Saturday, December 1, 2012

景気後退により対立が強まる欧州市場と“財政の崖”に影響される米国市場















1.11月の株式市場
11月の株式市場は欧州全体の景気後退を背景に、ギリシャ再建の2年延長による支援や2014年から2000年までの中期予算をめぐる内部対立が続く一方、米国ではオバマ大統領が再選した後、財政の崖をめぐる市場の警戒感が強まるなど、米国市場の不安定性が高まりました。市場の主要な動きは以下の通りでした。

111日:米サプライマネジメント協会の製造業景況感指数が市場の予測に反して上昇、10月のADP全米雇用レポートが非農業部門の雇用増加が前月より拡大するなど、景気後退観測が和らぎ、ダウ平均価格は136ドル高(1.04%増加)
112日:米政府発表の10月雇用増加数は171000人で、市場予想の125000人を大幅に上回ったものの(失業率は求職者の増加から、7.9%に増加)、大統領選挙の結果を見極めたいとの反応が強く、利益確定の売りが優勢で、139ドル安(1.05%減少)。
116日:大統領選挙後の政策協議が前向きに動き出すとの期待から、金融やエネルギー株など幅広い銘柄に買いが入り、133ドル高(1.02%増加)。
117日:ドラギ欧州中央銀行による欧州の景気についての慎重な見方と米国の大統領・議会選挙の結果、上下両院のねじれが続くため、“財政の崖”への懸念が高まり、313ドル安(2.36%減少)。下げ幅として昨年119日以来最大で、ダウは13,000ドルを割り込む。
118日:前日に続き、“財政の崖”をめぐる不透明感が強く、121ドル高(0.94%減少)。
1113日:“財政の崖”の懸念とギリシャ債務問題の警戒感から、59ドル安(0.46%減少)。
1114日:“財政の崖“をめぐる与野党協議が難航の見方から、185ドル安(1.45%減少)。
1116日:“財政の崖”をめぐる大統領と民主・共和両党の指導者の話し合いが始まり、年末までに回避できるとの期待感から、46ドル高(0.37%増加)。
1119日:“財政の崖”を回避できる期待が強まった他、米住宅指標の改善で投資家の心理が好転、今年96日以来の大幅増加となる208ドル高(1.65%増加)。
1121日:エジプトの仲介により、イスラエルとハマスの停戦合意が成立、中東の緊張状態が和らぐとの期待から、48ドル高(0.38%増加)。
1123日:年末商戦への期待などを背景に173ドル高(1.36%増加)。
1127日:11月の米消費者信頼度指数が73.7と49ヶ月振りの水準を回復したものの、
民主党のリード院内総務の“財政の崖”をめぐる発言から、89ドル安(0.69%減少)。
1128日:“財政の崖”に関するベイナー下院議長とオバ大統領の協議進展についての楽観的な見通しから、107ドル高(0.83%増加)。
1129日:第3四半期のGDP改定値が2.7%と上方修正されたことや“財政の崖”を回避する動きが強まるとの期待から、37ドル高(0.28%増加)。

2.景気後退により対立が強まる欧州連合
ギリシャ議会は118日に追加支援の条件として欧州連合から求められている財政緊縮策をかろうじて承認しました。この緊縮策には公務員の賃金や年金のカットを含む総額135億ユーロの歳出削減に加え、従業員の解雇を容易にする制度が含まれています。更に、1111日に欧州連合が求める94億ユーロの歳出削減を織り込んだ2013年度の予算を承認しました。これを受けて、欧州財務相会議は12日にギリシャの財政再建の2年延長を決めましたが、延長に伴う追加支援措置については合意できず、対立が続くことになりました。そして、ようやく27日になり、2020年における債務残高のGDP比率を124%に圧縮、既存金利の引き下げなどで合意、凍結中の437億ユーロの支援融資を再開することが決まりました。

一方、1122日と23日の両日に、2014年から2020年までの中期予算を協議していた欧州首脳会議も欧州委員会が提示した7年間で1兆ユーロの修正案について、更なる削減を求める英国など北欧諸国と農業補助金などの削減に反対するフランス・南欧・旧東欧諸国との対立が解消できず、来年1月に再度協議することになりました。

ギリシャ支援が難航したり、中期予算で欧州連合内部の意見が強く対立する背景には欧州連合が直面している景気後退の影響があると見られます。ユーロ圏内の第3四半期GDPが前期比0.1%減で、第2四半期の0.2%減に続き、2期連続となり、2009年のリーマンショック以降2度目のリセッションに陥りました。ドイツやフランスは0.2%増の成長率を維持したものの、南欧諸国がいずれも落ち込み(イタリアやスペインが0.2%減と0.3減であったのに対し、ギリシャは7.2%減、ポルトガルは0.8%減)、加えて北欧のオランダが1.1%減となったため、全体としてマイナスとなりました。また、一部のアナリストは第4四半期にはドイツやフランスもマイナス成長になる可能性があると見ています。加えて、30日に発表された10月の欧州連合の失業率は11.7%で、1996年以降の最悪水準を更新しました。国別ではスペインが26.2%、イタリアが11.1%で南欧諸国の悪化が一層進んでいます。

