Monday, July 1, 2024

過度なインフレ懸念の後退による株式市場の改善


1.
6月の株式市場

6月の株式市場は後半に従来見られた過度なインフレ懸念が後退、景気敏感株やディフェンシブ株などの銘柄に買いが戻る動きが見られました。主要な動きは以下の通りでした。

63日:午前発表の米サプライマネジメント協会の製造業景況感指数が48.7と前月から0.5ポイント悪化、市場予想の49.6も下回ったことで、景気敏感株や消費財関連株に売りが出て、115ドル安(0.29%減少)。

64日:4月発表の4月の米雇用動向調査で非農業部門の求人件数が8059000件と前の月から減少し、20212月以来の低水準となり、労働市場の過熱感が薄れ、FRBが利下げをしやすくなるとの観測から、140ドル高(0.36%増加)。

65日:5月発表のADP全米雇用レポーとで非農業部門の雇用者数が前月比152千人増加で、前月比の185千人から縮小、市場予想の175千人も下回ったことで、FRBの利下げ時期が遅れることへの懸念が後退し、96ドル安(0.24%減少)。

66日:FRBの利下げ観測が根強く、投資家心理の支えとなり、79ドル高(0.20%増加)。

67日:7日発表の5月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比272,000人増で、市場予想の190,000人を大きく上回り、FRBによる利下げ時期が遅れるとの観測が重荷となり、87ドル安(1.22%減少)。

610日:週内にFRBCPIの発表を控え、様子見の投資家が強かった半面、ウォールマートやハネウェルなどの銘柄にに買いが入り、69ドル高(0.17%増加)。

611日:12日のCPIの発表とFOMCの結果公表を控え、持ちげんしぃyy高調整の売りが優勢で、121ドル安(0.31%減少)。

612日:朝発表の5月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を下回り、買いが先行した。午後には、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受けて米連邦準備理事会(FRB)が利下げ開始を慎重に判断するとの見方が広がり、ダウ平均は35ドル安(0.09%減少)。

613日:米連邦準備理事会(FRB)が早期に利下げに転じるとの期待が高まった半面、米経済の減速も意識され、景気敏感株などに売りが出て、65ドル安(0.16% 減少)

614日:同日発表の指標が米消費の減速を示す内容となり、経済の軟化が意識されて58ドル安(0.14%減少)。

617日:アマゾンやマイクロソフトなどのハイテク株や消費財関連株に買いが入り、189ドル高(0.49%増加)。

618日:18日発表の5月の米小売売上高は前月比で0.1%増と、ダウ・ジョーンズ通信が集計した市場予想(0.2%増)を下回り、FRBが利下げに転じやすくなるという見方が広がり、57ドル高(0.14%増加)。

620日:相場上昇に出遅れ感のあったセールフォースやシェブロンなどの銘柄を中心に買いが入り、ダウ平均を押し上げ、300ドル高(0.77%増加)。

621日:出遅れ感のあったマクドナルドやナイキなどの銘柄に買いが入り、16ドル高(0.03%増加)。

624日:相対的に出遅れ感があった景気敏感株やディフェンシブ株の銘柄などに買いが入り、261ドル高(0.66%増加)。

625日:25日発表の米消費者信頼間指数が100.4と前月の101.3から低下、ウォルマートなど主力株の一部に持ち高調整の売りが出て、299ドル安(0.75%減少)。

626日:米長期金利の上昇が株価の重荷となったが、アマゾンやアップルなどのハイテク株が上昇し、16ドル高(0.03%増加)。

627日:米長期金利が低下し、ハイテク株の一部に買いが入り、36ドル高(0.09%増加)。

628日:前日夕に決算を発表したナイキが急落し、月末と四半期末の持ち高調整の売りもあり、45ドル安(0.11%減少)。ダウ平均は月間で432ドル上げ、2か月連続で上昇

 

2.米国の雇用状況

米労働省が6 7 日に発表した5 月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比272,000人の増加で、市場予想の190,000人を大きく上回りました。3月の雇用者数の確定値は310,000人で5,000人の減少、4月の改定値は165,000人で、10,000人の減少でした。5月の失業率は4.0%で、前月より0.1%上昇しました。労働参加率は62.5で、前月から0.2%下回りました。5月の時間当たり賃金上昇率は前月比で4セント増加しました。部門別ではヘルスケア業が68,000人の増加、政府部門が43,000人の増加、レジャー・観光業が42,000人の増加、専門・科学・技術サービスが32,000人の増加、ソーシアル・アシスタンス業が15,000人の増加となりました。


3.FOMC会合

FOMC会合が611-12日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大し続けていることを示唆している。雇用の増加は力強く、失業率は低水準にとどまっている。インフレ率はこの1年で緩和したが、依然として高止まりしている。この数カ月間は2%の物価目標に向けて緩やかに進展している。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。雇用とインフレの目標達成に対するリスクは、この1年でより良いバランスに移行してきたと判断している。経済の見通しは不透明であり、FOMCは引き続きインフレリスクに細心の注意を払っている。

この目標を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.255.5%に据え置くことを決めた。FF金利の目標レンジの調整を検討する際、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびリスクのバランスを注意深く評価する。

FOMCは、インフレが持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切ではないと考えている。さらに、国債、機関債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことに強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。

決定はパウエル議長、ウィリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。

今回のFOMC会合は利下げ開始を慎重に判断するとの見方が多かったあめ、ダウ平均は35ドル安(0.09%減少)となりました。

        (202471日:村方 清)