Thursday, April 30, 2020

新型コロナウイルス感染拡大と市場の急激な不安定













1.3月の株式市場
3月の株式市場は2月の第4週目に起きた新型コロナウイルスの感染拡大の影響が世界的規模に広がる一方、これへの対策として主要国政府の緊急経済政策や中央銀行の金融緩和策が相次いで導入され、乱高下の激しい市場の動きとなりました。主要な動きは以下の通りでした。

32日:世界の主要中央銀行による協調金融緩和への期待から、主力のハイテク株などに買い戻しの動きが広がり、1,293ドル高(5.09%増加)。
33日:3日午前、FOMCは緊急理事会を開いて政策金利を0.5%引き下げ、一時’381ドル高になったが、新型肺炎の影響が予想以上に深刻との警戒感が強く、786ドル安(2.94%減少)
34日:米大統領選挙の民主党候補者争いで、バイデン副大統領が首位に立ち、国民皆保険や米企業ヘの規制強化を訴えるサンダーズ上院議員が当選する可能性が薄れ、ヘルスケア関連株を中心に幅広い銘柄に買いが入り、1,173ドル高(4.53%増加)。
35日:新型肺炎の感染拡大が米国にも本格的に波及し、投資家のリスク回避姿勢が一段と強まり、マネーは安全資産である長期国債に向かい、金融株を中心に多くの銘柄が売られ、970ドル安(3.58%減少)
36日:3月の米雇用統計は雇用者増加数が273,000人増で、市場予想の170,000人増を大きく上回り(失業率は3.5%で前月より0.1%改善)、過去3か月分の雇用者数が200,000人を超えたが、新型肺炎の感染拡大からの警戒心が高まり、257ドル安(0.98%減少)。
39日:新型肺炎の感染拡大による世界経済の景気後退入りの懸念の広がりとOPECと非加盟国の減産調整の協議が不調に終わり、原油先物相場が大幅に下落、エネルギー企業の業績悪化懸念も重なり、2013ドル安(7.79%減少)。下げ幅は史上最才。
310日:トランプ大統領が新型肺炎による景気下振れリスクに対応し、給与減税などを含む経済支援策を発表すると伝わり、1167ドル高(4.89%増加)。
311日:新型肺炎の感染拡大が続く中、WHO事務局長がパンデミックに相当すると表明、更にトランプ政権が10日発表の経済政策の実現性の不透明感が嫌気され、1,465ドル安(5.86%減少)。
312日:トランプ大統領が11日に発表した新型肺炎対策として、英国を除く欧州からの渡航の30日禁止措置が世界景気を押し下げるとの見方や経済政策も具体性に乏しいとの批判から、2,353ドル安(10%減少)
313日:トランプ大統領が新型肺炎に関連して、トランプ大統領が国家非常事態を宣言し、全ての政策を動員すことを決めたことから、米景気への不安心理が後退、1985ドル高(9.36%増加)
316日:FRB315日に0.1%の利下げを決定したが、新型肺炎感染の急速な拡大で、投資家の不安は静まらず、消費財、エネルギー、小売り関連の銘柄を中心に大きく値下がりし、2997ドル安(12.93%減少)。ダウ平均の値下がり率は2月につけた史上最高値から31%強の下落率。
317日:FRBが企業の資金繰り支援でCP購入を発表したことに加え、トランプ政権が家計への現金給付プランを公表したことで、総額1兆ドルとなる経済対策が明らかになり、買いが優勢で、1,049ドル高(5.20%増加)
318日:新型コロナウイルスの感染拡大による米景気と企業業績の不透明感が根強く、売りが膨らみ、ボーイングや石油株が急落して、1338ドル安(6.30%減少)。
319日:前日に31カ月振りの安値を付けた反動で、割安感から大型ハイテク株を中心に買い戻されたことや世界の中央銀行が金融緩和に動いていることから、188ドル高(0.95%増加)
320日:新型コロナウイルスの感染拡大で、米国のカリフォルニア州とニューヨーク州が前事業所に対し出勤を禁止したことから、米景気の落ち込み懸念が強まり、913ドル安(4.55%減少)
323日:新型コロナウイルスによる景気減速に対応するため、トランプ政権の経済政策について議会の与野党対立で合意ができず、政策実行が遅れるとの見方から、582ドル安(3.04%減少)。
324日:新型コロナウイルスに対応した大規模な経済対策で米与野党の協議が進展するとの期待が高まり、2,113ドル高(11.37%増加)。上昇幅としては史上最大。
325日:トランプ政権と与野党の議会指導部が2兆ドルの経済対策で25日未明に合意、後退入りの懸念が高まっていた米景気を下支えするとの期待が広がり、496ドル高(2.39%増加)。
326日:米上院が325日に新型コロナウイルスに対応する2兆ドル規模の経済対策法案を可決し、早期に景気刺激策が実施されるとの期待が高まり、1352ドル高(6.38%増加)
327日:米国の新型コロナウイルス感染者数が26日に中国を上回って世界最多となるなど、感染拡大が続き、人や物の移動の制限が停滞することによる景気不安から売りが膨らみ、915ドル安(4.06%減少)。
330日:トランプ政権の大規模な経済政策にの成立による景気悪化の懸念が後退し、同時に新型コロナウイルスのワクチン開発への期待で、691ドル高(3.19%増加)。
331日:新型コロナウイルスの感染拡大による景気の悪化懸念が強まり、売りが優勢で、410ドル安(1.84%減少)。下げ幅は月間、四半期ベースとも過去最大

