Monday, August 1, 2022

FRBによる金利再引き上げと景気後退への懸念









1.7月の株式市場

7月の株式市場はFRBがインフレへの警戒から727日に2度目の0.75%の金利引き上げを決定しました。しかし、同時に景気後退への懸念から過度な引き上げはないとの見方が強まり、市場も好感、株式市場は月末は回復基調となりました。主要な動きは以下の通りでした。

71: 米長期金利が低下し、ハイテク株の一部が買われた他、景気動向に業績が左右されにくいディフェンシブ株が上昇し、322ドル高(1.05%増加)。

75日:米景気が後退局面に入るとの懸念が強まり、資源や金融など景気敏感株を中心に売りが広がり、129ドル安(0.42%減少)。

76日:FRBが午後に公表したFOMC'の議事要旨は新たな材料に乏しく、タカ派的な内容を警戒していた投資家の安堵感から、70ドル高(0.23%増加)。

77日:前日に3カ月ぶりの安値を付けた原油相場が大幅に反発するなど、リスク資産全体が膨らみ、中国が景気対策として巨額のインフラ投資に動くとの観測も改善につながり、347ドル高(1.12%増加)

78日:8日発表の6月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比372,000人増で市場予想の250,000人を上回り、FRBの金融引き締めへの警戒感から、46ドル安(0.15%減少)。

711日:中国の新型コロナウイルスの感染再拡大による行動規制の強化とロシアからの欧州への天然ガス供給の停止が相場の重荷となり、164ドル安(0.52%減少)。

712日:13日の6月の米消費者物価指数の発表を控えて、取引終盤にかけてインフレ警戒の売りが強まり、193ドル安(0.62%減少)。

713日:朝方発表の6月の米消費者物価指数の上昇率が9.1%と市場予想を上回り、FRBの金融引き締め加速を警戒した売りが出て、209ドル安(0.67%減少)。

714日:前日の6月の消費者物価指数に続き、14日発表の6月の卸売物価指数も前月比1.1%上昇と市場予想を上回った。FRB7月のFOMC1.0%の利上げを決めるとの観測がくすぶり、急速な金融引き締めが景気を冷やすとの見方が先行、143ドル安(0.62%減少)。

715日:朝方発表の米小売売上高は前月比1.0%増と予想以上に増え、ミシガン大学の消費者期待インフレ率も低下しFOMC7月末のFOMC会合で1%の利上げを決めるとの見方が後退、幅広い銘柄に買いが入り、658ドル高(2.11%増加)。

718日:アップルが経済下振れに対応するために、複数部門で人材採用と支出を抑えると発表したことで企業業績への警戒が強まり、他の大手のIT株も下落、全体で216ドル安(0.69%減少)

719日:FRBの急激な利上げが米景気を冷やすとの警戒感が後退、景気敏感株やハイエク株など幅広い銘柄に短期的戻りを見込む買いが入り、754ドル高(2.43%増加)。

720日:6月の米中古住宅販売件数が2年ぶりに低水準になるなど米経済指標の悪化が続き、FRBの急激な利上げ観測が後退、主力ハイテク株が前日に続き大幅に上昇、48ドル高(0.15%増加)。

721日:市場予想を上回る米主要企業の決算発表が多く、売り一巡後は企業業績の好調さを意識した買いがハイテク株を中心に入り、ダウ平均は162ドル高(0.51%増加)。

722日:欧米の景気悪化を示す経済統計の発表を受け、リスク資産である株式を売る動きが強まり、138ドル安(0.43%減少)。

725日:FRBの急激な利上げへの警戒感が薄れ、株が買われた先週までの流れを引き継ぎ、91ドル高(0.28%増加)。

726日:ウォールマートが25日に業績見通しの引き下げを発表し、消費を巡る懸念から消費財関連株に売りが広がり、229ドル安(0.71%減少)。

727日:FRB27日のFOMC会合で0.75%の利上げを決めたが、記者会見で先行きの金融引き締めペースの鈍化を見込む発言をしたことで、市場は好感し、436ドル高(1.37%増加)。

