Friday, December 1, 2023

インフレ鈍化の経済指標による株式市場の改善








1.11月の株式市場

11月の株式市場はインフレ鈍化の経済指標を受けて、FRBの利上げ局面が終了したとの見方が出て、株式市場の改善が続きました。主要な動きは、以下の通りでした。

111111日までのFOMC会合で政策金利を5.255.5%に据え置いたことから金融引き締めの長期化への警戒が一時薄れて、買いが入り、222ドル高(0.67%増加)

112日:112日発表の週間新規失業保険申請件数が217,000人で、市場予想の214,000人を上回り、7月から9月期の米労働生産性指数も単位労働コストは前期比年率で0.8低下するなど賃金インフレの鈍化を示したことから、米長期金利が低下し、株式の買いが強まり、564ドル高(1.69%増加)。

1133日発表の10月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比150,000人増で、市場予想の170,000人を下回り、失業率も3.9%に上昇、賃金上昇も0.2%増で市場予想の0.3%増を下回り、米長期金利の低下が続き、株式市場の相対的割高感が薄れ、222ドル高(0.66%増加)。

116日:FRBの金融引き締めが長期化するとの見方が後退したが、前週に大幅に上昇した反動で主力銘柄の一部に利益確定の売りが出て、35ドル高(0.10%増加)。

117日:前週に米国のインフレ鈍化の兆候を示す経済指標が相次いだことで、FRBによる追加利上げの観測が後退し、57ドル高(0.16%増加)。

118日:前日までの急ピッチの上昇で加熱感が意識され、利益確定や持ち高調整の売りが優勢で、40ドル安(0.11%減少)。

119日:パウエル議長の発言を受けて、米長期金利が4.6%台に上昇、相対的な割高感が強まった株式に売りが出て、220ドル安(0.64%減少)。

1110日:金利上昇を背景に前日に進んだ株売りが落ち着き、買い直す動きが優勢で、週末を控えた持ち高調整の買いも入りやすく、391ドル高(1.15%増加)

1113日:米国のインフレに対する過度な警戒感が和らぎ、株式市場の支えとなったが、14日にCPIの発表を控えて、積極的な買いは広がらず、55ドル高(0.15%増加)

1114日:朝方発表の10月のCPIは前月比で横ばいで、市場予想の0.1%上昇を下回り、米追加利上げ観測が一段と後退したことで買いが広がり、490ドル高(1.42%増加)

1115日:15日発表の10月の米卸売物価指数が市場予想に反して低下し、インフレの鈍化から、FRBの利上げ局面が終わったとの見方から、164ドル高(’0.46%増加)

1116日:決算発表で市場予想を下回る見通しを発表したシスコシステムズやウォルマートなどの銘柄を中心に売られ、ダウ平均の重荷となり、46ドル安(0.13%減少)。

1117日:FRBの利上げ局面が終了したとの見方が相場を支え、一方で前日の反動で利益確定売りも出て、2ドル高(’0.01%増加)。

1120日:マイクロソフトなどの個別銘柄の材料を手掛かりに買われた銘柄が相場を支えて、204ドル高(0.58%増加)。

1121日:前日に8月中旬以来の高値を付けていたため、ハイテク株などに利益確定売りが出て、63ドル安(0.17%減少)。

1122日:FRBの追加利上げ観測の後退が株式市場を支え、米長期金利も水準を切り下げ、株式の相対的な割高感が薄れて、185ドル高(0.52%増加)。

1124日:FRBによる利上げ局面が終了したとの見方が引き続き相場を支えて、117ドル高(0.33%増加)。

1127日:前週末にかけて大きく上昇し、8月に付けた年初来高値に近づいたことから、主力株に利益確定売りが出て、57ドル安(0.16%減少)。

1128日:FRB高官の金融政策に関する発言を受け、米国の利上げ局面が終了するとの観測が一段と強まり、米長期金利も低下、株買いが優勢で、84ドル高(0.23%増加)