2.米国の雇用状況
米労働省が36日に発表した2月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比273,000人の増加で、市場予想の170,000人増を上回りました。12月の雇用者数の確定値は184,000人で37,000人の増加、1月の改定値は273,000人で48,000人の増加となりました。今回の結果を踏まえた過去3カ月間の雇用者平均増加数は約243,000人で、好調の目安とされる平均増加数の200,000人を大きく上回りました。なお、1月の失業率は3.5%で、前月と比べて0.1%改善しました。労働参加率は63.4 %で、前月と同じ水準でした。2月の時間当たり賃金上昇率は前月比で9セント上昇し、前年同月比では3.0%増となりました。部門別ではヘルスケア・社会福祉業が57,000人の増加、飲食業が53,000人の増加、建設業が42,000人の増加、専門・技術サービス業が32,000人の増加となりました。

3.コロナウイルス感染拡大とFRBの金利引き下げ
FOMC315日に臨時のFOMC会合を開き、0.1%の利下げを決定しました。会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。新型コロナウイルスの拡大が多くの国の経済活動を損なわせている。経済データは米経済が力強い足元においても、試練の時を迎えていることを示している。1月のFOMCの会合以降に得た情報は、労働市場は底堅く、経済活動は緩やかに上向いているということであった。家計支出は緩やかに伸びているが、企業の設備投資と輸出は弱いままだだ。直近では、エネルギー業界が強り圧力にさらされている。全般的なインフレ率と、食品・エネルギーを除く12か月平均のインフレ率は2%を下回っている。

FOMCは最大の雇用と物価安定を持続させることを求めている。新型コロナの影響は近い将来の経済活動に重くのしかかり、経済見通しのリスクとなるだろう。これらの状況に照らし、政策金利目標を00.25%に引き下げることを決めた。この金利目標は経済活動に対する直近の出来事の影響が晴れたと自信が持てるまで、そして最大雇用ち物価安定の実現のための軌道に乗れると判断できるまで維持するだろう。今回の決定は経済活動、強い労働市場環境、2%の物価目標の回帰を助けるだるFOMCは出てくる経済見通しに関する情報を注視する。その情報は健康関連から物価の下押し圧力に関するものなどにおよぶ。我々の取れる手段を使い、経済を補助するための適切な行動を取る。将来の金融政策のスタンスを調整する時期とその規模を決めるために、FOMCは実際と予想される経済状況を評価する。この評価は幅広い情報を考慮に入れる。労働市場や物価上昇圧力や物価上昇期待、金融政策や国際情勢を含む、

FRBは家計や企業の信用を支援するための手段を行使する準備ができており、こえにより雇用の維持と物価安定を促す。家計や企業の信用の中心となる米国債市場と住宅ローン担保証券(MBS)市場の機能を支援するために、今後数カ月間で米国債を少なくとも5000億ドル、MBSも同じく2000億ドルを購入する。
FRBは家計や企業の信用ニーズを支援するため、他の中央銀行と連携したドル資金の通関交換(スワップ)の拡充なども併せて発表した。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む9人のメンバーの賛成による。クリーブランドのロレッタ・メスター総裁やフェデラルファンド金利の誘導目標レンジを0.5%-0.75%にすべきとして反対した。
なお、今回のFOMC会合の金利引き下げは、新型コロナウイルスの感染拡大による経済の悪影響を少なくさせるために決定されたものであるが、市場の反応は時間外取引で米国株価指数先物が大幅安になるなど急落しています。その意味で、コロナウイルスの感染拡大による企業活動の停滞に対してはFRBの政策発動余地が乏しいと受け取られたためと見られています。


4.コロナウイルスに対する米政府の巨額経済救済策
トランプ政権と連邦議会の与野党指導部は325日に新型コロナウイルス対策として、約2兆ドルの景気刺激策に最終合意しました。今回の規模は米国のGDPの約10%に相当し、2008年の金融危機後経済対策の約7000億ドルを大幅に上回ります。


内訳を見ますと、家計向けでは3000億ドルを充て、所得制限を設け、大人には最大1200ドル、子供には500ドルを支給します。失業保険にも2500億ドルを計上しました。一方、企業向けには9000億ドルを充て、飲食・宿泊など新型コロナウイルスが直撃する産業向けに5000億ドルの融資枠を設けます。航空会社にも300億ドルの資金支援を行います。