728日:202246月のGDPがマイナス0.9%で、2四半期連続のマイナスとなり、FRBが利上げペースを緩めるとの期待が強まり、幅広い銘柄が買われ、332ドル高(1.03%増加)。

729日:前日夕発表のアップルとアマゾンのなどの決算が好調で、投資家心理が改善、加えて大幅増収増益の石油のシェブロンも買われて、316ドル高(0.97%増加。

 

 

2.米国の雇用状況

米労働省が78日に発表した6月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比372,000人の増加で、市場予想の250,000人の増加を上回りました。4月の雇用者数の確定値は368,000人で68,000人の減少、5月の改定値は384,000人で、6,000人の増加となりました。6月の失業率は3.6%で前月と同じ水準でした。労働参加率は62.2%で前月より0.1%下落しました。6月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別では専門・ビジネスサービス業が74,000人の増加、レジャー・観光業が67,000人の増加、ヘルスケア業が57,000人の増加、輸送・倉庫業が36,000人の増加、製造業が29,000人の増加となりました。

  

3.米消費者物価大幅上昇                                                                

米労働省が713日に発表した6月の消費者物価指数は前年同月比で9.1%上昇、市場予想の8.8%を上回りました。前月比でも1.3%上昇と伸びは加速しており、米連銀制度理事会(FRB)が3月以降3回に渡って実施してきた利上げは、景気過熱を抑えるまでに至っていません。また、景気減速もしくは後退も、物価面からはまだ確認されていません。

なお、外的要因に左右されやすい食料・エネルギーを除くコア指数は前年同月比59%の上昇で、6カ月ぶりに6%を割り込みました。但し、賃金の動きを反映しやすいサービス価格が加速を続けている以上、金融政策についてはさらなる引き締めが必要であることに変わりはない。

こうした消費者物価の動向を受けて、米連邦公開市場委員会(FOMC)が7月会合で従来想定されていた0.75%ポイントではなく、歴史的水準の1ポイントの引き上げになるのではないかとの見方も一部に出てきました。

 

4.0.75%の利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が72627日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。

最近の消費と生産の指標は鈍化している。ただ雇用はこの数か月堅調に増加し、失業率は低いままだ。物価上昇率はパンデミックに関連した需給の不均衡、食品・エネルギー価格の高騰、広範に及ぶ物価上昇圧力を反映して、高止まりしている。

ロシアによるウクライナ侵攻が、人々と経済に甚大な苦難をもたらしている。侵攻と関連する事象が更なる物価上昇圧力をもたらし、グローバルな経済活動の重荷となっている。加えて、中国の新型コロナウイルス関連の都市封鎖が、供給網の乱れを更に悪化させる可能性がある。FOMCはインフレリスクを強く注視している。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを2.252.50%に引き上げることを決定した。さらなる誘導目標レンジの引き上げの継続が適切になると予測している。加えて、5月に発表した「バランスシートの規模削減のための計画」に述べた通り、国債、機関債、ローン担保証券の保有を削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、FOMCは引き続き、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げるリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する用意がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバー全員の賛成による。

FOMCの決定は0.75%の利上げで事前予想通りの内容でした。パウエル議長がFOMC会合後の記者会見で、金融引き締めの効果が経済とインフレにどう影響しているかを評価しながら、利上げペースを緩めることが適切になるだろうとして、秋以降の利上げ幅縮小を期待した買いが広がり、ダウは436ドル高(1.37%増加)となりました。

 

5.米国のGDP2四半期連続のマイナス成長                                              
米商務省が728日に発表した46月期のGDPは年率換算で0.9%減少し、2四半期連続のマイナス成長となりました。マイナス成長が続いた最大の要因はGDP7割を占める個人消費の減速が強まったことで、46月期の個人消費は1.0%増と13月期の1.8%増に比べて減速しました。景気の回復で賃金は上がっていたが、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギーや食料品が値上がりし、購買力が低下している。コンファレンスボードの消費者信頼度指数も子の1年余りでリーマン危機に次ぐ落ち込みを記録している。

