Wednesday, July 1, 2020

コロナウイルス感染拡大の第2波懸念に揺れる市場














1.6月の実績
6月の株式市場は初旬が新型コロナウイルス感染拡大の懸念が低下し、経済活動再開への期待が高まり、株価は大きく回復しました。しかしながら、中旬以降は米国の南部や西部を中心に感染数が急増、第2波の懸念から市場は不安定な展開となりました。主要な動きは以下の通りでした。

6月1日:米経済活動の正常化への期待から、金融株が買われたが、白人系警官による黒人暴行死からへの抗議が全米に広がり、経済再開への懸念も出て、92ドル高(0.36%増加)。
6月2日:米経済活動の再開で、景気回復を織り込む買いが優勢となり、資本財や素材を中心に幅広い銘柄が買われ、268ドル高(1.05%増加)。
6月3日:ADPが発表した5月の全米雇用レポートで非農業部門の雇用者数が前月比276万人と市場予想を大きく下回ったことやISMの5月の非製造業景況感指数が45.4と市場予想の44を上回ったことで、米景気が回復に向かうとの期待感から、527ドル高(2.05%増加)。
6月4日:利益確定売りが先行したが、経済活動再開の広がりを好感した景気敏感株への買いが相場を支え、12ドル高(0.05%増加)。
6月5日:5月発表の5月の米雇用統計で雇用者数が市場予想に反して250万人という急増で、米景気が早期回復に向かうとの楽観論が広がり、景気敏感株を中心に幅広い銘柄が買われ、829ドル高(3.15%増加)。
6月8日:米経済が早期に正常化するとの期待から、景気敏感株を中心に幅広い銘柄に買いが優勢となり、461ドル高(1.70%増加)。
6月9日:実体経済の回復以上に株価上昇が大きく、10日のFOMCの結果発表前に利益確定売りが優勢で、300ドル安(1.09%減少)。
6月10日:FRBが9-10日のFOMCでゼロ金利政策を2020年末まで続ける方針を示したこと、ニューヨーク連銀が毎月の国債購入額も800億ドルと市場予想の上限に近く、長期金利が低下して銀行株が大幅安となるなど、売りが優勢で、282ドル安(1.04%減少)。
6月11日:米国の新型コロナウイルス感染の第2波が現実味を帯び、経済活動の早期正常化への期待が後退、景気敏感株を中心に幅広く利益確定売りが広がり、1862ドル安(6.90%減少)。
6月12日:前日に大きく下落した反動や米長期金利の上昇で金融株が買われことや、個人投資家を中心に押し目買いが入り、477ドル高(1.90%増加)。
6月15日:FRBが個別企業の社債の購入を開始すると発表し、積極的な景気支援を好感した買いが
入り、158ドル高(0.62%増加)。
6月16日:5月の小売売上高が前月比17.7%増加となり、市場予想の7.7%を大きく上回ったため、景気改善を期待する買いが優勢で、527ドル高(2.04%増加)。
6月17日:新型コロナウイルスの感染が一部地域で拡大、経済活動の再開が鈍るとの見方につながり、景気敏感株にを中心に売りが広がり、170ドル安(0.65%減少)、
6月18日:新型ウイルス感染の第2波への懸念と新規の米失業者申請が件数が市場予想を上回ったことで、40ドル安(0.15%減少)。
6月19日:新型ウイルスの感染拡大が米南部や西部を中心に再拡大し、米経済の正常化が遅れるとの懸念が強まり、午前の買いが午後の売りに転じ、209ドル安(0.80%減少)。
6月22日:新型コロナウイルスの影響を受けにくい主力ハイテク株が成長期待で買いが優勢で、153ドル高(0.59%増加)。
6月23日:米中関係への懸念が後退し、アップルなどのハイテク株が続伸し、131ドル高(0.50%増加)。
6月24日:世界の新型コロナウイルスの感染拡大がしており、投資家心理が冷え込み、景気敏感株を中心に幅広い銘柄が売られ、710ドル安(7.2%減少)。
6月25日:前日の大幅下落を受け自律反発狙いの買いが入り、米金融当局が2008年の金融危機後に導入した金融規制の一部緩和を発表、金融株が軒並み上昇、300ドル高(1.18%増加)。
6月26日:米国で新型コロナウイルスの新規感染者が過去最多となるなか、テキサス州などが一部経済活動の規制を再び強化、米経済の正常化が遅れるとの懸念から、ハイテクや銀行など景気敏感株を中心に売りが膨らみ、730ドル安(2.84%減少)。
6月29日:運航再開が認められたボーイングが急騰、5月の仮契約住宅販売指数が前月比44.3%と大幅増加したことなどで、景気持ち直しがとの見方が強まり、580ドル高(2.32%増加)。
6月30日:6月の消費者信頼感指数が98.1と前月から急回復し、市場予想の91.0をを大きく上回ったことで、業績期待が高い半導体などのハイテク株に買いが入り、217ドル高(0.85%増加)。

 
2.米国の雇用状況
米労働省が6月5日に発表した5月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比2,509,000人の増加で、戦後最大の増加となりました。雇用者数の増加は800万人の減少を見込んでいた市場予想をはるかに上回りました。2010年9月以来9年半振りとなりました。3月の雇用者数の確定値は1,400,000人で492,000 人の減少、4月の改定値はマイナス20,700,000人で、150,000人の減少となりました。なお、4月の失業率は13.3%で、前月と比べて1.4%改善しました。労働参加率は60.8%で、前月から0.6%増加しました。3月の時間当たり賃金上昇率は前月比で29セント減少しました。部門別では飲食業関係が1,400,000人の増加、レジャー・観光業が1,200,000人の増加、建設業が464,000人の増加、教育・ヘルス業関連が424,000人の増加となりました。

 
3.金利据え置き
FOMCは6月9-10日に開催されたFOMC会合を開き、米国債を制限なく購入する量的緩和策などの維持を決めました。会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練のときに米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定化の目標を推進するためにあらゆる手段を使うことを約束する。新型コロナウイルスの感染拡大は、米国と世界中に甚大な人的・経済的困難をもたらしている。ウイルスおよび公衆衛生を守るために取っている対策は、経済活動の深刻な落ち込みと急激な雇用喪失を引き起こしている。弱い需要と著しく低い石油価格が、消費者物価の上昇率を押し下げている。金融情勢は経済および米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、改善した。、現在続いている公衆衛生の危機は、短期的には経済活動、雇用、インフレにとって大きな重荷となり、中期的には経済見通しにとって深刻なリスクとなる。

