Friday, January 1, 2021

コロナ感染者急増下での期待先行相場







1.12月の株式市場

12月の株式市場は11月末の感謝祭休暇後のコロナウイルス感染者急増といった深刻な状況にもかかわらず、2つのワクチンの緊急使用、英国とEUの新自由貿易協定の合意、そして米国での追加経済対策の成立などで、市場が好感、期待先行による上昇相場の継続となりました。主要な動きは以下の通りでした。

12月1日:新型コロナウイルスのワクチン実用化への期待から、景気敏感株を中心に買いが入り、ダウ平均は185ドル高(0.63%増加)。

12月2日:英国政府が米ファイザーの新型コロナウイルスワクチンを承認し、ワクチンの実用化が世界経済の正常化を後押しするとの見方から、60ドル高(0.20%増加)。

12月3日:追加の経済対策の早期成立の期待から買いが優勢となったが、午後にかけて、ファイザーなどの新型コロナウイルスのワクチンが計画した規模では供給できないことが伝わり、上げ幅を縮小し、86ドル高(0.29%増加)。

12月4日:朝方発表の11月の米雇用統計が245,000人で、市場予想の450,000人を大きく下回り、追加経済対策が成立するとの期待が高まり、景気敏感株を中心に買いが広がり、249ドル高(0.83%増加)。

12月7日:全米で新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、経済活動の制限が予想以上に大きいとの見方から、143ドル安(0.49%減少)。

12月8日:英国で新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、経済活動の正常化が進みやすくなるとの期待から、買いが優勢で、104ドル高(0.35%増加)。

12月9日:追加経済対策の与野党協議に進展が見られないことや英国でファイザーのワクチンへの副作用の懸念が出て、投資家心理が悪化、105ドル安(0.35%減少)。

12月10日:追加経済対策を巡る与野党協議が難航していること、週間の新規失業者保険申請件数も市場予想を上回る85.3万件で、景気敏感株を中心に売りが優勢で、70ドル安(0.23%減少)。

12月11日:米国で新型コロナウイルスのモデルナのワクチンが近く承認されるとの見方がある反面、追加の経済対策を巡る与野党協議が進展せず、47ドル高(0.16%増加)。

12月14日:米国の新型コロナ・ウイルスの感染者や死者数が高水準で続いており、ロックダウンが再度導入されるとの観測から、投資家心理が冷えて、185ドル安(0.62%減少)。

12月15日:追加経済対策を巡る米与野党協議が進展するとの観測や新型コロナウイルスのワクチン普及への期待から、景気敏感株を中心に買いが広がり、338ドル高(1.13%増加)。

12月16日:11月の米小売売上高が前月比1.1%減と市場予想の0.3%以上となり、連銀による量的緩和長期化の期待にも拘らす、年末商戦は想定より悪いと受け取られ、45ドル安(0.15%減少)。

12月17日:追加の米経済対策の早期成立期待と米連銀の金融緩和の長期化で、買いが強まり、149ドル高(0.49%増加)。

12月18日:短期的な相場の過熱感を警戒した売りが優勢であったことや追加の経済対策を巡る与野党協議の不透明感も加わり、124ドル安(0.41%減少)。

12月21日:新型コロナウイルスの変異種への懸念から朝方に一時400ドル超下落したが、午後には米政府の追加経済対策への期待から買いが優勢になり、37ドル高(0.12%増加)。

12月22日:米議会が9000億ドル規模の追加経済対策を可決したが、目先の材料が出尽くしたとの見方や英国の新型コロナウイルスの変異種の拡大で、201ドル安(0.67%減少)。

12月23日:米ファイザーが来年7月までに1億回分の新型コロナウイルスワクチンを追加供給する契約を締結したことを受けて、ワクチン普及への期待が高まり、114ドル高(0.38%増加)。

12月24日:英国とEUは24日新たな自由貿易協定(FTA)で合意、英国のEU離脱を巡る不透明感が後退、投資家心理が改善し、70ドル高(0.23%増加)。

12月28日:米政府による追加の経済対策ガトランプ大統領の署名で27日に成立、市場が好感し、アップルなど主力ハイテク株が軒並み上昇し、204ドル高(0.68%増加)。

12月29日:前日に過去最高値を更新したこともあり、短期的な利益確定売りが優勢で、現金給付を1人600ドルから2000ドルへ増額する法案の期待が後退し、68ドル安(0.22%減少)。

12月30日:英製薬のアストラゼネガとオックスフォード大が開発した新型コロナワクチンが承認され、景気回復を後押しするとの見方から、74ドル高(0.24%増加)。

12月31日:朝方は売りが先行したが、新型コロナウイルスのワクチン普及で来年は景気が回復に向かうとの期待から、197ドル高(0.65%増加)。


2.米国の雇用状況

米労働省が12月4日発表した11月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比245,000人の増加で、市場予想の450,000人を大きく下回りました。9月の雇用者数の確定値は711,000人で39,000 人の増加、10月の改定値は610,000人で、28,000人の減少となりました。なお、11月の失業率は6.7%で、前月と比べて0.2%改善しました。労働参加率は61.5%で、前月から0.2%減少しました。11月の時間当たり賃金上昇率は前月比で9セント増加しました。部門別では運輸・倉庫業が145,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が60,000人の増加、ヘルスケア関連業が46,000人の増加、製造業が27,000人の増加となりました。


