Thursday, February 1, 2024

FRBの慎重な金融政策判断で下落調整となった株式相場








1.1月の株式市場

1月の株式市場は131日まで開かれたFOMC会合で最近のインフレ沈静化動向にもかかわらず、早期の利下げに慎重だったことで、大きな下落修正となりました。主要な動きは、以下の通りでした。

12日:このところ出遅れていたメルクやベライゾンなどのディフェンシブ株が上昇し、相場を押し上げ、26ドル高(0.06%増加)。

13日:昨年末にかけて急ピッチの上昇が続いたあとで、景気敏感株や消費関連株などに利益確定や持ち高調整の売りが出て、285ドル安(0.75%減少)。

14日:朝方発表の202312月のADPレポートは非農業部門の雇用数が前月比164千人増で市場予想を上回り、株式市場を支えたが、次第に利益確定売りが増え、10ドル高(0.02%増加)

15日:5日発表の12月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比216,000人増で、市場予想の170,000人を上回ったものの、失業率は11月と同じの3.7%で、市場予想の3.8%を上回った。これを受けて、米経済がソフトランディングに向かうとの期待が強く、FRBの利下げ観測は後退したものの、ダウは26ドル高(0.06%増加)。

18日:米長期金利の低下を受けて、高い株価収益率のハイテク株を中心に買いが入り、株価を押し上げ、217ドル高(0.57%増加

19日:前日にダウ平均が再び最高値圏に上昇し、主力銘柄の一部に利益確定の売りが出て、158ドル安(0.41%減少)。

110日:ハイテク株を中心に買いが入り、相場を支えて、週内発表の米経済指標が引き続きインフレ鈍化を示すとの見方に加え、米主要企業の好決算への期待も追い風となり、171ドル高(0.45%増加)。

111日:朝方発表の米消費者物価指数が前年同月比で3.4%と小幅ながら市場予想上回り、一時売りが優勢になったが、今週末から本格化する米主要企業決算への期待から引き際に上げに転じ、15ドル高(0.04%増加)。

112日:四半期決算を発表した大手銀行のJP モルガンなどが1株利益が市場予想を上回ったものの、その後は利益確定の売りで下げに転じて、118ドル安(0.31%減少)。

116日:FRB高官による早期利下げ観測をけん制する発言を受け、米債券市場で長期金利が上昇、株式の相対的割高感を意識した売りが優勢で、232ドル安(0.61%減少)

117日:17日発表の12月の米小売売上高が前月比0.6%増と市場予想の0.4%増を上回ったことで、FRBによる早期の利下げ観測が後退したことで、株売りとなり、94ドル安(0.25%減少)

118日:アップルを中心にハイテク株が買われ、台湾のTSMCの業績見通しが好感され、インテルなどの半導体株も上昇し、202ドル高(0.54%増加)。

119日:AIの活用が企業業績を押し上げるとの期待から、ハイテク株や半導体関連株に連日買いが入り、相場をけん引、米消費者の景況感の改善もあい、経済のソフトラナンディングを見込んだ買いにつながり、395ドル高(1.05%増加)。

122日:主要企業の四半期決算の発表が本格化する中、大手ハイテクを中心に好業績の期待から、買いが優勢となり、138ドル高(0.36%増加)。

123日:23日に決算を発表したスリーエムが11%安で急落し、ダウ平均を80ドル近く押し下げ、全体で96ドル安(0.25%減少)。

124日:24日に発表された1月の米国の製造業購買担当者指数は50.3と市場予想の47.2を上回り、インフレの抑制が遅れるとの見方から、債券市場で長期金利が4.1%台後半に上昇、株式の相対的な割高感が意識され、99ドル安(0.26%減少)。

125日:25日朝発表の2023年第4四半期のGDP3.3%と市場予想の2%を上回る伸びとなり、あわせて発表されたコアの物価指標は前期比率2.0%とインフレ鈍化傾向を示し、米経済のソフトランディング(軟着陸)への期待が高まり、243ドル高(0.64%増加)

126日:朝発表の2312月の米個人消費支出は前年同月比で2.6%上昇で、11月から伸び率が縮小したこともあり、インフレが減速し、FRBが利下げに動くとの見方から、ダウは60ドル高(0.16%増加)。

129日:米長期金利が4.0%台後半と低下し、株式の相対的な割高感が薄れたと見た買いが入り、224ドル高(0.58%増加)。

130日:JPモルガンなどの金融株やマクドナルドなどの消費関連株に買いが入り、ダウ平均を押し上げ、134ドル高(0.35%増加)。

13131日まで開いたFOMC会合で早期の利下げに慎重な姿勢が示されたことで、利益確定の売りが広がり、317ドル安(0.82%減少)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が15日に発表した12月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比216,000人の増加で、市場予想の170,000人を上回りました。10月の雇用者数の確定値は105,000人で45,000人の減少、11月の改定値は173,000人で、26,000人の減少でした。10月の失業率は3.7%で、前月と同水準でした。労働参加率は62.5%で、前月より0.3%下がりました。9月の時間当たり賃金上昇率は前月比で15セント増加しました。部門別では政府部門が52,000人の増加、ヘルスケア業が38,000人の増加、ソーシャル・アシスタンス業が21,000人の増加、建設業が17,000人の増加しましたが、運輸・倉庫業は23,000人の減少となりました。


3.米消費者物価指数は12月に3.4%上昇

米商務省が111日に発表した12月の米個人消費支出物価指数は前年同月比で3.4%上昇し,市場予想の3.2%を上回りました。一方、エネルギーと食品を除くコア指数は3.9%で、27か月ぶりに4%を割り込みました。しかしながら、前月比では0.3%上昇し、11月と同じ水準でした。

この点、米国のインフレ率は鈍化傾向が続いていますが、そのペースは市場の期待より緩やかで、公表直後の市場では、FRBの早期利下げが難しくなるとの見方が広がりました。

 

4.金利据え置きを決めたFOMC会合

FOMC会合が13031日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました。最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示している。雇用の増加は2023年の年初から緩やかになっているが、依然として力強い状態だ。失業率は低水準にとどまっている。インフレ率はこの1年で緩和したが、依然として高止まりしている、

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。雇用とインフレの目標達成に対するリスクは、よりバランスに移行しつつあると判断している。経済の見通しは不透明であり、FOMCは引き続きインフレリスクに細心の注意を払っている。

これらの目標を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.255.5%で据え置くことを決めた。FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびインフレリスクを注意部価格評価する。

FOMCは、インフレが持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切ではないと考えている。さらに、以前発表した計画に示されているように、国債、機関債、住宅ローン担保証券の保有量の削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力やインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。

FRBは政策金利を5.255.50%に据え置きました。同時に、FOMCの声明文では早期の利下げに慎重な姿勢を示しました。特に、インフレが持続的に2%に向かっているとのより大きな確信を持つまで、政策金利の引き下げが適切になるとは考えていないとの文言を加えました。FOMC後の記者会見で、パウエル議長はインフレ動向を見極めたいと姿勢を鮮明にして、利下げを始める時期について、3月会合の時までに確信に至っているとは考えにくいとの発言をしました。市場はFOMCの慎重姿勢に警戒感が強まり、過去最高圏で推移していたこともあり、利益かくて売りが広がり、ダウ平均は317ドル安(0.82%減少)で終えました。 

            (202421日: 村方 清)