Sunday, January 2, 2022

オミクロン型は限界的影響との見方で上昇傾向に戻る市場








1.12月の株式市場

12月の株式市場は、月半ばまで新型コロナウイルスの変異型オミクロン型への警戒的な見方が優勢でした。しかし、後半からオミクロン型は感染力を強いものの、重症化しないとの専門家の見解が多くなるにつれ、再び上昇傾向に戻りました。主要な動きは以下の通りでした。

121日:前日に大幅安となった反動で大きく上昇したが、米国で新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の初の感染者が確認され、感染拡大を警戒した売りが引けにかけて下げ幅を拡大し、462ドル安(1.34%減少)。

122日:新型コロナウイルスの変異型オミクロン型の感染拡大や連銀の量的緩和縮小の加速への懸念から2日間で1100ドル下落の反動から、幅広い銘柄に自律反発狙いの買いが優勢で、618ドル高(1.82%増加)。

123日:世界各地でオミクロン型の感染者が相次いで確認され、感染拡大への懸念が投資家心理を冷やし、高株価収益率のハイテク株を中心に売りが優勢で、60ドル安(0.17%減少)。

126日:新型ウイルスの変異型であるオミクロン型に対する懸念がやや後退し、景気敏感株を中心に上昇、過去4週間連続下落の反動もあり、647ドル高(1.87%増加)

127日:オミクロン型のまん延が米景気の悪化につながるとの懸念が後退し、景気敏感株を中心に買いが入り、492ドル高(1.40%増加)。                        128日:オミクロン型の感染拡大への懸念が後退し、消費関連株に買いが入ったものの、大きく上昇した後のことから利益確定の売りも出て、35ドル高(0.10%増加)

129日:英国政府がオミクロン型の感染拡大を受けて規制を強化したことや上げ相場をけん引してきた景気敏感株やハイテク株の一部が利益確定売りに押され、1ドル安(0.00%減少)

1210日:11月のCPIは前年同月比6.8%上昇と39年ぶりの高い伸びとなったが、市場では想定内と受け取られ、インフレ加速を警戒した売りは強まらず、買いが優勢となり、216ドル高(0.60%増加)

1213日:新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン型の感染拡大への警戒感から景気敏感株を中心に売りが優勢で、319ドル安(0.89%減少)。

1214日:11月の卸売物価指数の上昇率が前年同月比9.6%と市場予想を上回り、FRBによる利上げ前倒し観測が広がり、ハイテク株を中心に売りが広がり、107ドル安(0.30%減少)

1215日:FRB1415日のFOMC会合で、テーパリング(量的緩和縮小)の加速決定や利上げ前倒しを示唆した結果を受けて、市場では想定通りと評価、先行きの不透明感が払拭されたことで、383ドル高(1.08%増加)。

1216日:215日のFOMCFRBが金融引き締めに前向きの姿勢を示したことで、ハイテク株を中心に売りが優勢で、30ドル安(0.08%減少)。

1217日:金融緩和縮小に伴う株式市場への資金の流入の低下や新型コロナウイルス感染拡大の警戒感から、景気敏感株を中心に売りが優勢で、618ドル安(1.48%減少)

1220日:世界的にオミクロン型の感染が拡大し、行動規範の強化による景気への懸念が急激に高まり、433ドル安(1.23%減少)。

1221日:オミクロン型の感染拡大で前日まで3日連続で1000ドル近く下落した反動で、消費財関連株に買いが優勢で、561ドル高(1.60%増加)。

1222日:22日発表の12月米消費者信頼感指数は115.8と前月より改善したことやFDAがファイザー社の新型コロナウイルスの飲み薬の緊急使用を承認したことを受けて、消費者心理が改善し、261ドル高(0.74%増加)。

1223日:オミクロン株の感染による入院や重症化のリスクが低いとの調査結果が相次いで、投資家心理が改善、機械や素材などの景気敏感株を中心に買いが入り、196ドル高(0.55%増加)

