1.4月の株式市場
4月の株式市場は、FRBの急速な金利引き上げによる地域銀行の経営不安問題が再燃、景気への悪化も懸念され、不安定な展開になりました。主要な動きは以下の通りでした。
4月3日:原油先物相場が大幅高となり、資源関連株を中心に買いが入り、加えてディフェンシブ株も上昇し、相場を押し上げ、327ドル高(0.98%増加)。
4月4日:4日発表の2月の米雇用動態調査求人件数が市場予想以上に減り、米景気の減速を示したものと受け取られ、199ドル安(0.59%減少)。
4月5日:ADPの雇用レポートで非農業部門の雇用者数が前月比14万5千人増と市場予想を下回り、非製造業指数も51.2%と市場予想を下回り、景気懸念が重荷になったが、ディフェンシブ株に買いが入り、80ドル高(0.24%増加)。
4月6日:6日発表の週間の米新規失業保険申請件数は22万8000件と市場予想を上回ったものの、ADPの3月の米雇用レポートがさえない内容であったため、売りが出たが、長期金利の低下でハイテク株が買われて、3ドル高(0.01%増加)。
4月10日:前週末発表の3月の雇用統計を受け、米景気悪化への過度な懸念が和らぎ、景気敏感株に買いが入り、101ドル高(0.30%増加)。
4月11日:米景気の先行き不安が後退し、景気敏感株の上昇がダウ平均を押し上げ、98ドル高(0.29%増加)。
4月12日:3月21-22日のFOMCの議事要旨が発表され、金融不安の経済的な悪影響が改めて意識され、相場の重荷となり、38ドル安(0.11%減少)。
4月13日:13日発表の米卸売物価指数が前月比で0.5%下がり、FRBの利上げ打ち止めが近いとの見方から、ハイテク株や消費財関連株が買われ、383ドル高(1.14%増加)。
4月14日:朝方にFRBの理事が一段の利上げに前向きな姿勢を示したことで、一部の銀行株を除いて、景気が冷え込むとの警戒から、幅広い銘柄に売りが出て、143ドル安(0.42%減少)。
4月17日:17日発表のニューヨーク連銀の製造業景況指数は10.8と3月のマイナス24.6から大きく改善し、これを受けて景気敏感株の一角が買われて、101ドル高(0.30%増加)。
4月18日:決算発表をしたゴールドマン・サックスとジョンソン・ジョンソンが下落して、指数を押し下げ、11ドル安(0.03%減少)。
4月19日:インフレ圧力の根強さを背景に欧米の中央銀行の金融引き締めが続くとの観測から株式相場の重荷になり、80ドル安(0.23%減少)。
4月20日:テスラ、アメリカン・エクスプレスなどの主要企業が減益決算を発表し、企業業績への不透明感が強まり、110ドル安(0.33%減少)。
4月21日:四半期決算を発表した日用品のプロクター・アンド・ギャンブルが3%高となったことで、ダウ平均を下支えして、22ドル高(0.07%増加)。
4月24日:主力ハイテク企業の決算発表をピークを迎え、加えて経済指標の発表も控えて、様子見ムードが強く、66ドル高(0.20%増加)。
4月25日:地域銀行で大規模な資金流出が明らかになり、景気への悪影響が及ぶのではないかとの不安が再燃して、消費財や景気敏感株に売りが広がり、345ドル安(1.02%減少)。
4月26日:米中堅銀行のファーストリパブリックバンクの経営不安が再燃し、米銀の貸し渋りが米景気を冷やすとの懸念が強まり、229ドル安(0.68%減少)。
4月27日:前日に決算を発表したメタプラっトフォームズが急伸し、他のハイテク銘柄にも買いが及んで、524ドル高(2.43%増加)。
4月28日:午前発表の米経済指標が市場予想を上回り、米国景気の先行きへの懸念が和らぎ、272ドル高(0.80%増加)。
米労働省が4月7日に発表した3月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比236,000人の増加で、市場予想通りでした。1月の雇用者数の確定値は472,000人で32,000人の減少、2月の改定値は326,000人で15,000人の増加でした。3月の失業率は3.5%で、前月から0.1%減少しました。労働参加率は62.6%で前月より0.1%増加しました。3月の時間当たり賃金上昇率は前月比で9セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が72,000人の増加、政府部門が47,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が39,000人の増加、ヘルスケア業が34,000人の増加となりました。
3.利上げ停止も議論した3月のFOMC議事要旨
FRBは4月12日に、3月21-22日に開いたFOMCの議事要旨を公表しました。その中で、米地銀の相次ぐ破綻などで金融システム不安が高まったことを踏まえ、一部の参加者が利上げの見送りを検討していたことを明らかにしました。
これらの参加者は利上げを見送ることで、銀行業界の動向やこれまでの金融引き締めの影響などについて評価する時間をより多く確保できると指摘しました。その一方、多くの参加者はFRBなどによる金融安定の取り組みが銀行業界の状況を落ち着かせ、短期的な経済活動やインフレのリスクを軽減するのに役立っていると評価しました。このため、FOMCは全会一致で0.25%の利上げ実施を決めました。利上げは9回連続で、政策金利の指標であるフェデラルファンド金利を4.75-5%になりました。
3月時点のFOMCのシナリオでは、残り1回0.25%の利上げ実施を想定します。現時点では、5月2-3日のFOMC会合で利上げに動く確率は7割程度と見込まれています。
バイデン大統領は4月25日に、2024年大統領選挙で再選を目指し、民主党候補として戦う意向を表明しました。 バイデン大統領はツィーターで動画を投稿して出馬を表明、その冒頭で前大統領の支持者が連邦議会を襲撃した場面を流し、前大統領の支持議員を映すのに合わせ、MEGA(Make America Great Again)の過激派が自由の根幹を奪おうとしていると語りました。
一方、前大統領のトランプ氏はバイデン氏との対決姿勢を鮮明にして、現職として挑んだ2020年大統領選挙の雪辱を果たそうとすることをもくろみ、24日はジョーバイデンを打ち負かして、経済を救い、ともに米国を再び偉大にしようと訴えました。民主党には有権者の賛否が割れるトランプ前大統領がバイデン政権を批判すればするほど支持層の結束が強まるとの期待があります。
共和党支持者の中にはトランプ前大統領に代わって、現フロリダ州知事のデサンティス氏を出馬することに期待するものもいます。しかしながら、デサンティス氏の極端な保守主義がフロリダ州では通用しても、全米でどこまで支持が広がるかは疑問視されており(現在はLGBTや税特例の扱いを巡って、ウォルトディズニー社と争いを継続中)、トランプ氏に代わって、共和党の大統領候補になれるかは依然、不透明です。
(2023年5月1日: 村方 清)
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