1.4月の株式市場
4月の株式市場は、前半期ではトランプ政権が打ち出した追加関税措置による影響が大きく出ましたが、後半期では強まる長期金利の上昇傾向が株式市場の不安定化をもたらしました。主要な動きは以下の通りでした。
4月の株式市場は、前半期ではトランプ政権が打ち出した追加関税措置による影響が大きく出ましたが、後半期では強まる長期金利の上昇傾向が株式市場の不安定化をもたらしました。主要な動きは以下の通りでした。
4月2日:規制強化が懸念されるアマゾンなどのハイテク株が大幅に下落、米中貿易摩擦の悪影響が予想されるキャタピラーなども大きく下げ、ダウ平均は459ドル安(1.90%減少)。
4月3日:前日にハイテク株が大幅に低下した反動で、自律反転を期待した買いが優勢で、389ドル高(1.65%増加)。
4月4日:中国政府による106品目に報復関税をかけるとの発表から売りが先行したが、米政府の新たな措置は検討していないとの報道が伝えられ、米中交渉が進むとの思惑から、231ドル高(0.96%増加)。
4月5日:米中貿易摩擦が激化するとの警戒感が後退したことや来週から本格化する米主要企業の4半期決算への期待から、241ドル高(0.99%増加)。
4月6日:3月雇用統計で雇用者増加数が103,000人と市場予想の180,000人を大きく下回ったことに加え、トランプ大統領の追加関税の検討指示で、米中の貿易摩擦問題が激化するのではないかとの懸念が高まりで、572ドル安(2.34%減少)。
4月9日:前週末に大きく下落した反動と米中貿易摩擦をめぐる過度な警戒感が後退したこともあり、46ドル高(0.19%増加)。
4月10日:中国の習近平国家主席が外資に国内市場を開放する方針を発表したことで米中の貿易摩擦の緩和への期待や原油先物相場の上昇等で、429ドル高(1.79%増加)。
4月11日:前日に大きく上昇した反動とトランプ大統領がシリアへの軍事行動を示唆したで地政学リスが高まり、219ドル安(0.90%減少)。
4月12日:トランプ大統領のシリア攻撃の早期可能性を否定するツイーターで警戒感が後退したことや長期金利の上昇で金融株が買われ、294ドル高(1.21%増加)。
4月13日:四半期業績を発表したJPモルガン等は法人減税による増益で、貸付の伸びが十分でなく下落、シリア情勢の不透明感もあり、リスク回避の売りが優勢で、123ドル安(0.50%減少)。
4月16日:米英仏によるシリア攻撃が完了し、中東情勢をめぐる不透明感が後退、米企業の四半期決算への期待から、買いが優勢で、213ドル高(0.76%増加)。
4月17日:米主要企業の好決算が続き、投資家心理が強気となり、ハイテク株を中心に買いが優勢で、214ドル高(0.87%増加)。
4月18日:四半期業績の悪化したIBMが大きく売られ、39ドル安(0.16%減少)。
4月19日:米長期金利の上昇基調への警戒感やスマートフォンの需要停滞との見方から、83ドル安(0.34%減少)。
4月20日:アップルがスマートフォンの販売鈍化から大きく下落、米長期金利の上昇で株式の割高感が意識され、多くの銘柄に売りが優勢で、202ドル安(0.82%減少)。
4月23日:米長期金利の指標である10年物国債の利回りが一時2.99%まで上昇、134ドル安まで下落したが、その後業績期待の買いが優勢となり、下げ幅が減少、14ドル安(0.06%減少)。
4月24日:四半期決算を発表した3Mとキャタピラーが原材料高から業績悪化が伝えられ両銘柄の株価が急落、さらに長期金利上昇で、株全体が売られ、425ドル安(1.74%減少)。
4月25日:米長期金利の上昇を受けて、株式を買い控える動きが広がったが、四半期業績が好調であったボーイングが4%上昇したこともあり、60ドル高(0.25%増加)。
4月26日:クレジットカードのビザの四半期決算の好調さと米長期金利の低下で、株式市場の割高感が後退、安定配当が見込める不動産や公益事業に買いが優勢で、239ドル高(0.99%増加)。
4月27日:四半期業績が不調なエクソンモービルが下げたことで、11ドル安(0.05%減少)。
4月30日:Celgeneなどのヘルスケア株や通信株が大きく下落したことや原油価格の上昇によるコスト増で多くの株が売られ、148ドル安(0.61%減少)。4月全体として、ダウは0.25%の微増。
4月3日:前日にハイテク株が大幅に低下した反動で、自律反転を期待した買いが優勢で、389ドル高(1.65%増加)。
4月4日:中国政府による106品目に報復関税をかけるとの発表から売りが先行したが、米政府の新たな措置は検討していないとの報道が伝えられ、米中交渉が進むとの思惑から、231ドル高(0.96%増加)。
4月5日:米中貿易摩擦が激化するとの警戒感が後退したことや来週から本格化する米主要企業の4半期決算への期待から、241ドル高(0.99%増加)。