1129日:FRBによる利上げ局面が終了したとの観測が一段と強まり、米長期金利が低下し、株式の相対的な割高感が和らぎ、13ドル高(0.03%増加)。

1130日:FRBの利上げ局面が終了したとの見方が相場の支えとなり、29日夕に決算を発表したセールスフォースが大幅高で、ダウ平均を押し上げ、520ドル高(’1.46%増加)。11月の上げ幅は2898ドル(上昇率は8.77%)で、昨年10月以来の大きさとなった。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が113日に発表した10月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比150,000人の増加で、市場予想の170,000人を下回りました。8月の雇用者数の確定値は165,000人で62,000人の減少、9月の改定値は297,000人で39,000人の減少でした。10月の失業率は3.9%で、前月より0.1%増加しました。労働参加率は62.7%で前月より0.1%下がりました。9月の時間当たり賃金上昇率は前月比で7セント増加しました。部門別ではヘルスケア業が58,000人の増加、政府部門が51,000人、ソーシアル・アシスタンス業が19,000人の増加となりましたが、製造業は35,000人の減少となりました。

 

3.金利据え置きを決めたFOMC会合

FOMC会合が1031日-111日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。最近の指標は第3四半期の経済活動が力強いペースで拡大していることを示している。ここ数か月、雇用の増加は年初から緩やかになっているが、依然として力強い状態だ。失業率は低水準にとどまっている。インフレ率は依然として高い水準にある。

米国の銀行システムは健全で回復力がある。家計や企業の信用環境の引き締まりは、経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼすとみられる。これらの影響の度合いは依然として不透明だ。FOMCはインフレリスクを引き続き最新の注意を払っている。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.255.5%で据え置くことを決めた。今後入ってくる情報と金融政策の影響を注視する。

インフレ率を長期的に2%に戻すのにどの程度追加の政策が適切であるかを決める際、FOMCは金融政策の累積的な引き締めや、経済活動がインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。さらに、以前は発表された計画に示されているように、国債、機関債、住宅ローン担保証券の保有を削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適切調整する用意がある。労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融や国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。

FRBは政策金利を5.255.50%に据え置きました。市場の想定通りの結果で、株式市場では発表後に買い安心感が広がりました。パウエル議長はFOMC後の記者会見で、今後の金融政策方針について,「今後の経済データに基づいて注意深く進める」などと従来の見解を繰り返しました。物価上昇率を目標の2%に戻すには経済と労働市場がある程度鈍化する必要があるとの見方を示したもので、一段の利上げに対する警戒は薄れて、222ドル高(0.67%増加)となりました。       

 

4.  米政府のつなぎ予算成立で閉鎖は回避

米国のホワイトハウスは1117日に一部が来年119日までのつなぎ予算案にバイデン大統領が署名したと発表しました。新たなつなぎ予算は農業や退役軍人関連などが119日まで、その他が22日までで、2024年会計年度の本予算の審議時間を確保すのが目的になります。今回のつなぎ予算ではウクライナやイスラエルへの支援は含まれていません。

政府閉鎖は回避されましたが、下院で過半数を占める野党共和党は歳出削減を主張し、与党民主党は大企業や富裕層への課税強化を進める意向で、与野党の隔たりは大きいままです。また、補正予算で対応するウクライナ支援に関しては、共和党の保守強硬派が反対しており、審議の難航は続く見込みとなっています。

      2023121日: 村方 清

Wednesday, November 1, 2023

根強いインフレ懸念と中東情勢の悪化による市場の不安定化









1.10月の株式市場

10月の株式市場は後半になり、根強いインフレ懸念による長期金利の上昇と中東情勢の悪化で、株式市場は不安定な動きとなりました。主要な動きは、以下の通りでした。

102日:9月のISM製造業景況感指数が49.0と市場予想を上回り、FRBの金融引き締めが長期化するとの見方から、74ドル安(0.22%減少)。

103日:3日発表の米刑事指標が労働市場の需給引き締まりを示したことで、FRBの金融引き締めが長引くとの観測が強まり、431ドル安(1.29%の減少)。

104日:4日朝発表の9月のADP全米雇用レポートで非農業部門の雇用者数が前月比89,000人増で市場予想の16万人増を大きく下回り、労働市場の緩和を示したものと受け止められ、127ドル高(0.39%増加)。

