Monday, July 1, 2013

米連銀の量的緩和策縮小計画で揺れる金融投機市場(中銀バブル市場)の反応
















1.6月の株式市場
6月の株式市場で最も注目されたのは、6月19日のFOMC後のバーナンキ議長の記者会見でした。彼が言及した量的緩和策縮小計画は過熱状態にある米国市場のみならす、世界の株式市場に株価の大幅下落を与えることになりました。主要な動きは以下の通りでした。

6月3日:米サプライマネジメント協会の製造業景況感指数が4月の50.7から49に低下、連銀が量的緩和策の早期縮小が後退したとの見方から、138ドル高(0.92%減少)。
6月5日:ADPによる非農業部門の雇用者数が前月比13万5千人で、市場予想の17万人を下回ったことや、連銀の量的緩和策の先行き不透明感から、217ドル安(1.43%減少)。
6月7日:政府発表の非農業部門の雇用者数の伸びが前月比175,000人の増加となり、市場予想(160,000人)を上回ったものの、失業率は7.6%へ増加したことから、連銀の量的緩和策の早期縮小は遠のいたとの観測から、208ドル高(1.38%増加)。
6月12日:投資家の運用リスク資産を回避する動きから127ドル安(0.84%減少)。
6月13日:5月の小売売り上げが市場予想を上回る0.6%となったことや週間新規失業保険申請件数が予想に反して減少したことから、投資家心理が改善、前日までの大幅下落を買い戻す動きが強まり、181ドル高(1.21%増加)。
6月14日:5月の米鉱工業生産指数が市場予想の0.1%を下回ったことや6月の消費者態度指数が先月の84.5から82.7へ低下したことから、106ドル安(0.70%減少)。
6月17日:6月のニューヨーク連銀の景気指数がプラス7.84と前月のマイナスから大幅に改善、また全米住宅建設教会の住宅市場指数も大幅に上昇で、110ドル高(0.73%増加)。
6月18日:米国の住宅着工件数は市場予想の95万戸に対して、91万4千戸であったが、連銀が市場の懸念を抑制するとの見方が強まり、138ドル高(0.91%増加)。
6月19日:FOMC後の声明や連銀議長の記者会見を受けて量的緩和策の縮小時期が近いとの見方が広がり、206ドル安(1.35%減少)。
6月20日:米国の量的緩和策の早期縮小との見方が強まったこと、中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が2ヶ月連続で50を下回り、354ドル安(2.34%減少)今年最大下落。
6月24日:中国の株価が5%以上下落、米長期金利の高騰で、140ドル安(0.94%減少)。
6月26日:ECBのドラギ総裁が当面、緩和政策が続くと述べたことや米国第1四半期のGDPが2.4%から1.8%へ下方修正、金利上昇の懸念が薄れ、150ドル高(1.02%増加)。
6月27日:5月の個人消費支出が前月比0.3%増加、5月の仮契約住宅販売指数も6.7%と大幅に増加、ニューヨーク連銀総裁が量的緩和策の縮小は経済見通しの結果次第と発言したことで、114ドル高(0.77%増加)。ダウは1週間振りに15,000ドルを上回る。
6月28日:シカゴ購買部協会景気指数(PMI)の悪化と消費者信頼度指数の上方修正が交錯したが、連銀理事の9月からの量的緩和策縮小発言もあり、115ドル安(0.75%減少)。

2.米連銀の量的緩和策縮小計画で揺れる金融投機市場(中銀バブル市場)の反応
米国の株式市場が過熱化する中で、注目されていた連銀のFOMCが6月18日と19日に開かれました。19日のFOMCの声明によれば、経済活動は穏やかなペースで拡大し続けており、労働市場はここ数ヶ月更なる改善を示したが、失業率は依然高い水準にある。家計支出や民間設備投資も改善が進み、住宅部門はさらに強くなったが、財政政策が経済成長を抑制している。物価上昇はFOMCの長期目標を下回る水準を維持しており、長期インフレ期待は安定した状態を維持している。今後も適切な金融政策によって、FOMCの二大目標である雇用の最大化と物価の安定を整合的な水準に段階的に落ち着いていくと予想される。このため、FOMCは現行の400億ドルの住宅ローン担保証券と450億ドルの長期米国債購入を継続し、労働市場や物価上昇の見通しの変化に伴なって、資産購入のペースを増減する準備をしている。なお、雇用の最大化と物価の安定に向けた改善状態を維持するために、資産購入政策が終了した後も、相当な期間はフェデラル・ファンド金利の誘導目標の範囲を0-0.25%に維持するなどとしました。