3.FOMCの金利据え置き 

FRBは12月15-16日にFOMC会合を開き、金利据え置きと米国債を制限なく購入する量的緩和策などの維持を決めました。会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練のときに米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定化の目標を推進するためにあらゆる手段を使うことを約束する。新型コロナウイルスの流行は米国と世界中に甚大な人的・経済的困難をもたらしている。経済活動と雇用はここ数カ月は引き続き回復しているが、依然として今年初めの水準を大きく下回っている。弱い需要と先の石油価格の下落が、消費者物価の上昇率を押し下げている。経済および米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般的に、依然として緩和的だ。

景気の動向は、ウイルスの拡大状況に大きく左右される。現在続いている公衆衛生の危機は、短期的には引き続き、経済活動、雇用、インフレにとって大きな重荷となり、中期的には経済見通しにとって深刻なリスクとなる。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ率を目指す。そうすることで、インフレが長期的に平均2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。

これらの成果が出るまで金融政策の緩和的なスタンスを維持することを予測している。

FOMCは(政策金利である)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0~0.25%に据え置くことを決定した。労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致する水準に達し、インフレが2%に上昇、当面2%をやや上回るところで軌道にのるまでこの目標レンジの維持が適切と予測する。

雇用最大化と物価安定の目標に向けてさらなる大きな前進を遂げるまで、FRBは国債保有額を少なくとも月800億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル引く続き増やす。こうした資産購入は円滑な市場機能を維持し、緩和的な金融情勢を促進し、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策のスタンスを調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成を妨げるリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力・インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

決定はパウエル議長及びウィリアムズ副議長を含む10人のメンバー全員る。

今回の決定は、現状のゼロ金利政策を維持すると同時に、米国債などを大量に買い入れる量的緩和の指針を強化して、米国債などの購入を完全雇用と物価安定に近づくまで継続すると表明したことにあります。新型コロナウイルスの感染再拡大がで雇用が悪化しており、長期の金融緩和を宣言して景気回復期待をつなぎ留めるようにしたのが特徴です。市場の反応は前向きであったものの、米小売売上高が市場予想を大きく下回ったことで、米景気の下振れリスクが懸念され、45ドル安となりました。


4.英国とEUが通商協定で合意 

12月24日に英国とEUは新たな自由貿易協定(FTA)を巡る交渉で合意しました。今回の合意により、条件を満たす英EU間の全品目・全数量の貿易で関税ゼロが維持される見通しとなりました。但し、FTAでは優遇関税の対象となる品目の原産地が限定されるため、英・EU以外の国からの原材料の比率が大きい製品は21年1月1日以降に関税がかかる可能性があります。

また、英EU間での人の移動や移住も厳しくなります。英国側は1月1日以降、これまで自由に移住を受け入れていたEU市民を他の外国人と同様に扱うことになります。これにより、英国は年収や英語力などに基づいたポイントで移民希望者を評価する仕組みを導入し、一定基準以下の低技能の労働者を受け入れないことになると見られています。

今回、英国の主権の回復を目指す英国側といいとこ取りを認めないEUの主張が真正面からぶつかり、交渉が難航しました。特に、英国が英国が政府補助金など産業政策でEUルールに従う公正な競争原理の確保や英海峡でのEU漁船の扱いなどで対立が続いていました。

こうした状況の中で、新型コロナの感染拡大が双方に妥協を促す決定打となりました、特に英国は12月2日に新型コロナの変異種の感染が拡大し、ロンドンの都市封鎖を迫られ、かつドイツやフランスが英国との往来を制限したことで人や物資の移動に混乱が生じていたことが大きな要因となりました。

これにより、英EU離脱の移行期間である年内中に双方が議会での承認や暫定適用の手続きを済ませれば、懸念されていた年明けからの経済活動の混乱は回避されることになりました。


5.トランプ大統領、追加経済対策法案と2021会計年度歳出法案に署名 

トランプ大統領は12月27日に米議会が可決した9000億ドルの新型コロナウイルス対策法案と1兆4000億ドル規模の2021会計年度歳出法案に署名、両案が成立しました。これにより、現在暫定予算で動いている連邦政府の一部機関が29日から閉鎖される事態は回避されることになりました。

トランプ大統領は署名に際し、個人向け給付金の額を600ドルから2000ドルに置き換える法案を採決することを議会に求め、下院は民主党が主導して28日に2000億ドルの増額法案を採択しました。しかしながら、上院では2000億ドルへの引き上げに反対の共和党が多数派で両院を通過する可能性は低いと見られます。        

       (2021年1月1日: 村方 清)

 

 

 

Wednesday, December 2, 2020

バイデン候補勝利後のワクチン・バブル相場








1.11月の実績

11月の株式市場は11月3日の大統領選挙でバイデン候補の勝利が確実になるにつれ、大規模経済対策への期待から大きな上昇となりました。加えて、米英の3つの製薬会社の新型コロナウイルスのためのウクチン開発が最終の臨床試験で良好な結果とあったとの情報によって、更に相場を押し上げる形になりました。主要な動きは以下の通りでした。

11月2日:中国の製造業購買担当景気指数が9年9か月ぶりの高水準となったことや米国のISMの製造業景況感指数も2年1か月ぶりの高水準となり、投資家心理が改善し、ダウ平均は423ドル高(1.60%増加)。

