Wednesday, January 1, 2025

長期金利の上昇で不安定性が高まる株式市場







1.12月の株式市場

12月の株式市場はFRB1218に利下げを決定したものの、トランプ次期政権の経済運営によるインフレ懸念から長期金利が上昇、株式市場の不安定性が高まりました。主要な動きは以下の通りでした。

122日:前週末にダウ平均が最高値を更新した後で、短期的な過熱感や高値警戒感が意識されたものの、129ドル高(0.28%増加)。

123日:短期的な相場の過熱感や高値警戒感が、重荷となり買い手控えk76ドル安(0.17%減少)。

124日:米サプライマネジメント協会が4日に発表した11月の非米製造業の景況感指数は52.1と前月から3.9ポイント低下、3カ月ぶりの低水準となり、FRB12月のFOMCで利下げを実施する観測が高またことで、309ドル高(0.69%増加)。

125日:6日に米雇用統計の発表を控えて様子見ムードが強かったが、前日に最高値を更新したことで、利益確定売りも出て、248ドル安(0.6%減少)。

126日:日発表の11月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比227,000人増で、市場予想の214,000人を上回ったが、12月の利下げを見送るほどではないと受け止められたものの、過去最高値を更新した後で景気敏感株やディフェンシブ株に売りが出て、123ドル安(0.27%減少)。

129日:主要株価指数の最高値更新が続いて相場の過熱感が強まる中、ハイテク株の一角に利益確定の売りが出て、241ドル安(0.53%減少)。

1210日:米債券市場で長期金利が4.2%台前半と前日より水準を切り上げたために、株式の素体的な割高感が意識されて、154ドル安(0.34%減少)。

1211日:朝方発表の11月の米消費者物価指数は前月比で0.3%、前年同月比で2.7%の上昇となり、市場予想に一致したが、ディフェンシブ株は売られ、99ドル安(0.22%減少)。

1212日:このところ上昇が目立っていたハイテク株の一角に利益確定の売りが出て、234ドル安(0.53%減少)。

1213日:米債券市場で長期金利が上昇し、一時前日比0.07%高い4.40%を付けたことから、ハイテク株の一角を中心に売りが出て、86ドル安(0.19%減)。

1216日:ディフェンス株の一角に売りが出て、102ドル安(0.25%減少)。

1217日:米長期金利の高止まりが株の割高感を高めて、ハイテク株を中心に売りが進んで、268ドル安(0.6%減少)。9日連続の下落は19782月以降、4610カ月ぶりとなる。

1218日:FRB18日まで開いたFOMC会合で、0.25%の利下げを決めたが、2025年は利下げペースが鈍化することを示したため、金利高止まりへの警戒感から売りが広がり、1123ドル安(2.58%減少)。

1219日:FRBが追加利下げに慎重になるとの見方の広がりと米政府機関の一部閉鎖のリスクが意識され、15ドル高(0.03%増加)。

1220日:20日発表の11月の米個人消費支出物価指数は前年同月比で2.4%上昇し、市場予想の2.5%を下回ったことで、FRBの利下げペースが鈍化するとの過度な懸念が後退し、主力株に買いが集まり、498ドル高(1.17%増加)。

1223日:12且の米消費者信頼感指数は前月に比べて8.1ポイント低い104.7で、市場予想を下回り、ダウの下落幅は一時300ドルを超えたが、その後、半導体などハイテク株オ一角に買いが入り、67ドル高(0.15%増加)。

1224日:前週までの3週間で2000ドル余り下落していたことから、主力株の一部に買いが入り、391ドル高(0.91%増加)。

1226日:米長期金利の上昇が一服し、米株式相場の下値を支えて、29ドル高(0.07%増加)。

1227日:米長期金利が上昇、株式の相対的な割高感が強まり、ハイテク関連を中心に利益確定や持ち高調整の売りが広がり、334ドル安(0.76%減少)。

1230日:年末を控えて主力株に利益確定の売りが出たものの、米経済の減速を示す内容の経済指標から来年からFRBの追加利下げへ動きやすくなるとの見方も出て、株式相場を下支えして、418ドル安(0.97%減少)。

1231日:米債券市場で長期金利が前日比0.04%高い4.57%で終えて、株式の相対的な割高感が意識され。FRBも来年の利下げペースを緩やかにする見通しで、相場の重荷となり、30ドル安(0.06%減少)。ダウは昨年末比で約13%上昇。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が121日に発表した11 月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比227,000人の増加で、市場予想の214,000人を上回りました。9月の雇用者数の確定値は255,000人で32,000人の増加、10月の改定値は36,000人で、24,000人の増加でした。11月の失業率は4.2%で、前月より0.1%上昇しました。労働参加率は62.5%で、前月より0.1%低下しました。11月の時間当たり賃金上昇率は前月比で13セント増加しました。部門別ではヘルスケア門が52,000人の増加、レジャー・観光業部門が53,000人の増加、政府部門が33,000人の増加、運輸業部門が32,000人の増加となりました。

 

3.米消費者物価指数は112.7%上昇、前月から加速

米労働省が11日公表した11月の米消費者物価指数は前年同月比で2.7%の上昇で、市場予想通りでした。エネルギーと食品を除くコア指数も前年同月比で3.3%の上昇で、これも市場予想通りでした。常勝率が市場予想通りであったことから、12月の利下げを見込む市場関係者の安心感が広がりました。

物価の軟化基調に自信を示すFRB高官も、多くが25年には利下げペースの減速を見込んでいます。雇用や個人消費の勢いが堅調を保っているうえに、トランプ次期政権の高関税などの政策が物価を押し上げる懸念を持っています。

 

4.12月のFOMC会合

FOMC会合が1217-18日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大し続けていることを示唆している。雇用状況はおおむね緩和してきており、失業率は上昇したものの低水準を維持している。インフレ率は2%の目標に向けてさらに進展したが、依然として高止まりしている。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。FOMCは雇用とインフレの目標達成に対するリスクは、おおぬね均衡していると判断している。経済の見通しは不透明であり、FOMC2つの責務の双方に対するリスクに細心の注意を払っている。

目標を達成するため、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0.5%引き下げ、4.755.0%とすることを決めた。FF金利の目標レンジの調整を検討する際、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびリスクのバランスを注意深く評価する。

FOMCは、国債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減する。FOMCは雇用の最大化を支援し、、インフレを2%目標に戻すことに強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。

決定はパウエル議長、ウィリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。クリーブランド連銀のハマック総裁はFF金利の目標レンジを据え置くことを希望し、反対票を投じた。

今回のFOMCによる0.5%の大幅引き下げは、織り込み済みであったものの、FRB2025年の利上げペースが鈍化する見通しであることが伝えられ、金利高止まりへの警戒感から、売りが広がり、1123ドル安(2.56%減少)となりました。

           (202511日: 村方 清)