こうした状況を考慮して、FOMCは(政策金利である)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0~0.25%に据え置くことを決定した。経済が足元の状況を乗り切り、最大雇用と物価安定の目標達成に向け軌道にのったと自信をもてるようになるまで、この目標レンジを維持すると予測している。FOMCは、公衆衛生関連の情報も含めた経済見通し、海外の動向、抑制されたインフレ圧力についての情報の監視を続け、経済を支えるために、その手段を用いて適切に行動する。

金融政策のスタンスを調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは雇用の最大化と物価上昇率2%という目標との比較で経済情勢の実績と見通しを評価していく。労働市場の状況に関する指標や、インフレ圧力・インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。
家計と企業の信用の流れを支えるために、FRBは、国債、住宅および商業不動産ローン担保証券の購入を円滑な市場機能を支えるために必要なだけ続ける。そうすることで、より広範な金融情勢への政策の効果的な伝搬を促進する。加えて、公開市場デスクは、大規模なオーバーナイトおよびタームのレポ操作の提供を続ける。

FOMCは、市場情勢を注視し、適切にその計画を調整する準備をする。
決定はパウエル議長及びウィリアムズ副議長を含む10人のメンバー全員の賛成による。

今回の決定は、新型コロナウイルスの感染拡大による米経済の見通しが失業率の高止まりなど、経済の正常化には時間がかかるとの見方が市場で改めて強まり、長期金利の低下もあり、金融株など景気敏感株の売りが優勢で、282ドル安(1.04%減少)となりました。


4.新型コロナウイルス感染者数急増による第2波懸念と株式市場
6月中旬以降、米南部や西部を中心に新型ウイルス感染拡大が見られるようになり、第2波の懸念の見方も出てきています。特に、6月25日以降の米国の新たな感染者数はこれまでの記録を破り、 一日当たり40,000人を超える状況になっています。4月26日にトランプ政権でコロナウイルス感染拡大問題の責任者となっているペンス副大統領が記者会見をしましたが、彼の見方は最近の急増は若い世代に多く、年配層が多かった3月や4月の時期とは異なり、大きな懸念を持っていないとの立場でした。彼がトランプ政権の副大統領であることからすれば、現在のトランプ政権を擁護するのは当然ですが、感染拡大への具体的な対応策を示していないことへの批判が強くあることも事実です。それと同時に、感染者が急増している状況にもかかわらず、経済に関して少しでも前向きのニュースがあると、過剰な反応を示す現在の株式市場の実体経済とは乖離した投機性の強さへの懸念と警戒感を持つ必要性を感じます。
                     (2020年7月1日: 村方 清)

Monday, June 1, 2020

実体経済と乖離する株式市場





 
 
 
 
 
 
 
1.5月の株式市場
5月の株式市場は新型コロナウイルス感染拡大による閉鎖が次第に解除され、経済活動が再開されるとの期待から回復基調となりました。しかし、株価の上昇傾向は実体経済の動きをはるかに超えて進んでいるとの警戒感も出てきました。主要な動きは以下の通りでした。

5月1日:新型コロナウイルス感染拡大問題で、トランプ大統領が中国を批判したのを受け、関税引き上げや損害賠償金の請求など米中対立の再燃が世界経済を下押するとの懸念から、622ドル安(2.55%減少)。
5月4日:新型コロナウイルスの感染源を巡り、米中の対立が激化するとの警戒感から売りが先行したが、売り一巡後は石油株やハイテク株を中心に買いが強まり、引きにかけて、26ドル高(0.11%増加)。
5月5日:米経済活動の再開や新型コロナウイルスのワクチン開発の期待から買いが優勢であったが、取引終了近くに経済の先行き懸念から上昇幅が縮小し、133ドル高(0.56%増加)。
5月6日:米雇用指標の悪化や米中対立の懸念から、売りが優勢で、218ドル安(0.91%減少)。
5月7日:経済活動の再開が多くの州に広がり、米景気が回復するとの期待から主力ハイテク株を中心に買いが優勢で、211ドル高(0.89%増加)。
5月8日:新型コロナウイルスの発生源を巡る米中対立が先鋭化するとの懸念が後退し、市場心理が改善、米国の多くの州で経済活動の制限が緩和されたこともあり、455ドル高(1.91%増加)。
5月11日:中国や韓国で集団感染が発生しコロナウイルスの第2波を警戒した売りが優勢で、109ドル安(0.45%減少)。
5月12日:米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が米上院公聴会で、経済活動の再開を急げば感染症の再拡大を招くとの警告をしたことで米景気の回復が遅れるとの懸念から、457ドル安(1.89%減少)。
5月13日:パウエル連銀議長の13日午前中の講演会で新型コロナウイルスによる米景気の下振れリスクを強調、投資家心理が悪化、幅広い銘柄に売りが出て、517ドル安(1.89%減少)。
5月14日:前日までの3日間で1083ドルも下落しており、自律反発を狙った短期筋の買いが優勢で、377ドル高(1.62%増加)。
5月15日:経済活動の再開に伴う米景気指標の改善や原油先物相場の上昇などを好感した買いが優勢で、60ドル高(0.255増加)。
5月18日:新型コロナウイルスのワクチン開発の期待が高まり、景気敏感株を中心に幅広い銘柄に買いが優勢となり、912ドル高(3.85%増加)。
5月19日:前日に大きく上昇した反動で、目先の利益確定の売りが優勢であったことや早期再開したテキサス州などで新型ウイルス感染者が増加したことで、391ドル安(1.69%減少)。
5月20日:米国で経済活動が再開され、米景気が回復に向かうとの期待が高まり、銀行や資本財などの景気敏感株を中心に幅広い銘柄が買われ、369ドル高(1.52%増加)。
5月21日:午前中は経済活動の制限緩和から買いが優勢であったが、香港を巡る米中の関係悪化から、利益確定の売りが優勢となり、102ドル安(0.41%減少)。
5月22日:中国が香港の統制強化に向けて動いており、米中関係の溝が深まるとの警戒感から売りが優勢で、9ドル安(0.04%減少)。
5月26日:米経済活動の再開やワクチン開発を巡るニュースが市場心理を上向かせ、景気敏感株を中心に買いが入り、530ドル高(2.17%増加)。
5月27日:米経済活動の再開が順調に進むとの期待が高まり、業績が契機に左右されやすい金融株を中心に買いが優勢で、553ドル高(2.21%増加)。
5月28日:トランプ政権が29日に香港問題で対中政策に関する制裁措置を課す可能性が高いとの見方が広がり、148ドル安(0.58%減少)。
5月29日:トランプ大統領が午後に発表した中国に対する制裁措置が事前に警戒されていたほど厳しくなかったこともあり、下げ幅を縮小して、18ドル安(0.07%減少)。