105日:9月の米雇用統計の発表を6日に控え、様子見姿勢が強く、内容次第では米金利上昇につながるとの警戒感から、10ドル安(0.03%減少)。

106日:6日発表の9月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比336,000人増で、市場予想の170,000人を大きく上回ったものの、失業率は8月と同じの3.8%で、市場予想の3.7%を上回ったことや平均時給も前月比で0.2%に留まり、賃金インフレへの過度な警戒が和らぎ、288ドル高(0.86%増加)。

109日:FRBの金融引き締めが長期化することへの過度な警戒感が後退し、投資家の買いを誘い、197ドル高(0.58%増加)。

1010日:FRBの追加利上げ観測が後退したとの受け止めから、米長期金利が大幅に低下、株式の相対的な割高感が和らぎ、株式の買いが進み、135ドル高(0.40%増加)

1011日:朝発表の9月の米卸売物価指数は0.5%で、市場予想を上回ったものの、前月の0.7%から減少、米長期金利が低下し、66ドル高(0.19%増加)。

1012日:朝方発表の米消費者物価指数は同月比で8月と同じく3.7%で、市場予想の3.6%を上回り、長期金利が上昇、株式の相対的割高感を意識した売りが出て、174ドル安(0.51%減少)。

1013日:朝方発表の四半期決算が好調な金融株などを中心に買いが入ったが、中東情勢を巡る緊張が一段と高まり、39ドル高(0.11%増加)。

1016日:米主要企業の決算発表が本格化するなか、内容が市場の想定より上振れすることを見込んだ買いが入り、314ドル高(0.93%増加)。

1017日:9月の小売売上高が前月比0.7%増と市場予想の0.3%以上となり消費関連株や景気敏感株を中心に買いが入ったが、米長期金利も上昇し、株式の相対的な割高感が意識され、13ドル高(0.03%増加)

1018日:18日発表の9月の住宅着工件数は前月比で7.0%増と市場予想の6.8%増を上回り、米長期金利が上昇し、ハイテク株や景気敏感株に売りが出て、333ドル安(0.98%減少)。

1019日:朝方発表の週間の米新規失業保険申請件数が市場予想を下回り、今週発表の9月の米小売売上高や米住宅着工件数が市場予想以上の伸びとなり、FRBの金融引き締めが長期化するとの観測から251ドル安(0.75%減少)。

1020日:米長期金利の上昇は一服したものの、中東の地政学リスクの高まりが相場の重荷となり、287ドル安(0.86%減少)。

1023日:米長期金利が朝方に5%を超えた後、低下に転じ、ハイテク株が買い直される反面、ディフェンシブ株の一部に売りが出て指数を押し下げ、191ドル安(0.58%減少)。

1024日:通信のベライゾンや事務用品のスリーエムなど市場予想を上回る四半期決算を発表した銘柄を中心に買いが入り、205ドル高(0.62%増加)。

1025日:前日夕に決算を発表したネット検索のアルファベットを中心にハイテク株に売りが広がり。米長期金利も上昇して、105ドル安(0.32%減少)。

1026日:朝方発表の79月期の米国GDPが前年比4.9%増と市場予想を上回ったもの、金融引き締めが続く中で、高成長が続くと見る向きは少なく、一方でメタやアルファベットなどの大型ハイテク株の割高感が意識され、251ドル安(0.76%減少)。

1027日:中東情勢が一段と悪化するとの警戒感から、投資家のリスク回避の目的の売りが優勢で、367ドル安(1.11%減少)。

1030日:ダウは直近2週間の下げ幅が1200ドルを超えており、ナイキやゴールドマン・サックスなどを中心に自律反発狙いの買いが入り、511ドル高(1.58%増加)