11月3日:米大統領選挙でバイデン候補が勝利し、上院でも民主党が過半数を獲得すれば大規模な経済対策が実施との思惑から景気敏感株を中心に買いが広がり、555ドル高(2.06%増加)。

11月4日:米大統領選挙でバイデン候補の勝利が強まる中で、上院は引き続き共和党が維持すると見られ、ねじれ議会となる可能性から規制の強化はないとの見方から主要ハイテク株への見直し買いが広がり、368ドル高(1.34%増加)。

11月5日:民主党のバイデン候補はネバダ州でリードを広げ、ここで勝利すれば、過半数に必要な270票に一段と近づくため、選挙結果は週内にも判明するとの見通しが強まったことやFOMCが現在の金融緩和策の維持を決めたことで、543ドル高(1.95%増加)。

11月6日:コロナウイルス感染者数が急増していること、米大統領選挙の結果はバイデン氏の勝利が有力視される中、一部の混乱も予想され、67ドル安(0.24%減少)。

11月9日:ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンの承認が近いとの報道から、景気敏感株に買いが集まりアメリカン・エキスプレス、ボーイング、ウォルト・ディズニー、シェブロンなどが急上昇し、835ドル高(2.95%増加)。

11月10日:新型コロナウイルスのワクチン普及への期待から、景気敏感株への買いが続き、263ドル高(0.90%増加)。ハイテク株の多いナスダック指数は続落。

11月11日:今月に入り、ダウ平均は2900ドル強上昇しており、短期的な過熱感を警戒した売りが優勢で、23ドル安(0.08%減少)。

11月12日:米国での1日のコロナ感染者数が10万人を上回る状態が続いており、FRBのパウエル議長が討論会で数か月は厳しい状況になるかもしれないと述べたことで、短期的に景気の下押し要因になる警戒感が強まり、317ドル安(1.08%減少)。

11月13日:前日にコロナウイルス感染拡大の懸念を受けた売りが一巡したことやワクチン普及への業績期待という投機的な買いが優勢で、400ドル高(1.37%増加)。

11月16日:米製薬のモデルナがコロナワクチンの臨床試験で94.5%の有効性が確認されたとのニュースで、経済正常化への期待が高まり、景気敏感株を中心に投機的な買いが強まり、471ドル高(1.60%増加)。

11月17日:朝方発表の10月の米小売売上高が前月比0.3%増と市場予想の0.5%増に届かず、米景気の先行きへの不透明感が意識され、167ドル安(0.56%減少)。

11月18日:新型コロナウイルスの感染拡大による目先の景気の不透明感がくすぶり、最近上昇していた銘柄を中心に利益確定売りが優勢で、345ドル安(1.16%減少)。

11月19日:米新規失業保険申請件数が市場予想を上回ったこともあり、200ドル以上下落する場面もあったが、米議会の追加経済対策の協議が再開することも伝えられ、45ドル高(0.15%増加)。

11月20日:米国での新型コロナウイルスの感染再拡大で、行動制限を強化する動きが広がり、目先の米経済が停滞との懸念から景気敏感株を中心に売りが優勢で、220ドル安(0.75%減少)。

11月23日:英製薬アストラゼネガもワクチンの臨床実験で90%の有効性が判明、ファイザーのワクチンの接種も12月中旬から始まるとの見通しとなり、11月の米購買担当者景気指数(PMI)も10月に比べ1.6%ポイント高で、328ドル高(1.12%増加)。

11月24日:バイデン次期政権への移行があ円滑に進むとの期待と新型コロナウイルス開発への期待も重なり、投機的な買いが優勢で、455ドル高(1.54%増加)。

11月25日:前日に初めて3万ドル台を達成したことや米失業保険申請件数が前週から3万件増加したことで、景気敏感株を中心に短期的な利益確定売りが優勢で、174ドル安(0.58%減少)。

11月27日:米政権の円滑な移行と新型コロナウイルスのワクチン普及への期待感から買いが優勢で、38ドル高(0.13%増加)。

11月30日:相場が過去最高圏にあることや新型コロナウイルス感染拡大への警戒感から、月末を意識した利益確定や持ち高調整の売りが優勢で、272ドル安(0.91%減少)。



2.米国の雇用状況


米労働省が11月6日に発表した10月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比638,000人の

増加で、市場予想の530,000人を上回りました。8月の雇用者数の確定値は1,493,000人で4,000 人の増加、9月の改定値は672,000人で、11,000人の増加となりました。なお、10月の失業率は6.9%で、前月と比べて1.0%改善しました。労働参加率は61.7%で、前月から0.3%増加しました。10月の時間当たり賃金上昇率は前月比で4セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が271,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が208,000人の増加、小売業が104,000人の増加、ヘルスケア関連業75,000人の増加となりました。


3.FOMCの金利据え置き

FOMCは11月4-5日にFOMC会合を開き、金利据え置きと米国債を制限なく購入する量的緩和策などの維持を決めました。会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練のときに米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定化の目標を推進するためにあらゆる手段を使うことを約束する。新型コロナウイルスの流行は米国と世界中に甚大な人的・経済的困難をもたらしている。経済活動と雇用はここ数カ月はやや持ち直しているが、依然として今年初めの水準を大きく下回っている。弱い需要と先の石油価格の下落が、消費者物価の上昇率を押し下げている。経済および米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般的に、依然として緩和的だ。