1227日:消費の堅調さを示すデータの発表を受けて米経済への楽観論が強まり、ハイテク株を中心に買いが優勢で、352ドル高(0.98%増加)。

1228日:新型ウイルスが拡大しても、米経済への悪影響は限られるとの見方から景気敏感株を中心に買いが優勢で、96ドル高(0.26%増加)。

1229日:新型コロナウイルスの感染拡大による米景気への悪影響は避けられるとの見方から、消費関連株への買いが優勢で、90ドル高(0.25%増加)。

1230日:朝方は消費関連株を中心に買いが先行したが、取引終了にかけて利益確定目的の売りが優勢で、91ドル安(0.25%減少)。

1231日:29日に過去最高値を更新したこともあり、利益確定売りが優勢で、60ドル安(0.16%減少)。2021年全体では5,731ドル上昇(18.7%増加)。3年連続の上昇で、上昇額は過去最高。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が123日に発表した11月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比210,000人の増加で、市場予想の530,000人の増加を大きく下回りました。9月の雇用者数の確定値は379,000人で67,000 人の増加、10月の改定値は546,000人で、15,000人の増加となりました。なお、11月の失業率は4.2%で、前月より0.4%下がりました。労働参加率は61.8%で、前月より0.2%増加しました。11月の時間当たり賃金上昇率は前月比で8セント増加しました。部門別では専門・ビジネスサービス業が90,000人の増加、輸送・倉庫業が50,000人の増加、製造業が31,000人の増加、輸送・倉庫業が54,000人の増加、小売業が22,000人の増加、レジャー・観光業や医療・介護業は殆ど変わりませんでした。

 

3.量的緩和縮小の加速を決めたFOMC会合

FOMC会合が1214-15日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練の時に米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定の目標を推進するために、あらゆる手段を使うことを約束する。

新型コロナウイルスワクチン接種の進捗と力強い政策支援を受け、経済活動と雇用の指標は引き続き強さを増している。パンデミックによる打撃が最も大きかった産業はこの数か月改善しているが、引き続きウイルスの影響を受けている。雇用増はこの数か月堅調で、失業率は大きく下がっている。パンデミックと経済再開に関連した需給の不均衡が、引き続き高い物価上昇率に寄与している。経済及び米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般に依然として緩和的だ。

景気の動向は依然としてウイルスの拡大状況に左右されている。ワクチン接種の普及と供給制約の改善が引き続き経済活動と雇用の拡大、およびインフレの低下を助けると見込んでいる。経済の先行きへのリスクは、ウイルスの親変種がもたらすリスクを含め、残っている。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを00.25%に据え置くことを決定した。インフレ率はしばらく2%を上回っており、労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致するまでは、この目標レンジを維持することが適切と予測する。

インフレ動向と労働市場の一段の改善を受けて、毎月の資産購入ペースを、国債は月額200億ドル、ローン担保証券は月額100億ドルずつ減らすことを決定した。1月から、FOMCは国債保有を少なくとも月400億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月200億ドル増やす。12月後半からは、国債保有を少なくとも月600億ドル、ローン担保証券を少なくとも月300億ドル増やす。総資産購入を毎月同様のペースで減らしていくことが適切になると判断しているが、景気見通しの変化があれば購入のペースを調整する用意がある。FRBが行っている証券の購入と保有は、円滑な市場機能と緩和的な金融情勢の促進を助け、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。

FRB15日のFOMCで、米国債などの資産を購入する量的緩和縮小(テーパリング)の加速を決めました。終了時期の想定を20226月から3月へ前倒しし、22年中に計3回の政策利上げを織り込んでいます。これはインフレが長引き、1カ月前に始めたばかりの緩和縮小を速める異例の軌道修正を迫られたことになります。債の償還分も再投資するなど、当面は緩和的な金融環境が続くことになります。市場では今回の米金融政策のタカ派的転換は適切との見方も多く、ダウは383ドル高(1.08%増加)で終わりました。


4.米国の債務上限引き上げ法案が成立

バイデン大統領は1216日に連邦政府の借入限度額を定めた債務上限を引き上げる法案に署名し、同法が成立しました。債務上限引き上げについては、10月に一時的に4,800億ドルを引き上げる法案が成立していましたが、イエレン財務長官が1215日にその資金も枯渇すると指摘し、議会に遅くとも同日までの引き上げを求めていたもので、ギリギリでデフォルトが回避されることになりました。

議会では、前日の14日に上院で賛成50、反対49で法案が通過していました。上院での法案可決には本来60票が必要ですが、この債務上限問題に限って単純過半数での議決を可能とする法案が成立していたことから、与野党勢力が拮抗する中でも可決が可能になりました。上院での可決後に、同法案は下院に送られ、15日未明の下院での採決の結果、賛成221、反対209で可決しました。今回に新たに付加された債務限度は25,000憶ドルで、現在の債務上限の289,000億ドルに追加されます。この水準は2023年初めごろまでの連邦政府の資金需要に対応できる見通しです。

                  (202212日: 村方 清)