1031日:11日にFOMCの結果公表を控え、景気敏感株を中心に持ち高調整の買いが続き、124ドル高(0.38%増加)。10月平均では454ドル下落(1.35%減少)、下落は3か月間連続で、20201月から3月まで以来となる。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が106日に発表した9月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比336,000人の増加で、市場予想の170,000人を大きく上回りました。7月の雇用者数の確定値は236,000人で79,000人の増加、8月の改定値は227,000人で40,000人の増加でした。9月の失業率は3.8%で、前月と同じ水準でした。労働参加率は62.8%で前月と同じ水準でした。8月の時間当たり賃金上昇率は前月比で7セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が96,000人の増加、政府部門が47,000人、ヘルスケア業が41,000人、専門・科学・技術職業が29,000人、ソーシアル・アシスタンス業が25,000人の増加となりました。

 

3.米長期金利、16年振りに5%を突破

1019日夕の債券市場で長期金利の指標になる10年物国債利回りが一段と上昇、16年振りに5%を突破しました。5%の大台に乗せたのは20077月以来で、直近3カ月間の上昇幅は1.3%程度に達し、急ピッチの上昇を見せています。

19日にニューヨーク市内で講演したパウエル議長は底堅い経済成長や労働市場の強さが続けば、「インフレの進展がリスクにさらされ、更なる金融引き締めが正当化されうる」と語りました。1031日―111日の次回のFOMC会合では利上げ見送りの可能性が高まっていますが、その後の追加利上げの選択肢は残す意向をにじませました。

今夏以降の長期金利の上昇は米国債の格下げや政府閉鎖を巡る米議会の混乱など、財政運営の信認低下に根差している部分もあります。パウエル議長は財政不安が金利上昇の要因になりうると指摘しており、長期金利の動向を注意深く見守っていくと述べています。

            2023111日:村方 清)

  

Sunday, October 1, 2023

原油先物相場の上昇等によるインフレ懸念が招く不安定な市場









1.9月の株式市場

9月の株式市場は原油先物相場の上昇から、インフレ圧力が高まるとの観測が広がり、連銀の金融引き締めが長期化することへの懸念と月末は連邦議会の混乱から政府機関の一部閉鎖も意識され、不安定な展開となりました。主要な動きは、以下の通りでした。

91日:1日発表の8月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比187,000人増で、市場予想の170,000人を上回ったものの、失業率が3.8%と0.3%上昇し、米金融引き締め長期化への警戒が和らぎ、116ドル高(0.33%増加)。

95日:主要産油国の減産継続方針を受けて原油相場が上昇し、米国の物価上昇率が再び高まるとの警戒が広がり、196ドル安(0.56%減少)。

96日:ISMのサービス景況感指数は前月比1.8%高い54.5で、景気の底堅さを示す内容で、米長期金利が上昇、ハイテク株を中心に売られ、198ドル安(0.57%減少)

97日:前日までの2日間で400ドル近く下げた反動で、ディフェンシブ株を中心に買いが入り、58ドル高(0.17%増加)。

98日:足元で下げが目立ったハイテク株の一角が買い直され、76ドル高(0.22%増加)。

911日:FRBの追加利上げへの警戒感が和らぎ、大手ハイテク銘柄の一部が大幅に上昇、87ドル高(0.25%増加)。

912日:米原油先物相場は12日に1バレル89ドル台前半と約10カ月ぶりの高値を付け、インフレ懸念による金利上昇の警戒からハイテク株を中心に売りが広がり、18ドル安(0.05%減少)。

913日:朝方発表の8月のCPIは前月比3.7%上昇で、市場予想の3.6%を上回り、インフレの沈静化には時間がかかると受け止められ、70ドル安(0.20%減少)。

914日:英半導体設計のアームホールディングスの上場が好調な滑り出しとなり、投資家心理が改善し、景気敏感株を中心に買いが広がり、332ドル高(0.96%増加)

915日:米長期金利が4.33%に上昇する場面があり、株式の相対的な割高感が意識され、半導体需要も措定以上に落ち込むとの懸念も浮上、289ドル安(0.81%減少)

