1.11月の株式式市場
11月の株式市場は、11月中旬に連邦議会での合意成立による政府機関の一部閉鎖が解除されたことに加えて、関税や政府機関職員の解雇などによる景気悪化から年内の利下げ観測が強まり、株式市場は投機性を増して上昇傾向を強めました。主要な動きは以下の通りでした。
11月3日:米サプライマネジメント協会が発表した10月の製造業景況感指数は48.7と市場予想を下回り、加えて相場が最高値圏にあることなどで、主力株の一部に持ち高調整の売りが出て、226ドル安(0.47%減少)。 11月4日:AI関連銘柄や相場の割高感が意識され、ハイテク株を中心に売りが広がり、251ドル安(0.53%減少)。 11月5日:5日発表のADP全米雇用レポートで、非農業部門の雇用者数は42,000人の増加となり、市場予想の22,000人を上回り、投資家心理の改善につながり、226ドル高(0.47%増加)。 11月6日:米雇用情勢の減速を示す調査会社のデータを受け、米景気の先行き不透明感が高まり、399ドル安(0.83%減少)。 11月7日:米連邦政府の一部機関閉鎖の解除に向けた動きが進展する思惑が浮上して、75ドル高(0.15%増加)。 11月10日:米連邦政府機関の一部閉鎖の解除に向けて、連邦議会上院が9日につなぎ予算を採決するための動議を可決し、近く上院で予算が可決する見通しになったことから、382ドル高(0.81%増加)。 11月11日:つなぎ予算が上院だけでなく、12日は下院でも採決される見通しになったことで、米政府機関の再開に向けた動きが前進したことで、559ドル高(1.18%増加)。 11月12日:米政府機関の一部閉鎖が解除に向かっているとの見方が引き続き、投資家心理を支えて、327ドル高(0.68%増加)。 11月13日:連日で最高値を更新した後で、AI銘柄を中心に売りが広がり、798ドル安(1.65%減少)。 11月14日:FRBの追加利下げ観測の後退が引き続き重荷となったことや米経済を巡る不透明感が根強いことで、310ドル安(0.65%減少)。 11月17日:FRBの追加利下げ観測が後退し、エヌビディアも決算発表前に持ち高調整の売りが優勢となり、557ドル安(1.18%減少)。 11月18日:19日のエヌビディアの決算発表を控えて、多くのハイテク株などに売りが出て、499ドル安(1.06%減少)。 11月19日:主力株の一角を買い戻す動きがあり、相場を支えて、47ドル高(0.10%増加)。 11月20日:同日発表の9月の米雇用統計で非農業部門の雇用数が前月比11万9000人増え、市場予想を上回ったものの、失業率は4.4%と市場予想より高く、21年10月以来の高水準となり、評価が分かれた。一方、エヌビディアは好決算で一時5%近く上昇したものの、ビットコインが急速に下がり、投資家心理が悪化して、387ドル安(0.83%減少)。 11月21日:FRBが12月9-10日に開くFOMCで利下げを決めるとの観測が高まり、主力株に買いが入り、493ドル高(1.07%増加)。 11月24日:FRBの追加利下げ観測が高まりから、ハイテク株に買いが広がり、203ドル高(0.43%増加)。 11月25日:25日発表の米小売売上高は前月比0.2%増と市場予想を下回り、9月の米卸売物価指数も食品とエネルギーを除くコアが前月比0.1%上昇と市場予想に届かず、FRBの利下げ観測を支える内容であったことで、664ドル高(1.42%増加)。 11月26日:低調な米経済指標を受けて、FRBの追加利下げ観測が意識されて投資家心理が改善し、315ドル高(0.66%増加)。 11月28日:FRBが12月9-10日に開くFOMCで利下げを決めるとの観測が高まり、289ドル高(0.60%増加)。
2.米国の雇用状況
米労働省が20日に発表した9月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比119,000人で、市場予想の50,000人を大きく上回りました。7月の雇用者数の確定値は72,000人で、9000人の減少、8月の改定値はマイナス4,000人で、26,000人の減少でした。9月の失業率は4.4%で、前月より0.1%悪化しました。労働参加率は62.4%で、前月より0.1%増加しました。8月の時間当たりの賃金上昇率は前月比で9セント増加しました。部門別ではヘルスケア部門が43,000人の増加、飲食サービス部門が37,000人の増加、ソーシャル・アシスタンス部門が14、000人の増加でしたが、運輸・倉庫部門は25,000人の減少となりました。
3.10月のFOMC要旨
FRBは11月19日に、10月28-29日に開いたFOMCの議事録を公表しました。多くの参加者が政策金利を少なくとも年末まで据え置くとの見通しをしていたことがわかりました。このため、12月9-10日に予定される次回のFOMCは分裂含みで、複数の連銀総裁がインフレ率の高止まりを警戒して追加利下げに慎重な発言をしています。一方、一部の理事は雇用情勢の失速懸念を強調して、次回の利下げへの支持を表明しています。
2025年12月1日:村方 清


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