景気の動向は、ウイルスの拡大状況に大きく左右される。現在続いている公衆衛生の危機は、短期的には引き続き、経済活動、雇用、インフレにとって大きな重荷となり、中期的には経済見通しにとって深刻なリスクとなる。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ率を目指す。そうすることで、インフレが長期的に平均2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。

これらの成果が出るまで金融政策の緩和的なスタンスを維持することを予測している。

FOMCは(政策金利である)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0~0.25%に据え置くことを決定した。労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致する水準に達し、インフレが

2%に上昇、当面2%をやや上回るところで軌道にのるまでこの目標レンジの維持が適切と予測する。

さらに今後、FRBは少なくとも現状のペースで国債、ローン担保証券の保有を増やす。そうすることで、円滑な市場機能を維持し、緩和的な金融情勢を促進し、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策のスタンスを調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成を妨げるリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力・インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

決定はパウエル議長及びウィリアムズ副議長を含む10人のメンバー全員による。

今回の決定は、現状のゼロ金利政策と量的緩和策をともに維持すると同時に、新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念材料として、景気リスクが高まれば、量的緩和を拡充する可能性を示唆しました。市場の反応は前向きで、景気拡大策を取ると見られるバイデン大統領候補の勝利する可能性が高まったことの要因もあり、ダウ平均価格はは543ドル高(1.95%増加)となりました。 

4. バイデン候補の勝利

11月3日に行われた大統領選挙で、民主党のバイデン候補は接戦州であったウイスコンシン州やミシガン州に加え、ペンシルベニア州でも現職与党のトランプ大統領に勝利し、11月7日に地元のデラウェア州ウィルミントンで勝利宣言の演説を行いました。

 その演説の中で、バイデン候補が強調したのは、自分が米国を団結に導くよう、自分に投票しなかった人々も含め、米国人の大統領として働くことでした。分断ではなく、結束を目指す大統領になることを誓ったことでした。

それに加え、バイデン候補が強調したのは、米国を可能性の国として、全ての米国人が夢を追求できる素晴らしい国であり、米国人の魂を取り戻し、米国が地球の指標として全世界の見本となることを目指していきたいとしました。

バイデン候補に先立ち、演説したハリス副大統領候補も、初めての女性副大統領の誕生の前に自分は初であろうが最後ではなく、今後続く少女たちに希望を与えると述べ、米国は可能性の国であることを改めて伝えました。

今回のバイデン候補の勝利は、直接的には新型コロナウイルスで、ベトナム戦争での米国人の死者を遥かに超える25万人以上の犠牲者を出しながら、有効な政策を出せない現在のトランプ政権への

米国民の不満や批判が強かったことにあります。同時に、米国の民主主義の仕組みを十分に理解することなく、強引に自分や特定のグループへの利益追求に走りすぎたトランプ大統領への不信が強かったことがあげられます。米国がトランプ政権下での多くの誤った政策を見直し、バイデン次期大統領の下で再び、米国が世界の民主主義国家のリーダーとして歩んでいくことを期待したいものです。


5.コロナウイルス感染拡大とワクチン開発によるバブル相場

11月3日の米国大統領選挙でのバイデン候補の勝利以降、米英の3つの製薬会社による新型コロナウイルス抑止のためのウイルス開発の臨床試験の結果がよかったことで、米政府による新薬への承認期待から株相場が大きく上昇することになりました。しかし、現在有力視される2つのワクチンについては保存方法の難しさや臨床試験の拡大による副作用の問題は依然残されており、急激な上昇相場を正当化するには無理があるように思われます。それよりも懸念されるのは冬のシーズンを迎え、コロナウイルス感染が再び急激に拡大、実体経済への深刻な悪影響が出てきているにもかかわらず、中央銀行の過剰な緩和政策が株式市場の投機的な動きを加速させていることです。バッフェ指数で知られるように、GDPに対する株価の時価相場総額があまりに大きくなりすぎたことに対して、超低金利状態の中で中央銀行が適切な対応策を取れなくなっている現在の株式相場の動きには大きな懸念を持たざるを得ません。

        (2020年12月1日: 村方 清)


Monday, November 2, 2020

実体経済を反映しない政治的な投機相場

 

 















1.
10月の実績

10月の株式市場は追加の経済対策を巡るトランプ政権と与野党の協議の進展状況に振り回され、株価の変動が激しい不安定な相場となりました。加えて、終盤はコロナウイルス感染の急増となり、下落相場が続きました。主要な動きは以下の通りでした。

 

10月1日:追加の経済対策を巡って財務長官と民主党の下院議長が協議を続けたが、まだ隔たりがあることから景気敏感株が買い控えられ、9月の米製造業指数も55.4と前月比0.6低下して、ダウ平均は35ドル高(0.13%増加)。

10月2日:トランプ大統領のコロナウイルス感染が判明し、大統領選挙への影響を懸念した売りが優勢で、134ドル安(0.48%減少)。

10月5日:トランプ大統領の早期退院や追加経済対策の与野党協議の進展などの報道に投機的な動きが広がり、466ドル高(1.68%増加)。

10月6日:トランプ大統領が追加の経済対策の協議中止を指示したことで、景気の持ち直しが加速するとの見方が後退し、主力銘柄を中心に売りが広がり、376ドル安(1.34%減少)。

