Sunday, June 1, 2025

トランプ政権の関税政策の進展による株式市場の回復


 







1.5月の株式市場

 5月の株式市場は512日に米国と中国が相互に課した相互関税を115%引き下げることで合意したこともあり、回復基調となりました。主要な動きは以下の通りでした。

51日:マイクロソフトなど主力ハイテク株の一角が決算発表をきっかけに大幅高となり、相場を支え、84ドル高(0.20%増加)。

52日:同日朝発表の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数が前月比177千人増加し、市場予想の130千人増を上回ったものの、失業率は4.2%と前月の同水準で、労働市場の底堅さを示した他、米中貿易摩擦が緩和に向かうとの期待から投資家心理を支えて、564ドル高(1.38%増加)。

55日:米政権の関税政策への警戒心が根強く、相場の重荷となり、99ドル安(0.23%減少)。

56日:FOMCの結果公表を7日に控え、主力株に持ち高調整や利益確定目的の売りが出て、390ドル安(0.95%減少)。

57日:FRB7日まで開いたFOMCで米政権による関税政策を念頭に経済の見通しを巡る不確実性がさらに高まっているとの懸念から3回連続で利下げを見送ったにもかかわらず、米国と中国との貿易問題を巡る閣僚級の協議に入る決定したことへの期待で、284ドル高(0.69%増加)。

58日:米英の関税交渉が成立したのに加え、米中貿易摩擦が緩和に向かうとの期待が投資家心理を支えて、254ドル高(0.61%増加)                           

59日:主力株の一部に利益確定や持ち高調整の売りが出て、119ドル安(0.28%減少)。   

512日:米国と中国が互いに課したした追加関税を115%引き下げることで合意し、両国間の貿易戦争の激化に対する懸念が和らぎ、1161ドル高(2.81%増加)。                

513日:同日朝に発表の4月の米消費者物価指数は前年同月比2.3%と市場予想を下回ったものの、CEOの交代と収益見通しの撤回を発表したユナイテッドヘルス・グループが大幅安となり、指数を押し下げ、270ドル安(0.64%減少)。                         

514日:米中貿易摩擦の緩和を期待した買いが続いた後で、持ち高調整の売りが優勢で、89ドル安(0.21%減少)。                                    

515日:米長期金利の低下で株式の相対的な割高感が後退し、投資家の買いが優勢で、272ドル高(0.64%増加)。                                    

516L前日まで8日像楽していたユナイテッドヘルス・グループに買いが入り、ダウ平均を押し上げ、332ドル高(0.78%増加)。                            

519日:米長期金利の上昇が一服したことで、投資家が株式の押し目買いに動いて、137ドル高(0.32%増加)。                                     

520日:前日に3月上旬以来の高値を付けた後で、主力株に持ち高調整や利益確定の売りが広がり、115ドル安(0.26%減少)。                              

521日:財政悪化を巡る懸念から米長期金利が一段と上昇、金利上昇が株式の相対的な割高感を高めるとの見方から、株売りが膨らみ、817ドル安(1.91%減少)。              

522日:米連邦議会が22日朝に、トランプ減税の恒久化を含む減税法案を可決したことで、財政赤字の拡大が意識され、1ドル安(0%)。                        

523日:トランプ大統領が23日に欧州連合に対して50%の関税をかけると表明したことで、関税を巡る不透明感が意識され、主力株を中心に売りが出て、256ドル安(0.61%増加)。     

527日:トランプ大統領が欧州連合に対する追加関税の発動時期の延期を表明し、貿易摩擦への懸念が幾分後退して、741ドル高(1.78%増加)。                      

528日:エヌビディアの四半期決算を控えて持ち高調整の売りが主力株にでたことに加えて。FRBが公表した67日に終了したFOMCの議事要旨で利下げに慎重な姿勢が改めて示されて、245ドル安(0.57%減少)。                                  

529日:米裁判所が28日にトランプ政権が導入した関税の一部差し止めを命じ、関税引き上げへの毛買いが後退との見方とエヌビディアが四半期決算で上昇し、117ドル高(0.28%増加)。  530日:30日発表の米個人消費支出物価指数は前月比で2.1%上昇と市場予想を下回り、インフレへの懸念が後退、主力株に買いが入り、54ドル高(0.12%増加)。ダウは月間で1600ドル高。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が2日に発表した3月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比177,000人で、市場予想の130,000人を上回りました。2月の雇用者数の確定値は102,000人で15,000人の減少、3月の改定値は185,000人で、43,000人の減少でした。3月の失業率は4.2%で、前月と同じでした。労働参加率は62.6%で、前月より0.1%増加しました。3月の時間当たり賃金上昇率は前月比で6セント増加しました。部門別ではヘルスケア門が51,000人の増加、運輸・倉庫業部門が29,000人の増加、金融部門が14,000人の増加、ソーシャル・アシスタンス部門が8,000人の増加、政府部門が9,000人の減少となりました。

 

3.5月のFOMC会合

FOMC会合が56-17日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました。純輸出の振れがデータに影響を及ぼしたものの、最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大し続けていることを示唆している。失業率はここ数カ月、低水準で安定しており、労働市場の状況は堅調なままである。インフレ率はいくぶん高止まりしている。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。経済見通しを巡る不確実性は高まっている。FOMC2つの責務の双方に対するリスクに細心の注意を払っている。失業率の上昇と物価上昇率のリスクが高まったと判断している。

この目標を支えるために、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.254.5%に据え置くことを決めた。FF金利の目標レンジの調整を検討する際、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびリスクのバランスを慎重に評価する。

FOMCは、国債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減する。。FOMCは雇用の最大化を支援し、インフレを2%目標に戻すことに強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。

決定はパウエル議長、ウィリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。

トランプ政権の高関税政策が景気と物価に与える影響を見極めるために、3会合連続で利下げを見送ったことになります。

 

4.米消費者物価42.3%上昇、市場予想を下回るも先高観は強い見通し

米労働省が13日発表した4月の米消費者物価指数はゼ年同月比の上昇率が2.3%となり、市場予想の2.4%を下回りました。エネルギーと食品を除くコア指数は2.8%上昇で、伸びは予想通りで、3月と同水準でした。

今後上昇が見込まれるのは、関税の影響を受けやすいモノの価格で、4月には0.1%上昇しました。トランプ政権は42日に大規模な相互関税を打ち出し、米中関係はその後、報復関税の応酬に発展したものの、512日に互いに課していた追加関税を一時的に115%下げることに合意しました。供給網の混乱懸念は和らいだと歓迎する声が上がる一方で、インフレ見通しに殆ど影響を与えないとの 見方もあります。特に、中国からの輸入品にかかる追加関税は依然30%が続くことになります。

                                    (202561日:村方 清)

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