更に、午後の記者会見で、バーナンキ議長はインフレ率が目標である2%に近づき、今後発表される経済指標がFOMC’の目標と整合的であれば、現時点で年内に資産購入のペースを緩やかにし、その後も景気が予想通りに回復すれば、来年前半にかけてさらに資産購入のペースを緩め、来年半ばまでに終了させることを明らかにしました(その時点では失業率は当初目標の6.5%ではなく、7%程度になっていることを予想)。資産購入政策の段階的な縮小が可能と見ている理由として、経済指標の改善に加え、州政府の雇用削減の鈍化、最近における連邦政府の財政赤字縮小を伝えました。

今回のFOMCが従来以上に重要であったのは、量的緩和策の具体的な縮小・出口計画に言及したことにあります。この背景には前回、4月30日と5月1日に開かれたFOMCで多くの委員が、早ければ6月から資産購入規模を縮小したいとの意向を示していたことがあります。加えて、5月17日に開かれた諮問委員会で、市場に精通したメンバーの委員達が量的緩和の終わりは一時的に市場の混乱を招くことはあるにしても、緩和策を続ければ持続が不能なバブルが起きる恐れがあるとして、緩和を長引かせるべきではないことを連銀幹部に助言したことにあります。ある意味で、グローバル化による経済のデフレ化が進む中で、連銀の金融緩和策によるマクロ面の雇用や物価に与える影響が限定的になり、一方で、量的緩和策が株式市場の金融投機相場を形成していること(今年3月初めに、ダウ価格はリーマン・ブラザーズ破綻前の2007年10月9日の最高値を更新するなど企業実績をはるかに越える株価の高騰と乱高下が繰り返される市場の不安定性)への警戒感が強まっていることの表れと言えます。

しかし、バーナンキ議長の説明に対する株式市場のネガティブな反応は予想以上に大きく、19日はダウ価格が202ドル下落、20日は中国のPMIの不振も重なかったことから353ドルの大幅な下落となりました。バーナンキ議長が経済の改善を前提として、異常な量的緩和策の出口方法を示したにも拘らず、市場がこれほどネガティブになっているのは現在の連銀の量的緩和策に依存し過ぎた中銀バブルとも言われる米国株式市場の歪みによるものと見られます。ちなみに、米国市場は経済指標の好調さが発表された24日にダウ価格は140ドルの上昇となりましたが、翌日には第1四半期GDPが当初の2.4%から1.8%に下方修正されたものの、これによって連銀の量的緩和策縮小の可能性遠のいたとして、更に150ドルの上昇となりました。経済が改善されているから、株価が上昇するのは理解できますが、悪化しても連銀が支えるから、株価が上昇するというのは米国の株式市場がいかに連銀の緩和策に依存しているか(中銀バブル市場)を示しています。

連銀が失業率を6.5%以下に下げたいとして、低金利政策に加えて異常とも言える大規模な量的緩和策を長期間に渡って続ければ、デフレ経済の進展で実需の借り入れが少ない状況では株式市場に過剰な資金が流れ、株価が高騰していくのは当然のこととなります。そして、多くのグリーディーな投資家にとっては株価高騰によるキャピタルゲインの持続のためには、実体経済以上に株価の高騰が続いても、連銀による量的緩和策の継続が不可欠であるとの考えが支配的になってしまいます。その結果、連銀の量的緩和策縮小計画に関する発言には株価の大幅下落が、それを受けて連銀関係者も直ちに訂正すれば再び株価が大幅上昇という過剰な反応の繰り返しになっています。問題はこうしたことを繰り返して、連銀による量的緩和策を転換する時期が遅れた場合、株バブルの崩壊による経済損失が甚大になるということだと思います。