これに加え、今回の経済対策には米連銀に新たに4兆ドルの資金供給能力を可能しており、全体の景気刺激策は6兆ドルに達するとトランプ政権は主張しています。
今回の巨額の経済支援策に対しても、コロナウイルス感染拡大が急速に進む中で、一時的な経済効果は見込めるものの、コロナウイルス感染拡大を防ぐ治療薬が出てこない限り、根本的な改善にはならないように見られます。それと同時に、大企業や富裕層の利益優遇の政策を取り続け、ニューヨーク州を始め多くの州政府が必要とする社会的な医療インフラの整備や充実を軽視してきたトランプ政権や与党共和党の政策的な誤りが今回の感染拡大の大きな要因であると思われます。この点、そのことを十分に認識できる米国民が多く出てくることが米国の将来にとって極めて重要であると思います。

              202041日: 村方 清)


 

Sunday, March 1, 2020

新型肺炎の感染拡大がもたらした米国市場の大幅調整











1.2月の株式市場
1月末から始まった新型肺炎の感染拡大の影響が2月の第4週目に大きく広がり、週間の下落幅は約12%で、2008年の金融危機以来の規模となりました。主要な動きは以下の通りでした。

23日:新型肺炎の感染拡大の懸念から前週末に大きく下げた反動で、自律反発狙いの買いが入ったが、肺炎拡大への警戒感も強く、144ドル高(0.51%増加)。
24日:中国政府による積極的な経済対策への期待から、新型肺炎の感染拡大による実体経済への懸念が和らぎ、408ドル高(1.44%増加)
25日:新型肺炎の治療薬の発見に関する報道や中国政府の景気試案策への期待が続き、感染拡大への懸念が和らぎ、483ドル高(1.68%増加)。
26日:中国政府が6日、米国からの一部輸入品の関税引き下げを発表し、米中貿易交渉の進展を期待した買いが入り、89ドル高(0.30%増加)
27日:2月の米雇用統計は雇用者増加数が225,000人増で、市場予想の160,000人増を大きく上回り(失業率は3.6%で前月より0.2%増加)、過去3か月分の雇用者数が200,000人を超えたが,高値警戒感からの売りの勢いが強かったことや新型肺炎感染拡大の懸念の大きさから、277ドル安(0.99%減少)。
28日:前週に出た米国経済指標が好調であったことや決算発表を終えた米主要企業の業績が堅調であったことなどから、買いが優勢で174ドル高(0.60%増加)。
211日:新型肺炎の感染拡大の勢いが弱まりつつあるとの見方から買いが先行したが、パウエル連銀議長の議会証言で金融緩和を示唆する発言がなく、利益確定売りが優勢となって、0高
212日:新型肺炎拡大の勢いが落ち着きつつあるとの見方から投資家がリスク選好姿勢を強め、幅広い銘柄が買われ、275ドル高(0.94%増加)。
213日:新型肺炎の認定基準の変更で、中国の感染者数が急増、問題収束に時間がかかるとの懸念からリスク回避姿勢が強まり、128ドル安(0.43%減少)
214日:中国での感染者数の増加が続き、景気への悪影響を懸念した売りが優勢となり、25ドル安(0.09%減少)
218日:新型肺炎の影響で、13月期の売上高目標を達成できないと発表したアップルが下落、半導体関連株や中国関連株が大きく売られ、166ドル安(-0.56%減少)。
219日:中国政府の積極的な景気支援策で新型肺炎の経済的な悪影響が和らぐとの見方が広がり、116ドル高(0.40%増加)。
220日:新型肺炎の拡大に終息の兆しが見られず、中国を中心に景気や企業業績の下押し要因になるとの懸念から、株式の売りが優勢で、128ドル安(0.44%減少)
221日:新型肺炎の感染が中国以外に広がっていることへの懸念や、21日に発表の2月の米企業の景況感も大幅に悪化したことで、多くの株式銘柄が売られ、228ドル安(0.78%減少)
224日:新型肺炎の感染拡大の懸念が急激に拡大し、アジアや欧州が大幅安となった影響を受け、米国株も運用リスクを回避する売りが加速し、幅広い銘柄が売られ 1,032ドル安(3.56%減少)。下げ幅は過去3番目。
225日:新型肺炎の感染が米国など世界各地に拡散するリスクが意識され、運用資金が安全資産である米国債に向かい、879ドル安(3.15%減少)。ダウ2日間の下げ幅は1,911ドルとなり、20182月に記録した1,840ドルを超え、過去最大
226日:午前中は一時461ドル高になる場面もあったが、ブラジルや米国で感染が拡大し、感染が収束に向かう時期は予測不可能との見方から、124ドル安(0.46%減少)。
227日:新型肺炎の急激な感染拡大の懸念から、米企業の業績予想の相次ぐ未達状況や安全資産とされる米国債が買われ、長期金利が過去最低を更新、1191ドル安(4.42%減少)。下げ幅は過去最高
228日:新型肺炎の感染拡大で世界経済が停滞するとの懸念が一段と強まり、一時1085ドル安まで下げたが、パウエル連銀議長が早期利下げの可能性を示唆したところから下げ幅を縮め、357ドル安(1.39%減少)。1週間での下落率は約12%で、2008年の金融危機以降で最大。

