1.3月の株式市場
3月の株式市場は, トランプ政権による4月3日からの相互関税を含む相次ぐ関税措置への懸念から、株式市場の不安定化が増加しました。主要な動きは以下の通りでした。
3月3日:半導体輸出規制を巡る懸念を背景にエヌビディアが大幅安となり、米政権による関税政策や景気の先行きに対する不安も投資家心理を冷やして、650ドル安(1.48%減少)
3月4日:トランプ政権が3月4日からカナダとメキシコの輸入品に対して関税を発動し、中国には追加関税を引き上げたことへの対抗措置に伴う貿易戦争や経済への悪影響を懸念した売りが広がり、670ドル安(1.55%減少)。
3月5日:前日に発動したカナダとメキシコ向けの追加関税25%について、北米自動車産業向けに1カ月の猶予期間を設けることになり、相場を支えて、485ドル高(1.1%増加)。
3月6日:トランプ政権による関税政策を巡る不透明感が根強く、主力株に売りが膨らんdことや、米景気減速への懸念もあり、428ドル安(0.99%減少)。
3月7日:同日発表の2月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比151,000人増で、市場予想の160,000人から170,000人を下回り、FRBが景気を下押しするとの見方が強まり、223ドル高(0.52%増加)。
3月10日:米景気やトランプ政権による関税政策の不透明感から、株売りが広くがり、890ドル安(2.07%減少)。
3月11日:トランプ大統領による関税政策の不透明感を背景に、主力株に売りが出て、478ドル安(1.14%減少)。
3月12日:トランプ政権による関税政策や貿易摩擦への警戒感が引き続き相場の重荷で、83ドル安(0.19%減少)。
3月13日:トランプ大統領による関税政策の不透明感から景気懸念が拡大し、株売りが優勢で、537ドル安(1.30%減少)。
3月14日:米政府の繋ぎ予算が成立することになったことや前日までにダウ平均が2000ドル近く下げていたことへの自律的反発で、675ドル高(1.65%増加)。
3月17日:同日発表の小売り指標が強弱まちまちの内容となり、個人消費を巡る過度な懸念が後退し、景気敏感株を中心に買いが広がり、353ドル高(0.85%増加)。
3月18日:前日までの2営業日で1000ドル余り上昇した後で、主力株に持ち高調整の売りが優勢となり、260ドル安(0.62%減少)。 3月19日:FRBが19日まで開いたFOMC会合で2025年に2回利下げをする見通しを維持したことで、投資家心理に安心感を与え、383ドル高(0.92%増加)。 3且20日 :トランプ政権の政策への警戒が強く、相場の重荷となり、11ドル安((0.03%減少)。
3月21日:トランプ政権の関税政策への不透明感から一時500ドル余り下落したが、その後、4月2日からの相互関税について柔軟に対応する用意があるとの発言で、32ドル高(0.07%増加)。
3月24日:トランプ政権の関税政策を巡る過度な警戒が後退し、主力株に買いが広がり、598ドル高(1.42%増加)。
3月25日:トランプ政権の関税政策が警戒されたほど広範囲ではないとの観測が浮上したことで、4ドル高(0.01%増加)。 3月26日:トランプ政権が4月2日から輸入する外国の車に対して25%の関税を課すことを発表したことで、自動社株を中心に売りが出て、133ドル安(0.31%減少)。
3月27日:トランプ大統領が26日夕方に輸入自動車への25%の追加関税を発表したことで、関税を巡る不透明感や貿易戦争への警戒感が相場の重荷となり、155ドル安(0.37%減少)。
3月28日:同日発表の米個人消費指数は前月比0.3%上昇で市場予想と一致したものの、食品とエネルギーを除くコア指数は0.4%と市場予想の0.3%を上回り、ミシガン大学の3月の消費者態度指数も57.0と下方修正され、市場予想の57.9も下回ったことで、消費者の景況感悪化に加えて、米政権による関税政策が米国の物価上昇につながるとの見方から、716ドル安(1.69%減少)。
3月31日:トランプ政権の関税政策が米景気を押し下げるとの警戒心が強い中、月末・四半期末による機関投資家の資産配分調整の株買いが入り、418ドル高(1.00%増加)。ダウ平均は2カ月連続で下落して、月間で1839ドルの下落。
2.米国の雇用状況
米労働省が3月7日に発表した2月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比151,000人の増加で、市場予想の160,000 から170,000人を下回りました。12月の雇用者数の確定値は323,000人で16,000人の増加、1月の改定値は125,000人で、18,000人の減少でした。1月の失業率は4.1%で、前月より0.1%上昇しました。労働参加率は62.4%で、前月より0.2%減少しました。2月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別ではヘルスケア門が52,000人の増加、金融部門が21,000人の増加、運輸・倉庫業部門が18,000人の増加、ソーシャル・アシスタンス部門が11,000人の増加、政府部門が10,000人の減少、小売り業部門が6,000人の減少となりました。
3.3月のFOMC会合
FOMC会合が3月18-19日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました。最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大し続けていることを示唆している。失業率はここ数カ月、低水準で安定しており、労働市場の状況は堅調なままである。インフレ率はいくぶん高止まりしている。
FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。経済見通しを巡る不確実性は高まっている。FOMCは2つの責務の双方に対するリスクに細心の注意を払っている。
この目標を支えるために、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.25〜4.5%に据え置くことを決めた。FF金利の目標レンジの調整を検討する際、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびリスクのバランスを慎重に評価する。
FOMCは、国債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減する。4月から、FOMCは国債の月間償還上限額を250億ドルkら50億ドルに減らすことで、保有国債の削減ベースを減速する。FOMCは機関債と住宅ローン担保証券の月間償還上限額を350億ドルに維持する。FOMCは雇用の最大化を支援し、インフレを2%目標に戻すことに強く注力している。
金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。
決定はパウエル議長、ウィリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。ウオラー理事は政策金利の据え置きは指示したが、国債の削減ベースを現状のまま維持することを希望し、反対票を投じた。
今回のFOMCによる金利据え置きは、織り込み済みであったものの、今後の利下げについて2025年に2回利下げをする見通しを維持したことで、投資家の安心感が強まったことで、393ドル高となりました。
4.米消費者物価指数は2月2.5%上昇
米労働省が28日公表した2月の米個人消費支出は前年同月比で2.8%の上昇で、市場予想の通りでした。エネルギーと食品を除くコア指数も前年同月比で2.8%の上昇で、これは市場予想の2.7%をやや上回りました。
FRBは先行して公表される消費者物価指数(CPI)よりPCE物価指数を重視しています。2月のCPIは市場予想を下回り5カ月ぶりに前年同月比の上昇率が鈍化していました。FRBは関税などの影響を見極めるため、当面は利下げを見送る姿勢を維持します。
(2025年4月1日: 村方 清)
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