Sunday, May 1, 2022

ロシアのウクライナ侵攻とFRBの金融引き締めによる市場の不安定性拡大








1.4月の株式市場

4月の株式市場は長期金利が上昇する中でハイテク株銘柄の売りが続いたこと、更に消費者物価の高騰に対してFRB5月のFOMC会合で0.5%の利上げをする観測が高まったことで、市場の不安定性が拡大しました。主要な動きは以下の通りでした。


41: 1日発表の3月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比431,000人増で市場予想の490,000人を下回ったものの、過去2か月分は大きく上方修正され、消費関連株の一角に買いが優勢となり、140ドル高(0.40%増加)。

44日:新たな四半期が始まり、成長性が高く、相対的に景気の影響を受けにくいイテク株を中心に見直し買いが広がり、104ドル高(0.30%増加)。

45日:FRBが積極的に金融を引き締めるとの観測から、米長期金利が3年振りの高水準をつけ、高株価収益率のハイテク株が売られて、281ドル安(0.80%減少)。

46日:FOMCの議事要旨で5月にも始まる資産圧縮について月950億ドルとの見方で参加者がおおむね合意していたことがわかり、金利上昇で相対的な割高感が意識されやすい高株価収益率のハイテク銘柄が売られて、145ドル安(0.42%減少)。

47日:金融引き締めを警戒した売りが先行したが、売り一巡後は下げ渋り、業績が景気に左右されにくいヘルスケアや日用品などのディフェンス株を中心に買われ、87ドル高(0.25%増加)

48日:米長期金利が朝方に2.73%と3年振りの高い水準を付け、金融株が買われた他、業績が景気動向に左右されにくいディフェンシブ株株も上昇、138ドル高(0.40%増加)。

411日:米長期金利が上昇し、相対的な割高感が意識された高株価収益率のハイテク株をを中心に売りが膨らみ、413ドル安(1.19%減少)。

412日:朝方は米消費者物価指数でコア指数が市場予想ほど上昇せず、ハイテク株などに買いが先行したが、FRBが金融引き締めを積極的に進める状況に変わりなしとして、売りが優勢となり、88ドル安(0.26%減少)

413日:前日に1か月ぶりの安値で終えており、短期的な自律反発を見込む買いが入り、13日からの米主要企業の13月期決算への期待も浮上し、相場を押し上げ344ドル高(1.01%増加)

414日:四半期決算を発表した金融株などで買いが先行したが、米長期金利の上昇を受けて高株価収益率のハイテク株に売りが強まると下げに転じ、113ドル安(0.33%減少)。

418日:原油高を背景に消費関連株が売られ、反面、米長期金利の上昇を受けて金融株が買われ相場を支えて、40ドル安(0.11%減少)。

419日:FRBが金融引き締めを進めても、米景気は底堅さを保つとの見方から、消費関連や景気敏感株の買いが優勢で、500ドル高(1.45%増加)。

420日:IT大手のIBMなどが市場予想を上回る四半期決算の銘柄が買われ、上昇をけん引、金融引締めの中でも景気や企業業績は底堅いとの見方が買いを後押しし、250ドル高(0.71%増加)

421日:好決算銘柄が買われて高く始まったが、米長期金利の上昇を受けて伸び悩み、午後に下げに転じて、368ドル安(1.05%減少)。

422日:FRBの積極的な金融引き締めが景気を冷やすとの懸念が強まり、幅広い銘柄が売られ、一時下げ幅は1000ドルを超え、981ドル安(2.82%減少)。

425日:米長期金利の低下を支えに下げが目立っていたハイテク株を中心に買いが優勢で、238ドル高(0.70%増加)。

426日:新型ウイルス感染拡大を受けて中国がロックダウンする可能性が高ったこと、更にFRBの金融引き締め策への懸念も加わり、世界景気の減速懸念から、809ドル安(2.38%減少)

427ダウ平均は前日に809ドル安で終えており、短期的な戻りを期待した買いも出たが、米金融引き締めや堺景気鈍化への警戒感は強く、62ドル高(0.19%増加)。

428日:前日夕に決算を発表したメタプラットフォームズが急伸し、主力ハイテク株に買いが広がり、ハイテク以外の好決算銘柄買われ、614ドル高(1.85増加)。

429日:四半期決算を発表したアマゾンが14%安の急落となり、FRBの金融引き締めや中国でのコロナウイルス拡大によるサプライチェーンへの影響、更にウクライナ紛争などの世界景気に先行き不透明感から売りが拡大、939ドル安(2.77%減少)

 


2.米国の雇用状況

米労働省が41日に発表した3月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比431,000人の増加で、市場予想の490,000人の増加を下回りました。1月の雇用者数の確定値は504,000人で23,000 人の増加、2月の改定値は750,000人で、72,000人の増加となりました。3月の失業率は3.6%で前月より0.2%下がりました。労働参加率は62.4%で前月より0.1%増加しました。3月の時間当たり賃金上昇率は前月比で13セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が112,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が102,000人の増加、小売業が49,000人の増加、製造業が38,000人の増加、社会サービス業が25,000人の増加、建設業が19,000人の増加、ヘルスケア業と輸送・倉庫業は前月とほぼ変わりませんでした。

 

3.米消費者物価8.5%上昇とFRBの利上げ検討

米労働省が412日に発表した3月の消費者物価指数は8.5%上昇しました。ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰を受けて、伸びは前月(7.9%)から更に加速、198112月以来403か月ぶりの高さとなりました。米経済が新型コロナウイルスから強い回復を遂げる中、需要の急増に原材料の供給や人手の確保が追い付かず、物価高を招いています。ウクライナ危機を契機とする原油高も上昇に拍車をかけています。

変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数も6.5%上昇と828月以来の高い伸び率で、エネルギーに留まらず、幅広い分野に及んでおり、インフレ圧力の強さが示されました。項目別ではガソリンが48.0%の大幅上昇で、中古車・トラックも35.3%上昇しました。

FRBのパウエル連銀議長は421日のオンライン会合で534日に開くFOMC0.5%の大幅利上げを検討することを明らかにしました。ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油や小麦などの価格高騰や供給制約で、世界的には景気は鈍化すると見られていますが、パウエル議長は米国は欧州と比べて直接の影響をそれほど受けずに済んでいるとの見方から、米経済は非常に強く、若干速やかな利上げが必要であると指摘しました。また、FRBが連続した会合で0.5%利上げに踏み切るとの市場での観測についても、全般的に妥当な反応であるとの見方を示しました。

一方、市場ではFRBの過度な利上げによる景気腰倒れへの懸念も根強く、422日のダウ平均価格は981ドルの大幅下落となりました。

                 202251日: 村方 清)