FRBは相次ぐ利上げで、インフレの沈静化を狙うが、落ち着く兆しは見えていません。

その一方で、急激な利上げはGDPの主要項目である住宅投資や設備投資の逆風になっています。13月期の住宅投資は0.4%増であったのに対して、46月期の住宅投資は前期比14.0%減の大幅の落ち込みとなりました。設備投資も、13月期は10.0%増であったのに対し、46月期は0.1%の減少に転じました。銀行融資の金利上昇や人手不足などを理由に、企業が生産設備の建設プロジェクトを延期している例が多くなっています。

米国での景気後退の懸念が高まったことで、11月に中間選挙を控えるバイデン政権やFRBは難しい立場に置かれています。個人消費を冷やすインフレを抑制するために利上げを急げば、景気の悪化を一段と深刻にさせる恐れがあります。一方で財政出動や金融緩和といった景気刺激策は高い水準にあるインフレを一段と加速しかねません。インフレ抑制を優先させながら、景気後退に陥らない政策が必要になっています。

      (202281日: 村方 清) 

Friday, July 1, 2022

高率インフレと0.75%の利上げに揺れる株式市場








1.6月の株式市場

6月の株式市場は610日発表のCPIが前年同月比8.6%の上昇となったや1415日に開催されたFOMCで通常の3倍にあたる0.75%の利上げを決めたことで、大きく下落、202012月以来の3万ドル割れとなりました。主要な動きは以下の通りでした。

61: 米長期金利が2週間ぶりに2.9%台に上昇、FRBの金融引き締めへの警戒感が意識されて、177ドル安(0.54%減少)。

62日:2日発表の米雇用指標が市場予想を下回り、FRBが積極的に金融を引き締めるとの懸念がやや和らぎ、436ドル高(1.33%増加)。

63日:3日発表の5月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比390,000人増で市場予想の328,000人を上回り、FRBの積極的な金融引き締めへの警戒感から、349ドル安(1.05%減少)。

66日:午前中は中国の経済正常化の期待から大幅に上昇したが、米長期金利が3%台になると、嫌気をさした売りでダウ平均は伸び悩み、16ドウ高(0.05%増加)。

67日:米長期金利の上昇が一服し、ハイエク株への買い直しが優勢となり264ドル高(0.80%増加)。

68日:欧州の金融大手クレディスイスが202246月期に赤字に転落すると発表し、銀行株を中心に企業収益への警戒が広がり、269ドル安(0.81%減少)。

69日:ECB9日に7月に量的緩和を終了すると決め、同月中に0.25%の利上げに踏み切ると方針を示し、金融正常化による欧州景気の減速が世界景気を下押しするとの警戒感が高まり、639ドル安(1.74%減少)

610日:朝方発表のCPIが前年同月比8.6%上昇と市場予想の8.3%を上回り、インフレ加速を背景にFRBが積極的な利上げを進めるとの見方が強まり、幅広い銘柄に売りが膨らみ、880ドル安(2.73%減少)

613日:インフレ抑制のためにFRBが積極的に金融引き締めを進めることから、米景気や企業収益を冷やすとの警戒感から幅広い銘柄に売りが優勢で871ドル安(2.79%減少)。

614日:15日にFOMCの会合を控え、積極的な米金融引き締めを警戒した売りが優勢となり、152ドル安(0.50%減少)。

615日:FRB615日まで開いたFOMC会合で、市場の予想通りに通常の3倍にあたる0.75%の利上げを決め、大幅な利上げがインフレ抑制につながるとの見方から買いが優勢で、304ドル高(1.00%増加)