 
2.米国の雇用状況
米労働省が5月8日に発表した4月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比20,500,000人の減少で、戦後最大の減少となりました。雇用者数の減少は2010年9月以来9年半振りとなりました。2月の雇用者数の確定値は230,000人で45,000人の減少、3月の改定値はマイナス701,000人で、870,000人の減少となりました。なお、4月の失業率は14.7%で、前月と比べて10.3%悪化し、戦後最悪となりました。労働参加率は60.2 %で、前月から2.5%減少し、1973年1月の統計開始以来、最悪となりました。3月の時間当たり賃金上昇率は前月比で1.34ドル上昇しましたが、これは低賃金の労働者が著しく減少したためです。部門別ではレジャー・観光業が7,700,000人の減少、教育・ヘルスケア業が2,500,000人の減少、専門・ビジネスサービスが2,100,000人の減少、小売業が2,100,000人の減少、製造業が1,300,000人の減少となりました。

 
3.連銀議長による米経済長期低迷の懸念
FRBのパウエル議長は5月13日に国際経済研究所主催の講演会で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、米経済は長期に渡り低迷し、所得も停滞する恐れがあること、FRBは必要に応じて一層の対応措置を取ると明言しました。同時に、財政支出も一段の拡大が求められるとしました。パウエル連銀議長はこれまでの対応は迅速で強力であったが、回復が勢いづくためには一定の時間がかかる可能性があるとして、長期的に経済損失を抑えながら、力強い景気回復を後押しするにはたとえ費用がかかっても、追加の財政支援を行う価値があるとして、議会側に対応を求めました。その一方、トランプ政権が求めるゼロ金利政策には検討していないと述べました。市場はパウエル連銀議長の発言が米景気の下振れリスクを強調したこともあり、投資家心理が悪化、銀行やハイテク株など幅広い銘柄が売られ、457ドル安になりました。

 
4.実体経済と乖離する投機的な株式市場
新型コロナウイルス感染拡大により米国経済が深刻な影響を受けているにもかかわらず、米国の株式市場は急速な回復傾向を示しています。5月27日にはダウ平均は553ドル高となり、3月6日以来ほぼ2カ月半ぶりの高値を記録しました。米国のGDPは4月29日に商務省が発表した2020年の第1四半期がマイナス4.8%で、リーマンショック後の2008年第4四半期のマイナス8.4%以来11年振りとなりました。第2四半期には更に悪化し、1930年代の大恐慌以来の歴史的なマイナス成長が予測されています。加えて、失業率も5月8日に発表された労働省の4月の雇用統計によれば、

4月の失業率は前月の4.4%から10.3%悪化し、14.7%になりました。このまま推移すれば20%を超えることも予想されます。

こうした実体経済と乖離した米国の株式市場の動きは、今回の新型コロナウイルス感染拡大問題が起きる前から指摘されているところです。その最大の理由は株式市場の構造、特に、S&P500を構成する米国の大企業は米国内の小型零細企業とは異なる状況下で事業を展開していることがあげられます。S&P500を構成する大企業は多額の現金を保有し、債券市場から定期的な安価で資金調達できる立場にあり、景気後退にも耐えられる可能性が高くなっています。このことがS&P500のような株価指数と米国経済の見通しが異なる理由となっています。

次に、マイクロソフト、アップル、アマゾン、アルファベット、フェイスブックなど5大上場企業の株価は今年も依然上昇を続けており、S&P500社の残りの会社の株価が4月末までに約13%下落したのとは異なっています。しかも、これら5社の株価増額は現在S&P500 全体の5分の1で、過去30年で最も高くなっています。こうした5つの大企業は新型コロナウイルス感染拡大問題が、逆風になるどころか、むしろ追い風になっています。

最後に、上場している米国の大企業にとっては、FRBの金融緩和策や政府、特にトランプ政権下での財政政策がより大きな恩恵を受ける立場にあります。トランプ政権が常に要求するFRBの低金利政策や大企業や富裕層を優遇した税制措置は上場している大企業にとってプラスの面が大きくなることがあります。

 
5.香港をめぐる米中の対立関係の悪化
新型コロナウイルスの感染拡大による米中の対立関係の悪化に加え、今度は中国政府が5月28日に香港への統制を強化する香港国家安全法の導入を決めたことで、米中の対立が一層強まる状況となりました。トランプ大統領は今回の措置が香港の高度の自治を前提に従来認めてきた一国二制度を破り、一国一制度に置き換わることになり、香港の高度な自由を保障を前提に認めてきた優遇措置を見直す手続きを入らざるを得ないと表明しました。

米国は香港が1997年に英国から返還されて以来、香港原産品には米国が課している対中制裁関税を適用してきませんでしたが、トランプ大統領はこうした優遇措置を取りやめることになります。

トランプ政権が発足して以来、対中政策の中心は貿易や投資の分野でしたが、現在はファーウェイの技術への警戒、WHOをめぐる医療対応、さらにウイグル民族や香港の人権問題まで拡大してきており、両国の覇権問題が大きく影響する事態になっています。
                     (2020年6月1日:  村方 清)

 