現在の連銀メンバーの多数派の立場からすれば、量的緩和策の縮小・廃止に伴う市場の一時的な混乱より、放置すれば、2001年以降長期間に渡って連銀が低金利状態を続けたことが住宅不動産バブルを招き、最後はリーマン・ブラザーズの破綻となったような深刻な金融不況を再現してはならないと判断があるものと見られます。いずれにしても、連銀の量的緩和策はあくまでも一時的かつ異常な政策であり、適切な時期に通常の金融政策に戻ることが不可欠であるとの認識が強いものと思われます。

3.フランスの政権交代がもたらした欧州中央銀行の量的緩和策再開と矛盾の拡大
2012年5月のフランス大統領選挙で、現職のサルコジ大統領が社会党のオランド書記長に敗れたことは、フランス国内の経済政策のみならず、欧州連合内で財政規律派と成長重視派の対立関係にも大きな影響を与えることになりました。オランド大統領は社会党出身ということもあり、格差是正のために富裕層への課税強化や銀行の投機業務禁止などの政策を打ち出しましたが、これまでの実績からする限り、フランス経済の低迷に拍車をかける結果になりました。このため、フランスの財政赤字はGDP比で3%以内という欧州連合の財政再建目標を守れなくなり、2年間の延長が必要になる状況に追い込まれました。同時に、欧州連合の経済政策についても、低成長と高い失業率を抱えるギリシャ、スペイン、イタリアに同調し、ドイツなどが求める財政規律よりも成長優先を支持する形になっています。一方、盟友サルコジ大統領を失ったメルケル首相は欧州連合が成長優先策を取れば、財政規律が悪化し、問題国の債務増加によってドイツの負担が更に大きくなるとして、依然強い反対の立場を取っています(特にメルケル首相は9月に総選挙を控えている事情もあり)。

このことはECB(欧州中央銀行)の政策のあり方についても同様で、2011年11月に就任したドラギ総裁はイタリア出身ということもあり、欧州中央銀行の機能や権限の強化で南欧諸国の問題を解決しようとする立場を取ったため、中央銀行の役割拡大に反対するドイツの財務相や連邦銀行総裁と鋭く対立することになりました。元来、欧州中央銀行のトリシェ前総裁の後任にはドイツ連邦銀行のウエーバー総裁が最有力されていましたが、メンバー国の国債購入はインフレを加速し、中央銀行の政治的な独立性を損なうとして強硬に反対、次期欧州中央銀行の総裁候補から降りたため、イタリア中央銀行のドラギ総裁が選ばれたという経緯がありました。ウエーバー総裁の後を継いだバイトマン総裁も同様な立場であり、2012年8月2日の欧州中央銀行政策理事会で、ドラギ総裁との対立は決定的になりました。最終的には、従来ドイツの連邦銀行に歩調を合わせていたフランスの中央銀行も政権交代により、ドラギ総裁の方針に賛成することになり、欧州中央銀行による国債購入の再開が認められることになり、現在まで続けられています。

一方、今年6月21日の週末に世界の中央銀行の集まりである国際決済銀行(BIS)は年次報告書の中で、現在幾つかの中央銀行が行なっている量的緩和策について、市場の混乱を恐れて緩和策の解除を遅らせるべきでないとする見解を出しました。この見解はギリシャ、イタリア、スペインなど財政赤字問題が深刻化した際に、欧州連合の存続のためには欧州中央銀行はあらゆる政策を取る必要があるとしたドラギ総裁の従来の方針と異なっていました。これに対し、ドラギ総裁は6月25日にベルリンで、物価の安定は確保されており、全体的な経済見通しから緩和的なスタンスが依然として正当化される。出口議論はなお遠いと述べました。また、欧州中央銀行のクーレ専務理事も同じ日にロンドンで、成長促進とユーロ危機対応のために欧州中央銀行が取っている政策は必要な限り、維持される必要があると発言したことが伝えられています。