欧州連合の景気後退に関連して、英国のエコノミスト誌が1117日号で、フランスについても“欧州の中心部にある時限爆弾”と題する特集記事を掲載、フランス経済が深刻な状況に陥っていることを伝えました。記事では労働市場や製品市場の厳しい規制、および高い税金や社会保障費の負担が民間企業の競争力を失わせ、政府依存の経済構造が出来上がり、政府の債務負担が急激に増大しているとしています。フランス政府は英国のエコノミスト誌の見方は政府が導入した企業の税控除措置などに言及していないなどと反論していますが、欧州連合第2位の経済大国であるフランスが低迷状態にあることは間違いないようです。

いずれにしても、欧州連合の景気後退が顕著になればなるほど、更なる支援が必要と主張する南欧諸国とメンバー国からの支援拡大はこれ以上行なうべきでないとする北欧諸国の対立が一層大きくなっていくものと見られます。

3.米国大統領・議会選挙の結果
116日に行われた大統領選挙は現職のオバマ大統領がロム二―候補に対して得票数では50%対48%の接戦であったものの、選挙人数で323206という大差で勝利を収めました。

オバマ大統領の勝因は幾つかの理由がありますが、1.ミドルクラスの経済生活向上を第一とする主張の一貫性、2.オハイオなどの接戦州における運動員の組織力、3.時代遅れとも言うべき共和党の保守主義の限界等があると見られます。1についてはロム二―候補が共和党の予備選挙でリベラルから保守に変え、オバマ大統領との第1回テレビ討論会では予備選挙を通じて主張したことを否定するなど、大統領候補としての信頼性に問題点を起こしました。2については、オバマ候補は資金力で大企業や富裕層の大口寄付を確保していたロム二―候補に劣りましたが、多くの運動員が有権者を個別訪問するなど徹底した草の根運動が効果を上げました。最後に3については、共和党は伝統的な白人男性の価値観を前提とする保守主義に捉われすぎ、政治的な影響力を増している女性や人口が増加する中南米系住民の要求に十分対応していないという側面があったと思われます(女性有権者で55%がオバマ支持、投票者の13%を占める黒人では73%が、12%を占める中南米系では73%が、5%を占めるアジア系では73%がオバマ大統領に投票したとされています)。

大統領選挙に関連して、選挙前にオバマ大統領の圧倒的な勝利を予想する世論調査会社やメディアは殆どありませんでした。有名な調査会社のGallupABCなど米国3大テレビ放送やCNNも大きく外れ、正確な予想をしたのは数社のみでした。特に、NY Times紙の世論アナリストであるNate Silver氏は得票数、選挙人数に加え、接戦8州の分析も殆ど正解で、選挙後に大変注目されました。著名な世論調査会社や大手メディアが正確な予想ができなかった原因については、通信手段が家の固定電話から携帯電話やインターネットに大きく変わってきているのに対し、彼等が従来と同じく固定電話に限定した調査を行なっていること、中南米系住民は電話での調査に回答したがらないものの実際の投票に行くなどが指摘されており、現在の調査方法の妥当性に疑問が出されることになりました。

4.“財政の崖”問題
オバマ大統領が当選した翌日の7日はギリシャの財政緊縮策の議会承認の行方と同時に、米国が201311日から直面する“財政の崖”の懸念からダウ平均価格の終値が313ドル下落、翌日以降も大きく値を下げ続けました。

“財政の崖”は①ブッシュ減税の期限切れ、②給与税の被雇用者負担の引き下げと失業保険の給付期間の延長の失効、③昨年8月に合意された財政赤字削減案が策定されない時のトリガー条項による歳出の自動削減の3つで構成されています。118日に議会予算局は、これらの影響について、もし、そのまま推移すればGDPを0.5%押し下げ、2013年末の失業率が9.1%に達する恐れがあると警告しました。また、ブッシュ減税を延長された場合には、GDPを1.4%引き上げると同時に、雇用も180万人の増加する効果が期待できる半面、財政赤字は3300億ドル増加する恐れがあるとしました。さらに、減税延長の対象を25万ドル以下までとすれば、GDPを1.3%引き上げると同時に、160万人の雇用が増加される反面、財政赤字は2880億ドル増加する恐れがあるとしました。

オバマ大統領は1114日の記者会見で、“財政の崖”に対応する方法として、選挙期間中にも明らかにしたように、25万ドル以下のミドルクラスに対する減税措置は据え置き、25万ドル以上の富裕層に対する税率はクリントン政権時代の39%に引き上げる意向を改めて表明しました。また、今後財政負担の度合いが高まる社会保障費について、構造的に見直す用意があることを伝えました。