Friday, May 1, 2020

新型コロナウイルス感染問題に揺れる株式市場












1.4月の株式市場
4月の株式市場は新型コロナウイルス感染拡大のスピードが一部地域で鈍化する中で、経済再開の動きも見られ、株価の回復傾向も見られるようになりました。その反面、後半期には原油先物市場で需給バランスが崩れ、マイナス価格になるなど新たな不安定性要素が出てきました。主要な動きは以下の通りでした。

4月1日:新型コロナウイルス感染拡大の増加に歯止めがかからず、人や物資の移動制限が長期化による景気後退あの懸念から、ダウは974ドル安(4.44%減少)。
4月2日:主要産油国の減産が伝えられ、米原油先物相場が急上昇し、投資家心理が改善、前日比470ドル高(2.24%増加)。
4月3日:新型コロナウイルス感染拡大が続いていることや3月雇用統計で雇用者数が9年半振りに減少したで米景気の懸念が強まり、幅広い銘柄に売りが優勢で、361ドル安(1.69%減少)。
4月6日:欧米で新型コロナウイルス感染による死者数の増加ベースが減り、感染拡大が鈍化するとの期待が高まり、1,627ドル高(7.73%増加)。
4月7日:欧米で新型コロナウイルス感染拡大ペースが鈍ってきたとの見方から買いが後押ししたが、ニューヨーク州では1日当たりの感染者数が過去最高になったことを公表し、終息には時間がかかるとの見方から、26ドル安(0.12%減少)。
4月8日:新型ウイルス感染拡大が近く峠を越えるとの見方から投資家の心理改善となったことや急進リベラルのサンダーズ候補が大統領選挙から撤退との報道で、780ドル高(3.44%増加)。
4月9日:米連銀が企業向けの新たな資金供給計画を発表し、米景気の支えになるとの期待から買いが優勢で、286ドル高(1.22%増加)。
4月13日:前週に大きく上昇した反動と、今週から本格化する米主要企業の業績悪化懸念から、329ドル安(1.39%減少)。
4月14日:新型コロナウイルスの感染がピークに近づき、米国での経済活動が再開されるとの見方が強まり、投資家心理が上向き、559ドル高(2.39%増加)。
4月15日:3月の小売り売り上げ高や鉱工業生産指数が過去最悪レベルの水準となり、投資家のリスク回避姿勢が強まり、445ドル安(1.86%減少)。
4月16日:米景気の急激な悪化を示す経済指標が相次いだものの、ネットフリクッスやアマゾンへの買いが続き、33ドル高(0.14%増)。
4月17日:新型コロナウイルスの治療法や検査体制の確立に向けた取り組みに前進が見られたとの受け止めから、過度な懸念が後退し、幅広い銘柄に買いが入り、705ドル高(2.99%増加)。
4月20日:ニューヨーク原油先物市場で史上初のマイナス価格に落ち込み、投資家心理が冷え込んだことや、前週末に相場が大きく上昇した反動で、592ドル安(2.44%減少)。
4月21日:原油先物相場の下落が止まらず、原油安が米国経済の足を引っ張り、石油関連企業の信用不安を招きかねないとの懸念から、632ドル安(2.67%減少)。
4月22日:テキサスなど一部の州で経済活動の制限を緩める動きが広がり、米景気の悪化に歯止めがかかると受け取られ、かつ連日急落していた原油相場が上昇、457ドル高(1.99%増加)。
4月23日:米原油先物相場が連日高騰、投資家心理の改善につながったが、新型コロナウイルスの治療薬の臨床試験の懸念や米経済指標の悪化が重荷で、39ドル高(0.17%増加)。
4月24日:今週前半に急落した米原油先物相場が連日上昇、来週に決算発表を控えたアップルやフェイスブックなどが買われ、260ドル高(1.11%上昇)。
4月27日:米国の多くの州で新型コロナの感染ベースの鈍化と共に、経済再開の動きが広がっていることから、米景気の回復に向かい始めたとの期待が優勢で、359ドル高(1.51%増加)。
4月28日:朝方は買いが先行したが、アマゾン、ネットフレックス、アルファベットなどが利益確定売りに大きく押され、32ドル安(0.13%減少)。
4月29日:新型コロナウイルス治療薬の臨床試験が有効性を示したとの報道があったこともあり、532ドル高(2.21%増加)。
4月30日:新規失業保険申請件数が市場予想を上回る384万件となり、3月の個人消費支出も前月比7.5%減となったことで投資家心理が悪化、利益確定売りが優勢で、288ドル安(1.17%減少)。

 
2.米国の雇用状況
米労働省が4月3日に発表した3月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比701,000人の減少で、市場予想の140,000人の減少を大きく下回りました。雇用者数の減少は2010年9月以来、9年半振りとなりました。1月の雇用者数の確定値は214,000人で59,000人の減少、2月の改定値は275,000人で2,000人の増加となりました。なお、1月の失業率は4.4%で、前月と比べて0.9%悪化しました。労働参加率は62.7 %で、前月から0.7%減少しました。3月の時間当たり賃金上昇率は前月比で11セント上昇し、前年同月比では3.1%増となりました。部門別ではレジャー・観光業が459,000人の減少、ヘルスケア・社会福祉業が61,000人の減少、専門・ビジネスサービスが52,000人の減少、小売業が46,000人の減少、建設業が29,000人の減少となりました。

 
3.新型コロナウイルス感染拡大と深刻化する経済問題
IMFは4月14日に世界経済見通しを発表し、2020年の成長率がマイナス3.0%に急激に落ち込むことの予測を示しました。2020年のマイナス3.0%は2009年のマイナス0.1%を上回るもので、IMFが集計を始めた1980年以降で最悪となります。国別では感染者が最大の米国がマイナス5.9%で、ユーロ圏がマイナス7.5%、日本がマイナス5.2%となっています。中国はプラス成長を保つものの、1.2%と著しく低下する見込みです(1-3月の実績はマイナス6.8%)。