欧州中央銀行による国債購入の是非をめぐる欧州中央銀行幹部とドイツ中央銀行やBISとの対立は、財政困難を抱える南欧諸国にとって一時的な救済措置になっても、それが根本的な解決策になるのかどうかということだと見られます。現在までの状況をみる限り、欧州中央銀行によるメンバー国の国債購入が続けられても、問題国の財政状況が改善されたというような結果にはなっていません。逆に、財政再建が遅れ、構造問題の改善も進んでいないのが現状と見られます。その一方、イタリア、スペイン、そしてフランスなどの問題国の経済状態は悪化しているにもかかわらず、それらの国々において株価の上昇が見られることは欧州中央銀行の量的緩和策が、問題国の経済の実体以上に株価の高騰を招くなど弊害を大きくさせているように見られます。

米国連銀、欧州中央銀行、そして日銀等の中央銀行によって現在実行されている量的緩和策に関連して、1981年のレーガン第1期政権の予算局長で、昨年の大統領選では共和党候補であったロム二―氏のプライベート・キャピタル・ビジネスの経験を雇用創出に貢献していないとして強く批判したDavid A. Stockman氏は今年4月に”The Great Deformation”という本を出版し、話題を呼んでいます。Stockman氏は本の中で、米国連銀、欧州中央銀行、そして日銀等の中央銀行によって実行されている量的緩和策による世界的な金融バブルの危険性を1929年の大恐慌以来取られてきた米国政府の政策と比較しながら詳細に分析しています。特にグリーンスパン前連銀総裁時代に米連銀が取ってきた長期の超低金利政策による住宅不動産バブルが崩壊によって引き起こした深刻な金融不況との比較は大変参考になるように思われます。

いずれにしましても、世界経済のグローバル化によるデフレ化現象が進む中で、米国は失業率を6.5%までの引き下げを、欧州連合は矛盾が多すぎる共通通貨ユーロの維持を、日本はインフレ率を2%まで引き上げという容易に達成できない目的を掲げて、中央銀行が量的緩和策を続ける結果、現在は実体経済以上の株価高騰と株式市場の不安定性という副作用を起こさせているということができると思います。

4.中国の中央銀行による金融引き締めと流動性不足問題
米国、欧州連合、そして日本の中銀による量的緩和策が与えている功罪が注目を浴びる中で、GDPで世界2位の中国では、金融制度の後進性ともいうべきシャドーバンキングの存在が大きな問題になっています。中国の金融市場では規制が及ばないシャドーバンキングを通じて、地方都市の不動産・インフラ投資プロジェクトを対象にしたリスクの高い富裕層向け金融小口化商品の販売が活発化、既に残高が130兆円(GDPの約16%)に達していると言われています。

中国経済の鈍化が進めば、こうした高利回り・高リスク商品の不良債権化を通じて信用バブルの崩壊といった事態を起こしかねず、中国の中央銀行である人民銀行は6月中旬にそうした商品を対象にしたプロジェクトへの融資を抑制する措置を取りました。この結果、6月20日にSHIBOR(中国銀行間短期資金市場レート)は2桁に跳ね上がり、クレジットクランチ(流動性不足)の現象を起こしましたが、人民銀行は25日時点では現在の資金需給は適切として、新たな流動性の導入を受け入れませんでした。しかし、これが逆に準大手・中堅銀行の資金繰りの悪化から、こうした銀行の株が大きく売られ、24日の上海の総合株価指数が5%以上も下落する事態になりました。25日もそうした警戒感から、株が大きく売られましたが、午後になって金融当局が必要な資金は供給するとの決定を下したことにより、株式市場は一時的に落ち着きを取り戻しました。

しかしながら、中国政府は金融制度の近代化のためには中国人民銀行を通じてこうしたシャドーバンキングを無くさせたいとの強い意志で臨んでいることは間違いなく、中国株式市場の不安定性は今後も続くものと見られます。
             (2013年7月1日:  村方 清)


