1.7月の株式市場
7月の株式市場は中旬になって、インフレ鈍化の経済指標が相次い出てきたことにより、次回9月のFOMCFRB会合での利下げ観測の期待が高まり、改善傾向を示しました。主要な動きは以下の通りでした。
7月1日:フランス政治に対する過度な警戒が和らぎ、同国の株式市場が上昇し、米国にも買いが入り、51ドル高(0.12%増加)。
7月2日:四半期の販売台数を発表したテスラが大幅高となり、他のハイテク株にも買いが波及し。株式相場を押し上げ、162ドル高(0.41%増加)。
7月3日:4日の独理知記念日を前に主力株の一部に利益確定ア持ち高調整の売りが出て、24ドル安(0.06%減少)。
7月5日:7日発表の5月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比206,000人増で、市場予想の少し上回り、FRBによる利下げ観測が高まり、68ドル安(0.17%増加)。
7月8日:週内にFRB議長の上下両院での議会証言や米物価指数の発表があり、持ち高調整の売りがあり、31ドル安(0.07%減少)。
7月9日:FRB議長の上院銀行委員会での議会証言を受けて、米利下げ観測で買いが優勢になる一方、米景気減速への警戒感から景気敏感株などに売りが出て、53ドル安(0.13%減少)。
7月10日:FRB議長が米下院での議会証言で労働市場の軟化が見られると発言したことで、FRBによる利下げが近づいているとの安心感を与え、429ドル高(1.09%増加)。
7月11日:6月のCPIは前月比0.1%低下し、市場予想の0.1%上昇を下回る2020年5月以来のマイナスとなり、FRBによる9月の利下げ観測が高まり、32ドル高(0.08%増加)。
7月12日:同日発表の米経済指標が米国のインフレの落ち着きを示す内容となったことで、FRBが9月に利下げに動くとの観測が引き続き相場を支え、247ドル高(0.62%増加)。
7月15日:15日発表のNY連銀の製造業景況感指数はマイナス6.6と市場予想のマイナス6.0を下回り、インフレ圧力が緩和、FRBが利下げに動き安くなるとの見方で、211ドル高(0.52%増加)。
7月16日:同日発表の6月の小売売上高が前月府横ばいと市場予想(の0.4%減を上回り、、FRBが9月に利下げを開始するとの見方も加わり、743ドル高(1.85%増加)。
7月17日:米国の利下げ観測を背景に出遅れ感のあった銘柄に資金シフトが続き、244ドル高(0.61%増加)。
7月18日:前日までに連日に最高値を更新していたため、主要ハイテク株に一部やや上げが目立っていた金融株など幅広い銘柄に利益確定売りが出て、533ドル安(1.29%減少)。
7月19:世界的な規模で発生したシステム障害のを受けて、一部のハイテク株が大幅に下落し、投資家心理が冷え込み、377ドル安(0.92%減少)。
7月22日:前週後半に大きく下げた後で、半導体株などハイテク株に自律反発の買いが入り、128ドル高(0.31%増加)。
7月23日:アルファベットなど取引終了後のハイテク企業の決算発表を前に様子見の姿勢が広がり、持ち高調整の売りが優勢で57ドル安(0.14%減少)。
7月24日:アルファベットなど前日に決算を発表した大型ハイテク株が急落、売りは他のハイテク株にも広がり、504ドル安(1.24%減少)。
7月25日:同日発表の2024年4-6月の米GDPの速報値が2.8%増と市場予想の2.1%を上回り、米景気減速への過度な懸念が後退し、81ドル高(0.20%増加)。
7月26日:朝方発表の6月の米個人消費物価指数が前月比2.6%増と市場予想と同じで、鈍化傾向が顕著となり、FRBの9月利下げ開始シナリオの確率が強まり、654ドル高(1.6%増加)。
7月29日:大型ハイテク株の決算発表やFOMCの会合な度を前に様子見ムードが広がり、前週末に大幅高となった後で、主力株の一部に持ち高調整の売りが出て、49ドル安(0.12%減少)。
7月30日:午前発表の米消費者信頼感指数が100.3と6月改定値の97.8から改善、米景気が底堅さを保っているとの見方から相対的に出遅れ感があった景気循環株の一部に買いが入り、203ドル高(0.50%増加)。
7月31日:FRBのパウエル議長は31日まで開いたFOMC後の記者会見で、利下げに転じる時期が近づいているとの見方を示し、主力株を中心に買いが入り、99ドル高(0.24%増加)。
2.米国の雇用状況
米労働省が7月5 日に発表した6 月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比206,000人の増加で、市場予想の200,000人を少し上回りました。4月の雇用者数の確定値は108,000人で5,700人の減少、5月の改定値は218,000人で、5.400人の減少でした。6月の失業率は4.1%で、前月より0.1%上昇しました。労働参加率は62.8%で、前月から0.3%上回りました。6月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別では政府部門が70,000人の増加、ヘルスケア部門が49,000人の増加、ソーシアル・アシスタント業が34,000人の増加、建設業が27,000人の増加となりました。
3.米消費者物価は前年比で3.0%上昇
米労働省が7月11日に発表した6月の消費者物価指数は、前年同月比で3.0%上昇しました。伸び率は3カ月連続で縮小し、市場予想も下回りました。CPIは前月比では0.1%ていかし、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年同月比3.3%上昇で、伸び率は前月から小幅縮小しました。
項目別ではコロナ化禍背景とした供給不足により値上がりしていた中古車・トラックが前年同月比で前年同月比で10.1%の大幅低下、一方、サービス価格は5.1%上昇と引く続き高い伸び率を示しました。
インフレ圧力が鈍化胃腸が確認されたことで、市場では、FRBが9月の会合で利下げを決めるとの観測が強まるものとの観測がが出てきています。
4.FOMC会合
FOMC会合が7月30-31日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました。最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大し続けていることを示唆している。雇用の増加は緩やかになり、失業率は上昇したものの低水準を維持している。インフレ率はこの1年で緩和したが、依然として高止まりしている。この数カ月間は2%の物価目標に向けて幾つかの更なる進展があった。
FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。雇用とインフレの目標達成に対するリスクは、より良いバランスに移行していると判断している。経済の見通しは不透明であり、FOMCは2つの責務の双方に対するリスクに細心の注意を払っている。
この目標を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.25〜5.5%に据え置くことを決めた。FF金利の目標レンジの調整を検討する際、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびリスクのバランスを注意深く評価する。
FOMCは、インフレが持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切ではないと考えている。さらに、国債、機関債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことに強く注力している。
金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。
決定はパウエル議長、ウィリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。
今回のFOMC会合は利下げ開始を慎重に判断するとの見方が多かったあめ、ダウ平均は35ドル安(0.09%減少)となりました。
(2024年8月1日:村方 清)