Sunday, January 1, 2023

利上げ幅縮小も景気後退の懸念から不安定な株式市場








1.12月の株式市場

12月の株式市場は1214日のFOMCで利上げ幅を0.5%に縮小したものの、金融引き締めによる景気後退の懸念から、不安定な展開になりました。主要な動きは以下の通りでした。

121: 前日に737ドル高と大幅に上昇した反動と2日に発表される11月の米雇用統計を控えて、利益確定や持ち高調整の売りが優勢で、195ドル安(0.76%減少)。

122日:2日発表の11月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比263,000人増で市場予想の200,000人を上回り、一時的に金利引き締め継続との懸念が出たが、利上げペースの減速は変わらないとの見方から、35ドル高(0.10%増加)。

125日:ISMの非製造業景況感指数が56.5と市場予想の53.7を上回り、FRBの金融引き締めが長期化するとの懸念が広がり、483ドル安(1.40%減少)。

126日:FRBの利上げが長期化し、米景気を冷やすとの懸念からハイテク株や景気敏感株を中心に売りが優勢となり、351ドル安(1.03%減少)。

127日:前日までの2日間で830ドルあまり下落したことから値ごろ感の買いが支えた反面、FRBの利上げが米景気を冷やすとの見方から上値は重く、2ドル高(0,00%増加)。

128日:景気懸念から相場が下げていた反動で押し目買いが優勢であったが、一巡後は9日に発表される11月米卸売物価指数を見極めたいと投資家が多く。買い一巡後は上値は重く、184ドル高(0.55%増)。

129日:11月のPPIは前月比0.3%上昇と市場予想の0.2%を上回り、インフレがFRB米長期金利利上げの継続を促すとの見方から、305ドル安(0.90%減少)。

1212日:13日のCPI14日のFOMCの結果発表を控えて、景気敏感株などに持ち高調整目的の買いが入り、529ドル高(1.58%増加)。

1213日:朝方発表の11月の米CPT7.1%と市場予想の7.3%を下回り、FRBの警戒感が和らぎ、104ドル高(0.30%増加)。

1214日:14日に開いたFOMCで利上げ幅を0.5%に縮小したが、来年の政策金利見通しを9月時点の4.6%から5.1%に切り上がり、利上げを警戒した売りが出て、142ドル安(0.42%減少)

1215日:FRBによる金融引き締めが景気後退を招くと警戒され、景気敏感株やハイテク株など幅広い銘柄に売りが強まり、764ドル安(2.25%減少)。

1216日:FREBの利上げ継続が一段の景気悪化を招くとの懸念が強く、消費財関連を中心に幅広い銘柄が売られて、282ドル安(0.85%減少)。

1219日:米長期金利の上昇を受け、相対的な割高感が意識されやすい高株価収益率のハイテク株が売られ、163ドル安(0.49%減少)。

1220日:前日までの4営業日で約1,350ドル下げており、主力銘柄の一部に短期的な戻りを期待する買いが入り、92ドル高(0.28%増加)。

1221日:前日夕に四半期決算を発表したナイキが急伸したことで、投資家心理が改善し、幅広い銘柄に買いが広がり、527ドル高(1.60%増加)。

1222日:半導体株を中心としてハイテク株全般で業績下振れの懸念が強まり、349ドル安(1.05%減少)。

1223日:朝方発表の11月の個人消費支出は前月比4.7%と市場予想の4.6%より大きかったが、その後に発表された12月の米消費者態度指数で消費者が予想する1年先のインフレ率が低水準となったため、株式の買戻しを促し、176ドル高(0.53%増加)。

1227日:中国政府が新型コロナウイルスの防疫措置を緩和する方針を示し、同国経済への不安が和らいだことから、38ドル高(0.11%増加)。

1228日:米長期金利の上昇で高株価収益率のハイテク株を中心に割高感から売りが出て、加えて中国でのコロナウイルスの感染拡大を受けて投資家心理が悪化、366ドル安(1.10%減少)。

1229日:米長期金利がの上昇が一服し、このところ売られていたハイ的株や消費関連株の買い直しが優勢で、345ドル高(1.05%増加)。

1230日:米長期金利が上昇し、前日に上昇が目立った消費関連や景気敏感株への売りが強く、74ドル安(0.22%減少)。ダウ平均は年間で3,191ドル下落(8.8%減少)し、リーマンショックのあった2008年(33.1%下落)以来の大きさとなった。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が122日に発表した11月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比263,000人の増加で、市場予想の200,000人を上回りました。9月の雇用者数の確定値は269,000人で46,000人の減少、10月の改定値は284,000人で23,000人の増加でした。11月の失業率は3.7%で、前月と同じ水準でした。労働参加率は62.1%で前月より0.1%減少しました。11月の時間当たり賃金上昇率は前月比で18セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が88,000人の増加、ヘルスケア業が45,000人の増加、政府関係が42,000人の増加、他のサービス業が24,000人の増加、ソーシアルサービス業が23,000人の増加、建設業が20,000人の増加となりました。

 

3.利上げ幅を0.5%に縮小したFOMC会合

FOMC会合が121314日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。

雇用の増加は堅調で、失業率は低水準に留まっている。インフレ率ははパンデミックに関連した需給の不均衡、食品・エネルギー価格の高騰、広範におよぶ物価上昇圧力を反映して、高止まりしている。

ロシアによるウクライナ侵攻は甚大な人的・経済的苦境を引き起こしている。この戦争や関連する出来事はインフレ上昇圧力に寄与し、世界的な経済勝不動の重荷になっている。

FOMCインフレリ率に強く注意を払っている。最大限の雇用とインフレ率を2%に長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.254.5%に引き上げることを決定した。

FOMCは長期的に2%に戻すのに十分な金融政策スタンスを達成するために、目標レンジの継続的な引き上げが適切であると予想している。将来の利上げペースを決めるにあたり、FOMCは金融政策の累積的な引き締め、金融政策や経済活動がインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。5月に発表した「バランスシートの規模削減のための計画」に述べた通り、国債、機関債、ローン担保証券の保有を削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標の持つ意味を引き続き注視する。目標達成を妨げるリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する用意がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた広範な情報を考慮する。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバー全員の賛成による。

FOMCの決定は0.5%の利上げで事前予想通りの内容でした。しかし、パウエル議長がFOMC会合後の記者会見で、インフレ率を目標の2%に戻すためには継続的に利上げすることが適切であると引き続き考えているとの慎重姿勢を崩しませんでした。このため、金融引き締めが長引くとの警戒感が広がり、143ドル安(0.42%減少)となりました。

            (20221231日:  村方 清)