1.5月の株式市場
5月の株式市場は前半がインフレ懸念の後退から、株式市場の改善が進んだが、後半になり再び、インフレ懸念が高まり、株価の下落が続くなど不安定化を増しました。主要な動きは、以下の通りでした。
5月1日:前日に今年最大の下げ幅を記録した後で、主力株の一部に自律反発を見込んだ買いが入り、87ドル高(0.23%増加)。
5月2日:FRBのパウエル議長が前日に再利上げについて否定的な見方を示したのが引き続き買い材料に視されて、322ドル高(0.85%増加)。
5月3日:3日発表の4月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比175,000人増で、市場予想の240,000人を大きく下回り、FRBによる利下げ開始が先送りになる見方が後退、450ドル高(1.17%増加)。
5月6日:FRBが利下げを始めるとの観測から主力株の一角に買いが入り、177ドル高(0.45%増加)。
5月7日:労働市場の過熱感が薄れつつあるとの見方から、FRBが年後半にも利下げに転じるとの観測が改めて広がり、32ドル高(0.06%増加)。
5月8日:FRBの利下げ時期お巡る不透明感が後退しており、投資家の心理を支えて、172ドル高(0.44%増加)。
5月9日:9日発表の週間の米国失業保険申請件数は231,000件で市場予想の214,000件を上回り、労働市場の過熱感が薄れ、FRBが利下げに動きやすくなるとの観測で、331ドル高(0.84%増加)。
5月10日:FRBが年後半に利下げに転換するとの期待が根強く、主力株に買いが入り、125ドル高(0.31%増加)。
5月13日:前週末までの6営業日で1700ドル近く上昇した反動で、主力株の一部に持ち高調整の売りが出て、81ドル安(0.20%減少)。
5月14日:朝発表の4月の米卸売物価指数は前月比0.5%上昇と市場予想の0.3%を上回ったものの、3月分も0.2%上昇から0.1%へ下落修正され、物価上振れの過度な警戒が薄れて、買いが広がり、127ドル高(0.32%増加)。
5月15日:15日発表の4月の米国消費者物価指数は前月比の上昇率が0.3%と市場予想の0.4%を下回り、FRBの利下げ先送りするとの懸念が後退し、350ドル高(0.88%上昇)。
5月16日:取引時間中に初の4万ドル台に乗せたものの、短期的な相場の過熱感が意識され、主力銘柄の一部に持ち高調整の売りが出て、39ドル安(0.09%減少)。
5月17日:米経済に対する楽観的な見方から景気敏感株や消費関連株に買いが入り安く、134ドル高(0.33%増加)。
5月20日:前週末に初めて4万ドル台で取引を終えた後で、主力株の一部に持ち高調整や利益確定の売りが出て、197ドル安(0.49%減少)。
5月21日:FRBが年後半に利下げし、米景気がソフトランディングするとの期待が株式相場を支えて、66ドル高(0.16%増加)。
5月22日:FRBが公開した4月30日‐5月1日に開催のFOMCの議事要旨で参加者が強いインフレ警戒の姿勢を示していたことが明らかになり、202ドル安(0.50%減少
5月23日:インフレ圧力の根強さから、FRBが利下げ転換に慎重になっているとの見方から、幅広い銘柄に売りが出て、606ドル安(1.52%減少)。
5月24日:米国のインフレ圧力の根強さが後退したとの見方が支えとなったものの、2連休を前に持ち高調整の売りが出やすくなり、小幅な上昇に留まり、4ドル上昇(0.01$増加)。
5月28日:FRBによる金利引き下げ開始時期が後にずれるとの見方がいt部の主力株への売りを誘い、217ドル安(0.55%減少)。
5月29日:FRBの利下げ時期が後にずれるとの見方が強く、米長期金利も上昇し、株式の相対的な割高感が意識され、411ドル安(1.05%減少)。
5月30日:前日夕に四半期決算や見通しを発表したセールスフォースが急落し、指数を押し下げ、330ドル安(0.85%減少)。
5且31日:朝方発表の4月の米個人消費物価指数が前月比0.3%と市場予想に一致したことで、高インフレが続くとの懸念が和らぎ、米長期金利の低下を受け、主力株への買いが膨らみ、575ドル高(1.50%増加)。
2.米国の雇用状況
米労働省が5月8日に発表した4月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比175,000人の増加で、市場予想の240,000人を大きく下回りました。2月の雇用者数の確定値は236,000人で34,000人の減少、3月の改定値は303,000人で、12,000人の減少でした。4月の失業率は3.9%で、前月より0.1%上昇しました。労働参加率は62.7%で、前月と同じ水準でした。2月の時間当たり賃金上昇率は前月比で7セント増加しました。部門別ではヘルスケア業が56,000人の増加、ソーシアル・アシスタンス業が31,000人の増加、運輸・倉庫業が22,000人の増加、小売り業が20,000人の増加、建設業が9,000人の増加となりました。
3.金利据え置きを決めたFOMC会合
FOMC会合が4月30日‐5月1日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました。最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示している。雇用の増加は力強く、失業率は低水準に留まている。インフレ率はこの1年で緩和したが、依然として高止まりしている。
この数か月間は2%の物価目標に向けた進展が見られなかった。
FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。雇用とインフレの目標達成に対するリスクは、この1年でより良いバランスに移行してきたと判断している。経済の見通しは不透明であり、FOMCは引き続きインフレリスクに細心の注意を払っている。
この目標を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.25-5.5%で据え置くことを決めた。EF金利の目標レンジの調整を検討する際に、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびインフレリスクを注意深く評価する。
FOMCは、インフレが持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切ではないと考えている。さらに、国債、機関債、住宅ローン担保証券の保有量の削減を継続する。
FOMCは6月から、国債の月間償還上限額を600憶ドルから250億ドルに引き下げることで保有証券の減少ペースを緩める。機関債及び住宅ローン担保証券の月間償還上限額を350億ドルに維持し、この上限を超える分は国債に再投資する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。
金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力やインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。
今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。
FRBは政策金利を5.25-5.50%に据え置きました。同時に、パウエル連銀議長はFOMC後の記者会見で、インフレが持続的に2%に向かうと確信を強めるまでに想定よりも時間がかかりそうだとの見方を示した一方、次の政策金利の変更が利上げになる可能性は低いとの認識を示しました。これにより、市場では安ど感が広がり、ダウ平均は87ドル高(0.23%増加)で終えました。
4.4月の米消費者物価指数は上昇率が鈍化、
米労働省が5月15日に発表した4月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.4%の上昇、変動要因の大ききいエネルギーと食料品を除いた’コア指数は3.6%の上昇と、いずれも上昇率はわずかに鈍化しました。前月比でみても、CPIは0.3%上昇、コア指数も0.3%上昇となりました。CPIの鈍化は前年同月比でみた場合は4カ月ぶり、前月比でみた場合は6カ月ぶりとなりました。
(2024年6月1日:村方 清)