 
2.米国の雇用状況
米労働省が27日に発表した1月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比225,000人の増加で、市場予想の160,000人増を上回りました。11月の雇用者数の確定値は261,000人で5,000人の増加、12月の改定値は147,000人で2,000人の増加となりました。今回の結果を踏まえた過去3カ月間の雇用者平均増加数は約210,000人で、好調の目安とされる平均増加数の200,000人を再び上回りました。なお、12月の失業率は3.6%で、前月と比べて0.1%上昇しました。労働参加率は63.4 %で、前月より0.2%増加しました。12月の時間当たり賃金上昇率は前月比で7セント上昇し、前年同月比では3.1%増となりました。部門別では建設業が44,000人の増加、ヘルスケアが36,000人の増加、レジャー・観光業が36,000人の増加、運輸・倉庫業が36,000人の増加となりました。一方、製造業は12,000人の減少となりました。

 
3.新型肺炎感染拡大が引き起こす株価の大幅調整
1月末に中国で発生した新型肺炎の感染拡大の影響は、中国本土だけでなく、日本や韓国、イラン、そして欧州のイランまで広がりを見せています。米国でも25日に疾病センターが新型肺炎が、米国でも広がる可能性を示唆したことから、前日のダウの1,032ドルの大幅下落に続き、879ドル安となりました。2日間の下げ幅は1,911ドルで、20182月に起きた1,840ドルを超え、史上最大となりました。

米国で株価の大幅下落調整が起きた原因としては、大きく3つの要因が考えられます。第1の要因は中国が現在、自動車や電子・電機製品など主要産業のの部品供給の上で、グローバルなサプライチェーンの中心的な役割を担っており、中国で約80,000人の感染者が出たことにより、当面、その役割が担えなくなったことです。特に感染者の増加が続き、多くの中国の工場で生産再開が遅れれば、中国からの部品が届かず、完成品の生産にも深刻な影響を与えることが予想されます。第2の要因は新型肺炎の感染拡大の影響が強まると、中国国民の消費需要が低迷し、中国市場で売上高の大きな米国企業にとっては売り上げの不振と業績の悪化が懸念されることになります。第3に、現在の異常に高い株価水準は連銀による長期の金融緩和策に加え、トランプ政権による株価引き上げ目的の大型減税など人為的な政策によって達成されています。それは、株価引き上げが政権維持の手段として使われ、実体経済との乖離が大きくなっていることを意味しています。以前であれば、実体経済を反映した適正株価収益率などを通じて、行き過ぎた株高には調整作用が働きましたが、現在は大規模な金融緩和策が続く中で、過剰な資金が株式市場に流入、歯止めのない株高水準が続いていることになります。今回の新型肺炎の患者数の急増はこうした人為的な株価誘導策に引き上げられた株価の高水準を調整に向かわせる可能性があります。

 
4.民主党の大統領候補指名争い
民主党は問題が多すぎる共和党のトランプ大統領の再選を阻止すべく、多くの候補者が名乗りを上げ、激しい指名争いを続けています。これまでのところ、アイオア州、ニューハンプシャー州、ネバダ州で、多くの党員の支持を獲得したサンダーズ候補がトップを走っています。特に、彼が主張する国民皆保険、公立大学の無償化などは、若者を中心に支持を集める要因となっています。

しかしながら、サンダーズ候補の主張には、国民皆保険や公立大学の無償化には巨額の財源が必要ですが、彼をそれを未だに示していません。彼がモデルとする北欧の社会民主主義には富裕層や大企業だけでなく、国民の大多数が高負担・高福祉の政策を支持している背景があるにもかかわらず、それを明示することなく、理念だけで米国民に訴えている状況です。この点、サンダーズ候補が指名されるかどうかは今後の展開次第であり、時期尚早と言えます。また、仮にサンダーズ候補が指名を受けても、財源の裏付けのない提案をし続ける限り、与党候補のトランプ大統領や共和党から直接大きな批判を受けることになり、民主党が大統領に返り咲く可能性は高くないように思われます。
         (202031日:  村方 清)

Saturday, February 1, 2020

新型肺炎感染拡大などで調整傾向を強めた市場












1.1月の株式市場
1月の株式市場は上旬が中東情勢の悪化に伴ない売りが強まりましたが、中旬に米中貿易協議の第一段階合意で買いが優勢となり、下旬には中国での新型肺炎感染拡大の影響で再び大きな下落傾向となりました。主要な動きは以下の通りでした。

