1.3月の株式市場
3月の株式市場は前半がロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁の悪影響が続いたものの、後半になり前向きな停戦交渉が期待されたこと先物原油相場の下落が見られるなどで、回復基調となりました。主要な動きは以下の通りでした。
3月1日:ウクライナ情勢の悪化と欧米の経済制裁でロシアが信用危機に陥る可能性も意識され、株式から債券に資金を動かす動きが広がり、、598ドル安(1.76%減少)。
3月2日:ロシアが停戦協議を再開するとの意向を表明したとの報道を受け、地政学リスクの緩和を期待した買いが入り、596ドル高(1.79%増加)。
3月3日:航空機のボーイングが大幅安となり、ウクライナ情勢を巡る先行き不透明感から、様子見の投資家が多く、97ドル安(0.29%減少)。
3月4日:ウクライナ情勢の緊迫化への懸念から投資家のリスク回避姿勢が強まり、景気敏感株や消費関連株への売りが目立ち、180ドル安(’0.53%減少)。
3月7日:シアへの経済制裁に伴うエネルギー高が世界景気を冷やすとの懸念が広がり、797ドル安(2.37%減少)。1月4日に付けた過去最高値からの下落率は10.8%で、調整局面入りの目安となる10%を超えた。
3月8日:バイデン大統領がロシアからの石油や天然ガスの輸入を禁止すると発表し、エネルギー需給が逼迫し、インフレが米景気を冷やすとの懸念が強まり、185ドル安(0.56%減少)。
3月9日:米原油先物相場の大幅下落でインフレや景気減速への懸念が和らぎ、消費関連など幅広い銘柄が買い直され、654ドル高(2.00%増加)。
3月10日:2月の消費者物価指数が7.9%と1月の7.5%より拡大し、インフレ警戒が改めて強まり、ハイテク株を中心に売りが優勢で、174ドル安(0.34%減少)。
3月11日:ロシアとウクライナの対話が停戦に向けて前進しているとの期待から買いが先行したが、ロシア軍の攻撃が拡大しているとの報道から、230ドル安(0.69%減少)。
3月14日:15-16日のFOMCの会合を控えて、米長期金利が2019年7月以来の水準に上昇しハイテク株に売りが出たものの、原油先物相場が下落し、景気減退へン警戒感が薄れて、1ドル高。
3月15日:原油先物相場が連日で大幅に下落し、インフレ懸念が和らぎ、諸費関連株やハイテク株など幅広い銘柄が買われ、599ドル高(1.82%増加)。
3月16日:ウクライナとロシアの停戦交渉の進展や中国政府の景気刺激策への期待が高まり、景気敏感株を中心に買いが優勢で、519ドル高(1.55%増加)。
3月17日:ロシアの外貨建て国債の利払いが実施されてたと伝わり、ロシアの債務不履行の懸念がやや和らぎ、幅広い銘柄に買いが優勢で、418ドル高(’1.23%増加)。
3月18日:FRBの高官の発言を受け、米金融政策を巡る不透明感が薄れて、ハイテク株を中心に買い直しが優勢で、274ドル高(0.80%増加)。週間上昇率は’5.5%で1年4か月ぶりの大きさ。
3月21日:FRBのパウエル議長が今後のFOMCで大幅な利上げに踏み切る可能性を示唆したことから、金融引き締めを警戒し、幅広い銘柄に売りが膨らみ、202ドル安(0.58%減少)。
3月22日:利上げ加速の観測から米長期金利が上昇し、金融株の追い風になったことや好決算のナイキが大幅に上昇、他の消費財関連に影響し、254ドル高(0.74%増加)。
3月23日:米原油先物相場が5%以上と大幅に増加し、高インフレが景気を冷やすとの警戒感から消費関連株を中心に売りが優勢で、449ドル安(1.29%減少)。
3月24日:原油先物相場が4%近く下げる場面があり、ガソリン高が米消費を抑えるとの警戒感が後退、朝方発表の週間米新規失業保険件数も市場予想を下回り、349ドル高(1.02%増加)。
3月25日:米原油先物相場が上昇し石油株が買われ、米長期金利の上昇を受けて金融株の一部も上昇し、153ドル高(0.44%増加)。
3月28日:原油安を受けて消費関連株銘柄の一角が買われた他、ハイテク株が買い直され、取引終了にかけて上げに転じて、95ドル高(0.27%増加)。
3月29日:ロシア国防省がウクライナの首都キエフでの軍事活動を縮小すると発表、停戦交渉の進展を期待して、幅広い銘柄が買われて、338ドル高(0.97%増加)。
3月30日:ウクライナ情勢の不透明感や米原油在庫の減少などで米原油先物が3%強上昇したことなどから、消費関連やハイテク株が利益確定売りに押されて、65ドル安(0.19%減少)。
