1.9月の株式式市場
9月の株式市場は、関税などによるインフレ率の上昇を懸念するFRBと雇用状態悪化を理由に株式市場の更なる上昇を求めるトランプ政権の対立が表面化、17日にFOMCが金利を下げたことで、上昇相場が続きました。主要な動きは以下の通りでした。
9月2日:米国の財政不安を背景に米長期金利が上昇し、株式の割高感が意識され、249ドル安(0.54%減少)。
9月3日:米経済や財政を取り巻く不透明感から、景気敏感株などが売られて、25ドル安(0.05%減少)。
9月4日:4日発表のADP全米雇用レポートで、非農業部門の雇用数は前月比54,000人増と市場予想の75,000人増を下回り、FRBの利下げ再開との観測から、350ドル高(0.77%増加)。
9月5日:朝方発表の8月の雇用統計で、非農業部門の雇用者数は前月比22,000人の増加で、市場予想の80,000人を大きく下回り、失業率も4.3%と前月の4.2%を上回ったことで、経済の先行き不透明感が強まったことで、主力株を中心に売りが広がり、220ドル安(0.48%減少)。
9月8日:FRBが来週にも利下げをするとの観測が投資家心理を支えて、ハイテク株や消費関連株の一角に買いが入り、114ドル高(0.25%増加)。
9月9日:米雇用統計の年次改訂で労働市場の減速が示されたことを受け、市場ではFRBの利下げ観測が強まり、196ドル高(0.4%増加)。
9月10日:11日発表の8月の消費者物価指数を見きわめたい雰囲気が強い中、主力株の一部に利益確定の売りが出て、220ドル安(0.48%減少)。
9月11日:11日に発表された8月の米消費者物価指数が前年同月比2.9%の上昇で市場予想と一致したものの、来週のFRBの利下げを妨げるほどのものではないと受け止められて、617ドル高(1.35%増加)。
9月12日:前日に大幅に上昇、最高値を更新した後で主力株に利益確定の売りが出て、274ドル安(0.59%減少)。
9月15日:米中の貿易問題に関する閣僚会議の進展やFRBの利下げ観測の期待から、49ドル高(0.10%増加)。
9月16日:117日のFOMCの結果を見極めたい雰囲気の中で、主力株の一部に持ち高調整の売りが出て、126ドル安(0.27%減少)。
9月17日:FRBが17日のFOMCで0.25%の利下げを決め、今後も利下げを継続する見通しを示したことで、景気敏感株や消費関連株に買いが入り、260ドル(0.56%増加)。
9月18日:FRBが前日に利下げを再開したことで、引き続き相場の支えとなり、124ドル高(0.26%増加)。
9月19日:FRBが利下げを続けることで米経済を支えるとの見方や米中首脳が電話で両国間の課題について対話を続けることを確認したことで、173ドル高(0.37%増加)。
9月22日:前週末に続き、アップルやエヌビディアなどのハイテク株を中心に株式相場を牽引し、66ドル高(0.14%増加)。
9月23日:FRBのパウエル議長が株価がかなり高いことに関連して、追加の利下げに慎重な姿勢を示したとの見方から、ハイテク株などに利益確定の売りが出たことで、89ドル安(0.19%減少)。
9月24日:主要株価指数が過去最高圏で推移する中、ハイテク株を中心に利益確定売りが出て、172ドル安(0.37%減少)。
9月25日:25日発表の米経済指標が景気の底堅さを示したことで、FRBが利下げを急ぐ必要が薄れたとの観測から、売りが優勢で、174ドル安(0.38%減少)
9月26日:同日発表の8月の米個人消費支出物価指数が市場予想と一致する内容であったことで、年内の追加利下げを揺るがすものではないとの見方から、300ドル高(0.65%増加)。
9月29日:米利下げ継続期待による買いが続き、69ドル高(0.14%増加)。
9月30日:ファイザーなど製薬会社とトランプ政権の薬価引き下げの合意の動きが続いていることで、82ドル高(0.18%増加)。
2.米国の雇用状況
米労働省が5日に発表した8月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比22,000人で、市場予想の80,000人を大きく下回りました。6月の雇用者数の確定値はマイナス13,000人で27,000人の減少、7月の改定値は79,000人で、6,000人の増加でした。7月の失業率は4.3%で、前月より0.1%悪化しました。労働参加率は62.3%で、前月より0.1%増加しました。8月の時間当たりの賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別ではヘルスケア部門が31,000人の増加、ソーシャル・アシスタンス部門が16,000人の増加でしたが、政府部門は15,000人の減少、卸売部門が12,000人の減少、製造業が12,000人の減少となりました。
3. 8月の米消費者物価指数は前年同月比で2.9%上昇
米労働省が11日に発表した8月の消費者物価指数は前年同月比の上昇率が7月の2.7%から2.9%に加速しました。食品は前月比で0.5%値上がりし、およそ2年半ぶりの高い伸び率になりました。トランプ政権は一部品目に関税を免除するなどの対応に追われています。
CPIはおおむね予想通りの結果となり来週16-17日のFOMC会合で利下げ再開を確信させる内容と受け止められています。物価上昇率の水準は高いものの、FRBの関心はやや雇用情勢の悪化リスクへの対応に重心を置きつつあります。
4.9月のFOMC会合
FOMC会合9月16-17日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました。最近の指標は、経済活動の伸びが緩やかになっていることを示唆している。雇用の伸びは減速し、失業率は小幅に上昇したものの依然として低水準にある。インフレ率は上昇、やや高い水準で推移している。
FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。経済見通しに関する不確実性は依然として高い水準にある。FOMCは2つの責務の双方に対するリスクに細心の注意を払ってい、雇用の下振れリスクが高まったと判断している。
目標達成を支えるために、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0.25%引き下げて、4〜4.25%に据え置くことを決めた。FF金利の目標レンジのさらなる調整の程度と時期を検討する際、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびリスクのバランスを慎重に評価する。
FOMCは、国債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減する。FOMCは雇用の最大化を支援し、インフレを2%目標に戻すことに強く注力している。
金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。
決定はパウエル議長、ウィリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。ミラン理事は0.5 %の利下げを希望し、反対票を投じた。
今回のFOMCでは、0.25%の利下げを決めると同時に、今後も利下げを継続する見通しを示したことで、景気敏感株や消費関連株に買いが入り、ダウ平均は260ドル高となりました。但し、ナスダックとS&P500の平均は73ドル安と6ドル安になりました。
2025年10月1日: 村方 清
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