10月7日:トランプ大統領が空運会社や中小企業の支援など経済対策の一部を個別に実施することを議会に求めたことで、米景気を支えるとの投機的見方に影響され、531ドル高(1.91%増加)。

10月8日:追加の経済対策への期待から引き続き投機的な買いが入り、相場を押し上げ、122ドル高(0.43%増加)。

10月9日:追加の経済対策について、米政権が規模を1兆8000億ドルに引き上げ、民主党に提案すると伝えられ、合意への期待が過剰に膨らみ、161ドル高(0.57%増加)。

10月12日:政策期待などで中国の上海市場の株式相場が大幅に上昇、米企業の決算内容が市場予想以上になるとの投資家の投機的な思惑から、251ドル高(0.88%増加)。

10月13日:ジョンソンエンドジョンソンがワクチンの治療薬の治験を中断したことや追加経済対策の与野党協議も停滞するなどで、158ドル安(0.55%減少)。

10月14日:追加経済政策の早期合意は困難との見方が広がり、市場心理が悪化、投資家が運用リスクを回避する姿勢が強まり、166ドル安(0.58%減少)。

10月15日:新型コロナウイルスの感染急増で、英仏が外出規制を強め、投資家心理を冷やしたが、米政府の追加経済対策への期待から景気敏感株が買い直され、19ドル安(0.07%減少)。

10月16日:朝方発表の9月の米小売売上げ高が前月比1.9%増と5カ月連続で増え、米経済の底堅さを意識した買いが優勢で、112ドル高(0.39%増加)。

10月19日:追加の経済対策で米与野党が何らかの合意に達するとの期待で高く始まったが、期待がしぼみ、次第に売りが優勢となり、欧米のコロナウイルス感染の再拡大も影響し、411ドル安(1.44%減少)。

10月20日:追加経済対策を巡る米与野党協議で、ペロシ下院議長の発言で何らかの合意に達するとの期待で、113ドル高(0.40%増加)。

10月21日:ブラジルで実施されていた英国の製薬会社とオックスフォード大のコロナウイルスのワクチンの臨床試験で被験者が死亡したことから、ワクチン開発の不透明感が増し、投資家心理が悪化、98ドル安(0.35%増加)。

10月22日:週間の新規失業保険申請件数が2週間ぶりに減少したことや米国の追加経済対策への合意期待が再び高まり、153ドル高(0.54%増加)。

10月23日:追加の経済対策の与野党協議を巡る不透明感や低調な決算を発表したインテルが売られ、相場の重荷となり、28ドル安(0.10%減少)。

10月26日:米国で新型コロナウイルスの感染拡大が過去最大を更新したことや追加経済対策の合意も遠のき、米国の景気回復が遅れるとの懸念から、650ドル安(2.29%減少)。

10月27日:欧米でのコロナウイルス感染が再拡大し、行動制限の強化による景気後退の懸念から売りが優勢で、222ドル安(0.80%減少)。

10月28日:欧米でコロナウイルス感染拡大が再び深刻化しており、世界景気への悪影響が懸念され、幅広い銘柄に売りが広がり、943ドル安(3.43%減少)。

10暑29日:朝方発表の7-9月期のGDP速報値が前期比33.1%増と市場予想を上回り、新規失業保険申請件数も市場予想を下回り、139ドル高(0.52%増加)。

10月30日:米国の1日当たりの新型ウイルス感染者数が過去最高を更新したことや7-9月期のスマートフォンの売上高が大幅に減少したアップルが大幅安で、158ドル安(0.59%減少)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が10月1日に発表した9月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比661,000人の増加で、市場予想の850,000人を下回りました。7月の雇用者数の確定値は1,761,000人で27,000 人の増加、8月の改定値は1,489,000人で、118,000人の増加となりました。なお、8月の失業率は7.9%で、前月と比べて0.5%改善しました。労働参加率は61.4%で、前月から0.3%減少しました。9月の時間当たり賃金上昇率は前月比で2セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が318,000人の増加、小売業が142,000人の増加、ヘルスケア関連業108,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が89,000 人の増加となりました。

 

3.米国財政赤字の急増と今後への影響

米財務省は10月16日に2020年度の財政赤字が前年度の3倍に達する3.1兆ドルになったと発表しました。これは金融危機直後の2009年度の1.4兆ドルを上回り、過去最大の規模となりました。これに伴い、2020年度の連邦政府債務は過去最大の約26兆ドルに膨らみ、GDP比率は126%と第2次大戦直後の最悪期の1946年の119%を超えることになります。今年3月の時点では2020年度の財政赤字を1兆730億ドルと見込んでいましたが、その後の大規模な新型コロナウイルス対策もあり、歳出が前年度の1.5倍の6.6兆ドルに達し、赤字幅が急拡大したものです。GDP比率で126%と言うのはIMFが予測する世界平均の96%を大幅に上回り、主要国では日本の252%、イタリアの156%に次ぐ規模となります。

 

2021年度は当初赤字幅が1.8兆ドルに縮小すると見られていましたが、現在議会は1兆ドル強の追加経済対策を検討しており、赤字幅の増加が避けられない状況です。これにより、2030年度の利払い費は6640億ドルと2020年度の3380億ドルの約2倍に膨らむ見込みです。現在は連銀のゼロ金利政策で、政府の利払い負担は少なくなっているものの、ゼロ金利政策の解除となれば、政府の利払い負担が増加し、米国財政を大きく圧迫することになります。