Saturday, June 1, 2013

景気悪化が続く欧州市場と量的緩和策縮小で揺れる米国市場













1.5月の株式市場
5月の株式市場は、欧州は景気悪化が続いているものの、欧州中央銀行の金融緩和策もあり株価市場は安定性を保っていました。一方、米国は連銀の量的緩和策が株式市場の高値相場を助長しているのではないかとの懸念もあり、連銀内部でも量的緩和策縮小議論が目立ってきており、不安定な展開となりました。市場の主要な動きは以下の通りです。

5月1日:ADPによる非農業部門の雇用者数が前月比11万9千人で、市場予想の15万5千人を下回り、3日の雇用統計も下振れ観測が高まり、ダウ価格は139ドル安(0.94%減少)。
5月2日:欧州中央銀行の0.5%の利下げを受け、余剰資金が米国市場に向かうとの見方や米国の週間新規失業保険申請件数が予想に反して減少で、131ドル高(0.89%増加)。
5月3日:米政府発表の4月雇用増加数は16万5000人で、市場予想の15万人を上回り、雇用情勢の改善との見方から(失業率は7.6%から7.5%に低下)、142ドル高(0.96%増加)。
5月7日:日本や欧州の株式市場が上昇、運用リスク相場が加速、87ドル高(0.58%増加)。
5月9日:最高値更新による過熱感から利益確定売りが優勢で、23ドル安(0.15%減少)。
5月10日:世界的な金融緩和策での余剰資金の相場上昇期待から、36ドル高(0.24%増加)。
5月14日:米国中小企業の景況感を示す4月の指標が上昇、米国景気や株式相場の先行きに強気な見方が広がり、124ドル高(0.82%増加)。
5月15日:米国経済指標の悪化があったものの、米連銀の量的緩和策縮小が後退したとの見方から、60ドル高(0.40%増加)。
5月16日:4月住宅着工件数の低調から利益確定売りが優勢で、42ドル安(0.28%減少)。
5月17日:4月の米消費者態度指数が先月の76.4から83.7へ大幅に上昇(5年10ヶ月振りの水準)や世界的な金融緩和策による資金流入の期待から、121ドル高(0.80%増加)。
5月21日:米連銀幹部の発言で、量的緩和策継続の期待が高まり、52ドル高(0.34%増加)。
5月22日:連銀議長の午前中の議会証言とは異なり、前回FOMCの議事録で量的緩和策に伴う資産購入規模を6月にも縮小すべきとの複数委員発言から、80ドル安(0.52%減少)。
5月23日:日本株相場の急落を受けて米国市場でもリスク回避の動きが広がったが、4月の新規住宅販売件数が大幅に増加したり、週間新規失業保険申請件数が減少したことから,下げ幅は13ドル安(0.1%減少)に留まった。
5月28日;日欧株式相場の上昇に加え、3月の米住宅価格指数が10.9%上昇、5月の消費者信頼度指数が76.2%と高水準となったことで、106ドル高(0.69%増加)。
5月29日:米国の良好な経済指標が続く中で、長期金利が上昇、更に米連銀が量的緩和策の早期縮小に向かうとの懸念が強まり、107ドル安(0.69%減少)。
5月31日:5月の消費者態度指数の確定値が84.5%と上方修正、シカゴ購買部会景気指数(PMI)も58.7%と大幅に上昇、量的緩和策の縮小懸念が増加、209ドル安(1.36%減少)。