米国では新型コロナウイルス感染拡大が経済に深刻な影響を与えています。4月15日に発表された3月の小売売上高は前月比8.7%減と過去最大となったのを始め、3月の米鉱工業生産指数6.3%低下し、1946年2月以来の大幅な落ち込みとなりました。また、16日に発表された失業保険の新規申請件数は1週間で524万5千件で、前週の661万件に近い水準になりました。これにより3月中旬に非常事態宣言を発表して以来の失業申請件数は2200万件を突破し、4月の失業率は10%を超え、1948年の統計開始以来の最悪期(1982年12月の10.8%)を上回るとの見方が強まっています。

米国商務省が4月29日に発表した2020年1-3月期のGDP速報値は年率換算で前期比マイナス4.8%となり、リーマン・ショック後の2008年10-12月期のマイナス8.4%依頼、約11年振りの落ち込みとなりました。米国の景気は4月以降に更に悪化しており、米議会予算局は4-6月期のGDPは前期比11.8%減、年率換算で39.6%を予測しています。

 
4.急速に悪化する米国経済とFRBの金融緩和策
FOMCは4月28-29日に開催されたFOMC会合を開き、米国債を制限なく購入する量的緩和策などの維持を決めました。会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。コロナウイルスの感染拡大は、米国と世界中に甚大な人的・経済的困難をもたらしている。ウイルスおよび公衆衛生を守るために取っている対策は、経済活動の深刻な落ち込みと急激な雇用喪失を引き起こしている。

弱い需要と著しく低い石油価格が、消費者物価の上昇率を押し下げている。米国と海外の経済活動の混乱は、金融情勢に深刻な影響をもたらしており、米国の家計と企業の信用の流れを妨げている。現在続いている公衆衛生の危機は、短期的には経済活動、雇用、インフレにとって大きな重荷となり、中期的には経済見通しにとって深刻なリスクとなる。
こうした状況を考慮して、FOMCは、(政策金利である)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0~0.25%に据え置くことを決定した。経済が足元の状況を乗り切り、最大雇用と物価安定の目標達成に向け軌道にのったと自信をもてるようになるまで、この目標レンジを維持すると予測している。FOMCは、公衆衛生関連の情報も含めた経済見通し、海外の動向、抑制されたインフレ圧力についての情報の監視を続け、経済を支えるために、その手段を用いて適切に行動する。
金融政策のスタンスを調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは雇用の最大化と物価上昇率2%という目標との比較で経済情勢の実績と見通しを評価していく。労働市場の状況に関する指標や、インフレ圧力や予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して、判断する。
家計と企業の信用の流れを支えるために、FRBは、国債、住宅および商業不動産ローン担保証券の購入を円滑な市場機能を支えるために必要なだけ続ける。そうすることで、より広範な金融情勢への政策の効果的な伝搬を促進する。加えて、公開市場デスクは、大規模なオーバーナイトおよびタームのレポ操作の提供を続ける。
FOMCは、市場情勢を注視し、適切にその計画を調整する準備をする。

決定はパウエル議長及びウィリアムズ副議長を含む10人のメンバー全員の賛成による。
今回の決定は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済の悪影響を少なくさせるために決定されたことで、市場は新型コロナウイルスの治療薬の臨床試験の有効性のニュースもあり、532ドルの高の大幅上昇につながりました。

5.経済再開のタイミング
トランプ大統領は米国最大の感染者数を出しているニューヨーク州などで、新規の感染者数が微減傾向を示し始めたことを理由に、当初は全国民を対象として行動自粛要請を5月にも解除し、経済活動再開に向けたガイドラインを作成することに強い意向を示していました。しかし、4月16日の記者会見でトランプ大統領が示した指針は、経済活動の再開について3段階で移行するというものですが、その判断は各州知事に任せるというトーンダウンオウンしたものでしたものでした。ちなみに、トロンプ大統領の指針によれば、第1段階では客席の間隔を空けた飲食店の再開を認め、在宅勤務は引き続き奨励、学校は休校のまま、10人以上の集りは避ける。第2段階では学校を再開し、不要不急の旅行を認めるが、50人以上の集りは避ける。第3段階では手洗いと人との距離を確保するなどの条件を除いて、ほぼ全ての経済活動の再開を認めるというものです。

なお、感染者数と死者数が全米一のニューヨーク州のクオモ知事は経済活動の再開を急いで感染率を上げるわけにはいかないとして、4月末の外出制限措置を5月15日まで延長することを決め、更に近隣のニュージャージー州などと経済再開に向けた協議を進めています。一方、米国西部のカリフォルニア州やワシントン州でも経済再開に向けた協議が始められています。

今年11月の大統領選挙で何としても再選を図りたいトランプ大統領として、コロナウイルス問題で初期対応の遅れがあった状況を回復するためには、経済活動の早期再開が不可欠で(それは株価の回復にも繋がる)、その必要性を殊更強調している傾向があります。しかし、今回のコロナウイルスに効果のあるワクチンの開発の目途が立たず、重症化を抑える決定的な薬も開発されていない現在の状況では、感染拡大を抑える唯一の方法が外出禁止を含む人と人との接触を避けさせることしかない状況では、トランプ大統領の経済活動の早期再開は更に拡大が悪化するリスクがあります。

いずれにしても、米国民の安全確保より、大統領選で勝つことしか考えていないトランプ大統領が米国のリーダーであることが、内外面で不必要な摩擦と国際社会の協力の欠如になっているように思われます。

             (2020年5月1日:村方 清)

 

 

Thursday, April 30, 2020

新型コロナウイルス感染拡大と市場の急激な不安定













1.3月の株式市場
3月の株式市場は2月の第4週目に起きた新型コロナウイルスの感染拡大の影響が世界的規模に広がる一方、これへの対策として主要国政府の緊急経済政策や中央銀行の金融緩和策が相次いで導入され、乱高下の激しい市場の動きとなりました。主要な動きは以下の通りでした。

