1.8月の株式市場
8月の株式市場は、前半には7月の雇用統計が市場予想を下回る内容であったことから、米景気の先行きへの懸念が生じました。しかしながら、その後はインフレの沈静化や米経済の底堅さを示す指標が相次いだほか、FRB議長も9月の利下げ開始を示唆したことで、株価は急ピッチで回復しました。主要な動きは以下の通りでした。
8月1日:ISM製造業景況感指数が46.8と6月の48.5から低下し、朝方発表の週間の米新規失業保険申請件数は249,000件と市場予想の235,000件を上回り、米景気の懸念が高まり、495ドル安(1.21%減少)。
8月2日:2日発表の7月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比114,000人増で、市場予想の170,000人を大きく下回り、米経済が想定以上に減速するとの懸念がが高まり、611ドル安(1.51%減少)。
8月5日:米景気の先行き不安を背景に投資家がリスク資産を圧縮する動きを強め、ハイテク株を中心に売られ、ダウ平均の構成株は全面安で、1034ドル安(2.60%減少)。
8月6日:前日まで大きく下落していた反動で、自律反発を狙った買いが優勢となり、294ドル高(0.76%増加)。
8月7日:午前中は短期的な戻りを見込んだ買いが先行したが、午後に米長期金利が上昇すると気が続かず、ダウ平均など主要株価指数は下げに転じて、234ドル安(0.60%減少)。
8月8日:米労働省が発表した米新規失業申請件数は8月3日までの1週間で233,000件となり、市場予想の240,000件を下回り、米労働市場の底堅さを示し、押し目買いが入り、683ドル高(1.80%増加)。
8月9日:週初までの株式相場の大幅な調整を受けて、大型ハイテク株などに買い直しの動きが続いて、51ドル高(0.12%増加)。
8月12日:週内に重要な経済指標の発表があり買いを控える雰囲気が強く一方、中東の地政学リスクも意識され、主力株の一部に売りが出され、141ドル安(0.35%減少)。
8月13日:朝方発表の7月の米卸売物価指数は前月比0.1%上昇と市場予想の0.2%を下回り、FRBが利下げを始めやすくなるとの見方が一段と強まり、409ドル高(1.03%増加)。
8月14日:同日発表の7月の米消費者物価指数は前年同月比で2.9%上昇、市場予想の3.0%を下回り、FRBが利下げに動き安くなるとの期待から、243ドル高(0.61%増加)。
8月15日:同日発表の米小売売上高が前月比1.0%増と市場予想の0.3%増を上回り、米経済の大半を占める個人消費が減速するとの懸念が後退し、景気循環株を中心に気が入り、555ドル高(1.38%増加)。
8月16日:8月の消費者態度指数が67.8と市場予想の66.6を上回り、景気悪化への過度な懸念が後退し、97ドル高(0.23%増加)。
8月19日:米経済が大幅に悪化するとの懸念が後退しており、マクドナルドなどの主力株に買いが入り、237ドル高(0.58%増加)。
8月20日:前日にかけて上げが続いた後で、主力銘柄の一部に持ち高調整や利益確定の売りが出て、62ドル安(0.15%減少)。
8月21日:米雇用統計の年次改訂やFOMCの議事要旨の公表を受け、FRBによる9月の利下げ観測が相場を支えて、56ドル高(0.13%増加)。
8月22日:23日のパウエル連銀議長のジャクソンホール講演を前に持ち高調整の売りが優勢で、178ドル安(0.43%減少)。
8月23日:同日のパウエル連銀議長の発言を受け、FRBの利下げ観測が一段と強まり、米経済がソフトランディングに向かうとの見方で、幅広い銘柄に買いが広がり、462ドル高(1.13%増加)。
8月26日:FRBによる9月の利下げ観測が引き続き指数を支え、65ドル高(0.15%増加)。
8が27日’:FRBによる利下げ観測が引き続き投資家心理を支えて、10ドル高(0.02%増加)。
8月28日:取引終了後のエヌビディアの決算報告の発表前に、内容を見極めようとするハイテク株を中心に持ち高調整の売りが出て、159ドル安(0.38%減少)。
8月29日:朝方発表の24年4-6月までのGDPの改定値が年率3%増と速報値より上方修正され、週間の米失業保険申請件数も前週から小幅に減り、米経済がソフトランディングできるとの期待から、幅広い銘柄が買われて、244ドル高(0.59%増加)。
8月30日:朝方発表の7月の米個人消費支出物価指数が前月比で0.2%上昇、市場予想に一致したことで、FRBが9月に利下げを始めるとの見方が引き続き投資家心理の支えとなり、228ドル高(0.55%増加)。ダウ平均は月間で720ドル上昇し、4か月連続となりました。
2.米国の雇用状況
米労働省が8月2 日に発表した7 月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比114,000人の増加で、市場予想の170,000人を大きく下回りました。5月の雇用者数の確定値は218,000人で2,000人の増加、6月の改定値は206,000人で、27,000人の減少でした。6月の失業率は4.3%で、前月より0.2%上昇しました。労働参加率は62.7%で、前月から0.1%下回りました。7月の時間当たり賃金上昇率は前月比で8セント増加しました。部門別ではヘルスケア門が55,000人の増加、建設業部門が25,000人の増加、運輸・倉庫業が14,000人の増加、ソーシアルアシスタンス業が9,000人の増加となりました。
3.米消費者物価は前年比で3.0%上昇
米労働省が8月14日に発表した7月の消費者物価指数は、前年同月比で2.9 %上昇と、前月の3.0%から低下し、2021年3月以来初めての3%を下回りました。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年同月比3.2%上昇で、前月の3.3%から縮小しました。項目別では、中古車、新車、航空運賃などの価格下落が目立っています。
FRBが9月に利下げを実施するとの観測に変わりはないものの、インフレ率はFRBが目標とする2%をなお上回っているため、労働市場の悪化がない限り、0.5%の大幅利下げの可能性は少ないもの見られています。