1.7月の株式市場
7月の株式市場は6月の米消費者物価指数が鈍化するなどでFRBによる利上げ観測が和らいできたことや4半期業績の好調な企業決算が多く、株式市場の改善傾向が見られました。主要な動きは、以下の通りでした。
7月3日:増配を発表した金融のゴールドマン・サックスやJP モルガンなどが上昇、ダウ平均を支えたものの、独立記念日の前の短縮取引で、11ドル高(0.03%増加))
7月5日:5日発表の中国と欧州の経済指標の悪化を受け、世界景気の先行き不透明感が強まり、FRBによる利上げ継続観測もあり、130ドル安(0.38%減少)。
7月6日:6月のADP全米雇用レポートで非農業部門の雇用者数は前月比49万7千人増と市場予想の22万人増を大きく上回り、FRBの金融引き締めが長期化するとの観測から、売りが大きくなり、366ドル安(1.07%減少)。
7月7日:6日発表の6月の雇用統計で非農業部門の雇用者数が前月比209,000人増で、市場予想の240,000人に届かなった他、4月と5月の増加幅も下方修正された。しかし、平均受給は前月比0.36%と市場予想の3%を上回り、FRBによる金融引き締めへの過度な警戒が解けず、株売りが一段と広がり、187ドル安(0.55%減少)。
7月10日:前週末までの3営業日で683ドル下げた後で、主力株の一部に自律反発狙いの買いが入り、210ドル高(0.62%増加)。
7月11日:6月の米消費者物価指数の発表を12日に控え、内容を見極めたい雰囲気が強かったが、セールスフオースやスリーエムなどの銘柄に買いが出て、317ドル高(0.93%増加)。
7月12日:12日発表の6月の米消費者物価指数は前年同月比の上昇率が3.0%と5月から鈍化し、2021年3月以来の水準となったことで、FRBの利上げが長期化するとの警戒が和らぎ、景気敏感株や消費関連株が買われ、86ドル高(0.25%増加)。
7月13日:13日発表のPPIの上昇率が0.1%と市場予想の0.2%より下回り、FRBの利上げが長引くとの観測が一段と後退し、買いが入り、48ドル高(0.14%増加)。
7月14日:朝方に発表した2023年4-6月期決算が市場予想を上回った銘柄を中心に買いが広がり、ダウ平均を押し上げ、114ドル高(0.33%増加)。
7月17日:6月の米CPIは前年同月比3.0%と12カ月連続で鈍化し、市場予想の3.1%を下回り、FRBの金融引き締めが想定より弱くなるとの見方が出て、76ドル安(0.22%減少)。
7月18日:これまでに発表された4-6月期の決算で市場予想を上回る内容が相次いでおり、金融株を中心に幅広い銘柄に買いが広がり、367ドル高(1.06%増加)
7月19日:今後発表を控える主要企業の四半期決算が想定を上回るケットとなることへの期待から相場を支えて、109ドル高(0.31%増加)。
7月20日:ジョンソン・エンド・ジョンソンなど好調な決算内容を発表した銘柄が買われて、ダウ平均を押し上げ、164ドル高(0.47%増加)。
7月21日:米経済の先行きへの楽観論が相場を支えて、2ドル高(0.01%増加)。
7月24日:4-6月期決算を控えた企業の好決算を期待した買いで、184ドル高(0.52%増加)。
7月25日:朝方に四半期決算を発表したスリーエムなどが上昇し、ダウ平均を支え、27ドル高(0.08%増加)。
7月26日:FRBは26日のFOMCで市場の想定通りに0.25%の利上げを決めたが、パウエル議長が記者会見で次回会合で政策金利を据え置く可能性に言及したことで、買いが優勢で、82ドル高(0.23%増加)。
7月27日:27日発表の4-6月期のGDPは前期比年率2.4%増で市場予想を上回り、6月の耐久財受注も前月比4.7%増で市場予想以上で、米長期金利が大幅に上昇し、237ドル安(0.67%減少)。
7月28日:28日発表の6月の米個人消費支出はエネルギー・食品を除くコア指数が前年同月比4.1%と先月の4.6%から減速し、市場予想の4.2%も下回り、FRBの利上げ継続観測が和らぎ、177ドル高(0.50%増加)。
7月31日:先週末発表の6月の米個人消費物価指数がインフレ圧力を示さなかったことで、FRBによる利上げ継続観測の後退が引き続き相場を支えて、100ドル高(0.28%増加)。
米労働省が7月7日に発表した6月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比209,000人の増加で、市場予想の241,000人を下回りました。4月の雇用者数の確定値は217,000人で77,000人の減少、5月の改定値は306,000人で33,000人の減少でした。5月の失業率は3.6%で、前月から0.1%減少しました。労働参加率は62.6%で前月と同水準でした。5月の時間当たり賃金上昇率は前月比で12セント増加しました。部門別では政府部門が60,000人、ヘルスケア業が41,000人、ソーシアル・アシスタンス業が24,000人、建設業が23,000人の増加、専門・ビジネス🅂-ビス業が21,000人の増加、レジャー・観光業が21,000人の増加となりました。
3. 米国の6月インフレ率は3.0%上昇で、12カ月連続で伸び鈍化
米労働省が7月12日に発表した6月のCPIは前年同月比の上昇率が3.0%で市場予想の3.1%を下回りました。これは12カ月連続の鈍化で、2021年3月以来2年振3カ月ぶりに4%を割り込みました。エネルギーと食品を除くコア指数の前年同月比の上昇率は4.8%で、市場予想の5.0%をわずかに下回りました。
サービス価格の中でもっとも重要な賃金の上昇率は21年2月の1.5%から拡大してきましたが、8.3%を付けた23年3月から伸びが頭打ちになりました。また、先行する米不動産情報会社のデータでも鈍化傾向が顕著になっています。
こうした状況の中で、FRBは25-26日にFOMCを開催します。6月会合では利上げを停止しつつ、経済見通しであと2回程の利上げを示唆しており、最近の高官発言でも追加の利上げを支持するものが多く、利上げの確率が高い予想となっています。
4.0.25%の利上げを決めたFOMC会合
FOMC会合が7月25-26日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。最近の指標は経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示している。ここ数か月、雇用の増加は堅調で、失業率は低水準にとどまっている。インフレ率は依然として高い水準にある。
米国の銀行システムは健全で回復力がある。家計や企業の信用状況の悪化は、経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼすとみられる。これらの影響の度合いは依然として不透明だ。FOMCはインフレリスクを引き続き注視している。
FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.25-5.5%に引き上げることを決定した。今後入ってくる情報と金融政策の影響を注視する。
インフレ率を長期的に2%に戻すのにどの程度追加の政策が適切であるかを決める際、FOMCは金融政策の累積した引き締めや、経済活動がインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。さらに、以前は発表された計画に示されているように、国債、機関債、ローン担保証券の保有を削減を継続する予定だ。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。
金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが現れた場合、金融政策のスタンスを適切なものに調整する用意がある。労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮する。
今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバー全員の賛成による。
FOMCの決定は0.25%の利上げで事前予想通りの内容でした。これにより政策金利は22年振りの高さになりました。パウエル議長の記者会見で追加利上げは今後のデータ次第との姿勢を強調、過度な引き締めへの不安が後退しました。これにより、ダウは13連騰の82ドル高で、2022年2月以来の高値で終えました。
(2023年8月1日: 村方 清)