4月6日:3月雇用統計で雇用者増加数が103,000人と市場予想の180,000人を大きく下回ったことに加え、トランプ大統領の追加関税の検討指示で、米中の貿易摩擦問題が激化するのではないかとの懸念が高まりで、572ドル安(2.34%減少)。
4月9日:前週末に大きく下落した反動と米中貿易摩擦をめぐる過度な警戒感が後退したこともあり、46ドル高(0.19%増加)。
4月10日:中国の習近平国家主席が外資に国内市場を開放する方針を発表したことで米中の貿易摩擦の緩和への期待や原油先物相場の上昇等で、429ドル高(1.79%増加)。
4月11日:前日に大きく上昇した反動とトランプ大統領がシリアへの軍事行動を示唆したで地政学リスが高まり、219ドル安(0.90%減少)。
4月12日:トランプ大統領のシリア攻撃の早期可能性を否定するツイーターで警戒感が後退したことや長期金利の上昇で金融株が買われ、294ドル高(1.21%増加)。
4月13日:四半期業績を発表したJPモルガン等は法人減税による増益で、貸付の伸びが十分でなく下落、シリア情勢の不透明感もあり、リスク回避の売りが優勢で、123ドル安(0.50%減少)。
4月16日:米英仏によるシリア攻撃が完了し、中東情勢をめぐる不透明感が後退、米企業の四半期決算への期待から、買いが優勢で、213ドル高(0.76%増加)。
4月17日:米主要企業の好決算が続き、投資家心理が強気となり、ハイテク株を中心に買いが優勢で、214ドル高(0.87%増加)。
4月18日:四半期業績の悪化したIBMが大きく売られ、39ドル安(0.16%減少)。
4月19日:米長期金利の上昇基調への警戒感やスマートフォンの需要停滞との見方から、83ドル安(0.34%減少)。
4月20日:アップルがスマートフォンの販売鈍化から大きく下落、米長期金利の上昇で株式の割高感が意識され、多くの銘柄に売りが優勢で、202ドル安(0.82%減少)。
4月23日:米長期金利の指標である10年物国債の利回りが一時2.99%まで上昇、134ドル安まで下落したが、その後業績期待の買いが優勢となり、下げ幅が減少、14ドル安(0.06%減少)。
4月24日:四半期決算を発表した3Mとキャタピラーが原材料高から業績悪化が伝えられ両銘柄の株価が急落、さらに長期金利上昇で、株全体が売られ、425ドル安(1.74%減少)。
4月25日:米長期金利の上昇を受けて、株式を買い控える動きが広がったが、四半期業績が好調であったボーイングが4%上昇したこともあり、60ドル高(0.25%増加)。
4月26日:クレジットカードのビザの四半期決算の好調さと米長期金利の低下で、株式市場の割高感が後退、安定配当が見込める不動産や公益事業に買いが優勢で、239ドル高(0.99%増加)。
4月27日:四半期業績が不調なエクソンモービルが下げたことで、11ドル安(0.05%減少)。
4月30日:Celgeneなどのヘルスケア株や通信株が大きく下落したことや原油価格の上昇によるコスト増で多くの株が売られ、148ドル安(0.61%減少)。4月全体として、ダウは0.25%の微増。
2.米国の雇用状況
米労働省が4月6日に発表した3月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比103,000人の増加で、市場予想の180,000人増を大きく上回りました。1月の雇用者数の確定値は176,000人で63,000人の減少、2月の改定値は326,000人で13,000人の増加となりました。今回の結果を踏まえた過去3カ月間の雇用者平均増加数は202,000人で、好調の目安とされる平均増加数の200,000人を上回りました。なお、2月の失業率は4.1%で、前月と同じ水準でした。労働参加率は62.9%で、前月より0.1%減少しました。1月の時間当たり賃金上昇率は前月比0.1%増加で、前年同月比では2.7%増となりました。部門別では製造業が22,000人の増加、ヘルスケアが22,000人の増加でしたが、建設業は15,000人の減少となりました。
米労働省が4月6日に発表した3月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比103,000人の増加で、市場予想の180,000人増を大きく上回りました。1月の雇用者数の確定値は176,000人で63,000人の減少、2月の改定値は326,000人で13,000人の増加となりました。今回の結果を踏まえた過去3カ月間の雇用者平均増加数は202,000人で、好調の目安とされる平均増加数の200,000人を上回りました。なお、2月の失業率は4.1%で、前月と同じ水準でした。労働参加率は62.9%で、前月より0.1%減少しました。1月の時間当たり賃金上昇率は前月比0.1%増加で、前年同月比では2.7%増となりました。部門別では製造業が22,000人の増加、ヘルスケアが22,000人の増加でしたが、建設業は15,000人の減少となりました。
