1.9月の株式市場
9月の株式市場は原油先物相場の上昇から、インフレ圧力が高まるとの観測が広がり、連銀の金融引き締めが長期化することへの懸念と月末は連邦議会の混乱から政府機関の一部閉鎖も意識され、不安定な展開となりました。主要な動きは、以下の通りでした。
9月1日:1日発表の8月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比187,000人増で、市場予想の170,000人を上回ったものの、失業率が3.8%と0.3%上昇し、米金融引き締め長期化への警戒が和らぎ、116ドル高(0.33%増加)。
9月5日:主要産油国の減産継続方針を受けて原油相場が上昇し、米国の物価上昇率’が再び高まるとの警戒が広がり、196ドル安(0.56%減少)。
9月6日:米ISMのサービス景況感指数は前月比1.8%高い54.5で、景気の底堅さを示す内容で、米長期金利が上昇、ハイテク株を中心に売られ、198ドル安(0.57%減少)。
9月7日:前日までの2日間で400ドル近く下げた反動で、ディフェンシブ株を中心に買いが入り、58ドル高(0.17%増加)。
9月8日:足元で下げが目立ったハイテク株の一角が買い直され、76ドル高(0.22%増加)。
9月11日:FRBの追加利上げへの警戒感が和らぎ、大手ハイテク銘柄の一部が大幅に上昇、87ドル高(0.25%増加)。
9月12日:米原油先物相場は12日に1バレル89ドル台前半と約10カ月ぶりの高値を付け、インフレ懸念による金利上昇の警戒からハイテク株を中心に売りが広がり、18ドル安(0.05%減少)。
9月13日:朝方発表の8月のCPIは前月比3.7%上昇で、市場予想の3.6%を上回り、インフレの沈静化には時間がかかると受け止められ、70ドル安(0.20%減少)。
9月14日:英半導体設計のアームホールディングスの上場が好調な滑り出しとなり、投資家心理が改善し、景気敏感株を中心に買いが広がり、332ドル高(0.96%増加)。
9月15日:米長期金利が4.33%に上昇する場面があり、株式の相対的な割高感が意識され、半導体需要も措定以上に落ち込むとの懸念も浮上、289ドル安(0.81%減少)。
9月18日:原油高を背景とするインフレ懸念とFRBの金融引き締め長期化への警戒感から一時下げが先行したが、ディフェンシブ株への買いによって、6ドル高(0.02%増加)。
9月19日:原油相場の上昇が続き、インフレ圧力が高まるとの観測が広がり、FRBの金融引き締めが長期化するとの懸念から、107ドル安(0.31%減少)。
9月20日:FOMCの結果が発表され、FRBの金融引き締めが長期化するとの見方が広がり、77ドル安(0.22%減少)。
9月21日:前日発表のFOMCの結果を受けて、米金融引き締めが長期化するとの見方が広がった他、米長期金利もほぼ16年振りの高水準を付け、370ドル安(1.06%減少)。
9月22日:金融引き締めの長期化が米景気を冷やすとの懸念や自動車大手に対するストライキが長引きとの見方から、107ドル安(0.32%減少)。
9月25日:FRBの金融引き締めが長期化することへの警戒は強いが、一部の銘柄に値ごろ感からの買いが入り、43ドル高(0.13%増加)。
9月26日:米長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が意識されたことが重荷になり、388ドル安(1.14%減少)。
9月27日:原油高や米金融引き締めの長期化観測を受けて、米長期金利が上昇し、株式の売りが続き、68ドル安(0.20%減少)。
9月28日:米長期金利が朝方にほぼ16年振りの高水準を付けた後、午後にかけて低下、米原油先物相場も下落し、ハイテク株や景気敏感株などに買いが入り、116ドル高(0.35%増加)
9月29日:朝方に発表された物価指標が前月比で0.4%上昇、コア指数は0.1%上昇で市場予想の0.2%qを下回り、買いが先行したが、米国政府機関の一部閉鎖のリスクが意識され、米金融引き締めが長期化するとの観測も根強く、159ドル安(’0.47%減少)。
米労働省が9月1日に発表した8月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比187,000人の増加で、市場予想の170,000人を上回りました。6月の雇用者数の確定値は105,000人で80,000人の減少、7月の改定値は157,000人で30,000人の減少でした。8月の失業率は3.8%で、前月から0.3%増加しました。労働参加率は62.8%で前月から0.2%増加しました。8月の時間当たり賃金上昇率は前月比で8セント増加しました。部門別ではヘルスケア業が71,000人、レジャー・観光業が40,000人、ソーシアル・アシスタンス業が26,000人、建設業が22,000人が増加したものの、運輸・倉庫業が34,000人の減少となりました。
FOMC会合が9月19-20日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。最近の指標は経済活動が堅調なペースで拡大していることを示している。ここ数か月、雇用の増加は鈍かったが、依然として力強い状態だ。失業率は低水準にとどまっている。インフレ率は依然として高い水準にある。
米国の銀行システムは健全で回復力がある。家計や企業の信用状況の悪化は、経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼすとみられる。これらの影響の度合いは依然として不透明だ。FOMCはインフレリスクを引き続き注視している。
FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.25-5.5%で据え置くことを引き上げることを決めた。今後入ってくる情報と金融政策の影響を注視する。
インフレ率を長期的に2%に戻すのにどの程度追加の政策が適切であるかを決める際、FOMCは金融政策の累積した引き締めや、経済活動がインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。さらに、以前は発表された計画に示されているように、国債、機関債、ローン担保証券の保有を削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。
金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが現れた場合、金融政策のスタンスを適切調整する用意がある。労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮する。
今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。
FOMCの決定は0.25%の利上げで事前予想通りの内容でした。同時に公表した参加者による経済見通しでは19人中12人が年内の追加利上げを予想して、高インフレの沈静化について楽観視しない姿勢を明確にしました。これにより政策金利は22年振りの高さになりました。パウエル議長の記者会見で追加利上げは今後のデータ次第との姿勢を強調、過度な引き締めへの不安が後退しました。これにより、買いが先行していたダウは下げに転じて、77ドル安(0.22%減少)となりました。
(2023年10月1日: 村方 清)