オバマ大統領はその後、15日のビジネス界のリーダー達との話し合いに続き、16日に民主・共和両党の議会指導者を集め、財政の崖をめぐる第1回の会議を開きました。その会議では大統領の要請に基づき、両党の関係者が年内の合意を目指すことで一致したとのニュースも伝えられ、1119日のダウ価格は前日より大きく上昇、208ドル高となりました。しかし、その後は、議会関係者の財政の崖をめぐる交渉が容易でないとの発言がある度毎に、相場の変動が大きくなる状態が続いています。

オバマ大統領としては財政赤字の改善にはブッシュ減税、特に富裕層に対する減税優遇措置の廃止が不可欠と考えています。20118月に連邦政府の借入れ限度枠の引き上げに関連して、同じ財政赤字問題に直面した時に、ティーパーティーの影響力が強い共和党下院の強硬論に譲らざるを得なかった苦い経験から、今回は大統領選挙や議会選挙の結果を受けて、富裕層への優遇措置は認められないとの強い立場を取っています。一方、共和党も上下両院とも一切の増税を認めないとするテーパーティーグループの影響力が弱まったこともあり、富裕層への増税に反対はしないものの、財政赤字の改善には財政支出、特に社会保障費関係の削減との一体化が不可欠であるとしています。但し、オバマ大統領が提案する先行してミドルクラスの減税措置を据え置く案に対しては、強い抵抗を示しています。

いずれにしましても、年末にかけて、“財政の崖”の回避をめぐり、様々な議論が展開され、市場の動きもその都度、大きく変動を繰り返していくことになると思われます。
                     (2012121日:  村方 清)

Friday, November 2, 2012

欧州連合の組織強化を図る欧州市場と企業業績悪化の米国市場
















1.10月の株式市場
10月の株式市場はギリシャやスペインの経済の混迷が続く一方、欧州連合が108日の理事会で、欧州安定メカニズムの正式な発足を決定したり、1018日の首脳会議で欧州中央銀行の監督一元化で合意するなど、組織や機能の強化の面では前進しました。一方、米国市場はGDPや雇用といったマクロ面での改善は見られたものの、海外市場の低迷、特に欧州の景気後退を反映して、国際的にビジネスを展開する米国大手企業では四半期決算が悪化するところが目立ちました。市場の主要な動きは以下の通りでした。

101日:米サプライマネジメント協会(ISM)発表による9月製造業景況指数が市場予想を上回る前月比1.9ポイント高の51.5となり、ダウ平均価格は78ドル安(0.58%増加)。
102日:スペインの財政問題に対して、すぐには支援を要請しないとのスペイン首相の
方針が伝わり、再び不透明感が意識され、38ドル安(0.24%減少)。
104日:週間の米失業保険申請件数は前週比4,000件増で市場予想ほど増加しなかったことや欧州中央銀行総裁が定例理事会後の記者会見で、南欧諸国の国債買い取り策を確認したことで、81ドル高(0.60%増加)。
105日:米政府発表の9月の雇用増加数は114000人で、前月の上方修正もあり、失業率は8.1%から7.81%に改善(20091月以来の水準)し、35ドル高(0.26%増加)。
109日:IMF201213年の世界経済見通しを下方修正し、世界景気の先行き懸念から、投資家のリスク回避の売りが優勢となり、110ドル安(0.81%減少)。
1010日:アルコアの企業業績の悪化など米企業の先行きに対する懸念と欧州株式市場の大半が下落したことから、129ドル安(0.95%減少)。
1015日:米政府発表の9月小売売上高は前月比1.1%増で、市場予想の0.7%を上回ったことから、95ドル高(0.72%増加)。
1016日:10月の住宅市場指数が20066月以来の高水準になったことや企業業績の悪化懸念が後退し、128ドル高(0.95%増加)。
1019日:マクドナルドなどの米国企業の四半期決算が相次いで市場予想を下回ったことから、IT株などを中心に売りが広がり、205ドル安(1.52%減少)。
1023日:デュポン、スリーエムなど米国の主要企業が収益予想を下方修正したため、投資家の景況感が悪化、243ドル安(1.82%減少)。
1026日:米国政府発表の第3四半期のGDP2%で、市場予想を上回ったものの、アップルなどの企業業績が予想を下回り、4ドル高(0.03%増加)。
1031日:ハリケーン“サンディ”による2日間の休場後の最初の取引日で積極的な買いが控えられ、利益確定のための売りの優勢となり、11ドル安(0.08%減少)。

2.欧州安定メカニズムとスペイン救済問題
108日に開かれた欧州連合理事会で、欧州安定メカニズム(ESM)の正式な発足を決定しました。元来、欧州メンバー国の救済には20106月発足した欧州金融安定ファシリティ(EFSF)がありましたが、3年間の期限付きであったことから、それを受け継ぎ組織が必要とされていました。今回のESMにおける資金枠の規模は5000億ユーロで、EFSFの融資規模である3000億ユーロを大きく上回ります。また、経営不振の金融機関への直接融資が可能になるなど、EFSFなどに比べて権限も強化されています。