3.3月のFOMC会合議事要旨
FRBは3月20-21日に開催されたFOMCの議事要旨を4月11日に公表しました。それによれば、参加者の多くが今後の景気動向とインフレ率が目標の2%に向けて高まっていることに自信を深めていることが明らかになりました。これに伴い、数人は利上げペースが従来より加速させるべきと主張していることもわかりました。FOMC参加者の利上げ予測は中央値が年3回と従来 ベースでしたが、15名の半数の7名近くが年4回を見込んでいます。
FRBは3月20-21日に開催されたFOMCの議事要旨を4月11日に公表しました。それによれば、参加者の多くが今後の景気動向とインフレ率が目標の2%に向けて高まっていることに自信を深めていることが明らかになりました。これに伴い、数人は利上げペースが従来より加速させるべきと主張していることもわかりました。FOMC参加者の利上げ予測は中央値が年3回と従来 ベースでしたが、15名の半数の7名近くが年4回を見込んでいます。
この日は3月のFOMC会合の議事要旨だけでなく、トランプ大統領がシリアへの軍事行動を示唆したことによる地政学リスクの高まりから、ダウは219ドルの下落となりました。
4.米国の財政赤字拡大と強まる長期金利上昇傾向
米国連邦議会の予算局(CBO)は9日に米国の財政赤字が2020年会計年度(2019年10月から2020年9月)に財政赤字が1兆ドルを超える試算を発表しました。これはトランプ政権と共和党支配の議会が2017年末に10年間で1.5兆ドルという大型減税と決定、さらに今後2年間で歳出を3000億ドルまで拡大する予算関連法案を成立させたことによる結果となっています。
米国連邦議会の予算局(CBO)は9日に米国の財政赤字が2020年会計年度(2019年10月から2020年9月)に財政赤字が1兆ドルを超える試算を発表しました。これはトランプ政権と共和党支配の議会が2017年末に10年間で1.5兆ドルという大型減税と決定、さらに今後2年間で歳出を3000億ドルまで拡大する予算関連法案を成立させたことによる結果となっています。
トランプ政権は減税で企業の設備投資が活発化し経済成長率を3%に押し上げ、税収を確保するために長期的に財政赤字は縮小すると見ていましたが、CBOは減税効果は2018年第4四半期に3.3%と短期的なものの留まり、2020年以降は潜在成長率並みの2.2%弱に留まると見ています。また、連邦政府債務も2017年度の14兆6650億ドルから2020年度には20兆ドルを超えると見ています。
財政赤字の拡大は国債の消化問題から、長期金利が上昇するリスクがあり、株式市場にも悪影響を与える恐れがあります。
5.ライアン下院議長の引退表明
共和党の最有力リーダーで、2012年の大統領選挙では共和党の副大統領候補であったライアン下院議長が、4月12日に今年11月の中間選挙には出馬せず、政界から離れることを発表しました。表向きの理由は家族との時間を大事にしたいということのようですが、彼のウイスコンシン州の選挙区で苦戦が予想される他、不人気のトランプ大統領の下で下院で共和党の大敗が予想される中、将来に備えて政治生命を失う状態を避けたいという思惑があるのではないかとの見方が出ています。以前は財政規律を求めた共和党のテーパーティグループからの信頼が厚かったライアン氏でしたが、昨年末に議会で承認された大型減税法案によって、米国の財政赤字は10年後には1.9兆ドルに達するとの予測がCBOから提出され、全く違った結果になってしまっていることへの責任感もあったように思われます。加えて、共和党の綱領から外れ、問題だらけのトランプ大統領に対して、何も言えない状況になっていることへの嫌気もあるように思われます。
共和党の最有力リーダーで、2012年の大統領選挙では共和党の副大統領候補であったライアン下院議長が、4月12日に今年11月の中間選挙には出馬せず、政界から離れることを発表しました。表向きの理由は家族との時間を大事にしたいということのようですが、彼のウイスコンシン州の選挙区で苦戦が予想される他、不人気のトランプ大統領の下で下院で共和党の大敗が予想される中、将来に備えて政治生命を失う状態を避けたいという思惑があるのではないかとの見方が出ています。以前は財政規律を求めた共和党のテーパーティグループからの信頼が厚かったライアン氏でしたが、昨年末に議会で承認された大型減税法案によって、米国の財政赤字は10年後には1.9兆ドルに達するとの予測がCBOから提出され、全く違った結果になってしまっていることへの責任感もあったように思われます。加えて、共和党の綱領から外れ、問題だらけのトランプ大統領に対して、何も言えない状況になっていることへの嫌気もあるように思われます。
(2018年5月1日: 村方 清)