2.欧州経済
欧州連合(EU)の欧州委員会は5月3日、2013年のユーロ圏経済見通しが前回の2月時点から0.1ポイント下回るマイナス0.43%になることを発表しました。また、2014年についても2月時点から0.2ポイント下回るプラス1.2%に留まるとしました。景気後退の原因は個人消費の落ち込みで、特に失業率がユーロ全体では12%超で、特にスペインやギリシャでは25%を超えているのが大きく響いています。国別に見ると、ドイツは2013年にプラス0.4%を確保する見通しですが、フランスはマイナス0.1%、イタリアはマイナス1.3%、スペインはマイナス1.4%になる見通しです。これに伴い、財政再建は一層困難さを増しており、フランスが2013年と14年の財政赤字はGDP比で3.9%、4.2%に、スペインは6.5%、7.0%になることが予測されており、欧州連合のGDP比で3%以内という財政再建目標について、スペインだけでなく、フランスにいても2年間の延長が必要になるのではないかと見られています。

5月29日に開かれた欧州連合欧州委員会は、フランス、スペイン、スロベニア、ポーランドの4カ国は2年間、オランドとポルトガルは1年間、財政赤字削減の期限を目標時期よりも先送りすることを勧告、来月の財務相会議で議論される予定となっています。

なお、欧州中央銀行はユーロ圏の厳しい経済見通しを反映して、5月2日に政策金利を0.25%引き下げて過去最低の0.5%にすることを決定しました。その日に記者会見を行ったドラギ総裁は景気動向によっては追加的な利下げに踏み切る用意があることを示しました。

現在、欧州連合内で、ドイツとその他の国々との間で、緊縮財政を巡り意見対立が続いています。ドイツは9月の総選挙を前に、多国支援のための資金負担増加は認められず、メンバー国の財政規律が重要との従来の立場を表面的には変えていません。これに対して、従来ドイツと足並みを揃えていたフランスが自国の景気後退もあり、政権交代後、景気拡大のための政策も必要と主張を変えています。加えて、最近は、従来財政規律派であったオランダも自国の財政赤字の悪化から、より柔軟な政策が必要との立場を取り始めています。いずれにしても、現時点では、欧州連合メンバー国の厳しい国内事情を踏まえ、財政規律より経済成長や雇用増加を重視すべきとの意見が強まってきています。

しかしながら、こうした欧州連合の景気悪化という状況にありながら、5月の株価に関しては欧州中央銀行の金融緩和策もあり、上昇を続けており、実体経済との乖離が欧州でも起きていることになります。

3.米国財政赤字の改善
米国議会予算局(CBO)が5月14日に発表した2013会計年度(2012年10月から13年9月まで)の財政赤字は6420億ドルと2月時点の見通しから2030億ドルを下回る見込みであることを明らかにしました。2012年度の財政赤字は1兆ドルであったことからすると、2013年度は約4000億ドルが減少することになります。また、この結果、2013年度の財政赤字のGDP比率は4.0%となり、2012年度の7.0%に比べ、大幅に改善する見通しです。2月の予想より赤字幅が減少したのは税収などの歳入増と歳出抑制の両面で改善が進んでいることによるものです。歳入面では今年1月から実施されている給与減税の失効や年間所得40万ドル以上の富裕層増税が効果を上げていることによります。また、歳出面では今年3月に発動された今後10年間で1.2兆ドルという強制削減が大きく影響してきています。

なお、財政赤字の改善に伴い、今年5月に引き上げが必要と見られていた連邦政府の債務上限について、ルー財務長官は9月2日までは現行の政府借り入れ能力で維持できる見込みであることを明らかにしました。

4.連銀の量的緩和策縮小議論で揺れる米国市場
異質な金融政策とも言うべき連銀の量的緩和策が米国株式市場に大きな不安定要因となることを示す象徴的な出来事が5月22日に起きました。午前中に議会の上下両院合同委員会でのバーナンキ米連銀議長が行った証言では、米経済は緩やかなペースで成長しているものの、雇用情勢は全体的に弱く、量的緩和策の見直しには景気や雇用の改善が進んでいるかの検証が必要で、当面は緩和縮小の判断を先送りしました。これを好感したダウ平均価格は一時150ドル高となりました。その反面、長期金利も上昇、改善が目立っている住宅市場への懸念も増加しました

