1.12月の株式市場
12月の株式市場はインフレ低下を示す経済指標と2024年の利下げ期待から、株式市場の改善傾向が続きました。主要な動きは、以下の通りでした。
12月1日:FRBのパウエル議長の米大学のイベントでFRBによる利上げ局面が終了したとの発言内容とISMの製造業景況感指数が46.7と市場予想を下回ったことで、米長期金利が低下、株式の相対的な割高感が薄れて、295ドル高(0.81%増加)。
12且4日:前週末に年初以来の高値を付けた後で主力株を中心に利益確定売りが優勢で、41ドル安(0.11%減少)。
12月5日:ダウ平均など主要株価指数が年初来高値圏にある中、一部の主力株には利益確定売りが優勢で、80ドル安(0.22%減少)。
12月6日:8日発表の11月の米雇用指標を見極めたいとの雰囲気が強く、’主力銘柄に持ち高調整の売りが続いて、70ドル安(0.19%減少)。
12月7日:今週発表の雇用関連指標と同じように、8日発表の米雇用統計が労働市場の需給緩和を示すとの見方が相場を支えて、63ドル高(0.17%増加)。
12月8日:8日発表の11月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比199,000人増で、市場予想の190,000人を少し上回ったものの、失業率は3.7%で10月の3.9%より低下したものの、FRBが一段と金融引き締めをするほどではないと受けとられて、主力株の一部に買いが入り、130ドル高(0.36%増加)。
12月11日:前週末発表の米雇用統計を受け、景気懸念が後退、FRBあ24年前半にも利下げに転じるとの観測も出て、投資家心理が支えて、157ドル高(0.43%増加)。
12月12日:朝方発表の11月の消費者物価指数は前月比で0.1%上昇とほぼ市場予想通りの内容となり、インフレの鈍化が続いていると受け取られ、173ドル高(0.47%増加)。
12月13日:FRBが13日まで開いたFOMC会合で政策金利を5.25-5.5%に据え置き、2024年には利下げに転じるとの予想を示し、米経済の先行き不安が和らいだことで、買いが膨らみ、512ドル高(1.40%増加)。
12月14日:11月の小売売上高は前月比0.3%増と市場予想の0.1%を上回ったが、13日のFOMCを受けて、2024年の利下げ観測が強まり、158ドル高(’0.42%増加)。
12月15日:FRBが来年に利下げに転じるとの見方が引き続き相場を押し上げたが、一方で高値警戒感からの利益確定売りも出やすく、57ドル高(0.15%増加)。
12月18日:FRBの利下げ観測が相場を支えたが、一方で上昇が目立った景気敏感株などの利益確定売りもあり、1ドル高(0.00%増加)。
12月19日:FRBが2024年の早期に利下げに転じて。景気に配慮しながら政策判断をするとの見方が引き続き、相場の支えになり、252ドル高(0.67%増加)。
12月20日:前日までの5営業日連続でダウ平均は最高値を更新しており、持ち高調整の売りが幅広い銘柄に広がり、476ドル安(1.26%減少)。
12月21日:20日に大きく下げた反動で、買い遅れた投資家が主力株を中心に押し目買いを入れたことで、322ドル高(0.86%増加)。
12月22日:前日夕に決算を発表したスポーツ用品のナイキが急落し、ダウ平均の重荷となり、18ドル安(0.04%減少)。
12月26日:米国のインフレ鈍化を受け、FRBが2024年前半にも利下げに転じるとの観測が投資家心理を支えて、159ドル高(0.42%増加)。
12月27日:FRBが2024年前半に利下げに転じるとの観測が相場を支える反面、主力株を中心に利益確定目的の売りが出たり、中東の地政学リスクも意識されて、上昇の勢いは伸びず、111ドル高(0.29%増加)。
12月28日:FRBの利下げ期待を手掛かりとした買いが相場を支えて、54ドル高(0.14%増加)。
12月29日:前日まで連日で高値を更新したことから月末や年末を控えた持ち高調整の売りが出て、21ドル安(0.05%減少)。年間で4,542ドル上昇(13.7%増加)は2021年以来、2年振りの大きさ。
米労働省が12月8日に発表した11月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比199,000人の増加で、市場予想の190,000人を少し上回りました。9月の雇用者数の確定値は262,000人で35,000人の減少、10月の改定値は150,000人で、前月と同水準でした。10月の失業率は3.7%で、前月より0.2%減少しました。労働参加率は前月とほぼ同水準の62.8%でした。9月の時間当たり賃金上昇率は前月比で12セント増加しました。部門別ではヘルスケア業が77,000人の増加、政府部門が49,000人、製造業が28,000人の増加、レジャー・観光業が40,000人の増加、ソーシアル・アシスタンス業が16,000人の増加となりました。
FOMC会合が12月12日-13日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました。最近の指標は経済活動の伸びが第3四半期の力強いペースから鈍化していることを示している。雇用の増加は年初から緩やかになっているが、依然として力強い状態だ。失業率は低水準にとどまっている。インフレ率はこの1年で緩和したが、依然として高止まりしている、
米国の銀行システムは健全で回復力がある。家計や企業の信用環境の引き締まりは、経済活動や雇用、インフレに重荷になるとみられる。これらの影響の度合いは依然として不透明だ。FOMCはインフレリスクを細心の注意を払っている。
FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.25-5.5%で据え置くことを決めた。今後入ってくる情報と金融政策の影響を注視する。
インフレ率を長期的に2%に戻すために適切にと思われる追加的な政策引き締めの程度を決定する際、FOMCは金融政策の累積的な引き締めや、経済活動がインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。さらに、以前発表した計画に示されているように、国債、機関債、住宅ローン担保証券の保有量の削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。
金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力やインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。
今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。
FRBは政策金利を5.25-5.50%に据え置きました。市場の想定通りの結果で、株式市場では発表後に買い安心感が広がりました。パウエル議長はFOMC後の記者会見で、「インフレは失業率の大幅な上昇を伴うことなく緩和してきた」との認識を示しました。更に、「我々は政策金利が今回の引き締め局面のピークが、それに近い水準であると考えている」とも述べました。市場では2024年はインフレを抑えつつ経済成長を加速させることができるとの期待が高まりました。なお、FRBがFOMC後に公表した参加者の政策金利見通しは24年末が中央値が4.6%で、現在の水準からみて0.25%の利下げ3回分に相当します。こうしたことから、2024年に利下げに転じるとの予想から、ダウは大幅に上昇、512ドル高(1.40%増加)となりました。
4.米物価は11月に2.6%上昇に鈍化
米商務省が11月22日に発表した11月の米個人消費支出物価指数は前年同月比で2.6%上昇しました。伸び率は2カ月連続で前月を下回り、2021年2月以来2年9か月ぶりの低さとなりました。前月比では0.1%低下と2020年4月以来3年7か月ぶりのマイナスとなりました。
価格変動が激しいエネルギーと食品を除いたコア指数は前年同月比3.2%上昇と伸び率の縮小傾向が続いています。項目別ではエネルギー関連が6.0%低下と物価全体を押し下げました。一方、人件費の影響が大きいサービス価格は4.1%と引き続き高い伸びでした。FRBは先週のGOMC会合で政策金利を3回連続で据え置くことを決めると共に、今回の利上げ局面が渉猟した可能性を示唆しました。
(2024年1月1日:村方 清)
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