3月2日:世界の主要中央銀行による協調金融緩和への期待から、主力のハイテク株などに買い戻しの動きが広がり、1,293ドル高(5.09%増加)。
3月3日:3日午前、FOMCは緊急理事会を開いて政策金利を0.5%引き下げ、一時’381ドル高になったが、新型肺炎の影響が予想以上に深刻との警戒感が強く、786ドル安(2.94%減少)。
3月4日:米大統領選挙の民主党候補者争いで、バイデン副大統領が首位に立ち、国民皆保険や米企業ヘの規制強化を訴えるサンダーズ上院議員が当選する可能性が薄れ、ヘルスケア関連株を中心に幅広い銘柄に買いが入り、1,173ドル高(4.53%増加)。
3月5日:新型肺炎の感染拡大が米国にも本格的に波及し、投資家のリスク回避姿勢が一段と強まり、マネーは安全資産である長期国債に向かい、金融株を中心に多くの銘柄が売られ、970ドル安(3.58%減少)。
3月6日:3月の米雇用統計は雇用者増加数が273,000人増で、市場予想の170,000人増を大きく上回り(失業率は3.5%で前月より0.1%改善)、過去3か月分の雇用者数が200,000人を超えたが、新型肺炎の感染拡大からの警戒心が高まり、257ドル安(0.98%減少)。
3月9日:新型肺炎の感染拡大による世界経済の景気後退入りの懸念の広がりとOPECと非加盟国の減産調整の協議が不調に終わり、原油先物相場が大幅に下落、エネルギー企業の業績悪化懸念も重なり、2013ドル安(7.79%減少)。下げ幅は史上最才。
3月10日:トランプ大統領が新型肺炎による景気下振れリスクに対応し、給与減税などを含む経済支援策を発表すると伝わり、1167ドル高(4.89%増加)。
3月11日:新型肺炎の感染拡大が続く中、WHO事務局長がパンデミックに相当すると表明、更にトランプ政権が10日発表の経済政策の実現性の不透明感が嫌気され、1,465ドル安(5.86%減少)。
3月12日:トランプ大統領が11日に発表した新型肺炎対策として、英国を除く欧州からの渡航の30日禁止措置が世界景気を押し下げるとの見方や経済政策も具体性に乏しいとの批判から、2,353ドル安(10%減少)。
3月13日:トランプ大統領が新型肺炎に関連して、トランプ大統領が国家非常事態を宣言し、全ての政策を動員すことを決めたことから、米景気への不安心理が後退、1985ドル高(9.36%増加)。
3月16日:FRBが3月15日に0.1%の利下げを決定したが、新型肺炎感染の急速な拡大で、投資家の不安は静まらず、消費財、エネルギー、小売り関連の銘柄を中心に大きく値下がりし、2997ドル安(12.93%減少)。ダウ平均の値下がり率は2月につけた史上最高値から31%強の下落率。
3月17日:FRBが企業の資金繰り支援でCP購入を発表したことに加え、トランプ政権が家計への現金給付プランを公表したことで、総額1兆ドルとなる経済対策が明らかになり、買いが優勢で、1,049ドル高(5.20%増加)。
3月18日:新型コロナウイルスの感染拡大による米景気と企業業績の不透明感が根強く、売りが膨らみ、ボーイングや石油株が急落して、1338ドル安(6.30%減少)。
3月19日:前日に3年1カ月振りの安値を付けた反動で、割安感から大型ハイテク株を中心に買い戻されたことや世界の中央銀行が金融緩和に動いていることから、188ドル高(0.95%増加)。
3月20日:新型コロナウイルスの感染拡大で、米国のカリフォルニア州とニューヨーク州が前事業所に対し出勤を禁止したことから、米景気の落ち込み懸念が強まり、913ドル安(4.55%減少)。
3月23日:新型コロナウイルスによる景気減速に対応するため、トランプ政権の経済政策について議会の与野党対立で合意ができず、政策実行が遅れるとの見方から、582ドル安(3.04%減少)。
3月24日:新型コロナウイルスに対応した大規模な経済対策で米与野党の協議が進展するとの期待が高まり、2,113ドル高(11.37%増加)。上昇幅としては史上最大。
3月25日:トランプ政権と与野党の議会指導部が2兆ドルの経済対策で25日未明に合意、後退入りの懸念が高まっていた米景気を下支えするとの期待が広がり、496ドル高(2.39%増加)。
3月26日:米上院が3月25日に新型コロナウイルスに対応する2兆ドル規模の経済対策法案を可決し、早期に景気刺激策が実施されるとの期待が高まり、1352ドル高(6.38%増加)。
3月27日:米国の新型コロナウイルス感染者数が26日に中国を上回って世界最多となるなど、感染拡大が続き、人や物の移動の制限が停滞することによる景気不安から売りが膨らみ、915ドル安(4.06%減少)。
3月30日:トランプ政権の大規模な経済政策にの成立による景気悪化の懸念が後退し、同時に新型コロナウイルスのワクチン開発への期待で、691ドル高(3.19%増加)。
3月31日:新型コロナウイルスの感染拡大による景気の悪化懸念が強まり、売りが優勢で、410ドル安(1.84%減少)。下げ幅は月間、四半期ベースとも過去最大。

2.米国の雇用状況
米労働省が3月6日に発表した2月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比273,000人の増加で、市場予想の170,000人増を上回りました。12月の雇用者数の確定値は184,000人で37,000人の増加、1月の改定値は273,000人で48,000人の増加となりました。今回の結果を踏まえた過去3カ月間の雇用者平均増加数は約243,000人で、好調の目安とされる平均増加数の200,000人を大きく上回りました。なお、1月の失業率は3.5%で、前月と比べて0.1%改善しました。労働参加率は63.4 %で、前月と同じ水準でした。2月の時間当たり賃金上昇率は前月比で9セント上昇し、前年同月比では3.0%増となりました。部門別ではヘルスケア・社会福祉業が57,000人の増加、飲食業が53,000人の増加、建設業が42,000人の増加、専門・技術サービス業が32,000人の増加となりました。

3.コロナウイルス感染拡大とFRBの金利引き下げ
FOMCは3月15日に臨時のFOMC会合を開き、0.1%の利下げを決定しました。会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。新型コロナウイルスの拡大が多くの国の経済活動を損なわせている。経済データは米経済が力強い足元においても、試練の時を迎えていることを示している。1月のFOMCの会合以降に得た情報は、労働市場は底堅く、経済活動は緩やかに上向いているということであった。家計支出は緩やかに伸びているが、企業の設備投資と輸出は弱いままだだ。直近では、エネルギー業界が強り圧力にさらされている。全般的なインフレ率と、食品・エネルギーを除く12か月平均のインフレ率は2%を下回っている。