3月31日:3月後半以降の急激な上昇を受け、月末と四半期末が重なったこともあり、幅広い銘柄に利益確定の売りが優勢で、消費関連やハイテク株の下げが目立ち、550ドル安(1.56%増加)。
米労働省が3月4日に発表した2月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比678,000人の増加で、市場予想の440,000人の増加を大きく上回りました。12月の雇用者数の確定値は588,000人で78,000 人の増加、1月の改定値は481,000人で、14,000人の増加となりました。1月の失業率は3.8%で、前月より0.2%下がりました。労働参加率は62.3%で、前月より0.1%増加しました。1月の時間当たり賃金上昇率は前月比で1セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が179,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が95,000人の増加、医療関係業が64,000人の増加、建設業が60,000人の増加、輸送・倉庫業が48,000人の増加、小売業が37,000人の増加、製造業が36,000人の増加となりました
バイデン大統領は3月1日に連邦議会の上下両院合同会議で初の一般教書演説を行いました。その中で、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領を独裁者と非難した上で、米国はウクライナの人々と共にあると連帯を表明しました。内政面の重点政策に時間を割くことが多い一般教書演説ですが、バイデン大統領は演説の冒頭からロシアのウクライナ侵攻に言及し、世界平和を擁護する指導者としての姿を強調しました。対ロ経済制裁では、新たにロシア機の米領空通過禁止を発表すると共に、制裁に伴うエネルギー価格の高騰を抑制するため、各国と足並みをそろえ、3000万バーレルの米戦略石油備蓄を放出することを明らかにしました。
内政面では、昨年だけで850万人以上の新規雇用を創出したと誇示した上で、経済成長率は年5.7%と過去40年近くで最も力強い成長であったと強調しました。一方、インフレ率が約40年振りの高い伸びとなっていることを踏まえて、物価‘制御が最優先課題と述べ、超党派の協力を呼びかけました。加えて、インフラ投資が米国を変革し、21世紀の中国との競争に打ち勝つ道を開くことになると語りました。新型コロナウイルスに関しては、我々が普通の日常へ戻りつつあるとの見方を示しつつ、ワクチン接種への協力などを求めました。
4.利上げを決めたFOMC会合
FOMC会合が3月15-16日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。
経済活動と雇用の指標は引き続き強さを増している。雇用増はこの数か月力強く、失業率は大きく下がっている。物価上昇率はパンデミックに関連した需給の不均衡、エネルギー価格の高騰、広範に及ぶ物価上昇圧力を反映して、高止まりしている。
ロシアによるウクライナ侵攻が、人々と経済に甚大な苦難をもたらしている。米経済への影響は不透明だが、短期的には侵攻とそれに関する事象が、更なる物価上昇圧力をもたらし、経済活動の重荷になる可能性が高い。
FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。金融政策のスタンスを適切に引き締めることで、労働市場の強さを保ったまま、インフレは目標の2%に戻ると予測する。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0-0.25%に引き上げることを決定した。更に誘導目標レンジの引き上げの継続が適切になると予期している。加えて、今回の会合で、国債とローン担保証券の保有を減らし始めると予測する。
金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。
今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。セントルイス連銀のブラート総裁は、0.5%の金利引き上げを主張して反対票を投じた。
FRBはFOMC会合を通じてほぼ3年振りとなる利上げを決定したが、タカ派的な内容であったものの、今後の道筋が示されたとして、幅ひろい銘柄に買いが優勢となり、ダウ平均価格は519ドル高(1.55%増加)となりました。
(2022年4月1日: 村方 清)