Saturday, April 1, 2023

銀行破綻がもたらすFRBの利上げの見直し



 






1.3月の実績

3月の株式市場は310日に米中堅銀行のSVBが経営破綻したことで、インフレ抑止のためのFRBの利上げペースに見直しの動きが出て、月末にかけて株式市場の改善傾向をもたらしました。主要な動きは以下の通りでした。 

31: FRBの利上げ長期化観測から長期金利が4%台に上昇する場面があり、株式市場の上昇を抑えて、5ドル高(0.02%増加)。

32日:1日夕に発表した決算と業績見通しが市場予想を上回ったセールスフォースが大幅高となり、ダウ平均を押し上げ、342ドル高(1.05%増加)。

33日:アトランタ連銀の総裁が32122日のFOMC0.25%の利上げに強く賛成すると発言したことを受けて、大幅利上げへの警戒感が後退、ハイテク株を中心に買いが広がり、389ドル高(1.17%増加)

36日:78日の連銀議長の議会証言を控えて様子見ムードが強く、買いの勢いは弱く、40ドル高(0.12%増加)。

37日:パウエル連銀議長が7日の議会証言で利上げの加速や利上げ長期化の可能性を示したことで、金融引き締めの警戒感が強まり、幅広い銘柄に売りが出て、575ドル安(1.72%減少)

38日:前日に大幅に下げた反動でハイテク株や景気敏感株などには押し目買いが入ったが、FRBの利上げ再加速を警戒して買いの勢いは弱く、58ドル安(0.18%減少)。

39日:朝方発表の週間新規失業保険申請件数は211,000人で市場予想の195,000人を上回ったことで、FRBの利上げ再加速の懸念が高まり、543ドル安(1.72%減少)

310日:10日発表の2月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比311,000人増で市場予想の225,000人を大きく上回ったものの、米中堅金融機関のSVB傘下の銀行が破綻、金融システム全体への波及への警戒感がら、345ドル安(1.07%減少)。

313日:米国で銀行の破綻が相次ぎ、金融システムを巡る不安の高まりを背景に銀行株が中心に売られ、91ドル安(0.28%減少。

314日:米銀の破綻を契機に売り込まれた金融株の一角が急反発、投資家心理が改善して、336ドル高(1.06%増加)。

315日:スイスの金融大手クレディ・スイス・グループの経営不安から欧州株式市場が大幅安となり、米市場にも金融株を中心に売りが広がり、281ドル安(0.87%減少)

316日:経営不振の米地銀のファースト・リパブリック・バンクを米大手銀行11行が支援するとの観測から金融システム不安が和らぎ、372ドル高(1.17%増加)。

317日:米地域銀行の経営不安が続く中、銀行の融資態度の厳格化につながり、景気を冷やすとの見方から、株が売られ、385ドル安(1.19%減少)。

320日:経営難に陥っていたクレディ・スイス・グループをスイスのUBSが買収することで合意、金融システムが不安定化するとの懸念が和らぎ、383ドル高(1.20%増加)。

321日:米金融当局が金融不安のの拡大防止策を続けるとの観測が強まり、金融株や景気敏感株など幅広い銘柄が買われて、316ドル高(0.98%増加)。

322日:32122日に開かれたFOMC会合で0.25%の利上げを決め、従来の引き締め姿勢を維持、景気悪化のリスクが高まったとの見方から、売りが優勢で、530ドル安(1.63%減少)。

323日:FRBの利上げ停止が近いとの観測からハイテク株を中心に買われて、75ドル高(0.23%増加)。

324日:24日にセントルイス地区連銀の総裁が金融ストレス抑制に前向きの見方を示し、金融システム不安による景気悪化への過度の警戒が和らぎ、ディフェンシブ株を中心に買いが広がり、132ドル高(0.41%増加)。

