Saturday, February 1, 2025

トランプ第2政権の新たな政策への期待と懸念









1.1月の株式市場

1月の株式市場は120日に就任したトランプ第2政権の新たな政策への期待と懸念が混在、不安定な動きとなりました。主要な動きは以下の通りでした。

12日:中国市場で新型スマートフォンを値下げすると発表したアップルが2.6%下落するなど、ハイテク株銘柄の売りが優勢で、152ドル安(0.35%減少)。

13日:前日までの4営業日で930ドル余り減少した後で、アメリカンエクスプレスなど主力株の一部に自律反発を期待した買いが広がり、340ドル高(0.80%増加)。

16日:120日に就任するトランプ氏の貿易政策を巡り、輸入品に対する一率の関税引き上げを限定するとの案を検討しているとの見方をトランプ氏が否定したことで、政策の不確実性が意識されたことや米長期金利が高止まりしたことで、株売りが進み、26ドル安(0.05%減少)。

17日:7日発表の2411月の雇用動態調査で、非農業部門の求人件数は810万人で、前月から259千人増え、市場予想の770万人を上回り、2412月の非製造業景況感指数も54.1と前月から2.0ポイント上回ったことで、米長期金利が上昇し、ハイテク株を中心に売りが広がり、178ドル安(0.4%減少)。

18日:米長期金利が一時8カ月ぶりの水準に上昇したが、金利水準の低下に伴い、相場が持ち直し、107ドル高(0.25%増加)。

110日:日発表の12月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比256,000人増で、市場予想の155,000人を大きく上回り、FRBが利下げペースを鈍化するとの見方が強まり697ドル安(1.63%減少)。

113日:10日の株価急落を受けて自立反発狙いの買いが入り、相場を支えたほか、米銀決算を前に好決算を期待した買いが進んで、359ドル高(0.86%増加)。

114日:米労働省が発表した12月の米卸売物価指数は全月比0.2%上昇で、市場予測の0.4%を下回り、FRB利下げペースが鈍化するとの過度な警戒感が後退し、221ドル高(0.5%増加)。

115日:同日朝発表の2412月の米消費者物価指数でエネルギーと食品を除くコア指数の上昇率が前月比で0.2%と2411月から減速し、市場予想の0.3%を下回ったことで、FRBの追加利下げが遅れるとの過度な懸念が後退し、四半期決算を発表した大手金融株も上昇して、703ドル高(1.65%増加)。

116日:前日までの3営業日で1200ドル余り上げた後で、短期的な過熱感が意識され、アップルなど主力株にも売りが出て、68ドル安(0.15%減少)。

117日:17日発表の2412且の米住宅着工件数が前月比で15.8%増と市場予想の3.2%を上回ったことや12がつの米鉱工業生産も前月比で0.9%増と市場予想の0.2%増を上回り、米経済が底堅さを保っているとの見方から、335ドル高(0.77%増加)。

121日:トランプ大統領の就任当日の大統領令に関税の強化が含まれず自動車株が上昇した半面、エネルギー生産の拡大で需給が緩むとの思惑から石油株が下がるなど、明暗が分かれて、537ドル高(1.2%増加)。

122日:トランプ大統領が人口知能(AI)開発に向けて巨額の投資計画を発表したのを受け、成長期待から関連銘柄に買いが出て、131ドル高(0.29%増加)。

123日:前日に下げていた景気敏感株やディフェンシブ株の一角に買いが入り、指数を押し上げ、408ドル高(0.92%増加)。

124日:前日までの4営業日で1400ドル余り上昇していたことで、週末を控えて主力株の一角に利益確定や持ち高調整の売りが出て、141ドル安(0.31%減少)。

127日:中国企業が開発したAIの台頭で米国のAI産業が脅威になるとの懸念から半導体関連やAI関連株が大きく売られた反面、ディフェンシブ株を中心に買いが入り、指数を押し上げて、289ドル高(0.65%増加)。

128日:米国のAIへの不透明感から前日に急落したエヌビディアが反発した他、ハイテク株が幅広く物色され、137ドル高(0.30%増加)。

129日:FRB29日まで開いたFOMC会合で、政策金利を据え置いたことで、利下げに慎重との見方から、株売りが優勢で、137ドル安(0.30%減少)。

130日:IBMなど一部の主力株の決算を好感した買いが集まり、指数を押し上げ、169ドル高(0.37%増加)。

1月31日:米政権が2月からカナダやメキシコなどに対して新たな関税を課すと改めて伝わり、米経済やインフレへの影響を懸念した売りが優勢で、337ドル安(0.75%減少)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が110日に発表した12 月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比256,000人の増加で、市場予想の155,000人を大きく上回りました。10月の雇用者数の確定値は43,000人で7,000人の増加、11月の改定値は212,000人で、50,000人の減少でした。12月の失業率は4.1%で、前月より0.1%低下しました。労働参加率は62.5%で、前月と同じ水準でした。11月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別ではヘルスケア門が46,000人の増加、小売り業部門が43,000人の増加、政府部門が33,000人の増加、ソーシャル・アシスタンスタス部門が23,000人の増加となりまsた。

 

3.米消費者物価指数は122.9%上昇、3カ月連続で加速

米労働省が15日公表した12月の米消費者物価指数は前年同月比で2.9%の上昇で、市場予想の2.8%を少し上回りました。エネルギーと食品を除くコア指数も前年同月比で3.2%の上昇で、これは市場予想をやや下回りました。14日発表の2412月の米卸売物価指数も市場予想を下回っており、FRBが追加利下げが遅れるとの過度な懸念が後退し、ダウ平均は703ドルの上昇となりました。

物価の軟化基調は見られるものの、次期のトランプは関税の引き上げを公約にしており、輸入物価のを通じた高インフレの再燃につながる可能性があります。

 

4.1月のFOMC会合

FOMC会合が128-29日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大し続けていることを示唆している。失業率はここ数カ月、低水準で安定しており、労働市場の状況は堅調なままである。インフレ率はいくぶん高止まりしている。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。FOMCは雇用とインフレの目標達成に対するリスクは、おおぬね均衡していると判断している。経済の見通しは不透明であり、FOMC2つの責務の双方に対するリスクに細心の注意を払っている。

この目標を支えるために、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.254.5%に据え置くことを決めた。FF金利の目標レンジの調整を検討する際、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびリスクのバランスを慎重に評価する。

FOMCは、国債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減する。FOMCは雇用の最大化を支援し、、インフレを2%目標に戻すことに強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。

決定はパウエル議長、ウィリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。

今回のFOMCによる金利据え置きは、織り込み済みであったものの、今後の利下げに慎重な姿勢を示したとの受け止め方から、株売りが優勢で、137ドル安(0.30%減少)となりました。

     (202521日: 村方 清)