FOMCは最大の雇用と物価安定を持続させることを求めている。新型コロナの影響は近い将来の経済活動に重くのしかかり、経済見通しのリスクとなるだろう。これらの状況に照らし、政策金利目標を0-0.25%に引き下げることを決めた。この金利目標は経済活動に対する直近の出来事の影響が晴れたと自信が持てるまで、そして最大雇用ち物価安定の実現のための軌道に乗れると判断できるまで維持するだろう。今回の決定は経済活動、強い労働市場環境、2%の物価目標の回帰を助けるだるFOMCは出てくる経済見通しに関する情報を注視する。その情報は健康関連から物価の下押し圧力に関するものなどにおよぶ。我々の取れる手段を使い、経済を補助するための適切な行動を取る。将来の金融政策のスタンスを調整する時期とその規模を決めるために、FOMCは実際と予想される経済状況を評価する。この評価は幅広い情報を考慮に入れる。労働市場や物価上昇圧力や物価上昇期待、金融政策や国際情勢を含む、

FRBは家計や企業の信用を支援するための手段を行使する準備ができており、こえにより雇用の維持と物価安定を促す。家計や企業の信用の中心となる米国債市場と住宅ローン担保証券(MBS)市場の機能を支援するために、今後数カ月間で米国債を少なくとも5000億ドル、MBSも同じく2000億ドルを購入する。
FRBは家計や企業の信用ニーズを支援するため、他の中央銀行と連携したドル資金の通関交換(スワップ)の拡充なども併せて発表した。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む9人のメンバーの賛成による。クリーブランドのロレッタ・メスター総裁やフェデラルファンド金利の誘導目標レンジを0.5%-0.75%にすべきとして反対した。
なお、今回のFOMC会合の金利引き下げは、新型コロナウイルスの感染拡大による経済の悪影響を少なくさせるために決定されたものであるが、市場の反応は時間外取引で米国株価指数先物が大幅安になるなど急落しています。その意味で、コロナウイルスの感染拡大による企業活動の停滞に対してはFRBの政策発動余地が乏しいと受け取られたためと見られています。


4.コロナウイルスに対する米政府の巨額経済救済策
トランプ政権と連邦議会の与野党指導部は3月25日に新型コロナウイルス対策として、約2兆ドルの景気刺激策に最終合意しました。今回の規模は米国のGDPの約10%に相当し、2008年の金融危機後経済対策の約7000億ドルを大幅に上回ります。


内訳を見ますと、家計向けでは3000億ドルを充て、所得制限を設け、大人には最大1200ドル、子供には500ドルを支給します。失業保険にも2500億ドルを計上しました。一方、企業向けには9000億ドルを充て、飲食・宿泊など新型コロナウイルスが直撃する産業向けに5000億ドルの融資枠を設けます。航空会社にも300億ドルの資金支援を行います。

これに加え、今回の経済対策には米連銀に新たに4兆ドルの資金供給能力を可能しており、全体の景気刺激策は6兆ドルに達するとトランプ政権は主張しています。
今回の巨額の経済支援策に対しても、コロナウイルス感染拡大が急速に進む中で、一時的な経済効果は見込めるものの、コロナウイルス感染拡大を防ぐ治療薬が出てこない限り、根本的な改善にはならないように見られます。それと同時に、大企業や富裕層の利益優遇の政策を取り続け、ニューヨーク州を始め多くの州政府が必要とする社会的な医療インフラの整備や充実を軽視してきたトランプ政権や与党共和党の政策的な誤りが今回の感染拡大の大きな要因であると思われます。この点、そのことを十分に認識できる米国民が多く出てくることが米国の将来にとって極めて重要であると思います。

              (2020年4月1日: 村方 清)


 

Sunday, March 1, 2020

新型肺炎の感染拡大がもたらした米国市場の大幅調整











1.2月の株式市場
1月末から始まった新型肺炎の感染拡大の影響が2月の第4週目に大きく広がり、週間の下落幅は約12%で、2008年の金融危機以来の規模となりました。主要な動きは以下の通りでした。