327日:経営破綻したシリコンバレーバンクの引受先が決まり、破綻処理の進展を好感した買いが優勢で、194ドル高(0.60%増加)。

328日:金融システムへの過度な不安が後退したものの、ハイテク株やディフェンシブ株への売りが重荷となり、38ドル安(0.12%減少)。

329:米欧の金融システムへの不安が一段と和らぎ、消費財関連や金融株などに買いが入り、323ドル高(1.0%増加)。

330日:今週は新たに経営不安に陥る金融機関が出ておらず、金融システム不安が収束しつつあるとの見方が相場の支えとなり、141ドル高(0.43%増加)。

331日:朝方発表の2月の米個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率が市場予想を下回り、FRBの利上げが長引くとの懸念が和らぎ、415ドル高(1.26%増加)

 
 

2.米国の雇用状況

米労働省が310日に発表した2月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比311,000人の増加で、市場予想の225,000人を大きく上回りました。12月の雇用者数の確定値は260,000人で21,000人の増加、1月の改定値は504,000人で13,000人の減少でした。2月の失業率は3.6%で、前月から0.2%増加しました。労働参加率は62.5%で前月より0.1%増加しました。2月の時間当たり賃金上昇率は前月比で8セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が105,000人の増加、小売業が50,000人の増加、政府部門が46,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が45,000人の増加、ヘルスケア業が44,000人の増加、建設業が24,000人の増加となりました。

 

3. 米銀の金融破綻とクレディスイス問題

310日に米国のシリコンバレーバンクの経営破綻が伝わり、この前日から米欧の金融市場の様相は大きく変わりました。12日には米政府・財務省などが例外措置として、破綻銀行の預金全額保護などの緊急対策を実施しました。その後、他の中小銀行にお預金流出が及ぶとの懸念がくすぶり、米国の株式市場では中小銀行の大幅下落が続きました。この影響は欧州にも及び、スイス大手銀行のクレディスイスにも波及して同行の株価か急落、そして、スイス政府と中銀による強権が発動され、19日にはUBS銀行が救済合併するに至りました・

今回の金融問題が2008年のリーマンブラザースの破綻に端を発する金融危機と異なるのは、当時の金融危機は20093月に米政府による大手銀行の資本への政府資金の投入が実現して、米政府が金融システムを守る政府対応が実現するまで収まらず、経済活動にも大きな影響が及びました。

スイス政府はUBS銀行との合併に金融システムを保つ決断を早々に行いました。この意味で、金融システムを麻痺させる対応が回避されたという点で、2008年の金融危機とは大分異なっています。

 

4.0.25%の利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が321日と22日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。最近の指標では消費と生産が緩やかに増加している。ここ数か月、雇用の増加は堅調で、失業率は低水準にとどまっている。インフレ率は鈍化したが、依然として高い水準にある。

米国の銀行システムは健全で回復力がある。最近の動向は家計や企業の信用状況を厳しくし、経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼすと見られる。これらの影響の度合いは不透明だ。FOMCはインフレリスクを引き続き注視している。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.755%に引き上げることを決定した。今後入ってくる情報を注視し、金融政策を評価する。

インフレ率を長期的に2%に戻すのに十分な金融政策スタンスを達成するために、いくらか追加の政策決定が適切かもしれない。将来の目標レンジの引き上げ幅を決めるにあたり、金融政策の累積的な引き締め、金融政策や経済活動がインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。さらに、以前計画に示されているように、国債、機関債、ローン担保証券の保有量の削減を継続する予定だ。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが現れた場合、金融政策のスタンスを適切なものに調整する用意がある。労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮する。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバー全員の賛成による。

米銀の相次ぐ破たんを受けていったん政策金利を据え置くとの見方もあったが、高インフレの抑制を優先させました。記者会見したパウエル議長は銀行不安への対応策に言及した上で、銀行システムは健全で強靭であると強調、その上で、前回会合以降に出てきた労働市場や物価の指標が想定以上に強かったことから利上げの継続を決定したと説明しました。こうして、FRBが従来の引き締め政策を維持したことで、市場では景気悪化のリスクが高まったとして、景気敏感株や消費財関連株への売りが目立ち、ダウ平均は530ドル安(1.63%減少)となりました。

             (202341日: 村方 清)

  

Wednesday, March 1, 2023

インフレ懸念によるFRBの利上げ継続と株式市場の悪化

 









1.2月の実績

2月の株式市場は小売り大手の業績不振や見通しの悪化に加え、米個人消費支出も市場予想よりも高く、インフレ収束には時間がかかり、FRBの利上げ継続への懸念が強まり、下落傾向となりました。主要な動きは以下の通りでした。

