1.9月の株式市場
9月の株式市場は、前半は経済指標の悪化から景気減速の警戒感も起きましたが、FRBの17-18日のFOMC会合で0.5$の大幅利下げを決定したことで、続伸傾向となりました。主要な動きは以下の通りでした。
9月3日:ISM製造業景況感指数が47.2となり、市場予想の47.5を下回り、好不況の節目となる50を5カ月連続で下回り、景気減速への警戒感から626ドル安(1.51%減少)。
9月4日:朝方発表の雇用動態調査で、非農業部門の求人件数が767万3000件と市場予想を下回り、景気への警戒感がくすぶり、38ドル高(0.09%増加)。
9月5日:同日発表の8月のADP雇用レポートによると、非農業部門の雇用者数は前月比9万9千人増で、市場予想の14万人増を下回り、6日発表予定の雇用統計への警戒感から、219ドル安(0.53%減少)。
9月6日:同日発表87月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比142,000人増で、市場予想の160,000人を下回り、労働市場の軟化を示したことで、米景気減速の懸念から株売りが優勢となり、410ドル安(1.01%減少)。
9月9日:前週に1,271ドル下落した後で、主力株を中心に見直し買いが入り、484ドル高(1.20%増加)。
9月10日:11日に消費者物価指数の発表を前に持ち高調整の売りが優勢で、金融株の下げも目立ち、93ドル安(0.22%減少)。
9月11日:8月の米CPIは前月比で0.2%上昇、市場予想に一致したが、コア指数は同0.3%上昇と市場予想を上回り、FRBによる大幅利下げ観測が後退し、125ドル高(0.31%増加)。
9月12日:前日に続き、売りが目立っていたハイテク銘柄を中心に買いが優勢で、235ドル高(0.57%増加)。
9月13日:FRBが来週のFOMCで大幅利下げに動くとの期待が再燃し、景気敏感株を中心ン買いが優勢で、297ドル高(0.72%増加)。
9月16日:FRBの大幅利下げが米景気を支えるとの見方から、主力株の一角に買いが入り、228ドル高(0.55%増加)。
9月17日:前日までの4営業日で880ドル余上昇し、高値警戒感から主力株に売りが出て、16ドル安(0.03%減少)。
9月18日:FRBは18日まで開いたFOMC会合で0.5%の大幅利下げを決めたが、織り込み済みであった投資家も多く、主力株に利益確定の売りが出やすく、103ドル安(0.25%減少)。
9月19日:FRによる大幅利下げが米景気を支えるとの見方が強まり、主力株を中心に買いが広がり、522ドル高(1.25%増加)。
9月20日:FRBの利下げを受け、米経済がソフトランディングできるとの見方が引き続き相場の支えとなり、38ドル高(1.09%増加)。
9月23日:FRBの利下げによって米経済が軟着陸に向かうとの観測が引き続き株式市場を支えて、61ドル高(0.14%増加)。
9月24日:同日発表の米消費者信頼感指数が98.7と8月の105.6から低下し、市場予想の104.0も下回り。消費減速への懸念が出たが、FRBが利下げを続け、米経済がソフトランディングできるとの見方から、84ドル高(0.19%増加)。
9月25日:前日まで4営業日連続で最高値を更新した後で、主力株の一部に利益確定目的の売りが出て、293ドル安(0.69%減少)。
9月26日:26日発表の週間の失業保険申請件数は21万8000件と市場予想の22万3000件を下回ったことで、米経済が大幅な悪化を避けられるとの見方が広がり、景気敏感株への買いが増して、260ドル高(0.62%増加)。
9月27日:27日発表の8月の米個人消費消費支出物価指数の上昇率は前月比0.1%と7月の0.2%から低下し、食品とエネルギーを除くコア指数も前月比0.1%上昇で、市場予想を下回り、インフレが落ち通く流れから、消費関連や景気敏感株を中心に買いが優勢で、138ドル高(0.32%増加)。
9月30日:同日にパウエル連銀議長が講演会で追加の大幅利下げには慎重であったものの、経済を支える姿勢は明確にしており、投資家の安心感から、17ドル高(0.04%増加)。
2.米国の雇用状況
米労働省が9月6 日に発表した8 月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比142,000人の増加で、市場予想の160,000人を下回りました。6月の雇用者数の確定値は118,000人で61,000人の減少、7月の改定値は89,000人で、25,000人の減少でした。6月の失業率は4.2%で、前月より0.1%低下しました。労働参加率は62.7%で、前月と同水準でした。8月の時間当たり賃金上昇率は前月比で14セント増加しました。部門別では建設業部門が34,000人の増加、ヘルスケア門が31,000人の増加、ソーシアルアシスタンス業が13,000人の増加となりました。一方、製造業部門は24,000人の減少となりました。
3.伸びが鈍化した米消費者物価指数
米労働省が11日に発表した8月の消費者物価指数は前年同月比で2.5%の上昇で、市場予想を下回り、7月の2.9%から鈍化しました。一方、エネルギーと食品を除くコア指数はゼ年同月比で3.2%上昇し、市場予想を上回りました。このため、金融市場では大幅利下げ観測の後退で、2年債利回りが上昇しました。
FRBは9月17-18日に開くFOMCで利下げを始める方向と見られますが、金融引き締めを緩めてもすぐにインフレの高止まりにつながる懸念は薄いと見られています。
3.FOMC会合
FOMC会合が9月17-18日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました。最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大し続けていることを示唆している。雇用の増加レベルは鈍化し、失業率は上昇したものの低水準を維持している。インフレ率は2%の目標に向けてさらに進展したが、依然として高止まりしている。
FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。FOMCはインフレ率が2%に向けて持続可能な形で推移しているとの確信を深めており、雇用とインフレの目標達成に対するリスクは、おおぬね均衡していると判断している。経済の見通しは不透明であり、FOMCは2つの責務の双方に対するリスクに細心の注意を払っている。
インフレの進展とリスクのバランスを考慮し、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0.5%引き下げ、4.75〜5.0%とすることを決めた。FF金利の目標レンジの調整を検討する際、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびリスクのバランスを注意深く評価する。
FOMCは、国債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減する。FOMCは雇用の最大化を支援し、、インフレを2%目標に戻すことに強く注力している。
金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。
決定はパウエル議長、ウィリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。ホーマン理事は今回の会合でFF金利の目標レンジを0.25%引き下げることを希望し、反対票を投じた。
今回のFOMCによる0.5%の大幅引き下げは、織り込み済みとの面もあり、主力株は利益確定売りが出やすく、ダウ平均は103ドル安(0.25%減少)となりました。
(2024年10月1日: 村方 清)