Tuesday, November 1, 2022

米主要企業の四半期業績の好調さと株式市場の改善







1.10月の株式市場

10月の株式市場は米主要企業の四半期業績が好調であったことやFRBが利上げペースを緩めるとの見方が浮上し、株式市場は4週連続で上昇しました。主要な動きは以下の通りでした。

103:米長期金利が一時3.5%台と前週末の3.83%と大幅に低下し、株式の相対的な割高感が和らぎ、目先の戻り期待の買いが幅広い銘柄に及んで、765ドル高(2.7%増加)。

104日:主要な中央銀行が利上げペースを緩めるとの見方が広がり、株式を買い直す動きが優勢で、825ドル高(2.80%増加)。

105日:朝方発表の9月のADP雇用レポートで非農業部門の雇用者数は前月比208000人と市場予想の20万人を上回り、FRBが利上げペースを緩めるとの観測が後退、米長期金利が上昇し、42ドル安(0.14%減少)

106日:7日に米雇用統計の発表を控え、持ち高調整の売りが優勢で、米長期金利の上昇も株式も株式の割高感に繋がり、347ドル安(1.15%減少)

107日:7日発表の9月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比263,000人増で市場予想の275,000人を下回ったものの、労働需給はなお引き締まっていることから、FRBが金融式締を続けるのと見方から、630ドル安(2.11%減少)。

1010日:FRBによる金融引き締めへの警戒が強く、売りが優勢で、米景気の悪化で企業収益の悪化への懸念も相場の重荷となり、94ドル安(0.32%減少)。

1011日:12日以降に重要な米物価指標の発表を控えて、様子見姿勢が強く、36ドル高(0.12%増加)。

1012日:13日発表の9月の消費者物価指数を控えて様子見姿勢が強い中、インフレ高止まりの警戒感から売りがやや優勢で、28ドル安(0.10%減少)。

1013日:朝方発表の米消費者物価指数が8.2%と市場予想を上回り、売りが先行したが、米長期金利の上昇が一服すると買戻しが優勢になり、828ドル高(2.83%増加)

1014日:FRBが積極的な金融引き締めを続けるとの観測から長期金利が上昇し、株式市場の重荷となり、404ドル安(1.34%減少)。

1017日:米主要企業の決算発表が始まり、業績が警戒するほど悪くないとの見方から金融株を中心に幅広い銘柄に買いが入り、551ドル高(1.86%増加)。

1018日:米主要企業の79月期の決算が相次いで市場予想を上回り、業績懸念が和らぎ、決算を好感した買いが優勢で、338ドル高(112%増加)。

1019日:米長期金利が20087月以来の高水準を付け、株式の割高感が意識され、金融関連株が売られて、100ドル安(0.33%減少)。

1020日:米長期金利が4.2%台と2008年以来の水準となり、株式の割高感が意識され、売りが優勢で、90ドル安(0.30%減少)。

1021日:FRBが年内に利上げペースを緩めるとの見方が浮上し、株式の買い直しが優勢となり、749ドル高(2.47%増加)。

1024日:FRBが利上げペースを緩めるとの見方から引き続き買いが優勢でえ、418ドル高(1.34%増加)。

1025日:長期金利が低下し、相対的な割高感が薄れたと見た買いがハイテク株に入り、337ドル高(1.07%増加)。

1026日:米長期金利低下を好感した買いが優勢であったが、マイクロソフトなど決算内容が市場の期待に届かなかった銘柄への売りが強まり、3ドル安(0.01%減少)

1027日:朝方発表の202279月期のGDP速報値が2.6%で市場予想の2.3%より上回り、景気敏感株の買いを支えた他、キャタピラーなどが市場予想を宇和間売る決算を発表し、194ドル高(0.61%増加)。

1028日:アップルなど決算が市場予想を上回った銘柄が大幅高となり、829ドル高(2.59%増加)。ダウ平均は週間で1,779ドル高となり、4週間連続で上昇。

1031日:112日のFOMCの結果発表を控えて、目先の利益を確定するための売りが優勢で、米長期金利が上昇したこともあって、129ドル安(0.39%減少)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が107日に発表した9月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比263,000人の増加で、市場予想の275,000人を下回りました。7月の雇用者数の確定値は537,000人で11,000人の増加、8月の改定値は315,000人で、同じ水準でした。8月の失業率は3.5%で、前月より0.2%改善しました。労働参加率は62.3%で前月と同じ水準でした。9月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が83,000人の増加、ヘスケア業が60,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が46,000人の増加、製造業が22,000人の増加、建設業が19,000人の増加となりました。

 

3.インフレの持続とFRBの再利上げの見通し

1013日公表の9月消費者物価指数は前年同月比8.2%上昇と前月の8.3%から減速しましたが、市場予想の8.1%を上回りました。夏場にかけて落ち着いたガソリン価格が10月に入って再び値上げに転じており、先行きの不透明感は強くなっています。エネルギーと食品を除くコア指数の上昇率は6.6%と2カ月連続で伸びが拡大しました。これは19828月以来、401か月ぶりの伸び率でした。賃金の上昇と共に家賃などのサービス価格も上昇しており、インフレは一段と根深くなっています。

FRB9月に開いたFOMCでは参加者の多くがインフレ圧力は当面続くとの認識で一致しましたが、引き続き、上昇率がピークをつけたという判断を早期に示さないように注意を払っていくものと見られます。また、1112日に予定されるFOMC会合では、再び075%の利上げをする可能性が高まっています。その結果、株式市場が一層の不安定さを増すことが懸念されます。

 

4.インフレ早期抑制を優先した9月のFOMCの議事要旨

FRB1012日に92021日に開いたFOMCの議事要旨を公表しました。今回の会合では3回連続となる0.75%の利上げを決定しましたが、参加者は金融引き締めが甘すぎるのと厳しすぎるのでは、前者の方がコストが高くなると強調、高インフレの長期化を回避するための追加利上げに強い意志を示しました。

多くの参加者は追加利上げによって金融環境が十分に引き締まった後もインフレ率が2%の目標に戻るという有力な証拠が得られるまではその水準を暫く維持することが適切だと指摘しました。

インフレ抑制への決意は従来から語られてきましたが、9月会合は経済見通しの悪化を踏まえた発言であることが異なります。会合では住宅投資や企業の設備投資の減速を確認しました。数人の参加者は失業率が予想よりかなり高くなる可能性があるとコメントし、その上で多くの参加者は労働市場が減速してもこの引き締め方針を維持することの重要性を強調しました。

             (2022111日: 村方 清)