一方、S&P1011日にスペイン国債の格付けを2段階引き下げ、最低ランクである投資適格の一つ上としました。これにより、スペインが欧州連合に資金支援の要請をする圧力が高まっています。しかし、ESMが機能するかどうかには依然問題があります。最大の出資国であるドイツなどには支援を受ける国が財政再建計画を徹底化させることを求めているのに対し、スペインは国家主権を制限されかねないとの強い懸念から、ESMからの融資には依然慎重になっています。

ESMの発足と同時に、1018日から開かれていた欧州首脳会議ではユーロ圏の銀行を欧州中央銀行が一括して監督権限を持たせる銀行監督一元化を2013年から段階的に導入することで合意しました。欧州連合メンバーは欧州中央銀行による銀行一元化の推進に合意していましたが、具体的な進め方については意見が分かれていました。フランスや南欧諸国が全銀行の監督に賛成しましたが、ドイツなどは当初は大手銀行だけを対象にすべきとしました。このため、欧州首脳会議では妥協案として、各国金融当局が欧州中央銀行の出先機関として活動することで合意に達することになりました。

10月に起きた一連の動きは、欧州連合が共同体としての組織や機能の強化に向かうことを示したものと言えます(今年のノーベル平和賞は欧州連合が受賞)。しかしながら、欧州連合が各国の政治的な主権を残しながら、共同体として強制力のある決定を実行できるのかは依然疑問があり、支援国と受入国、いずれも其々のメンバーの国内政治情勢によっては危機の再燃があるように思われてなりません。

2.米国経済の現状と米企業の業績悪化
今年の大統領選挙の最大の争点とされている雇用問題に関連して、105日に米国政府は9月の非農業部門の雇用者増が前月に比べ114000人増となり、失業率も8.1%から7.8%に低下したことを発表しました。同時に8月の雇用増は96000人から142000人へ上方修正しました。米国の失業率が7.8%となったのは20091月以来であり、現職のオバマ大統領としても、共和党関係者が主張していた失業率が8%以上で、再選された大統領はいないとの批判に反発することができます(112日発表の10月失業率も7.9%)。

また、1026日に、米商務省が第3四半期のGDPを発表しましたが、第2四半期の1.3%増から2.0%増へ改善を示しました。特に、GDPの7割を占める個人消費が2.0%増であったことや政府部門の支出・投資がプラスになったことが貢献しました。しかし、企業の設備投資は先行きの不確実性もあり、1.3%減と6四半期振りのマイナスとなりました。

その一方、10月は米国主要企業の四半期業績発表がありましたが、半分近くで純利益が前年同期比で1.2%減となっています。これは業種を問わず、海外事業比率が高いIBM, マクドナルド、グーグル等など多くの企業に共通しており、欧州市場での業績不振に加え、ドルに対するユーロ安による為替差損が大きかったのが原因とされています。株式市場でもこの影響が出て、1021日の週はダウ価格が1.8%の減少となりました。また、第3四半期の結果に伴ない、第4四半期の見通しを下方修正する企業が多くなっています。

3.米国大統領候補による討論会
10月の大統領候補による3回のテレビ討論会前までは、現職のオバマ大統領の再選の可能性が高いとの調査が大半でした。しかし、第1回のテレビ討論会でロムニー候補が戦略を変えたことにより、ロムニー候補が支持率を大きく上げることになりました。その後、副大統領候補同士のテレビ討論さらに第2回と第3回のテレビ討論会で、オバマ大統領候補がかなり巻き返したと見られていますが、第1回の討論会の影響は大きく、現時点では互角との調査結果が多いようです。以下は各討論会における議論の特徴です。

1回の討論会(103日):オバマ大統領は、就任時において戦後最大の不況であったにもかかわらず、経済回復を実現、5百万人の民間雇用が増加したことや失業率が7.8%に低下したことなど過去4年間の実績を強調しました。これに対し、ロム二―候補はオバマ政権の実績を全く評価することなく、問題点だけを取り上げ、米国の財政赤字が半分にできなかったことや失業率が7.8%と依然高止まりにあることを指摘しました。一方、オバマ大統領はロムニー候補の経済政策について、選挙期間中に主張してきたこと踏まえ、ミドルクラスを中心とする多くの税控除廃止をしない限り、米国民への一律20%の追加減税で5兆ドル、軍事費の増加などで2兆ドルの財源不足は、ミドルクラスを中心とする多くの税控除廃止をしない限り、現在の財政赤字を一層悪化すると強く批判しました。しかし、ロムニー候補はこうした批判に対して、カメレオンのように従来の主張を変え、財政赤字を悪化させるような一律減税を行なわず、税率の引き下げは優先度の低い政府補助金の見直しで対処するなどを伝え、オバマ大統領の批判を巧妙にかわしました。こうした相手候補の問題点だけを強く批判し、自分の主張は有権者に受けのよい新たな提案を並び立てるというロム二―候補のカメレオン戦略は第1回テレビ討論までロム二―候補を知らなかった有権者に好印象を与えることになりました。CNNは討論会後の調査によればロムニー候補の65%に対し、オバマ大統領は27%で、ロム二―候補に多くのポイントが上がりました。