 

4.米国大統領選挙最後の討論会

米国大統領選挙の最後の討論会が10月22日にテネシー州ナッシュビルで行われました。前回の討論会では、トランプ大統領がバイデン候補の発言を何度も遮ったため、今回は1人の候補が話す2分間はもう1人のマイクのスイッチを切る措置を取ったため、議論は前回に比し、大方スムースに進みました。この日の討論会では、新型コロナウイルス、米国の家族、人種、気候変動、国家安全保障、リーダーシップのの6つのテーマで論戦が行われました。

 

新型コロナウイルスではトランプ大統領は全米各地における感染拡大は峠を越え、収束に向かっており、数週間以内に完成したワクチンが配布できれば、この問題は消えてなくなるとの超楽観的な見方を示しました。これに対し、バイデン候補は米国には未だにコロナを収束させる包括的な計画がなく、経済や学校再開の必要な国家的な統一基準を作るとしました。

 

次に、米国の家族では、特に、低所得者に医療保険加入を促す公的医療保険制度(オバマケア)の取り扱いが焦点になりました。司会者がトランプ大統領にオバマケアを廃止すると約2000万人が無保険者になることを指摘すると、オバマケアは個人に保険加入を義務付けるのは最悪だとしながらも、私的保険の活用を主張するだけで、オバマケアに代わる医療保険制度の代替案は相変わらず、提案できませんでした。これに対し、バイデン候補はオバマケアの拡大に加え、私的保険の継続的な活用を主張しました。

 

人種問題では、移民政策について、トランプ大統領が国境に400マイルの壁を作り規制が強化されれたことを誇示しましたが、バイデン候補は親と一緒に来た500名以上の子供が親と分離され、行き場所がなくなってしまったので犯罪ではないかと強く非難ししました。また、トランプ大統領は自分達は黒人を含むマイナリティへの地位向上に最も務めた政権としましたが、バイデン候補より人種間の対立を煽った最悪の政権との批判を受けました。

 

気候変動については、トランプ大統領が温暖化対策の国際ルールである「パリ協定」を米国内のビジネスを破壊するものとして、脱退を表明したことを正当化しました。これに対し、バイデン候補地球温暖化の科学性に基づき、米国は気候変動問題に取り組む道徳的な義務を負っているとしてパリ協定に復帰することを表明しました。

 

国家安全保障について、トランプ大統領が米国の鉄鋼産業の競争力低下に関し、中国への関税許可を正当化したのに対し、バイデン候補はその結果として、従来中国に穀物を輸出していた米国の農家が大きな被害を受け、不必要な巨額の補助金が発生していると非難しました。バイデン候補は中国に対し国際法を守らせることの必要性を強調しました。対北朝鮮政策を巡って、トランプ大統領が北朝鮮の金委員長と親密な関係を築き、戦争を回避していることを強調するのに対し、バイデン候補は北朝鮮がミサイル能力を向上させており、制裁措置の強化を主張しました。

 

これに関連して、トランプ大統領はバイデン候補の息子が父親の地位を利用して、ウクライナや中国で不正に金儲けをしていると非難しました。これに対し、バイデン候補は不正に金儲けをしていることはなく、逆にトランプ大統領が中国に設置している秘密口座の理由を求めました、更に、バイデン候補はトランプ大統領が納税報告書を未だに開示しないことについて強く批判をしました。

 

最後にリーダーシップの問題に関連して、司会者が大統領就任式で支持しなかった人に何を呼びかかけるかの質問に対し、トランプ大統領は経済の成功が結束させると曖昧な回答でした。これに対し、バイデン候補は共和党支持者と民主党支持者を分けることは望ましくなく、米国民が一体となって国を作っていく必要性を強調、リーダーの品格、信用、尊敬の回復の重要性を訴えました。

 

討論会を終えた後の評価では、CNNはバイデン候補の勝利が53%で、トランプ大統領の勝利が39%、一方保守系のFoxニュースでは、トランプ大統領が62%、バイデン候補が38%となっていま。一方、3大ネットワークの一つであるABCはバイデン候補が62%、トランプ候補が33%となっています。

          (2020年11月1日: 村方 清)

 

Thursday, October 1, 2020

トランプの党が作り出す経済と政治の分断










1.9月の実績
9月の株式市場はコロナウイルス感染拡大の中でも、影響が少ないとされ、投資家の強い関心を集めてきた大型ハイテク株にも急速な株高への警戒心が高まり、調整局面を迎えることになりました(但し、月末には再び上昇傾向)。主要な動きは以下の通りでした。

