上昇が一服し、高株価収益率のハイテク株などに押し目買いが入り、193ドル高(0.32%増加)

323日:欧州で新型コロナウイルスの感染が再拡大し、世界経済の正常化が遅れるとの懸念から、資本財や金融など景気敏感株が売られ、308ドル安(0.94%減少)。

324日:欧州景気への懸念で前日に売りが広がった景気敏感株に見直し買いが入ったものの、ハイテク株への売りが次第に強まり、取引終了時に下げに転じ、3ドル安(0.01%減少)

325日:売りが先行したが、米新規失業保険申請件数が最低水準であったことから、景気敏感株が中心に買いが優勢で、199ドル高(0.62%増加)。

326日:新型コロナウイルスのワクチンの普及が加速し、経済活動の正常化が進むとの見方から、景気敏感株を中心に幅広い銘柄に買いが入り、453ドル高(1.39%増加)

329日:新型コロナウイルスのワクチン普及に伴う経済活動の正常化期待から主力株に買いが入り、98ドル高(0.30%増加)。

330日:バイデン政権が31日にインフラ投資を中心とする新たな経済政策を331日に発表することを受けtて、長期金利が一時、12カ月振りの水準に上昇し、割高感が警戒され、マイクロソフトとアップルなどの銘柄が売られ、104ドル安(0.01%減少)。

331日:米国の景気回復期待で上昇していた景気敏感株の一角に短期的な過熱感を警戒した利益確定売りが優勢で、85ドル安(0.26%減少)。


2.米国の雇用状況

米労働省が35日に発表した2月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比379,000人の増加で、市場予想の210,000人の増加を大きく上回りました。12月の雇用者数の確定値はマイナス306,000人で79,000 人の減少、1月の改定値は166,000人で、117,000人の増加となりました。なお、2月の失業率は6.2%で、前月より0.1%下がりました。労働参加率は61.4%で、前月と同じ水準でした。1月の時間当たり賃金上昇率は前月比で7セント増加しました。部門別では観光・ホテ46,000人の増加、小売業が41,000人の増加が355,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が53,000人の増加、ヘルスケア・社会福祉業が135,000人の減少、小売業が41,000人の増加であったものの、地方政府の教員数が69,000人の減少となりました。


3.1.9兆ドルの追加経済対策案の成立

米連邦議会下院は310日に、バイデン大統領が提案した1.9兆ドルの新型コロナウイルス対策を民主党主導で可決しました。上院は既に承認済みで、12日にバイデン大統領が署名して成立することになります。

新対策の柱は1人最大1400億ドルの現金給付で、年収8万ドル以上の高所得層は除外するものの、支給額総額は4000億ドルに達すると見られます。加えて、314日に失効する予定であった失業給付の特例加算も9月末まで延長します。失業者は州・地方政府からの平均週370ドルの失業給付に加えて、連邦政府が週300ドルを上乗せすることになります。これによる支給総額は2500億ドルが見込まれます。ワクチンの普及にも160億ドルを当てる他、財政難で教育や治安が揺らぐ州、地方政府にも3500億ドルを支援することになります。

今回の経済対策の総額は1.9兆ドルとなり、20203月以降に発動した第4弾までを合わせると、全体の規模は5.8兆ドル程度になる見込みです。通常の年間歳出が2019年度で4.4兆ドルであることからすると、臨時の財政出動だけで、それを上回ることになり、GDP比率で約28%になると見られます。トランプ前大統領がコロナ危機で国家非常事態宣言を発令したのは20313日で、既に1年が経過しますが、失業者はまだ1000万人で、雇用回復には時間がかかると見られます。同時に、財政出動と金融緩和で株や不動産などの資産価格は高騰し、過熱感がありますが、政府支援がなければ、米国経済は自立できる状態ではないのが実情です。

いずれにしても、21年度の連邦政府の赤字は29兆ドルに達する見込みで、GDP比で過去最悪になると見られます。懸念材料は低位で安定していた長期金利の上昇で、巨額の追加対策は景気回復期待と財政不安という金利上昇圧力となる恐れがあります。

 

4.金利据え置きを決めたFOMC会合

FOMC会合が31617日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練の時に米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定の目標を推進するために、あらゆる手段を使うことを約束する。

新型コロナウイルスの流行は、米国と世界中に甚大な人的・経済的な困難をもたらしている。回復ペースが緩やかになった後、経済活動と雇用の安定の指標は足元で上向いているが、パンデミックによる打撃が最も大きかった産業は依然緩和的だ。物価上昇は引き続き2%を下回っている。経済及び米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般的に依然として緩和的だ。

景気の動向は、ワクチン接種の進捗も含め、ウイルスの拡大状況に大きく左右されている。現在続いている公衆衛生の危機は、引き続き、経済活動、雇用、インフレにとって重荷となり、経済見通しへの深刻なリスクとなる。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ達成を目指す。そうすることで、インフレ率が長期的に平均で2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。

これらの成果が出るまで、金融政策の緩和的なスタンスを維持すると予測している。

FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを1.501.75%に据え置くことを決定した。労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面は2%をやや上回るところで軌道に乗るまで、この目標レンジを維持することが適切と予測する。

雇用最大化と物価安定の目標に向けてさらなる大きな前進を遂げるまで、FRBは国債保有を少なくとも月800億ドル、ローンタンプ証券の保有を少なくとも月400送ドル引き続き増やす。こうした資産購入は円滑な市場機能と緩和的な金融情勢の促進を助け、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。

317日は、FOMCで現行のゼロ金利政策を続けるとの予想を示したことで、金融緩和の長期化が景気回復と株式市場へ資金流入を後押しするとの見方が強まり、189ドル高(0.58%増加)

         (202141日:村方 清)