1.9月の株式市場
9月の株式市場は後半になり、中国不動産会社の経営不安や米国の債務上限問題で市場の不安定化が高まりました。主要な動きは以下の通りでした。
9月1日:主要株価指数が過去最高値圏で推移する中で、景気敏感株を中心に利益確定や持ち高調整の売りが優勢で、48ドル安(0.14%減少)。
9月2日:週間の新規失業保険申請件数は前週比1万4千件減の34万件と市場予想より少なく、昨年3月以降の最低を更新、投資家心理が改善し、131ドル高(0.37%増加)。
9月7日:新型コロナウイルス感染拡大で、米景気の回復が遅れるとの警戒感から、景気敏感株を中心に売りが優勢で、269ドル安(0.76%減少)。
9月8日:朝方は買いが先行したが、買い一巡後は新型ウイルスの感染拡大による景気回復の鈍化を警戒した売りが優勢となり、69ドル安(0.20%減少)。
9月10日:新型コロナウイルスの感染拡大で米景気の回復が遅れるとの懸念が根強く、アップルが大きく下落したことで、272ドル安(0.78%減少)。
9月13日:直近の5営業日で836ドル下げた反動で、値ごろ感からの買いが優勢で資本財や金融など景気敏感株に一角が買い直されて、262ドル高(0.76%増加)。
9月14日:朝方は買いが先行したが、米長期金利が低下幅を広げると銀行株を中心に景気敏感株が売られ、ダウ平均も下げに転じ、下げ幅を拡大、292ドル安(0.84%減少)。
9月15日:NY連銀の製造業景況指数が34.3と8月の18.3から改善し、前日に300ドル近く下げた反動もあり、景気敏感株を中心に買いが広がり、237ドル高(0.68%増加)。
9月16日:朝方は小売売上高が前月比0.7%増と市場予想に反して増加、消費者関連株は買われたものの、デルタ株感染拡大で米経済活動の正常化は遅れるとの懸念で、63ドル安(0.18%減少)。
9月17日:米景気の減速懸念に加え、来週のFOMC会合を控え、投資家が運用リスクを取る姿勢が後退し、166ドル安(0.48%減少)。
9月20日:中国の大手不動産、恒大集団の経営不安の高まりを背景にリスク回避の動きが広がり、資本財や金融などの景気敏感株に加え、主力ハイテク株も売られ、614ドル安(1.78%減少)。
9月21日:香港や欧州市場の反発から買いが先行したが、恒大集団の経営問題への懸念は残り、明日のFOMCの結果発表を控え、様子見ムードも広がり、51ドル安(0.15%減少)。
9月22日:中国恒大集団の経営不安が後退、買いが先行、FOMCの会合で量的緩和縮小の年内開始が市場の想定通りであったことも加わり、338ドル高(1.00%増加)。
9月23日:FOMCが昨日無難に通過し、様子見の投資家が幅広く買いに入ったことや中国恒大集団の債務問題への警戒感がひとまず和らいだこともあり、507ドル高(1.48%増加)。
9月24日:前日までの2日間で800ドル強上昇しており、売りが先行したが、その後、金融や消費者関連株に買いが入り、33ドル高(0.10%増加)。
9月27日:新型コロナウイルス感染者数が減少傾向にある中で、景気減速の懸念が薄れ、長期金利や原油価格の上昇で、景気敏感株に資金が流れ、71ドル高(0.21%増加)。
9月28日:米長期金利の上昇が続き、相対的な割高感が意識されたハイテク株など高株価収益率銘柄が売られ、米連邦政府の債務上限問題も意識され、570ドル安(1.63%減少)。
9月29日:米長期金利の上昇が一服し、製薬のメルクや日用品のP&Gなどディフェンシブ株を中心に買い直され、91ドル高(0.26%増加)。
9月30日:米連邦政府の債務上限問題やサプライチェーンの混乱等の悪材料が重なり、市場心理の重荷から、547ドル安(1.59%減少)。9月月間で4.3%安で、下落率は昨年10月以来の大き
FOMC会合が9月21-22日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練の時に米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定の目標を推進するために、あらゆる手段を使うことを約束する。
新型コロナウイルスワクチン接種の進捗と力強い政策支援を受け、経済活動と雇用の指標は引き続き強さを増している。パンデミックによる打撃が最も大きかった産業も改善を示しているが、完全には回復ペースが落ちている。物価上昇率は主に一時的な要因を反映して高まっている。経済及び米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般に依然として緩和的だ。
FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ達成を目指す。そうすることで、インフレ率が長期的に平均で2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。
これらの成果が出るまで、金融政策の緩和的なスタンスを維持すると予測している。
FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0-0.25%に据え置くことを決定した。労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面は2%をやや上回るところで軌道に乗るまで、この目標レンジを維持することが適切と予測する。
FOMCは昨年12月、雇用最大化と物価安定の目標に向けてさらなる大きな前進を遂げるまで、国債保有を少なくとも月800億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル増やし続けると表明した。その後、経済はこれらの目標に向けて前進している。経済の改善がおおむね予想通りに進めば、資産購入のペースを早急に緩和する必要があると判断する。こうした資産購入は円滑な市場機能と緩和的な金融情勢の促進を助け、家計と企業の信用の流れを支える。
金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。
今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。
FOMCの声明では、景気回復が予想通りに進めば、「資産購入ペースの縮小が近く正当化される」と明示し、次回11月のFOMCでの量的緩和の縮小(テーパリング)開始決定を示唆しました。パウエル議長は会合後の記者会見で、「資産購入縮小の時期とペースは、より厳格なテストに従って判断するもので、利上げの時期に関する直接的なシグナルではない」と述べ、利上げには慎重に臨む姿勢を改めて強調しましたFOMCの結果が想定内で会ったことやパウエル議長のハト派よりの姿勢も変わらないとの見方があり、加えて中国恒大集団の経営不安な後退したことで、ダウ平均は338ドル高(1%増加)となりました。
4.米連邦政府の閉鎖と債務上限問題
イエレン米財務長官とパウエル米連邦準備理事会議長は9月28日に上院での議会証言に臨みました。その時点で米国は二重のリスクに直面していました。1つは10月からの新会計年度が財源措置がないまま迎え、政府機関が一時閉鎖となる恐れで、これについては9月30日に米議会上下院が12月3日までの連邦政府の資金を手当てするつなぎ予算案を賛成多数で可決しました。2つは連邦政府の債務上限問題です。イエレン長官はこの日、議会が連邦政府の債務上限を凍結するか、または引き上げなければ10月18日以降に資金繰りが行き詰まり、米国債の利払いや債務が滞る債務不履行に陥ると警告しました。米国は基軸通貨ドルを前提に世界の投機資金を集めており、最大の金融商品である米国債がデフォルトとなれば、 米国債の価値が暴落し、金利は上昇、世界の金融システムが揺らぐ結果になりかねません。今後、米国政府と与野党の対立が続く連邦議会がどのような対応をするのか、極めて重大な局面が続くことになります。
(2021年10月1日: 村方 清)