12日:中国が1日に金融緩和策を発表し、景気が持ち直し、世界景気の回復を促すとの見方が広がり、330ドル高(1.16%増加)。
13日:米軍がイラクでイランの革命防衛隊の司令官を殺害し、中東情勢が悪化するとの警戒感から幅広い銘柄に売りが広がり、234ドル安(0.81%減少)
16日:米国とイランの対立激化の懸念か一時下げ幅が200ドルを超えたが、その後原油先物相場が一時的に下げに転じ、投資家のリスク回避姿勢が和らぎ、69ドル高(0.24%増加)。
17日:トランプ大統領の指示によるイラン革命防衛隊司令官の殺害に対し、イランが米国に報復する考えを示し、米国も対抗する構えで、中東リスクが拡大120ドル安(0.42%減少)
18日:イランがイラク国内の米軍基地を攻撃したが、トランプ大統領がそれに対抗するための武力行使を否定する演説をし、投資家の間で安心感が広がり、161ドル高(0.56%増加)。
19日:中東情勢をめぐる懸念の後退や、米中の貿易協議の進展期待から、最高値を更新し、212ドル高(0.74%増加)
110日:前日に過去最高値を付けたこともあり、目先の利益を確保する売りに押され、更にボーイングなども運転停止中の小型機の承認が遅れるなどで下落、133ドル安(0.46%減少)
113日:米中貿易協議の第一段階の合意文書の署名が15日に迫り、米中関係の修復が進むとの見方が広がり、83ドル高(0.29%増加)。
114日:JPモルガンなどの米銀大手が発表した4半期決算の好調さから買いが優勢であったが、米政府は対中追加関税を今週の大統領選挙まで維持するとの報道が伝えられると、上げ幅が減少、33ドル高(0.11%増加)
115日:米中政府が貿易協議の第一段階の合意文書に署名、これが米国景気と企業業績の追い風になるとの見方から、買いが優勢で、91ドル高(0.31%増加)。
116日:年末商戦が前年同期比4.1%増と好調であったこと、四半期業績好調のモルガンスタンレーなど金融株が買われたこと、NAFTAに代わるUSMCAが上院で承認されたことなどを受けて、買いが優勢で、267ドル高(0.92%増加)
117日:米中貿易問題を巡る関係改善や景気回復への期待から、買いが優勢で50ドル高(0.17%増加)
121日:中国の新型肺炎の感染拡大の懸念に加え、主力小型機の運転再開が遅れる可能性のあるボーイングが大きく下げ、152ドル安(0.52%減少)
122日:主力小型機の運転再開に不透明感が強まったボーイングが大きく下落、ダウ平均の重荷となり、10ドル安(0.03%減少)。
123日:中国での新型肺炎の感染拡大が投資家心理の重荷となり、大幅下落したものの、世界保健機関が緊急事態宣言を見送るとしたことで、下げ幅が縮小し、26ドル安(0.09%減少)
124日:中国での新型肺炎に関連し、米疾病対策センターが米国で2人目の感染者を発表、米国内の感染拡大を警戒した売りが優勢で、170ドル安(0.58%減少)
127日:中国の新型肺炎感染拡大が嫌気され、世界景気の重荷との見方で投資家のリスク回避姿勢から、一時550ドル近く下がり、終値は454ドル安(1.57%下落)。昨年102日来の大きさ。
128日:前日に大きく下げた反動で、自律反発組の買いが入ったことや新型肺炎について、米中政府が感染拡大を抑える対策を打ち出したことで、187ドル高(0.66%増加)
129日:FOMCが金利据え置きを決めたものの、パウエル議長の記者会見で世界景気に慎重な発言が相次ぎ、米長期金利が一段と低下し、金融株が下落、終値は12ドル高(0.04%増加)。
130日:新型肺炎の感染拡大の警戒感から売りが先行したが、一巡後はマイクロソフトなど業績期待の高い銘柄に買いが入り、上昇に転じて、125ドル高(0.43%増加)。
131日:新型肺炎の感染拡大で世界景気の先行き不透明感が強まり、投資家が運用リスク回避姿勢を深め、景気動向に影響されやすい資本財や資源株の幅広い銘柄に売りが強まり、603ドル安(2.09%減少)。下げ幅は昨年823日以来半年ぶりの大きさ。

 
2.米国の雇用状況
米労働省が110日に発表した12月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比145,000人の増加で、市場予想の165,000人増を下回りました。10月の雇用者数の確定値は156,000人で4,000人の増加、11月の改定値は266,000人で10,000人の増加となりました。今回の結果を踏まえた過去3カ月間の雇用者平均増加数は約184,000人で、好調の目安とされる平均増加数の200,000人を再び下回りました。なお、12月の失業率は3.5%で、前月と変わりませんでした。労働参加率は63.2 %で、前月と同じ水準でした。12月の時間当たり賃金上昇率は前月比で3セント上昇し、前年同月比では2.9%増となりました。部門別では小売業が41,000人の増加、ヘルスケアが28,000人の増加、レジャー・観光業が40,000人の増加となりました。その一方、製造業は12,000人の減少となりました。