2回の討論会(1016日):第1回の討論会でロムニー候補のカメレオン戦略に適切に対応できなかったオバマ大統領が今回の一般参加者との討論会では反転攻勢に出て、ロムニー候補の主張の矛盾点を鋭く批判、激しい論戦となりました。経済問題では、ロムニー候補が7.8%の失業率では強い経済とはいえず、自分が大統領になれば強い経済を再生させ、多くの雇用を創出すると主張したのに対し、オバマ大統領はロムニー候補の経済政策は中間層を犠牲にして、富裕層を富ませる経済を繰り返すことになるとの批判を行いました。一方、エネルギー政策では、ロムニー候補はオバマ政権が過剰な規制で石油や天然ガスの生産量が低下したとするのに対し、オバマ大統領は米国内の石油生産は過去のどの政権よりも増加したこと、更にロムニー候補は再生可能エネルギーの計画が欠けていると批判しました。さらに、外交・安全保障問題についても、ロムニー候補が9月のベンガジ米国領事館襲撃事件をオバマ政権の危機管理能力の欠如と批判したのに対し、オバマ大統領は最終的な責任は自分にあり、全容解明中の事件を政争の具にすべきでないと反論しました。討論会後の調査ではCNNはオバマ大統領が46%に対し、ロムニー候補が39%で、オバマ大統領が僅少さで巻き返しに成功したとしました。

3回の討論会(1022日):第2回と同様に、オバマ大統領が過去4年間の実績を背景に攻勢に出たのに対し、ロム二―候補は再びカメレオンのように従来の主張を変え、オバマ政権の対応を肯定する場面も多く、防御的な姿勢が目立ちました。イランの核開発問題をめぐって、ロム二―候補が未だにイランが核兵器保有を放棄していないことを批判したものの、オバマ政権がイランに対する厳しい経済制裁は正しく、武力攻撃は最後の手段であると同意しました。また、アフガンからの米軍の撤退を2014年末までに行うことについても、ロム二―候補はオバマ政権の政策が正しい方向と肯定しました。一方、軍事費の削減については、ロム二―候補は世界に対する強い米国のプレゼンスを示すために正しくないと主張しましたが、オバマ大統領は現在軍事的な戦略が変化しており、従来のように船舶を多く保有することは必要ではなく、軍の能力を高めることが必要と反駁しました。また、中国政策についても、ロム二―候補はオバマ政権の対中政策が弱すぎると批判しましたが、オバマ大統領は中国とは敵対関係にあるが、一方で国際的なルールに従う限り、パートナーになる可能性もあるとして、問題に応じた適切な措置が必要としました。討論後の調査では、CNNがオバマ大統領の48%に対し、ロム二―候補が40%、CBSがオバマ大統領の53%に対して、ロム二―候補の23%で、いずれもオバマ大統領の優勢でした。

なお、109日に行なわれたバイデン副大統領とライアン候補のテレビ討論会は、ライアン候補がロム二―候補とは異なり、伝統的な共和党の政策や党大会の綱領に従った主張をしたために、民主党と共和党の政策の違いが明確に出て、実のある討論会となりました。ライアン候補はオバマ政権の大きな政府による景気回復は成功しておらず、民間企業主体の経済回復が中心で、このためには税の20%引き下げや規制緩和が重要としました。これに対し、現職のバイデン副大統領は米国の財政赤字が続く中で、20%の減税を実施した場合、10年間で5兆ドルの減収になるにもかかわらず、どのようにして黒字化を達成するかを示していないと批判しました。また、外交について、ライアン候補はアフガンが安全でない以上、米国は撤退すべきでないと主張しましたが、バイデン副大統領は米国と同盟国との間では彼らの撤退後はアフガン政府による自立的防衛力の強化で補うとい合意があると反論しました。討論後の調査で、CNNはほぼ互角としましたが、3大ネットワークの一つであるCBSはバイデン候補が50%で、ライアン候補が31%としました。

