Monday, April 1, 2024

インフレ懸念の低下と利下げ期待による米国市場の改善








1.3月の株式市場

3月の株式市場は、後半になってインフレ懸念が低下する経済指標が続いたことで、FRBによる利下げのの期待から、改善傾向が続きました。主要な動きは、以下の通りでした。

31日:米長期金利の低下を追い風にインテルなどの大型ハイテク株に買いが入り、91ドル高(0.23%増加)。

34日:前週末に主要な株高指数が最高値を付けた後で、主力株を中心に利益確定売りが出て、98ドル安(0.24%減少)。

35日:中国でのスマートフォンの販売減少が伝わったアップルが大幅に下落、ハイテク株を中心に売りが優勢で、405ドル安(1.03%減少)。

36日:前日まで2日間で500ドル以上あまり下げた後で、値ごろ感からのき戻しがあり、76ドル高(0.19%増加)。

37日:米経済がソフトランディングできるとの期待が相場の支えとなり、130ドル高(0.33%増加)。

38日:8日発表の2月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比275,000人増で、市場予想の200,000人を上回り、取引終了にかけて売りが優勢となり、69ドル安(0.17%減少)。

311日:相場上昇に遅れていたディフェンシブ株や一部の消費銘柄株が買われて、47ドル高(0.12%増加)。

312日:このところ下げの目だっていた半導体株が上昇し、投資家心理が改善し、236ドル高(0.60%増加)。

313日:米経済がソフトランディングに向かうとの見方が大きくなり、相対的に出遅れていた景気敏感株の一角に買いが入り、38ドル高(0.09%増加)。

314日:朝方発表の米卸売物価指数が0.6%と市場予想の0.3%を上回り、米長期金利が上昇し、幅広い銘柄に売りが優勢で、138ドル安(0.35%減少)。

315日:今週発表された米物価指標が相次いで市場予想を上回る伸びとなり、インフレの鎮静化に時間がかかるとの見方が強まり、191ドル安(0.40%減少)。

318日:AI関連の需要拡大が業績を押し上げるとの見方からハイテク株を中心に買いが広がり、76ドル高(0.19%増加)。

319日:朝方発表の2月の米国の住宅着工件数が市場予想を大幅に上回る伸びとなり、消費関連株を中心に買いが入り、320ドル高(0.82%増加)。

320日:FRB20日まで開いたFOMCで政策金利を据え置いたものの、年末に向けた利下げ姿勢に変わりなく、景気敏感株を中心に買いが広がり、401ドル高(1.02%増加)。

321日:AI開発需要が半導体などの業績をけん引するとの期待が買いにつながり、269ドル高(0.68%増加)。

322日:米主要株価指数が最高値を記録した後で、景気敏感株や消費関連株を中心に持ち高調整の売りが優勢となり、306ドル安((0.77%減少)。

325日:前週に主要株価指数の最高値更新が続き、高値警戒感から主力株に売りが出て、162ドル安(0.41%減少)。

326日:四半期末を控えた持ち高調整の売りに押されて、31ドル安(0.07%減少)。

327日:米景気の先行きに対する楽観的な見方が投資家心理を支え、出遅れていたディフェンシブ株や景気循環株に買いが入り、478ドル高(1.21%増加)。

328日:米経済への楽観や利下げ観測が相場を支えて、47ドル高(0.11%増加)。


2.米国の雇用状況

米労働省が38日に発表した2月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比275,000人の増加で、市場予想の200,000人を上回りました。12月の雇用者数の確定値は290,000人で43,000人の減少、1月の改定値は229,000人で、124,000人の減少でした。1月の失業率は3.9%で、前月より0.2%上昇しました。労働参加率は62.5%で、前月と同じ水準でした。2月の時間当たり賃金上昇率は前月比で5セント増加しました。部門別ではヘルスケア業が67,000人の増加、政府部門が52,000人の増加、飲食業が42,000人の増加、ソーシアル・アシスタンス業が24,000人の増加、運輸・倉庫業が20,000人の増加となりました。

 

3.バイデン大統領の一般教書演説

バイデン大統領は37日に連邦議会の上下両院合同会議で内政、外交方針を示すいppん教書演説に臨みました。11月の大統領選挙で対決が確実な共和党のトランプ前大統領を危険であり、受け入れられないとして、強く批判しました。経済政策では、大企業や富裕層への課税強化を訴えました。現在、富裕層の多くは様々な優遇措置により、全所得にたいする平均所得税率は8%に留まっています。また、トランプ前大統領が減税したために15%に留まっており、バイデン大統領はこれを21%に引き上げるとしました。バイデン大統領はトランプ前大統領と異なり、中低所得層や中小企業を重視する姿勢を打ち出しているのが、大きな特徴となっています。

 

4.金利据え置きを決めたFOMC会合

FOMC会合が31920日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました。最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示している。雇用の増加は力強く、失業率は低水準に留まている。2023年の年初から緩やかになっているが、依然として力強い状態だ。失業率は低水準にとどまっている。インフレ率はこの1年で緩和したが、依然として高止まりしている、

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。雇用とインフレの目標達成に対するリスクは、より良いバランスに移行しつつあると判断している。経済の見通しは不透明であり、FOMCは引き続きインフレリスクに細心の注意を払っている。

これらの目標を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.255.5%で据え置くことを決めた。EF金利の目標レンジの調整を検討する際に、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびインフレリスクを注意深く評価する。

FOMCは、インフレが持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切ではないと考えている。さらに、以前発表した計画に示されているように、国債、機関債、住宅ローン担保証券の保有量の削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力やインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。

FRBは政策金利を5.255.50%に据え置きました。同時に、パウエル連銀議長はFOMC後の記者会見で、雇用が強いこと事態は利下げを遅らせる理由にはならないだろうとして、景気に配慮する姿勢を考えをにじませました。これにより、投資家は年末に向けてFRBの利下げ姿勢が変わらないと判断した投資家の買いが一段と優勢になり、ダウ平均は401ドル高(1.02%増加)で終えました。 

                (202441日:村方 清)