9月1日:ISMの製造業景況感指数は56.0と3カ月連続で50を上回ったことや新たな会員サービスを発表したウォルマートが大幅上昇、アップルなどの大型ハイテク株も買いが優勢で、216ドル高(0.76%増加)。
9月2日:2日発表の米新車販売台数や雇用者数の増加を受けて、景気回復が続いているとの見方から、幅広い銘柄が買われ、455ドル高(1.59%増加)。
9月3日:アップルやマイクロソフトなどコロナ禍での株高を牽引してきたハイテク株に過熱感が強まり、売りが膨らみ、808ドル安(2.78%減少)。ナスダックは5%減少。
9月4日:8月の雇用統計で失業率が8.4%に低下したものの、前日に広がったハイテク株売りが4日も続き、159ドル安(0.56%減少)。
9月8日:アップルなどの主要ハイテク株への売りが続き、素材や金融など景気敏感株の一角にも売りが広がり、632ドル安(2.25%減少)。
9月9日:前日まで下げが目立った主力ハイテク株が買い直され、相場を押し上げ、製薬会社のファイザーにもワクチン開発の新たな進展報道があり、440ドル高(1.60%増加)。
9月10日:アップルやマイクロソフトなどのハイテク株への売りが再び強まったことや米上院で追加の経済対策法案が否決され、景気回復が遅れるとの懸念から、406ドル安(1.45%減少)。
9月11日:ナイキやキャタピラーなどの景気敏感株やJPモルガンなど金融株が割安感から上昇し、131ドル高(0.48%増加)。
9月14日:エヌビディアが英半導体設計のアームを買収したり、オラクルが中国のTik Tokの米国事業を引き受けるととの観測が高まり、328ドル高(1.28%増加)。
9月15日:買いが先行して始まったが、アップルが午後に一時下げに転じると相場が伸び悩み、銀行株などの景気敏感株の下落も重荷となり、2ドル高(0.01%増加)。
9月16日:FRBが9月15-16日に開催されたFOMC会合で、2023年末まで利上げを見送る方針を示したことで、景気敏感株を中心に買いが優勢となったが、ハイテク株からは資金が流出、引きにかけて急速に伸び悩み、37ドル高(0.13%増加)。
9月17日:FOMCの会合が16日に終わり、様子見をしていた投資家が割高感の強い主力ハイテク株を売りに出したことやCDC所長が年内のワクチン供給は非常に限られると述べたことで、市場心理が悪化し、130ドル安(0.47%減少)。
9月18日:アップルなど主力ハイテク株の売りがやまないこと、追加経済対策の成立が遅れ、景気を冷やしかねないとの懸念から、245ドル安(0.88%減少)。
9月21日:欧州でのコロナウイルス感染の再拡大、ドイツ銀行やJPモルガンなどの大手金融機関のマネーロンダリング問題、最高裁判事の任命問題を巡る政治の不透明性などが原因で、売りが膨らみ、510ドル安(1.84%減少)。
9月22日:欧州でコロナ感染の再拡大が相場の重荷になったが、業績がコロナの盈虚を受けにくい主力ハイテク株が買われ、相場を主導、140ドル高(0.52%増加)。
9月23日:追加の米経済対策成立の見通しが立たない中、主力ハイテク株の割高感からの下げ局面が続き、525ドル安(1.92%減少)。
9月24日:取引開始直後は売りが先行したものの、終了にかけて下落基調にあった主力のハイテク株が上昇し、52ドル高(0.20%増加)。
9月25日:9月に入って調整局面が続いていた主力ハイテク株のマイクロソフトやセールスフォースが上昇、景気敏感株の一角も買われ、359ドル高(1.34%増加)。
9月28日:追加の米経済対策への期待やアジア、欧州株高などを受けて、景気敏感株を中心に買いが優勢で、410ドル高(1.51%増加)。
9月29日:欧米でコロナウイルスの感染が広がる中で、金融株やエネルギー株が売られて、相場を押し下げ、131ドル安(0.48%減少)。
9月30日:追加経済対策で米与野党が近く合意するとの観測が強まり、主力ハイテク株や景気敏感株などに買いが広がり、329ドル高(1.20%増加)。

 

2.米国の雇用状況
米労働省が9月4日に発表した8月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比1,400,000人の増加で、市場予想とほぼ同様でした。6月の雇用者数の確定値は4,791,000人で10,000 人の増加、7月の改定値は1,734,000人で、29,000人の減少となりました。なお、8月の失業率は8.4%で、前月と比べて1.8%改善しました。労働参加率は61.7%で、前月から0.3%増加したものの、2月の時点から依然として低い水準にあります。8月の時間当たり賃金上昇率は前月比で11セント増加しました。部門別では小売業が249,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が197,000 人の増加、レジャー・観光業が174,000人の増加、教育・ヘルス業関連が147,000人の増加となりました。

 

3.FOMCの金利据え置き
FOMCは9月15-16日にFOMC会合を開き、金利据え置きと米国債を制限なく購入する量的緩和策などの維持を決めました。会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練のときに米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定化の目標を推進するためにあらゆる手段を使うことを約束する。新型コロナウイルスの流行は米国と世界中に甚大な人的・経済的困難をもたらしている。経済活動と雇用はここ数カ月はやや持ち直しているが、依然として今年初めの水準を大きく下回っている。弱い需要と著しく低い石油価格が、消費者物価の上昇率を押し下げている。金融情勢は全般的に、経済および米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、ここ数カ月改善している。
 
景気の動向は、ウイルスの拡大状況に大きく左右される。現在続いている公衆衛生の危機は、短期的には引き続き、経済活動、雇用、インフレにとって大きな重荷となり、中期的には経済見通しにとって深刻なリスクとなる。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ率を目指す。そうすることで、インフレが長期的に平均2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。

これらの成果が出るまで金融政策の緩和的なスタンスを維持することを予測している。

FOMCは(政策金利である)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0~0.25%に据え置くことを決定した。労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致する水準に達し、インフレが