4.116日の大統領選挙を控えて
116日の大統領選挙について、本来比較されるべきはオバマ大統領の4年間の実績とロムニー候補の18ヶ月間の主張であったと思われます。しかし、第1回討論会で、ロム二―候補はオバマ大統領の問題点に焦点を当てる一方、従来の自分の主張を否定し、有権者に受け安い新たな提案を行なうというカメレオン的な戦略を使いました。そして、現在、共和党や彼等に近いメディアは第1回討論会におけるロム二―候補の予想外の善戦という結果を踏まえ、支持率で両候補が大接戦であることを強調しています。しかし、大統領選挙は両候補が各州で獲得した代議員の総数で決まるものであり、どちらが過半数である270票を得るかにかかっています。代議員数の大きなカリフォルニア州、ニューヨーク州、イリノイ州はいずれもオバマ大統領が圧倒的に優勢であり、焦点は接戦州と言われる中西部のコロラド州、オハイオ州、ウィスコンシン州、南部のフロリダ州やバージニア州など8つの州の票の行方にあります。現状ではロム二―候補はこうした州で殆ど全てに勝利することが必要であるのに対し、オバマ候補はオハイオ州とウィスコンシン州の2州で勝利するだけで代議員の過半数を獲得できると見られており、優勢さを保っている状況です。

なお、今回の大統領選挙に関連して、10月に入り、ビジネス界のCEO経験者は大統領職に適切でないとないとの識者の意見に接しました。彼は現在プリントン大学のブライドン教授(元連銀副議長)で、101日付のウオールストリートジャーナル紙に記事を掲載しました。彼が理由に上げているのはビジネスの世界では効率主義を重んじるが、政治の世界ではできる限り多くの人に恩恵が公平に行くような平等主義が必要であること、CEOは部下に命令を下すだけですむが、政治家は対等である国民に対して、理解し、実行してもらうことの説得が必要であり、行動基準が異なることを上げています。そして CEO出身で大統領の仕事に失敗した例としてフーバー元大統領やブッシュ元大統領があるとしています。現時点で、Bain CapitalCEO兼オーナーであったロム二―候補が大統領に選ばれる可能性は少ないと見られますが、もし彼が大統領になるようなことがあれば、こうした識者の意見を参考に注意深く見守っていくことが必要になると思います。
                (2012年11月2日: 村方 清)

Monday, October 1, 2012

前進を示した欧州財務問題と連銀の追加緩和策が導入された米国市場



 













1.9月の株式市場
9月の株式市場は、欧州が96日に欧州中央銀行理事会が南欧国債の買い取りに大筋の合意に達したことや米国が913日に連銀による量的緩和第3弾(QE3)を決定したことで、市場にとって好ましいものとなりました。この結果、通常下落相場となる9月が今年はダウ平均価格で約2.7%上昇、第3四半期の実績も4.7%の増加で、2010年以来の上昇相場となりました。市場の主要な動きは以下の通りでした。

94日:米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した8月の製造業景況指数が市場予想に反し、20097月以来の低水準となり、ダウ平均価格は55ドル安(0.42%減少)。
96日:欧州中央銀行(ECB)の理事会で南欧国債の無制限買い取りに大筋の合意が達したこと、ADP雇用レポートで8月の非農業部門の民間雇用者数が大幅に改善したことなどから、245ドル高(1.87%増加)。20071228日以来、4年8ヶ月ぶりの高水準。
97日:米政府発表の8月の雇用増加数は市場予想を下回る9万6千人に留まったものの(但し、失業率は労働市場への参加率が低下し、8.3%から8.1%に改善)、123日の米連銀公開市場委員会(FOMC)での追加的緩和策への期待から、15ドル高(0.11%増加)。
912日:ドイツの憲法裁判所で欧州安定メカニズムの合憲判決が出たものの、FOMCの結果を見極めたいとの姿勢から、10ドル高(0.07%増加)。
913日:FOMCで、量的緩和第3弾(QE3)として、14日から月額400億ドルの住宅ローン担保証券の購入することを決定、米国景気を支える市場の期待感から、207ドル高(1.55%増加)。96日の高値を更新。
917日:欧州株式相場の下落やニューヨーク連銀発表の9月の製造業景況感指数が市場予想より悪化したことから、40ドル安(0.30%減少)。
919日:米中古住宅販売件数が年率ベース482万戸で、市場予想の456万戸を上回ったことから、13ドル高(0.10%増加)。
925日:フィラデルフィア連銀総裁が米連銀の追加金融緩和政策(量的緩和第3弾)に懐疑的な見方を示したことから、利益確定の売りが優勢となり、101ドル安(0.75%減少)。
926日:政府の緊縮策に反対するスペインの大規模ストやギリシャのゼネストの動きから、南欧の債務危機への警戒感が再燃、利益確定の売りが広がり、44ドル安(0.33%減少)。
927日:スペイン政府が歳出削減を含む2013年度予算案を提示したことで、72ドル高(0.54%増加)。
928日:シカゴの購買管理協会が発表したPMI(購買管理インデックス)の景気指数が49.750を割ったことや9月の消費者態度指数の速報値が下方修正されたことから、49ドル安(0.36%減少)。但し、9月全体では約2.7%の上昇(第3四半期で4.7%上昇)。