21: FOMCの結果発表後は利上げ継続が意識され、500ドル超の下げ幅を広げたが、FRBのパウエル議長の会見中に急速に下げ渋り、上げに転じて、7ドル高(0.02%増加)。

22日:業績懸念の後退や長期金利の低下でハイテク株が買われた半面、ダウ平均構成銘柄の比重が大きいヘルスケア株などが売られ、39ドル安(0.11%減少)。

23日:3日発表の1月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比517,000人増で市場予想の200,000人を上回り、FRBによる利上げ停止の期待が後退し、128ドル安(0.38%減少)。

26日:労働市場の需給逼迫を背景にFRBによる早期の利上げ停止や利下げ転換の観測が後退し、売りが出て、35ドル安(0.10%減少)。

27日:パウエル連銀議長のインタビューが警戒したほどタカ派寄りではなかったと受け止められ、買い直しが優勢で、266ドル高(0.78%増加)。

28日:FRBの高官発言がタカ派寄りと受け取られ、利上げの早期停止観測や年内の利下げ期待が後退、売りが優勢で、208ドル安(0.61%減少)。

29日:前週末の強い米雇用統計を受け、米長期金利が上昇し、高株価収益率の銘柄を中心に売りが優勢で、249ドル安(0.73%減少)。

210日:雇用の強さは米景気の底堅さを映しており、景気後退は避けられるとの見方から買いを促し、169ドル高(0.50%増加)。

213日:14日に発表される1月の米消費者物価指数にインフレ鈍化の期待から、ハイテク株を中心に買われ、377ドル高(1.11%増加)。

214日:朝方に発表された1月のCPIは前月比0.5%上昇し、市場予想を上回り、FRBによる利上げ継続の観測が強まり、157ドル安(0.46%減少)。

215日:1月の小売売上高は前月比0.3%増と市場予想を上回り、FRBの利上げが続くとの観測から売りが先行したが、その後は米景気は強いとの楽観から買いが入り、39ドル高(0.11%増加)。

216日:1月のPPIは前月比0.7%上昇と前月から上昇に転じて、早期の米利上げ休止観測が後退、株売りが優勢となり、431ドル安(1.26%減少)。

217日:今週発表の米物価指数がインフレ圧力の根強さを示し、FRBによる早期の利上げ休止観測が後退したものの、指数への寄与度が大きいディフェンシブ株への資金シフトが見られ、ダウ平均は午後にかけて、圧力を強め、130ドル高(0.39%増加)。

221日:米小売大手の決算や見通しが市場予想を下回り、米景気や企業業績への先行き不透明感が広がり、697ドル安(2.06%減少)。

222日:午後発表のFOMCの議事要旨でFRBの利下げ転換が遠のくとの警戒感から、株式市場の重荷となり、85ドル安(0.26%減少)。

223日:2日間で780ドル下げた反動で、自律反発を見込んだ買いが入り、109ドル高(0.33%増加)。

224日:1月の米個人消費支出は前年同月比4.7%上昇、市場予想の4.4%を上回り、FRBによる利上げ停止の時期が遠のくとの警戒感から幅広い銘柄に売りが出て、337ドル安(1.02%減少)

227日:前週に1000ドル余り下落した後で、売られすぎと見た押し目買いが入ったことや長期金利が下げに転じたために、72ドル高(0.22%増加)。

228日:FRBの利上げが長く続くとの観測から、米長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が意識され、232ドル安(0.71%減少)。ダウは2か月間で1429ドル下落(4.19%減少)。


 
2.米国の雇用状況

米労働省が23日に発表した1月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比517,000人の増加で、市場予想の200,000人を大きく上回りました。11月の雇用者数の確定値は296,000人で34,000人の減少、11月の改定値は260,000人で37,000人の増加でした。12月の失業率は3.4%で、前月から0.1%減少しました。労働参加率は62.4%で前月より0.1%増加しました。12月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が128,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が82,000人の増加、政府部門が74,000人の増加、ヘルスケア業が58,000人の増加、小売業が30,000人の増加、建設業が25,000人の増加となりました。

 