2月3日:新型肺炎の感染拡大の懸念から前週末に大きく下げた反動で、自律反発狙いの買いが入ったが、肺炎拡大への警戒感も強く、144ドル高(0.51%増加)。
2月4日:中国政府による積極的な経済対策への期待から、新型肺炎の感染拡大による実体経済への懸念が和らぎ、408ドル高(1.44%増加)
2月5日:新型肺炎の治療薬の発見に関する報道や中国政府の景気試案策への期待が続き、感染拡大への懸念が和らぎ、483ドル高(1.68%増加)。
2月6日:中国政府が6日、米国からの一部輸入品の関税引き下げを発表し、米中貿易交渉の進展を期待した買いが入り、89ドル高(0.30%増加)。
2月7日:2月の米雇用統計は雇用者増加数が225,000人増で、市場予想の160,000人増を大きく上回り(失業率は3.6%で前月より0.2%増加)、過去3か月分の雇用者数が200,000人を超えたが,高値警戒感からの売りの勢いが強かったことや新型肺炎感染拡大の懸念の大きさから、277ドル安(0.99%減少)。
2月8日:前週に出た米国経済指標が好調であったことや決算発表を終えた米主要企業の業績が堅調であったことなどから、買いが優勢で174ドル高(0.60%増加)。
2月11日:新型肺炎の感染拡大の勢いが弱まりつつあるとの見方から買いが先行したが、パウエル連銀議長の議会証言で金融緩和を示唆する発言がなく、利益確定売りが優勢となって、0高。
2月12日:新型肺炎拡大の勢いが落ち着きつつあるとの見方から投資家がリスク選好姿勢を強め、幅広い銘柄が買われ、275ドル高(0.94%増加)。
2月13日:新型肺炎の認定基準の変更で、中国の感染者数が急増、問題収束に時間がかかるとの懸念からリスク回避姿勢が強まり、128ドル安(0.43%減少)。
2月14日:中国での感染者数の増加が続き、景気への悪影響を懸念した売りが優勢となり、25ドル安(0.09%減少)。
2月18日:新型肺炎の影響で、1-3月期の売上高目標を達成できないと発表したアップルが下落、半導体関連株や中国関連株が大きく売られ、166ドル安(-0.56%減少)。
2月19日:中国政府の積極的な景気支援策で新型肺炎の経済的な悪影響が和らぐとの見方が広がり、116ドル高(0.40%増加)。
2月20日:新型肺炎の拡大に終息の兆しが見られず、中国を中心に景気や企業業績の下押し要因になるとの懸念から、株式の売りが優勢で、128ドル安(0.44%減少)。
2月21日:新型肺炎の感染が中国以外に広がっていることへの懸念や、21日に発表の2月の米企業の景況感も大幅に悪化したことで、多くの株式銘柄が売られ、228ドル安(0.78%減少)。
2月24日:新型肺炎の感染拡大の懸念が急激に拡大し、アジアや欧州が大幅安となった影響を受け、米国株も運用リスクを回避する売りが加速し、幅広い銘柄が売られ 1,032ドル安(3.56%減少)。下げ幅は過去3番目。
2月25日:新型肺炎の感染が米国など世界各地に拡散するリスクが意識され、運用資金が安全資産である米国債に向かい、879ドル安(3.15%減少)。ダウ2日間の下げ幅は1,911ドルとなり、2018年2月に記録した1,840ドルを超え、過去最大。
2月26日:午前中は一時461ドル高になる場面もあったが、ブラジルや米国で感染が拡大し、感染が収束に向かう時期は予測不可能との見方から、124ドル安(0.46%減少)。
2月27日:新型肺炎の急激な感染拡大の懸念から、米企業の業績予想の相次ぐ未達状況や安全資産とされる米国債が買われ、長期金利が過去最低を更新、1191ドル安(4.42%減少)。下げ幅は過去最高。
2月28日:新型肺炎の感染拡大で世界経済が停滞するとの懸念が一段と強まり、一時1085ドル安まで下げたが、パウエル連銀議長が早期利下げの可能性を示唆したところから下げ幅を縮め、357ドル安(1.39%減少)。1週間での下落率は約12%で、2008年の金融危機以降で最大。

 
2.米国の雇用状況
米労働省が2月7日に発表した1月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比225,000人の増加で、市場予想の160,000人増を上回りました。11月の雇用者数の確定値は261,000人で5,000人の増加、12月の改定値は147,000人で2,000人の増加となりました。今回の結果を踏まえた過去3カ月間の雇用者平均増加数は約210,000人で、好調の目安とされる平均増加数の200,000人を再び上回りました。なお、12月の失業率は3.6%で、前月と比べて0.1%上昇しました。労働参加率は63.4 %で、前月より0.2%増加しました。12月の時間当たり賃金上昇率は前月比で7セント上昇し、前年同月比では3.1%増となりました。部門別では建設業が44,000人の増加、ヘルスケアが36,000人の増加、レジャー・観光業が36,000人の増加、運輸・倉庫業が36,000人の増加となりました。一方、製造業は12,000人の減少となりました。

 
3.新型肺炎感染拡大が引き起こす株価の大幅調整
1月末に中国で発生した新型肺炎の感染拡大の影響は、中国本土だけでなく、日本や韓国、イラン、そして欧州のイランまで広がりを見せています。米国でも25日に疾病センターが新型肺炎が、米国でも広がる可能性を示唆したことから、前日のダウの1,032ドルの大幅下落に続き、879ドル安となりました。2日間の下げ幅は1,911ドルで、2018年2月に起きた1,840ドルを超え、史上最大となりました。

米国で株価の大幅下落調整が起きた原因としては、大きく3つの要因が考えられます。第1の要因は中国が現在、自動車や電子・電機製品など主要産業のの部品供給の上で、グローバルなサプライチェーンの中心的な役割を担っており、中国で約80,000人の感染者が出たことにより、当面、その役割が担えなくなったことです。特に感染者の増加が続き、多くの中国の工場で生産再開が遅れれば、中国からの部品が届かず、完成品の生産にも深刻な影響を与えることが予想されます。第2の要因は新型肺炎の感染拡大の影響が強まると、中国国民の消費需要が低迷し、中国市場で売上高の大きな米国企業にとっては売り上げの不振と業績の悪化が懸念されることになります。第3に、現在の異常に高い株価水準は連銀による長期の金融緩和策に加え、トランプ政権による株価引き上げ目的の大型減税など人為的な政策によって達成されています。それは、株価引き上げが政権維持の手段として使われ、実体経済との乖離が大きくなっていることを意味しています。以前であれば、実体経済を反映した適正株価収益率などを通じて、行き過ぎた株高には調整作用が働きましたが、現在は大規模な金融緩和策が続く中で、過剰な資金が株式市場に流入、歯止めのない株高水準が続いていることになります。今回の新型肺炎の患者数の急増はこうした人為的な株価誘導策に引き上げられた株価の高水準を調整に向かわせる可能性があります。

 
4.民主党の大統領候補指名争い
民主党は問題が多すぎる共和党のトランプ大統領の再選を阻止すべく、多くの候補者が名乗りを上げ、激しい指名争いを続けています。これまでのところ、アイオア州、ニューハンプシャー州、ネバダ州で、多くの党員の支持を獲得したサンダーズ候補がトップを走っています。特に、彼が主張する国民皆保険、公立大学の無償化などは、若者を中心に支持を集める要因となっています。

しかしながら、サンダーズ候補の主張には、国民皆保険や公立大学の無償化には巨額の財源が必要ですが、彼をそれを未だに示していません。彼がモデルとする北欧の社会民主主義には富裕層や大企業だけでなく、国民の大多数が高負担・高福祉の政策を支持している背景があるにもかかわらず、それを明示することなく、理念だけで米国民に訴えている状況です。この点、サンダーズ候補が指名されるかどうかは今後の展開次第であり、時期尚早と言えます。また、仮にサンダーズ候補が指名を受けても、財源の裏付けのない提案をし続ける限り、与党候補のトランプ大統領や共和党から直接大きな批判を受けることになり、民主党が大統領に返り咲く可能性は高くないように思われます。
         (2020年3月1日:  村方 清)