2.欧州債務危機問題
欧州中央銀行は9月6日の理事会で南欧国債の無制限買い入れの仕組みで大筋合意しました。欧州中央銀行による国債購入について、当初はンデスバンク総裁だけでなく、フィンランドやオランダの中央銀行総裁も反対しました。しかし、最後はドイツだけの反対となり、理事会の承認となりました。これを受けて、スペインの10年物国債利回りが低下、6%に近づくなどの効果が現れ、欧米の株式市場でも株価が大きな値上がりをしました(ダウ価格は245ドル高となり、リーマン・ショック後につけた20071228日の高値を更新)。

しかしながら、今回の合意を実行するに際しては幾つかの問題が指摘されています。一つは欧州安定メカニズム(ESM)の稼動時期の見通しがまだ立っていないことにあります。12日にドイツの憲法裁判所はESMを合憲の判断を下しましたが、フィンランドやオランダ国内ではこれ以上の支援のための拠出に強い反対が起こっており、メンバー国がESMによる支援の枠組みを決定するにはまだ障害があります。更に、申請国がESMECBの支援を受けるには財政再建を公約することが義務付けられています。しかし、それらの具体的な内容について、支援国と受入国の意見を一致させることは容易でありません。特に、メンバー国が財政再建を後退または放棄させたりすれば、欧州中央銀行は国債購入を停止することになりますが、そのようなメカニズムをどのように織り込むかが課題となります。

いずれにしましても、今回の理事会決定は724日のドラギ総裁の声明よりは理事会の合意を得たことで、一歩進んだことは間違いありません。しかし、欧州中央銀行の権限とメンバー国の主権の調整問題が依然としてあり、欧州中央銀行による実際の国債購入に至るまでにはまだ少し時間がかかるように思われます。

3.米連銀のQE3決定
米連銀の公開市場委員会(FOMC)は913日に、量的緩和第3弾(QE3)として住宅ローン担保証券(MBS)を毎月400億ドル買い入れること、さらに現在の低金利を2014年末から2015年半ばまで延長することを決定しました。MBS買い入れは914日から実施し、ツイストオペも今年末まで継続、これらにより、FOMCの長期証券保有は今年末まで毎月850億ドルの増加があることになりした。また、今回のQE3の実行期間については具体的な期限を定めず、雇用情勢の改善の兆候が出るまでとしました。

連銀議長は記者会見で、QE3を実施する背景として、最近の数ヶ月間の米国経済は失業率が低下していく水準の成長を実現していないことから(第2四半期のGDPは前年比1.7%増に留まる)、今回の措置が米経済の支えとなり、特に低迷する住宅市場に良い効果を与えるとの期待感を伝えました。市場の反応は極めて前向きで、その日のダウ価格は約207ドル高(1.55%増加)で、96日につけた約48ヵ月半振りの高値の更新となりました。

今回の措置が米国経済にどの程度の効果を上げるかについては専門家の評価は分かれています。確かにこうした金融政策がただちに景気回復や雇用改善に効果が出るわけではありません。しかし、バーナンキ連銀議長が記者会見で述べたように、量的緩和は米国債の金利だけでなく、住宅ローンや社債などの金利を引き下げ、それが株式市場や住宅価格の上昇となれば、消費者の資産価値を引き上げることに結びつき、消費の拡大や需要の増加を通じて、最終的に企業の雇用増加をもたらす間接的な効果は期待できると見られます。

また、量的緩和に対する批判として、一部のエコノミストや共和党議員が懸念するインフレ圧力について、連銀議長は過去数年間に渡り、目標水準の2%に近い水準となっていること、さらに今後も中期的に安定したインフレ率が見込まれており、今回の措置がインフレ圧力を高めるとの一部の見方を否定しました。

いずれにしましても、現在米国経済の回復が緩慢な状態になっている時には、金融政策よ
り財政政策の方が効果的ですが、連邦議会、特に共和党支配の下院ではオバマ再選阻止と言う政治的な意図から、オバマ大統領の追加財政政策が採択されていません。こうした状況からすれば、連銀による金融政策しか期待するものはなく、その意味で、今回の連銀の決定は評価されるべきものと思われます。

4. オバマ大統領のリードをもたらした民主党全国大会
94日から6日まで、民主党の全国大会がノースカロライナのシャーロットで開かれました。第1日目に党の政策綱領として、ミドルクラスの経済的安定を目指した米国経済の復活、アジア太平洋地域の重視、持続可能なエネルギー自給体制の確立等が採択されました。