30.25%の利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が131日と21日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。最近の消費と生産の指標は緩やかな伸びを示されている。ここ数か月、雇用の増加は堅調で、失業率は低水準にとどまっている。インフレ率はやや鈍化したが、依然として高い水準にある。

ロシアによるウクライナ侵攻が甚大な人的・経済的苦境を引き起こし、世界の不確実性を高める要因っている。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.54.75%に引き上げることを決定した。

インフレ率を長期的に2%に戻すのに十分な金融政策スタンスを達成するために、誘導目標レンジの継続的な引き上げが適切になると予測している。

将来の利上げペースを決めるにあたり、金融政策の累積した引き締め、金融政策や経済活動がインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。さらに、以前計画に示されているように、国債、機関債、ローン担保証券の保有を削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが現れた場合、金融政策のスタンスを適切なものに調整する用意がある。労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮する。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバー全員の賛成による。

FOMCの決定は0.25%の利上げで事前予想通りの内容でした。声明では、継続的な引き上げが適切との前回の表現を維持したために、500ドル強の下げ幅を広げましたが、パウエル議長の記者会見でこれまでの金融引き締めの効果で、昨年の米経済の伸びは大幅に減速したの認識を示しました。加えて、質疑応答で、インフレ鎮静化のプロセスが始まったといえると述べたことで、ダウは上昇に転じて、7ドル高(0.02%増加)になりました。

 

4. バイデン大統領の一般教書演説

バイデン大統領は27日午後9時に連邦議会の上下両院合同会議で内政・外交方針を示す一般教書演説に臨みました。バイデン氏は演説で、格差是正や財政再建に向けて富裕層に最低税率を設けることを提案しました。1月から1%の税率導入された企業の自社株買いへの課税を4倍にする考えを示しました。加えて、アップルやグーグルなどの巨大IT企業への規制強化も訴えました。反トラストの執行を強化すると同時に、IT大手が自社製品を不当に有利にすることを防止するための超党派の法案を可決するように呼びかけました。共和党内には政府が企業活動に介入することに慎重な考えが多く、ねじれ議会で法整備を実現する道は険しいと思われます。

バイデン氏は気候変動対策について言及するなか、我々は少なくとも10年は石油を必要とするとの原稿にない一文を入れました。これについて、エネルギー業界に近い共和党に歩み寄る姿勢を見せたと受け止める声もあります。

また、政府債務の上限引き上げ問題についても、野党の共和党に協力を求めました。

一方、外交面では224日にロシアによる侵攻から1年になるウクライナへに支援継続を約束しました。共和党内に米国経済を優先させるためにウクライナへの巨額予算を見直すべきとの意見があることについて、会場に招いたウクライナ大使に対して、米国は結束してウクライナを支援することを約束しました。加えて、中国との競争に勝つには米国が結束しなければならないとして、与野党が一致して中国に対峙すべきことを促しました。

バイデン大統領は2024年の大統領選挙に立候補するかどうかを明確にしていませんが、今回の一般教書演説は再選出馬に意欲が示す内容で会ったことは間違いありません。

 

5.インフレ率の高止まりと米利上げの継続

224日に発表された1月の米個人消費者支出(PCE)は変動が大きい食品とエネルギーを除くコア指数が前年同月比で4.7%上昇し、市場予想の4.4%を上回りした。

この結果、米債券市場では長期金利が上昇し、一時は前日比0.09%高い3.97%を付けました。これにより、長期金利の上昇の影響を受けやすい高株価収益率のハイテク株への売りが目立ち、ソフトウェアのマイクロソフトとオンラインショッピングのアマゾンが2%以上の下落となりました。

一方、市場では今回、インフレ率が高まったことで、高インフレの沈静化にはまだ時間がかかり、FRBによる利上げ停止の時期が遠のくとの警戒感から幅広い銘柄に売りが出て、ダウは337ドルの下落(1.02%の減少)となりました。

         202331日:村方 清)

 