616日:FRB15日のFOMCで通常の3倍にあたる0.75%の利上げを決定、急激な金融引き締めが景気後退を招くとの警戒が強まり、741ドル安(2.42%減少)。

617日:原油相場が大幅に下落しインフレ懸念がやや和らぎ、買いが優勢になる場面もあったが、FRBの急激な金融引き締めの懸念は強く、38ドル安(0.13%減少)。

621日:米株式相場が前週末にかけ大幅に下落、短期的な自律反発を見込んだ買いが優勢で、ハイテクや消費関連株を中心に幅広い銘柄に買いが入り、641ドル高(2.15%増加)。

622日:米連邦準備理事会(FRB)の積極的な利上げに伴う景気懸念から売りが優勢で、47ドル安(0.15%減少)。

623日:FRBの積極的な金融引き締めが景気悪化を招くとの懸念から相場の上値は重かったが、銘柄選別が進み、ハイテク株の一角やディフェンシブ株が買われ、194ドル高(0.64%増加)。

624日:ミシンガン大学発表の6月消費者態度指数は50.0と統計開始以来最低となり、消費者の期待インフレ率低下を受け、FRBの急速な利上げ観測がやや和らぎ、823ドル高(2.68%増加)

627日:米長期金利が前週末に比べ0.08%上昇し、相対的な割高感が意識されやすい高株価収益率のハイテク株が売られ、62ドル安(0.20%減少)。

628日:米コンファレンスボードが28日に発表した米消費者信頼感指数は98.75月から低下、インフレ懸念の高まりが景況感の悪化に繋がり、491ドル安(1.56%減少)。

629日:四半期末と会って機関投資家の資産配分見直しに伴う買いが入るとの期待から、82ドル高(0.27%増加)。

630日:5月の米個人消費支出は前月比0.2%増と4月から減速し、FRBの積極的な利上げ見通しの中で、一段と景気減速の懸念が高まり、214ドル安(0.82%減少)。上半期の下落率は15.3%という60年振りの高さとなった

 

2.米国の雇用状況

米労働省が63日に発表した5月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比390,000人の増加で、市場予想の328,000人の増加を上回りました。3月の雇用者数の確定値は398,000人で30,000 人の減少、3月の改定値は436,000人で、8,000人の増加となりました。5月の失業率は3.6%で前月と同じ水準でした。労働参加率は62.3%で前月より0.1%上昇しました。5月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が84,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が75,000人の増加、輸送・倉庫業が47,000人の増加、建設業が36,000人の増加、政府教育関係が36,000人、民間教育関係が33,000人の増加、へルスケア業が28,000人の増加、製造業が18,000人の増加となりました。

 

3.  米国の高インレーションの原因

米国は先月、過去40年間で最大となる8.6%のインフレーションを経験しましたが、この原因について、Moodyの首席エコノミストはその内、3.5%はロシアによるウクライナへの侵攻がもたらしたのであることを分析しました。特に、ガソリン価格の高騰が大きな要因となったことを伝えました。その一方、コロナウイルスの感染症拡大がグローバルなサプライチェーンの障害となったことは2%程度の影響しかなかったとしました。

それに加えて、ラリーサマーズなどのエコノミストが主張するバイデン政権が実施した19兆ドルの米国救済計画(American Rescue plan)がインフレーションに与えた影響は僅か0.1%しかの貢献しなかったことも分析しました。いずれにしても、供給サイドに多くの原因があるにも関わらず、金融引き締めで事態を打開しようとするFRBの政策にはどこか疑問を抱える状況になりそうです。


4.0.75%の利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が6145日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。全般的な経済活動は13月にわすかに縮小した後で持ち直したようだ。雇用増はこの数か月堅調で、失業率は低いままだ。物価上昇率はパンデミックに関連した需給の不均衡、エネルギー価格の高騰、広範に及ぶ物価上昇圧力を反映して、高止まりしている。