2日目にクリントン元大統領は、約50分のスピーチを通じて、オバマ大統領が取り組んでいる経済再生・失業問題は過去80年の歴史の中で最も難しいものであるが、着実に成果を上げており、更なる改善のために大統領への支持を訴えました。その一方、共和党のロムニー候補が提案する減税、特に富裕層減税や規制緩和による経済政策では、過去のレーガン元大統領やブッシュ前大統領と同じく、財政赤字が拡大、更なる不況に陥る可能性があることを伝えました。彼のスピーチで興味深かったのは、1960年からの52年間で、共和党政権が28年間、民主党政権が24年間であったものの、雇用創出では共和党政権が24百万人であったのに対し、民主党政権は42百万人であり、民主党が政府依存の経済を志向しているという指摘は正しくないとしました。また、ロムニー候補側がオバマ政権の誤った措置としてあげているメディケアの7160億ドルの節約については、この節約は病院や保険会社に支払うべき金額を削減したもので、メディケアの長期存続のために必要であったことを説明しました。

3日目の現職のオバマ大統領が指名受託演説では、最悪期にあった米国経済の立て直しや自動車産業の復活といった実績はあったものの、当初の目的が達成されたわけではなく、次の4年間はミドルクラスの経済的な安定を目指した米国経済の力強い復活を図りたいと訴えました。オバマ大統領とロムニー候補との経済政策の違いは以下の点にあります。

1.ロムニー候補は規制緩和と減税、特に富裕層の減税を行うことによって、民間部門による自立的回復を主張するのに対し、オバマ大統領は製造業の復活、エネルギー、インフラ、教育投資等の分野において政府が積極的な役割を担う必要があることを強調しました。
2.メディケアなどの社会保障関係プログラムについて、ロムニー候補は民間の医療保険制度を前提に、国はバウチャーを支給することを提案するのに対し、オバマ大統領は政府によるメディケアなどの制度の維持を前提に、経費の抑制を図ることが重要としています。

こうした違いは、オバマ大統領も指摘するように、米国が目指すべき価値観の違いにあります。ロムニー候補は政府の介入を少ない、個人の自由な権利が最大限尊重される社会を重要とするのに対し、オバマ大統領は個人の権利の尊重と共に、個人の社会的負担が共有されるべき社会が望ましいとしています。そして、オバマ大統領は、今回の選挙において、米国民はどちらを望むのかの選択をすべきとしています。

ちなみに、両党の全国大会を終えた後に取られた99日のGallup社の支持率調査で、それ以前は均衡していた数字が、オバマ大統領が49ポイントでロム二―候補の44ポイントを5ポイントリードする形になりました。また、オバマ大統領の仕事を評価すると回答したものが50%で、評価しないの44%を6%上回ることになりました。

5.ロムニー候補の47%発言が共和党に悪影響を与えかねない議会選挙
民主党全国大会以降も、イスラム教預言者ムハマドを侮辱した米国で製作された映画がイスラム圏で反米デモを拡大させたことに対して、ロムニー候補はオバマ大統領の非難を急ぐあまり、政権批判の中で、その直後にリビアの米国大使がデモ隊に殺害されたことに言及しませんでした。こうした性急なロムニー候補のオバマ政権批判は、民主党関係者だけでな共和党の一部から非難を受けました。さらに918日に公開されたテープで、ロムニー候補が今年5月にフロリダ州での非公開の資金集めパーティーで、米国の約47%の人達の経済生活は何らかの形で政府に依存しており、彼らに自立が期待できない以上、自分の責任ではないとのスピーチが明らかにされ、ロムニー候補のイメージを急速に悪化させることになりました。924日付のNew York Times紙の調査では、116日の大統領選挙で、オバマ大統領が勝つ可能性は77.7%になっているとしています(270名が必要とされる選挙人ベースでは、オバマ大統領の309.3名に対して、ロムニー候補の228.7名)。

こうしたロムニー候補のイメージの悪化は大統領選挙だけでなく、議会の上院選挙でも野党の共和党が苦戦していることを920日付のNew York Times紙が伝えています(同様な記事は926日付のLA Times紙も掲載)。その記事によれば、共和党全国大会が開かれる以前の819日の週では、民主党が現在多数を占めている上院で再び多数を占める確率は39%であったものの、現在は接戦州とされたバージニア州やウィスコンシン州などで、民主党候補がリードしていることもあり、79%に上昇したとしています。民主党候補が支持率を増加している理由として、ロムニー候補の好感度が低いことに加え、彼が具体的な政策を示さないこと、さらに副大統領候補にライアン候補を選んだことで、彼が共和党のより保守的なイデオロギーに影響されているとの印象を与えていることを上げています。

いずれにしましても、共和党の大統領予備選では資金力や組織力で他の候補を圧倒したロムニー候補でしたが、大統領選挙では現在の状況を見る限り、彼の特殊なビジネス世界での経験がプラスとはならず、逆に国をリードする大統領という政治家の資質に大きな疑問を投げかける結果になっています。この点、10月に予定される3回の大統領候補者の討論会で、ロムニー候補がよほど大きなポイントを上げない限り、オバマ大統領の優位性は変わらないものと思われます。
               (2012101日: 村方 清)