Wednesday, February 1, 2023

インフレ鈍化と企業業績の好調さで回復する米株式市場










1.1月の実績

1月の株式市場は、昨年12月の米小売売上高が予想以上に落ち込むなどのマイナス面はあったも のの、112日に発表した12月のインフレ率が6.5%で6カ月連続で鈍化したことで金融引き締めが緩むとの見方に加え、企業業績は現在のところ底堅い決算が目立っており、株式市場の先行きへの期待感が支えました。主要な動きは以下の通りでした。

1月3: スマートフォンのアップルと電気自動車のテスラが大幅に下げ、投資家心理を冷やして、11ドル安(0.03%減少)。

14日:中国経済の回復への期待が一定の支えとなり、景気敏感株や消費関連株に買いが入り、133.40ドル高(0.40%増加)。

15日:昨年12月のADP全米雇用レポートで非農業部門の雇用者数は前月比235千人増と市場予想の153千人を大きく上回り、週間の失業保険申請件数も昨年9月以来の低水準となり、米利上げが長期化するとの見方から売りが優勢で、340ドル安(1.02%減少)。

16日:6日発表の12月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比223,000人増で市場予想の200,000人を上回ったものの、平均時給は前月比0.3%増と市場予想の0.4%増を下回り、FRBによる金融引き締めの長期化への懸念が和らぎ、幅広い銘柄が買われ、701ドル高(2.13%増加)。

19日:前週末に700ドル高と大きく上昇した反動で、午後には目先の利益を確定する目的の売りが優勢となり、113ドル安(0.34%減少)。

110日:FRBのパウエル議長が同日の講演で金融政策について踏み込んだ発言をしなかったことで、投資家の安心感につながり、186ドル高(0.56%増加。

111日:12日に予定される12月の米消費者物価指数の発表に先回りし、一段のインフレ減速が示されると期待した売りが入り、268ドル高(0.80%増加)。

112日:12日発表の12月の米消費者物価物価指数が前月比で0.1%下落、前年同月比で6.5%上昇と11月の7.1%から低下、FRBが利上げペースを更に緩めるとの見通しが強まり、217ドル高(0.64%増加)。

113日:朝方に発表された主要銀行が先行きに慎重な見方を示し、売りが先行したが、FRBの利上げ減速観測は根強く、売り一巡後は主力株を中心に買い直されて、113ドル高(0.33%増加)

117朝方に市場予想を下回る決算を発表したゴールドマンサックスが大幅安となり、景気敏感株を中心に売りが波及して、392ドル安(1.14%減少)。

118日:12月の米小売売上高が市場予想以上に減少し、米鉱工業生産指数も市場予想を下回ったことで、景気懸念が意識され、614ドル安(1.81%減少)。

119日:19日発表の週間の米新規失業保険申請件数が19万件と市場予想の21万5千件に反して下回り、労働市場の強さを示したためFRBの利上げが続くとの警戒感から売りが出て、252ドル安(0.76%減少)

120日:前日夕に四半期決算を発表したネットフリックスが急伸、ハイテク株全般への買い波及、株価上昇をけん引し、331ドル高(1%増加)。

123日:FRBが近く利上げを停止するとの観測から、幅広い銘柄に買いが入り、254ドル高(0.76%増加)。

124日:米景気の減速懸念の後退を受けた買いが続いたが、ハイテク大手の決算発表を前に利益確定目的の売りが出て、104ドル高(0.31%増加)。

125日:前日夕に決算を発表したマイクロソフトが嫌気され、ハイテク株の一部に売りが出たものの、売り一巡後は主力銘柄に買いが入り、10ドル高(0.03%増加)

126日:朝方発表のGDP2.9%増と市場予想を上回り、米景気の減速が和らぎ、投資家心理が改善し、206ドル高(0.61%増加)。

128日:朝方に発表された202212月の米個人消費支出物価指数は食品とエネルギーを除いて前年同月比4.4%上昇し、市場予想と一致、インフレ率が落ち着きつつあるとの見方で、29ドル高(0.08%増加)。

130日:前週まで相場上昇が続いたこともあり、短期の利益確定売りや持ち高調整の売りが優勢で、261ドル安(0.77%減少)。 

131日:取引開始前に発表された202210月から12月の米雇用コスト指数が1.0%上昇と市場予想の1.2%ほど上昇せず、インフレ鈍化につながるとの見方から、369ドル高(1.09%増加)

 