2%をやや上回るところで軌道にのるまでこの目標レンジの維持が適切と予測する。 

さらに今後、FRBは少なくとも現状のペースで国債、ローン担保証券の保有を増やす。そうすることで、円滑な市場機能を維持し、緩和的な金融情勢を促進し、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策のスタンスを調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成を妨げるリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状、インフレ圧力・インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

決定はパウエル議長及びウィリアムズ副議長を含む10人のメンバー全員の賛成による。

今回の決定は、現状のゼロ金利政策と量的緩和策をともに維持すると同時に、物価上昇率が暫くの間、穏やかに2%を超える水準を目指すとフォワード・ガイダンスを変更し、利上げのハードルを引き上げたことに特徴があります。市場の反応は前向きであったものの、ハイテク株が大きき憂く売られ、ダウ平均価格はは37ドル高(0.13%増加)に留まりました。

 

4.コロナウイルス感染拡大の中でのハイテク株の乱降下
コロナウイルス感染拡大の中で、その影響が限定的であったアップルやマイクロソフトなどのハイテク株の株価は先月まで急激な上昇を続けてきましたが、今月に入り急速に下落、調整局面を迎えています。その背景には、コロナウイルス感染拡大に伴い、実体経済が急速に落ち込む中で、政府の意向を受けて、中央銀行がゼロ金利や大規模な量的緩和などの過度な金融緩和策を続けた結果、実体経済の悪影響が軽微とされるアップルやマイクロソフトなどのハイテク株の急激な上昇に結び付くことになりました。しかし、ハイテク株と言えども、コロナウイルス感染拡大の影響を受けざるを得ず、株価が投機性を強めて上昇を続ければ、調整局面を迎えざるをえないといことだと思います。いずれにしても、完全に投機的要因に支配されている現在の株式市場は異常としか言いようがありません。

 

5. トランプの党が作り出す経済と政治の分断(民主政治の危機)
11月3日の米大統領選挙を控え、現職のトランプ大統領と野党の民主党のバイデン候補の第一回討論会が9月29日に実施されました。米国の大統領選挙では伝統的に民主党と共和党の2大政党がそれぞれの全国大会で党の綱領を採択し、それを基にして選挙戦を争い、討論会では両党の候補者が綱領に基づいて議論するのが習わしでした。しかし、今回の共和党大会は党の綱領を採択せずに、現職のトランプ大統領の再選させるための“アメリカファースト”という安易なスローガンと減税や規制緩和に力点を置く、トランプ党の人気取り政策を並べるだけのもので、両候補が政策を争う本質的な議論になりませんでした。特に、トランプ大統領の相手の主張を聞くことなく、中傷するだけの態度に司会者から何度も注意を受けなど従来に前例のない低次元の討論会となりました。

米国で最も深刻なコロナウイルス感染問題への対応についても、トランプ大統領はコロナウイルス感染問題の深刻さを早い段階で認識しながら、有効とされるマスクの着用を義務づけるなどのそれ対応策を講じることはせずに、再選に不可欠と考える株高状況を何とか維持すべく、トランプに近い共和党の州知事に経済活動の再開を優先させるように指示しました。その結果はフロリダ州やテキサス州での感染者や死亡者の急増を招くことになりました。また、コロナウイルス対策に必要ななワクチン開発や治療方法についても、株価上昇を意図すべく、現政権の努力で急速に進んでいることを必要以上に強調するだけで、十分な検証期間を経ていない性急なワクチン開発の副作用の大きさを含むリスクについては言及を避け続けています。現在、米国でのコロナウイルス感染による死者数は9月末で20万人を超えていますが、それは米国史上、南北戦争の66.5万人、1918年から流行したスペイン風邪の50万人、第2次世界大戦の40万人に次いで4番目であり、約8か月間の短期間で起きたことは例を見ません。 

コロナウイルス感染問題で極めて深刻は状況をもたらしながら、トランプ大統領が依然40%近い米国民の支持を受け、幾つかの遊説先で多くの傍聴人から熱い声援を受けていることに驚かされます。しかし、その光景は、1930年代初めに経済困難を抱えたドイツにおいて、排他的な民族主義を掲げて急速に勢力を伸ばしたナチス党のヒトラーを連想させるものがあります。トランプの演説に集まる聴衆の多くがどちらかと言えば超保守的な白人層であることでその類似性を感じさせます。

トランプ大統領の問題点は、2016年の大統領選挙の立候補以来、そのスローガンは多民族国家である米国民の融合ではなく、個人的な利益優先をベースとしながら、白人層を中心とする特定グループの利益保護や復活でした。彼がイニシアチブを取った2017年末の大幅減税に見られるように、それは米国民に富めるものと貧しいものの格差を拡大させ、経済の分断を強いることになりました。

また、政治の世界でも、こうした特定のグループの利益実現によって、彼の支持基盤が強固であるとして、米国民主主義政治に不可欠な三権分立を弱くさせ、大統領権限を最大限優先させる方策を取り続けています。更に問題なのは、米国の憲法上の存立基盤を死守する役割を持つべきはずの

バー司法長官がトランプ大統領に迎合し、大統領独裁制を擁護する立場を取っていることです。

その意味で、今回の大統領選挙は自己利益追求が目的で、デマゴーグの政治家であるトランプ大統領によって脅かされている米国の民主政治が守れるのかが試される重要な機会となっています。

       (2020年10月1日:村方 清)