ロシアによるウクライナ侵攻が、人々と経済に甚大な苦難をもたらしている。侵攻とそれに関する事象が更なる物価上昇圧力をもたらし、グローバルな経済活動の重荷となっている。加えて、中国の新型コロナウイルス関連の都市封鎖が、供給網の乱れを更に悪化させる可能性がある。FOMCはインフレリスクを強く注視している。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを1.501.75%に引き上げることを決定した。さらに誘導目標レンジの引き上げの継続が適切になると予測している。加えて、5月に発表した「バランスシートの規模削減のための計画」に述べられている通り、国債、機関債、ローン担保証券の保有を削減を継続する。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む9人のメンバー全員の賛成による。

FOMCの決定は事前予想通りの内容で、大幅な利上げがインフレ抑制につながるとの見方から、買いが優勢で、ダウ平均は304ドル高(1.00%増加)となりました。

           (202271日: 村方 清)

  

Wednesday, June 1, 2022

金融引き締めの警戒や小売り業の不振による不安定化


 







1.5月の株式市場

5月の株式市場はFRBによる金融引き締めへの警戒感や大手小売業店の業績不振で、5月中旬に株式市場は大きく落ち込んだものの、後半になって割安感や値ごろ感に着目した買いが入り、5月初めのの水準に戻りました。主要な動きは以下の通りでした。

52: FOMC会合の結果発表を4日に控えて、積極的な金融引き締めに対する警戒感は強く、ダウは一時500ドル強下げ、取引終了にかけて下げを縮め上昇に転じて、84ドル高(0.26%増加)。

53日:前週末に売られすぎた反応で買いが優勢であったが、4日のFOMC会合を控えて、様子見ムードも強く、67ドル高(0.20%増加)。

54日:この日のFOMCで通常の2倍にあたる0.5%の利上げと量的引き締めの6月開始を決定、連銀議長は記者会見で0.75%の利上げには慎重で、過度な金融引き締めと景気後退への懸念が和らぎ、932ドル高(2.81%増加)

55日:米国のインフレ懸念が高まり、FRBが積極的な金融引き締めを続けるとの見方が再燃し、米長期金利も3年振りの高さで、ハイテク株を中心に売りが進み、1,063ドル安(3.12%減少)。

56日:6日発表の4月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比428,000人増で市場予想の400,000人を若干上回った。労働市場の需給逼迫と高い賃金上昇が意識され、FRBの積極的な金融

引き締めが続くとの警戒から、99ドル安(0.30%減少)。

59日:インフレやFRBの積極的な金融引き締めを警戒した売りが優勢で、米長期金利も早朝に3.2%と201811月以来の水準に上昇し、654ドル安(1.99%減少)。主要3株価指数がいずれも年初来安値を更新

510日:11日の4月のCPIの発表を控えて買いに慎重な姿勢が強く、金融引き締めへの警戒感から、85ドル安(0.26%減少)。

511日:11日発表の4月の米消費者物価指数の市場予想の6.0%を上回る8.1%であったことから、FRBの金融引き締めを警戒した売りが優勢で、327ドル安(1.02%減少)。

512日:今年に入ってから株価の大幅下落で信用取引の買主には追証が発生していると見られ、投資家の損失覚悟の投げ売りが相場下落につながり、104ドル安(0.33%減少)。

513日:前日までの6日間で2,330ドルの下げとなり、短期的な自律反発を期待した買いがハイテク株を中心に優勢で、466ドル高(1.47%増加)。

516日:原油高を受けて石油株が買われ、ディフェンシブ株の一角も上昇して、27ドル高(0.08%増加)。

517日:朝方発表の4月の小売り売上高が前月比0.6%増と市場予想(0.4%増)以上に増えたことで、消費堅調が続いていると受け止められ、消費関連株や景気敏感株の買いが優勢で、431ドル高(1.34%増加)

518日:米小売大手もターゲットの決算が振るわず、インフレが経営を圧迫するとの懸念が強まり、小売業を中心に幅広い銘柄が売られ、1,165ドル安(3.57b減少)