918日:原油高を背景とするインフレ懸念とFRBの金融引き締め長期化への警戒感から一時下げが先行したが、ディフェンシブ株への買いによって、6ドル高(0.02%増加)

919日:原油相場の上昇が続き、インフレ圧力が高まるとの観測が広がり、FRBの金融引き締めが長期化するとの懸念から、107ドル安(0.31%減少)。

920日:FOMCの結果が発表され、FRBの金融引き締めが長期化するとの見方が広がり、77ドル安(0.22%減少)。

921日:前日発表のFOMCの結果を受けて、米金融引き締めが長期化するとの見方が広がった他、米長期金利もほぼ16年振りの高水準を付け、370ドル安(1.06%減少)

922日:金融引き締めの長期化が米景気を冷やすとの懸念や自動車大手に対するストライキが長引きとの見方から、107ドル安(0.32%減少)。

925日:FRBの金融引き締めが長期化することへの警戒は強いが、一部の銘柄に値ごろ感からの買いが入り、43ドル高(0.13%増加)。

926日:米長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が意識されたことが重荷になり、388ドル安(1.14%減少)。

927日:原油高や米金融引き締めの長期化観測を受けて、米長期金利が上昇し、株式の売りが続き、68ドル安(0.20%減少)。

928日:米長期金利が朝方にほぼ16年振りの高水準を付けた後、午後にかけて低下、米原油先物相場も下落し、ハイテク株や景気敏感株などに買いが入り、116ドル高(0.35%増加)

929日:朝方に発表された物価指標が前月比で0.4%上昇、コア指数は0.1%上昇で市場予想の0.2qを下回り、買いが先行したが、米国政府機関の一部閉鎖のリスクが意識され、米金融引き締めが長期化するとの観測も根強く、159ドル安(’0.47%減少)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が91日に発表した8月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比187,000人の増加で、市場予想の170,000人を上回りました。6月の雇用者数の確定値は105,000人で80,000人の減少、7月の改定値は157,000人で30,000人の減少でした。8月の失業率は3.8%で、前月から0.3%増加しました。労働参加率は62.8%で前月から0.2%増加しました。8月の時間当たり賃金上昇率は前月比で8セント増加しました。部門別ではヘルスケア業が71,000人、レジャー・観光業が40,000人、ソーシアル・アシスタンス業が26,000人、建設業が22,000人が増加したものの、運輸・倉庫業が34,000人の減少となりました。

  

3.金利据え置きを決めたFOMC会合

FOMC会合が91920日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。最近の指標は経済活動が堅調なペースで拡大していることを示している。ここ数か月、雇用の増加は鈍かったが、依然として力強い状態だ。失業率は低水準にとどまっている。インフレ率は依然として高い水準にある。

米国の銀行システムは健全で回復力がある。家計や企業の信用状況の悪化は、経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼすとみられる。これらの影響の度合いは依然として不透明だ。FOMCはインフレリスクを引き続き注視している。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.255.5%で据え置くことを引き上げることを決めた。今後入ってくる情報と金融政策の影響を注視する。

インフレ率を長期的に2%に戻すのにどの程度追加の政策が適切であるかを決める際、FOMCは金融政策の累積した引き締めや、経済活動がインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。さらに、以前は発表された計画に示されているように、国債、機関債、ローン担保証券の保有を削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが現れた場合、金融政策のスタンスを適切調整する用意がある。労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮する。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。

FOMCの決定は0.25%の利上げで事前予想通りの内容でした。同時に公表した参加者による経済見通しでは19人中12人が年内の追加利上げを予想して、高インフレの沈静化について楽観視しない姿勢を明確にしました。これにより政策金利は22年振りの高さになりました。パウエル議長の記者会見で追加利上げは今後のデータ次第との姿勢を強調、過度な引き締めへの不安が後退しました。これにより、買いが先行していたダウは下げに転じて、77ドル安(0.22%減少)となりました。       

               (2023101日: 村方 清)