 
3.米中貿易第1段階合意の矛盾
115日に米中政府は貿易協議の第1段階の合意文書に署名しました。今回の合意文書では、米農産品の輸入拡大に加え、知的財産権の保護や中国による米国のIT技術移転の強要禁止などの7項目が盛り込まれています。その中で、トランプ政権は今回の合意により今後2年の間に、2017年に中国が輸入した米国の製品やサービスの金額が少なくとも2000億ドル上回ることを中国政府に義務づけたとその成果を強調しています。しかしながら、今回の合意文書にある大きな矛盾は122日付のFinancial Times紙の記事に指摘されているように、中国の市場開放を求めながら、合意事項に規定された内容は中国政府に管理貿易を強要するという矛盾する内容になっていることです。この背景には、トランプ大統領が今年秋の大統領選挙を控え、中国からの輸入拡大という数字的な目標を貿易協議の中心的成果として強調することになってしまったように思います。中国の共産党政府にとっては、彼らにとって不可欠な政府の産業補助金やハイテク産業育成策(中国製造2025)の問題がカバーされていないことに安堵感があったはずです。1年以上の交渉期間を続けながらも、これだけの成果しか示せないトランプ政権には、他の政策と同じように、表面的な成果だけが追及され、本質的な内容には踏み込めないという根本的な欠陥があるように思われます。

 
4.トランプ大統領弾劾裁判とその行方
トランプ大統領のウクライナ疑惑に関して、米国上院での弾劾裁判の審理が121日午後から始まりました。米国の歴史の中で、大統領への弾劾裁判はこれが3人目となります。22日からは4日間に渡り、検察官役の下院代表委員とホワイトハウスの弁護団がそれぞれ、冒頭陳述を行いました。

今回の契機となったのは、トランプ大統領が今年の大統領選挙を自らが有利にするために、ウクライナ政府に対し、20194月以降、政敵バイデン前副大統領親子の捜査と「2016年米大統領選挙に当時のウクライナ政府が介入したとの陰謀論の捜査の開始を公言するように要求、同時にウクライナ政府が求めていたホワイトハウスでの首脳会談や軍事援助を凍結し、圧力をかけたとされるものです。民主党が多数派の下院では、1218日に、「権力乱用」と「議会妨害」の2つの訴追条項でトランプ大統領を訴追していました。野党の民主党が、ボルトン前大統領補佐官などを新たな証人に呼ぶように求めましたが、与党の共和党は速やかに終結させることを目指し、131日の上院会議では証人が不要との与党共和党案が2名の反対意見が出たものの、承認され、終結の方向で進むことになりました。但し、米国民の約75%が新たな証人を求めることに賛成していただけに、今回の上院での与党共和党の強引なやり方が今年秋の大統領選挙や上院選挙に何等かの悪影響が出てくる可能性はあります。

 
5.金利据え置きを決めたFOMC会合
FOMC会合が12829日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。前回12月のFOMC会合後に得た情報によれば、労働市場は強さを保っており、経済活動は緩やかに拡大した。雇用増はここ数か月平均すると堅調で、失業率も低水準を保った。家計支出は緩やかに増加したが、企業の設備投資および輸出は弱いままだ。全般的なインフレ率と、食品・エネルギーを除くインフレ率は2%を下回っている。市場で予測したインフレ値は依然弱く、アンケートによる調査では長期のインフレ予想はあまり変わっていない。

法律で定められた使命を達成するため、FOMCは雇用の最大化とインフレ率の安定に努める。

FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを1.501.75%に据え置くことを決定した。持続的な経済成長、力強い労働市場の情勢、目標の2%前後への回帰を支えるために、現在の金融政策スタンスが適切と考える。FOMCFF金利の目標レンジの道筋を見極めるため、海外の動向や抑制されたインフレ圧力など、景気見通しに関する情報が意味するものを注視していく。
FF金利の誘導目標を調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは雇用の最大化とインフレ上昇率2%という目標との比較で経済情勢との実績と見通しを評価していく。労働市場状況に関する指標、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む10人のメンバーの賛成による。
なお、今回のFOMC会合では4会合ぶりに政策金利の据え置きを決め、声明では金融政策は現在のスタンスが適切と指摘しました。しかしながら、パウエル議長の記者会見が始まると、世界景気についての慎重な発言が相次ぎ、米長期金利が一段と低下、金融株が下落、更に新型肺炎の感染拡大への警戒感から、原油先物相場の下落から、石油株も下落、終値は12ドル高に留まりました。


