1.5月の株式市場
5月の株式市場はFRBによる金融引き締めへの警戒感や大手小売業店の業績不振で、5月中旬に株式市場は大きく落ち込んだものの、後半になって割安感や値ごろ感に着目した買いが入り、5月初めのの水準に戻りました。主要な動きは以下の通りでした。
5月2日: FOMC会合の結果発表を4日に控えて、積極的な金融引き締めに対する警戒感は強く、ダウは一時500ドル強下げ、取引終了にかけて下げを縮め上昇に転じて、84ドル高(0.26%増加)。
5月3日:前週末に売られすぎた反応で買いが優勢であったが、4日のFOMC会合を控えて、様子見ムードも強く、67ドル高(0.20%増加)。
5月4日:この日のFOMCで通常の2倍にあたる0.5%の利上げと量的引き締めの6月開始を決定、連銀議長は記者会見で0.75%の利上げには慎重で、過度な金融引き締めと景気後退への懸念が和らぎ、932ドル高(2.81%増加)。
5月5日:米国のインフレ懸念が高まり、FRBが積極的な金融引き締めを続けるとの見方が再燃し、米長期金利も3年振りの高さで、ハイテク株を中心に売りが進み、1,063ドル安(3.12%減少)。
5月6日:6日発表の4月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比428,000人増で市場予想の400,000人を若干上回った。労働市場の需給逼迫と高い賃金上昇が意識され、FRBの積極的な金融
引き締めが続くとの警戒から、99ドル安(0.30%減少)。
5月9日:インフレやFRBの積極的な金融引き締めを警戒した売りが優勢で、米長期金利も早朝に3.2%と2018年11月以来の水準に上昇し、654ドル安(1.99%減少)。主要3株価指数がいずれも年初来安値を更新。
5月10日:11日の4月のCPIの発表を控えて買いに慎重な姿勢が強く、金融引き締めへの警戒感から、85ドル安(0.26%減少)。
5月11日:11日発表の4月の米消費者物価指数の市場予想の6.0%を上回る8.1%であったことから、FRBの金融引き締めを警戒した売りが優勢で、327ドル安(1.02%減少)。
5月12日:今年に入ってから株価の大幅下落で信用取引の買主には追証が発生していると見られ、投資家の損失覚悟の投げ売りが相場下落につながり、104ドル安(0.33%減少)。
5月13日:前日までの6日間で2,330ドルの下げとなり、短期的な自律反発を期待した買いがハイテク株を中心に優勢で、466ドル高(1.47%増加)。
5月16日:原油高を受けて石油株が買われ、ディフェンシブ株の一角も上昇して、27ドル高(0.08%増加)。
5月17日:朝方発表の4月の小売り売上高が前月比0.6%増と市場予想(0.4%増)以上に増えたことで、消費堅調が続いていると受け止められ、消費関連株や景気敏感株の買いが優勢で、431ドル高(1.34%増加)。
5月18日:米小売大手もターゲットの決算が振るわず、インフレが経営を圧迫するとの懸念が強まり、小売業を中心に幅広い銘柄が売られ、1,165ドル安(3.57%b減少)
5月19日:今週は低調な小売り決算が相次ぎ、インフレが企業業績を圧迫するとの懸念が売りを誘って、237ドル安(0.75%下落)。
5月20日:前日までに連日で年初来安値を更新しており、短期的な戻りを見込む買いが入り、取引終了にかけて、9ドル高(0.03%高)。
5月23日:ハイテク株などに割安感や値ごろ感に着目した買いが入り、銀行株も軒並み上昇したことで投資家心理の改善があり、618ドル高(1.98%増加)。
5月24日:前週までハイテク株や景気敏感株と同様に売られてきたディフェンシブ株には下げすぎと見た買いが入り、44ドル高(0.15%増加)。
5月25日:FRBの議事要旨が市場の想定内の内容であったことで、最近の相場下落で生じた割安感と値ごろ感に着目した買いが優勢で、192ドル高(0.60%増加)。
5月26日:小売企業で市場予想を上回る四半期決算の発表が相次ぎ、米経済を支える消費は堅調との見方から消費関連株を中心に買いが優勢で、517ドル高(1.61%増加)。
5月27日:朝方発表の米物価指標の伸び率が縮小し、インフレ加速の過度な警戒感が和らぎ、消費関連やハイテク株を中心に買いが入り、576ドル高(1.76%増加)。
5月31日:米原油先物相場が上昇し、高インフレア長引くとの懸念が高まり、売りが優勢となり、223ドル安(0.67%減少)。
米労働省が5月6日に発表した4月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比428,000人の増加で、市場予想の400,000人の増加を若干上回りました。2月の雇用者数の確定値は714,000人で36,000 人の減少、3月の改定値は428,000人で、3,000人の減少となりました。4月の失業率は3.6%で前月と同じ水準でした。労働参加率は62.2%で前月より0.2%低下しました。4月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が78,000人の増加、製造業が55,000人の増加、輸送・倉庫業が52,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が41,000人の増加、金融業が35,000人の増加、ヘルスケア業が34,000人の増加、小売業が29,000人の増加となりました。
3.0.5%の利上げを決めたFOMC会合
FOMC会合が5月3-4日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。
全般的な経済活動は1-3月にわすかに縮小したが、家計の支出と企業の設備投資は力強さを保っている。雇用増はこの数か月堅調で、失業率は大きく下がっている。物価上昇率はパンデミックに関連した需給の不均衡、エネルギー価格の高騰、広範に及ぶ物価上昇圧力を反映して、高止まりしている。
ロシアによるウクライナ侵攻が、人々と経済に甚大な苦難をもたらしている。米経済への影響は極めて不透明だ。侵攻とそれに関する事象が更なる物価上昇圧力をもたらし、経済活動の重荷となる可能性が高い。加えて、中国の新型コロナウイルス関連の都市封鎖が、供給網の乱れを更に悪化させる可能性もある。FOMCはインフレリスクを強く注視している。
FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。金融政策のスタンスを適切に引き締めることで、労働市場の強さを保ったまま、インフレは目標の2%に戻ると予測する。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0.75-1.0%に引き上げることを決定した。加えて、この声明要旨を共に発表した「バランスシートの規模削減のための計画」に述べられている通り、6月1日から国債、機関債、ローン担保証券の保有を減らし始めることを決定した。
金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。
今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む9人のメンバー全員の賛成による。
FOMCの決定は事前予想通りの内容でしたが、パウエル議長が会合後の記者会見で、0.5%の利上げを今後数回の会合で継続する可能性を示す一方、市場で浮上していた0.75%の利上げについては、「委員会は積極的に検討していない」と指摘しました。また、インフレ抑制に向けて積極的な金融引き締めを進めても、労働市場の強さを勘案すれば、「深刻な景気後退や失業率の上昇なしに物価の安定を回復するチャンスは十分あるにある」と発言、これらで、投資家の不安心理が薄らぎ、ダウ平均は932ドル高(2.81%増加)と
(2022年6月1日: 村方 清)