2.米国の雇用状況

米労働省が16日に発表した12月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比223,000人の増加で、市場予想の200,000人を上回りました。10月の雇用者数の確定値は263,000人で21,000人の減少、11月の改定値は256,000人で7,000人の減少でした。11月の失業率は3.5%で、前月から0.2%減少しました。労働参加率は62.3%で前月より0.2%増加しました。11月の時間当たり賃金上昇率は前月比で9セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が67,000人の増加、ヘルスケア業が55,000人の増加、建設業が28,000人の増加、ソーシアルサービス業が20,000人の増加、他のサービス業が14,000人の増加となりました。

 

高インフレが想定より根強い可能性を示唆した12月のFOMC要旨

FRB14日に12134日に開いたFOMC会合の議事要旨を公開しました。この会合では参加者は高インフレが想定より根強くなる可能性に言及、早期の利下げ転換には慎重な考えを示しました。この会合では利上げ幅を05%として、従来4会合連続で続いた0.75%から圧縮しました。利上げペースを鈍らせたのは高インフレが沈静化する見通しが立ったのではなく、政策金利が十分に引き締まった水準に近づいたためで、利上げの効果は実体経済に遅れて反映されるために、その効果を見極めるたいとするものでした。

さらに、参加者は労働市場の逼迫が長引けば、物価の上昇圧力は想定を超えて根強くなる可能性があると指摘しました。11月の消費者物価指数は前年同月比で7.1%と5カ月連続で鈍っており、特に10月以降は市場予想を下回る水準が続いています。この点、市場では高インフレの収束に楽観的な見方が増えていますが、FOMCはより慎重な見方を示していることになります。


4.インフレ率の鈍化と米国経済指標の悪化

112日に米労働省が発表した202212月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の上昇率が6.5%となり、6カ月連続で鈍化しました。7%を割り込むのは11カ月振りとなります。

インフレ鈍化は市場では好感されていますが、懸念される経済指標も相次いで発表されています。

18日に発表された12月の米国小売り売上高は年末商戦期にかかわらず、前月比1.1%減と2カ月連続で減少しました。ガソリンや自動車など幅広い項目で減少しました。12月の米鉱工業生産指数も前月比0.7%低下し、市場予想の0.1%低下以上の落ち込みとなりました。昨年11月分も0.2%低下から0.6%低下に下方修正されました。

加えて、17日にニューヨーク連銀が発表した1月の製造業景況感指数もマイナス32.912月のマイナス11.2から急激に悪化しています。

こうした経済指標の悪化を受けて、18日の株式市場は幅広い銘柄に売りが出て、ダウ平均は614ドル安(1.81%減少)となりました。

 

5.日米首脳会談の成果

バイデン大統領は113日にワシントンのホワイトハウスで訪米中の日本の岸田首相と会談しました。岸田首相は会談冒頭、日米はかってないほどの厳しい複雑な安全保障環境にあると指摘し、昨年末に国家安全保障戦略を改定し、防衛力の抜本強化と防衛費増額を決めたことを説明しました。

これに対し、バイデン大統領はこれほど日米関係が緊密になった時はなかったと述べて、全面的に支持しました。

両首脳は、国際秩序に挑戦する中ロの動きなどを踏まえ、法の支配に基づく自由では開かれた国際秩序が重要であるとの認識を共有、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて連携することを申し合わせました。

中国が軍事的な威圧を強める台湾に関しては、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、平和的解決を促しました。米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約5条の沖縄県・尖閣諸島への適用も確認しました。

ウクライナ情勢では、対ロ制裁とウクライナ支援を継続することを確認しました。両首脳はロシアによる核の威嚇、使用は受け入れられないとの認識で一致しました。両首脳は更に、核兵器のない世界に向けて協力する認識を共有しました。

経済安全保障分野では人工頭脳(AI)、量子、バイオを含む重要技術の育成・保護の協力を確認しました。宇宙に関する包括的な協力も申し合わせました。

岸田首相は、広島サミットで法の支配に基づく国際秩序の維持やインド太平洋地域の情勢を議論する考えを示しました。

日米両政府は会談後、こうした成果を盛り込んだ日米共同声明を発表しました。

               202321日: 村方 清)