6.上昇基調に歯止めをかけた中国発の新型肺炎の感染拡大
121日に中国の武漢で発生した新型肺炎の感染拡大は、それまでの米国株式の上昇基調に歯止めをかけることになりました。ダウ平均は4日連続して下落し、24日には一時300ドルを超える状況となりました。ダウ平均の4日連続の下落は20198月前半以来で、キャタピラーなど中国の売り上げ比率が高い銘柄に売りが膨らみました。リスク回避の動きは安全資産とされる債券市場にも広がり、長期金利は3か月振りの水準まで低下しました。

世界的な金融緩和で、株式市場への資金流入が続き、ヘッジファンドや個人の株式持ち高が歴史的な高水準にまで膨らんでいただけに、今回の中国発の新型肺炎の感染拡大はリスクオフの動きを加速させることになりました。130日には、世界保健機関(WHO)が新型肺炎を「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」と宣言したこともあり、続く31日には新型肺炎の感染拡大による世界景気のへの悪影響への懸念が強まり、603ドル安(2.09%減少)となりました。
              (202021日:  村方 清)

Thursday, January 2, 2020

米中貿易協議の第一段階合意と市場の上昇傾向










112月の株式市場
12月の株式市場は、初旬では貿易摩擦問題への懸念から大きな下落となりましたが、1213日に米中貿易協議の第一段階の合意が達成したことで、株価の上昇傾向が続くことになりました。主要な動きは以下の通りでした。
122日:ISM製造業指数は48.1と前月から0.2ポイント下落、4カ月連続で50を割り込んだことで製造業の業績悪化が懸念されたことやブラジルやアルゼンチンからの鉄鋼輸入への追加関税による貿易摩擦の懸念も広がり、268ドル安(0.96%減少)。下げ幅は108日以来の大きさ。
123日:トランプ大統領が中国との貿易協議を先送りする可能性を示唆し、投資家心理が悪化、キャタピラーなど中国関連株を中心に売りが広がり、280ドル安(1.01%減少)
124日:米中貿易協議で第1段階で撤回する関税額ンついて合意に近づいているとの報道から、147ドル高(0.53%増加)。
125日:米中貿易協議の行方を見たい投資家が多く、積極的な投資は控えられ、28ドル高(0.10%増加)
126日:11月の米雇用統計は雇用者増加数が266,000人増で、市場予想の190,000人増を上回り(失業率は3.5%で前月より0.1%減少)、過去3か月分の雇用者数が200,000人を超えたこともあり、ハイテクや金融株を中心に買いが入り、337ドル高(1.22%増加)。
129日:前週末に大幅高となった反動もあり、米中制裁関税第4弾の発動日である15日の様子を見たいとの投資家の反応から、105ドル安(0.36%減少)。
1210日:米中貿易協議をめぐる報道が交錯し、積極的な売買は控えられ、投資家は様子見の姿勢を強め、28ドル安(0.10%減少)
1211日:FOMCが金利据え置きを決めたことを受けて、低金利政策が今後も続くとの見方が強まり、30ドル高(0.11%増加)。
1212日:米中の貿易協議が進展し、第一段階で原則合意したとの報道を受け、投資家心理が改善、キャタピラーなど中国関連株が買われ、220ドル高(0.79%増加)
1213日:米中が貿易交渉で第1段階の合意に達し、米政府が15日に予定の第4段階の関税の発動を見送ったことで好感されたが、第2段階の交渉が不透明感もあり、3ドル高(0.01%増加)
1216日:先週末の米中貿易協議の第一段階の合意を受けて、追加の制裁関税が見送られたことから、投資家の買い意欲が優勢で、101ドル高(0.36%増加)。
1217日:米中が貿易交渉で第1段階の合意に達したことで、貿易摩擦による世界経済の懸念が和らいだものの、高値警戒感もあり、31ドル高(0.11%増加)
1218日:連日、過去値を更新したこともあり、相場の過熱感を警戒した売りが優勢で、28ドル安(0.10%減少)。
1219日:米中の貿易合意で世界経済の減速リスクが低下する中で、企業業績への楽観的な見方が広がり、相場が上昇、138ドル高(0.49%増加)
1220日:米中の貿易協議の合意を受けて、相場の先高観が広がり、78ドル高(0.28%増加)。
1223日:中国による輸入関税引き下げと経営責任を明確化したボーイング株が上昇し、96ドル高(0.34%増加)。
1224日:前日まで連日過去最高値を更新していたため、クリスマス祝日前で利益確定売りが優勢で、36ドル安(0.13%減少)
1226日:米中両国から、貿易協議の合意書調印に前向きの発言が伝わったこともあり、協議進展の見方が広がり、106ドル高(0.37%増加)
1227日:米中の貿易協議が続いていることや米年末商戦が好調だったことから、買いが続き、24ドル高(0.08%増加)
1230日:期末を控え、運用実績を意識した機関投資家の一部が高値圏の銘柄を中心にリ家来角栄目的の売りを出したことから、183ドル安(0.84%減少)。
1231日:日中は前日終値を下回って推移することが多かったが、取引終了にかけて主力株に買いの勢いが強まり、76ドウ高(0.27%増加)。2019年全体のダウ平均は22.3%の上昇。