519日:今週は低調な小売り決算が相次ぎ、インフレが企業業績を圧迫するとの懸念が売りを誘って、237ドル安(0.75%下落)。

520日:前日までに連日で年初来安値を更新しており、短期的な戻りを見込む買いが入り、取引終了にかけて、9ドル高(0.03%高)。

523日:ハイテク株などに割安感や値ごろ感に着目した買いが入り、銀行株も軒並み上昇したことで投資家心理の改善があり、618ドル高(1.98%増加)。

524日:前週までハイテク株や景気敏感株と同様に売られてきたディフェンシブ株には下げすぎと見た買いが入り、44ドル高(0.15%増加)。

525日:FRBの議事要旨が市場の想定内の内容であったことで、最近の相場下落で生じた割安感と値ごろ感に着目した買いが優勢で、192ドル高(0.60%増加)。

526日:小売企業で市場予想を上回る四半期決算の発表が相次ぎ、米経済を支える消費は堅調との見方から消費関連株を中心に買いが優勢で、517ドル高(1.61%増加)。

527朝方発表の米物価指標の伸び率が縮小し、インフレ加速の過度な警戒感が和らぎ、消費関連やハイテク株を中心に買いが入り、576ドル高(1.76%増加)。

531日:米原油先物相場が上昇し、高インフレア長引くとの懸念が高まり、売りが優勢となり、223ドル安(0.67%減少)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が56日に発表した4月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比428,000人の増加で、市場予想の400,000人の増加を若干上回りました。2月の雇用者数の確定値は714,000人で36,000 人の減少、3月の改定値は428,000人で、3,000人の減少となりました。4月の失業率は3.6%で前月と同じ水準でした。労働参加率は62.2%で前月より0.2%低下しました。4月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が78,000人の増加、製造業が55,000人の増加、輸送・倉庫業が52,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が41,000人の増加、金融業が35,000人の増加、ヘルスケア業が34,000人の増加、小売業が29,000人の増加となりました。

 

3.0.5%の利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が534日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。

全般的な経済活動は13月にわすかに縮小したが、家計の支出と企業の設備投資は力強さを保っている。雇用増はこの数か月堅調で、失業率は大きく下がっている。物価上昇率はパンデミックに関連した需給の不均衡、エネルギー価格の高騰、広範に及ぶ物価上昇圧力を反映して、高止まりしている。

ロシアによるウクライナ侵攻が、人々と経済に甚大な苦難をもたらしている。米経済への影響は極めて不透明だ。侵攻とそれに関する事象が更なる物価上昇圧力をもたらし、経済活動の重荷となる可能性が高い。加えて、中国の新型コロナウイルス関連の都市封鎖が、供給網の乱れを更に悪化させる可能性もある。FOMCはインフレリスクを強く注視している。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。金融政策のスタンスを適切に引き締めることで、労働市場の強さを保ったまま、インフレは目標の2%に戻ると予測する。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0.751.0%に引き上げることを決定した。加えて、この声明要旨を共に発表した「バランスシートの規模削減のための計画」に述べられている通り、61日から国債、機関債、ローン担保証券の保有を減らし始めることを決定した。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む9人のメンバー全員の賛成による。

FOMCの決定は事前予想通りの内容でしたが、パウエル議長が会合後の記者会見で、0.5%の利上げを今後数回の会合で継続する可能性を示す一方、市場で浮上していた0.75%の利上げについては、「委員会は積極的に検討していない」と指摘しました。また、インフレ抑制に向けて積極的な金融引き締めを進めても、労働市場の強さを勘案すれば、「深刻な景気後退や失業率の上昇なしに物価の安定を回復するチャンスは十分あるにある」と発言、これらで、投資家の不安心理が薄らぎ、ダウ平均は932ドル高(2.81%増加)と         

なりました。

        (202261日: 村方 清)