1.6月の株式市場
6月の株式市場は6月初めに連邦政府の債務上限を停止する法案が上下院で可決されたことや後半になってインフレ率低下のニュースもあり、ダウは月間で4.6%の上昇で昨年11月以来の大きさとなりました。 主要な動きは以下の通りでした。
6月1日:米下院は5月31日に連邦政府の債務上限を停止する法案を可決し、今後の上院でも過半数を占める民主党が採決を急ぐ姿勢を見せており、警戒感が和らぎ、買いが優勢で153ドル高(0.47%増加)。
6月2日:米連邦政府の債務上限を停止する法案が1日までに上下両院で可決さtれ、景気敏感株などに買いが広がり、701ドル高(2.12%増加)。
6月5日:前週末に急騰した反動で、主力株の一部に利益確定売りが広がり、景況感指標の悪化も景気懸念につながり、200ドル安(0.59%減少)。
6月6日:これまで出遅れ感があったハイテク株の一角に物色が入り、相場を支えたが、利上げへの警戒感が相場の重荷で、上げ幅は限られ、10ドル高(0.03%増加)。
6月7日:出遅れ感があった景気敏感株を中心に資金が流入し、ダウ平均を支えて、92ドル高(0.27%増加)。
6月8日:8日発表の経済指標が労働市場の軟化を示したことで、FRBの金融引き締めの長期化の懸念が和らぎ、金利が低下して、株式の買いが進み、169ドル高(0.50%増加)。
6月9日:来週に米経済指標やFRBの政策金利の発表を控え、様子見の雰囲気があり、ハイテク株への買いが引き続きあり、43ドル高(0.13%増加)。
6月12日:FRBが13-14日に開くFOMCで利上げを見送るとの見方が強く、米経済の下振れ懸念が後退し、景気敏感株などに買いが入り、190ドル高(0.56%増加)。
6月13日:CPIの上昇率が前年同月比4.0%と4月の4.9%から鈍化し、物価上昇圧力は和らぎつつあるとの見方が広がり、146ドル高(0.43%増加)。
6月14日:FRBはFOMC会合で11会合振りに政策金利の据え置きを決めたが、参加者の23年のせ策金利の見通しは年内に0.25%の利上げを2回織り込む水準で、米利上げ長期化が意識されて、233ドル安(0.68%減少)。
6月15日:5月の小売り売上高は前月比0.3%増と市場予想の0.2%減に反して増加、個人消費の底堅さを示し、米長期金利も低下したことで、高株価収益率のハイテク株の買いを誘い、428ドル高(1.26%増加)。
6月16日:FRB理事の発言で、FRBの金融引き締めを長期化するとの懸念が広がり、109ドル安(0.32%減少)。
6月20日:パウエル連銀議長の議会証言を控え、金融引き締めの警戒感が意識され、かつ中国景気の先行き不安を背景に関連銘柄の売りが目立ち、245ドル安(0.72%減少)
6月21日:パウエルの連銀議長の下院金融サービス委員会の証言で、年内に2回の追加利上げを示唆したことで、102ドル安(0.30%減少)。
6月22日:パウエル連銀議長が上院銀行委員会の証言で、年内に2回の利上げを示したことで金融引き締めの警戒感が引き続き強まり、5ドル安(0.01%減少)。
6月23日:6月の米国製造業購買担当者指数が46.3と市場予想の49を下回り、米景気の悪化が懸念されて、219ドル安(0.65%減少)。
6月26日:米国の利上げ継続観測の見通しが強まる中で、ハイテク株の一部が売られて、13ドル安(0.04%減少))。
6月27日:朝方発表の5月の米耐久受注額は前月比1.7%増と増加、6月の消費者信頼感指数も109.7と市場予想を上回り、米景気悪化への懸念が和らぎ、212ドル高(0.63%増加)。
6月28日:欧州中央銀行の主催のECBフォーラムでパウエル連銀議長が引き続くインフレ懸念を述べたことで、消費関連株やディフェンシブ株が重荷となり、74ドル安(0.22%減少)。
6月29日:28日公表のストレステストの結果を受け、銀行株が買われ、米商務省が発表した1-3月期のGDP確定値も前期比で2.0%増で改定値から大幅に上方修正され、主力株の支えとなり、270ドル高(0.80%増
6月30日:米個人消費支出は前年同月比3.8%上昇と4月の4.3%から伸びが縮小、米国のインフレに対する懸念が和らぎ、285ドル高(0.84%増加)。6月の上昇率は1,499ドル(4.6%)で、昨年11月以来の大きさ。
2.米国の雇用状況
米労働省が6月2日に発表した5月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比339,000人の増加で、市場予想の191,000人を大きく上回りました。3月の雇用者数の確定値は217,000人で52,000人の増加、4月の改定値は294,000人で41,000人の増加でした。5月の失業率は3.7%で、前月から0.3%増加しました。労働参加率は62.6%で前月と同水準でした。5月の時間当たり賃金上昇率は前月比で11セント増加しました。部門別では専門・ビジネス業が64,000人、政府部門が56,000人の増加、ヘルスケア業が52,000人の増加、レジャー・観光業が48,000人の増加、建設業が25,000人の増加となりました。
FOMC会合が6月13日と14日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。最近の経済活動は緩やかなペースで拡大し続けている。ここ数か月、雇用の増加は堅調で、失業率は低水準にとどまっている。インフレ率は依然として高い水準にある。
米国の銀行システムは健全で回復力がある。家計や企業の信用状況の悪化は、経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼすとみられる。これらの影響の度合いは依然として不透明だ。FOMCはインフレリスクを引き続き注視している。
FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5-5.25%で維持することを決定した。金利据え置きによって、FOMCは今後入ってくる情報を注視し、金融政策を評価する。
インフレ率を長期的に2%に戻すのにどの程度追加の政策が適切であるかを決める際、FOMCは金融政策の累積的な引き締めや、経済活動がインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。さらに、以前計画に示されているように、国債、機関債、ローン担保証券の保有を削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。
金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが現れた場合、金融政策のスタンスを適切なものに調整する用意がある。労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮する。
今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバー全員の賛成による。
FOMCは11会合振りに政策金利の据え置きを決定しました。一方、参加者の23年の政策金利見通しは年内に0.25%の利上げ2回を織り込む水準に切り上がりました。市場では0.255の利上げ1回を織り込むとの予想が多かっただけに、FOMC後にダウ平均は400ドル余り下げる場面がありました。しかし、パウエル議長がFOMC後の記者会見でインフレ低下のために必要な経済の条件がそろいつつあると米景気と労働市場の過熱が解消しつつあるとの見解を示したことで、233ドル安となりました(0.68%減少)。
(2023年7月1日: 村方 清)