 
2.米国の雇用状況
米労働省が126日に発表した11月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比266,000人の増加で、市場予想の190,000人増を大きく上回りました。9月の雇用者数の確定値は193,000人で13,000人の増加、10月の改定値は156,000人で28,000人の増加となりました。今回の結果を踏まえた過去3カ月間の雇用者平均増加数は約205,000人で、好調の目安とされる平均増加数の200,000人を再び上回りました。なお、11月の失業率は3.5%で、前月より0.1ポイント改善しました。労働参加率は63.2 %で、前月より0.1%減少しました。11月の時間当たり賃金上昇率は前月比で7セント上昇し、前年同月比では3.1%増となりました。部門別では製造業が54,000人の増加、ヘルスケアが45,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が31,000人の増加となりました。

 
3.利下げ見送りのFOMC会合
FOMC会合が121011日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。前回10月のFOMC会合後に得た情報によれば、労働市場は強さを保っており、経済活動は緩やかに拡大した。雇用増はここ数か月平均すると堅調で、失業率も低水準を保った。家計支出は力強く伸びたが、企業の設備投資および輸出は弱いままだ。全般的なインフレ率と、食品・エネルギーを除くインフレ率は2%を下回っている。市場で予測したインフレ値は依然弱く、アンケートによる調査では長期のインフレ予想はあまり変わっていない。

法律で定められた使命を達成するため、FOMCは雇用の最大化とインフレ率の安定に努める。

FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを1.501.75%に据え置くことを決定した。持続的な経済成長、力強い労働市場の情勢、目標の2%前後付近のインフレ率を支えるために、現在の金融政策スタンスが適切と考える。FOMCFF金利の目標レンジの道筋を見極めるため、海外の動向や抑制されたインフレ圧力など、景気見通しに関する情報が意味するものを注視していく。
FF金利の誘導目標を調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは雇用の最大化とインフレ上昇率2%という目標との比較で経済情勢との実績と見通しを評価していく。労働市場状況に関する指標、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む10人のメンバーの賛成による。
なお、今回のFOMC会合では4会合ぶりに政策金利の据え置きを決め、声明では金融政策は現在のスタンスが適切と指摘しました。FOMCの参加者が政策金利の見通しで、来年いっぱいの金利据え置きをを示したことから、市場ではFRBは利上げを急がないとの見方が改めて強まり、安心感から28ドル高(0.10%増加)となりました。

 
4.米中貿易交渉の第1段階合意
米中両国政府は1213日に第1段階の合意に達したと発表しました。これによれば、米国政府は1215日に予定していた中国製のスマートフォンやノートパソコンなどを対象に15%の関税を上乗せする第4弾の残り1600億ドル分の発動を見送ると同時に、9月に発動していたスマートウオッチなど1200億ドル分の関税率は15%から7.5%に引き下げるとしました。その一方、家電や家具などの第1弾から第3弾(2500億ドル)にかける25%の関税率は維持するとしました。これに対し、中国側は1215日に予定していた報復関税の発動を見送る他、米国からの小麦やトウモロコシの輸入を大幅に拡大するとしています。

今回の合意内容は中国にとっては第4弾の追加関税を見送らせる一方、9月から発動していた1200億ドルの関税率を半分に引き下げさせた点で大きな成果があったと言えます。また、知的財産権の侵害や技術移転の強要などは対象になるものの、中国政府の最も懸念した国有企業への産業補助金など構造問題は含まれていないことでも、中国側にとって優位の内容になったと位置づけられます。この背景には、トランプ大統領が来年の来年の大統領選挙を控え、選挙民に具体的な成果を示したいという焦りがあり、これが中国にとって交渉を有利に展開できた背景になったと見られます。

 
5.英国総選挙で保守党の勝利
1212日に実施された英国の総選挙で、ジョンソン首相が率いる与党の保守党が過半数を超える365の議席を獲得しました。これに対して、最大野党の労働党は40議席減の203と惨敗しました。今回の総選挙ではEU離脱が最大の争点でしたが、3年半に及ぶ政治の迷走に英国民に離脱疲れが広がったことや労働党が離脱か残留かを明確にできなかったことが、保守党の大幅増加になったと見られています。これにより、来年1月中に英国議会が新離脱案を可決すれば、2020年末までの移行期間付きの離脱が決定します。その意味で、総選挙の結果、英国がEUから合意なき離脱をして、経済が大混乱する事態はとりあえずは避けられたことになります。しかしながら、2020末までの移行期間中に、英国とEUで新たな自由貿易協定がまとめられなければ、EUの単一市場や関税同盟についての合意がないまま、推移してしまうリスクが依然として残っています。
          (202012日: 村方 清)