1.10月の株式市場
10月の株式市場は中旬まで米金利の低下と米景気悪化への警戒感が薄れ、株式市場の上昇傾向が続きました。しかし、後半になると、好調な米景気に対する長期金利の上昇から、株式市場も売りが優勢となりました。主要な動きは以下の通りでした。
10月1日:イスラエルとイランを巡る中東情勢の緊張による高まりで、投資家がリスク回避の姿勢を強め、ハイテク株や景気敏感株を中心に売りが優勢となり、173ドル安(1.40%減少)。
10月2日:朝発表の9月のADP全米雇用レポートで非農業部門の雇用者数の増加幅は前月比14万3千人で市場予想を上回り相場を支えて、40ドル高(0.09%増加)。
10月3日:中東情勢が一段と悪化するとの警戒感と4日の9月の雇用統計の発表を控えていることから、持ち高調整の売りが出やすく、185ドル安(0.43%減少)。
10月4日:同日発表の9月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比254,000人増で、市場予想の150,000人を大きく上回り、米経済の軟着陸期待から投資家の株買いが進み、341ドル高(0.81%増加)。
10月7日:米長期金利が2カ月ぶりに4%台に上昇したことや中東情勢の緊迫による原油価格の一段高などで、投資家の株売りが進み、399ドル安(0.90%減少)。
10月8日:前日まで株売り要因として意識された原油高が一服し、米経済の軟着陸期待からテック株を中心に買いが広がり、126ドル高(0.3%増加)。
10月9日:米景気の先行きに対する警戒感が薄れていること、及び原油先物相場の上昇一服も追い風になり、432ドル高(1.02%増加)。
10月10日:同日発表の9月の米消費者物価指数はエネルギーと食品を除くと前月比0.3%上昇と市場予想の超える伸びとなり、週間米新規失業保険申請件数も258,000件で市場予想以上となったことから、物価指数などがFRBの利下げを後押しするものでなかったとの見方となり、景気敏感株などの一角に持ち高調整の売りが出て、58ドル安(0.13%減少)。
10月11日:主力企業の決算発表が始まり、市場予想を上回る内容だった金融株を中心に買いが入り、米経済への楽観姿勢も相場の支えとなって、410ドル高(0.96%増加)。
10月14日:米景気悪化への懸念が薄れていることや主要企業の業績改善への期待からハイテク株やディフェンシブ株などを中心に買いが優勢で、201ドル高(0.46%増加)。
10月15日:半導体関連株の下げが重荷となり、四半期決算を発表した銘柄でユナイテッドヘルスが大幅安となり、325ドル安(0.75%減少)。
10月16日:前日に下げが目立った半導体株の一角が買い直されたことや市場予想を上回る決算を発表したモルガンスタンレー株などに買いが広がり、337ドル高(0.78%増加)。
10月17日:9月の米小売売上高は前月比0.4%増と、市場予想の0.3%増を上回り、景気への楽観的な見方が広がり、161ドル高(0.37%増加)。
10月18日:ネットフレックスの好決算を背景にハイテク株が買われ、相場を下支えし、37ドル高(0.08%増加)。
10月21日:連日で最高値を更新した後で、アメリカンエクスプレスなど主力株の一角に利益確定の売りが出て、344ドル安(0.79%減少)。
10月22日:米長期金利の高止まりが株式相場の重荷となり、7ドル安(0.01%減少)。
10月23日:底堅い米景気を背景に長期金利が3カ月ぶりの高水準に上昇、相対的な割高感が意識され、アップルやインテルなどの大型テック株を中心に売りが広がり、410ドル安(1.0%減少)。
10月24日:24日までに4半期決算を発表したIBMとハネウエル・インターナショナルが大幅安となり、141ドル安(0.33%減少)。
10月25日:25日の米債券市場で長期金利が4.2%台に上昇、金利の上昇による株式の相対的な割高感から、売りが優勢で、260ドル安(0.61%減少)
10月28日:前週末までの5営業日で1161ドル下げた反動で、ハイテク株や金融株を中心に自立反発狙いの買いが入り、273ドル高(0.64%増加)。
10月29日:住宅関連の銘柄の下げが目立ち、米労働市場が減速しているとの懸念もあり、155ドル安(0.36%減少)。
10月30日:前日に最高値を付けていたハイテク株を中心に高金利の長期化を背景に割高感が強まり、92ドル安(0.22%減少)。
10月31日:前日に四半期決算を発表したマイクロソフトが’大幅に下落し、ハイテク株全般に売りが広がり、378ドル安(0.89%減少)。
2.米国の雇用状況
米労働省が10月4日に発表した9 月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比254,000人の増加で、市場予想の150,000人を上回りました。7月の雇用者数の確定値は144,000人で55,000人の増加、8月の改定値は159,000人で、17,000人の増加でした。9月の失業率は4.1%で、前月より0.1%低下しました。労働参加率は62.7%で、前月と同水準でした。9月の時間当たり賃金上昇率は前月比で13セント増加しました。部門別では飲食業部門が69,000人の増加、ヘルスケア門が45,000人の増加、政府部門が31,000人の増加、ソーシアルアシスタンス業が27,000人の増加、建設業部門が25,000人の増加となりました。
3.米消費者物価指数は前月から鈍化も予想を上回る
米労働省が10日公表した9月の米消費者物価指数は前年同月比で2.4%の上昇となったが、市場予想の2,3%を上回りました。エネルギーと食品を除くコア指数は前年同月比で3.3%の上昇で、市場予想の3.2%を上回りました。FRBは雇用情勢の悪化を回避するために、9月から利下げを開始して政策金利を緩和する方向に見直しをしています。但し、FRBが重視する米個人消費資質物価指数が安定的に目標の2%で推移するまでにはなお時間がかかるとみられており、FRBはは雇用と物価の指標をにらみつつ、追加利下げを会合ごとに判断すると見られています。
(2024年11月1日: 村方 清)