その後、合同委員会のブレイディ委員長から、量的緩和策が現在の雇用状況の改善に必ずしも効果的でないとの立場から、量的緩和策の継続の妥当性について質問を受けると、マクロの経済環境次第では、今後数回のFOMCで資産購入縮小を決めることもありうると従来のトーンを変える姿勢を見せました。また、午後に4月末の前回FOMCでの議事録が公表され、その会議で多数の参加者が6月にも現行の量的緩和策による資産購入ベース減速を支持したとの表現がありました。これを受けて市場に量的緩和策の縮小懸念が高まり、一時は120ドル以上の下落となりました。

また、5月31日には5月の消費者態度指数の確定値が84.5%と上方修正、シカゴ購買部会景気指数(PMI)も58.7%と大幅に上昇、投資家の量的緩和策の縮小懸念が増加、5月末ということもあり、209ドル安という大きな下落となりました。なお、10年物国債の利回りはこの日に2.13%となり、5月2日の1.63%に比べ大きな上昇となりました。

これらの出来事は米国の実体経済以上に、連銀の量的緩和策によって株価の高騰が維持されている米国の株式市場の不安定さがいかに大きいかを示すことになりました。

2008年9月にリーマンブラザーズの破綻によって生じた米国の深刻な金融不況を克服する手段の一つとして、バーナンキ連銀議長が2008年11月以降主導してきた大規模な量的緩和策は大量の資金供給を通じて住宅モーゲージ証券の価格崩壊を防いだり、大幅に下落した株価を高めることに貢献したことは間違いありません。しかしながら、量的緩和策が雇用回復に与える影響が限界的となり、一方で株価が米国企業の実績を遥かに超えて、今年3月5日にはダウ平均価格ベースで金融危機以前の最高値である2007年10月9日の水準まで達していることは、現時点では連銀の量的緩和策が株価高騰を助長し、投機性の強くなった株式市場に不安定性を高める結果になってしまいました。

いずれにしましても、本来株式市場は企業の業績によって民間の投資資金によって流れが決められていくことを前提としており、中央銀行の人為的な資金供給がそうした投資資金の流れに歪みを与え、株式市場の不安定性を高めている状況は望ましくなく、連銀が今後どのようにして量的緩和策を縮小させていくかが大きな課題になっているといえます。                 
              (2013年6月1日:  村方 清)

Wednesday, May 1, 2013

小康状態を保った欧州市場とバブル化が懸念される米国市場
















1.4月の株式市場
4月の株式市場は数多くの米国主要企業の4半期業績が発表されましたが、収益性は確保できたものの、景気停滞もあり、売上げ収入は市場予想を下回る企業が多いのが特徴でした。一方、欧州は経済の低迷が続いているものの、株式市場に悪影響は与えるような深刻な事態は起こりませんでした。市場の主要な動きは以下の通りです。

4月2日:欧州市場でドイツなど主要国の株価指数が上昇したことや2月の製造業受注額が前月比3%増加で、米景気の回復が順調との見方から、89ドル高(0.61%増加)。
4月3日:サンフランスコ連銀総裁による今夏にも量的緩和策の縮小発言に加え、ADPの全米雇用レポートで、非農業部門の雇用者数が158,000人で市場予想の200,000人を下回ったこと、更に北朝鮮による核攻撃命令の報道などから、112ドル安(0.76%減少)。
4月4日:日銀による大胆な金融緩和策が米国株式市場を押し上げるとの見方がある反面、5日に発表される雇用統計の様子待ちの動きもあり、56ドル高(0.38%増加)。
4月5日:米政府発表の3月雇用増加数は8万8000人で、市場予想の20万人を大きく下回り、雇用情勢の改善への懸念から(失業率は7.6%に減少)、41ドル安(0.26%減少)。
4月10日:欧州の株高に加え、日銀の金融緩和で資金が米国市場に流入するとの見方から、129ドル高(0.88%増加)。
4月11日:新規失業申請件数が市場予想を下回る346,000件であったことや世界の余剰資金が流入するとの期待感から、63ドル高(0.42%増加)。3日連続の最高値更新。
4月15日:全米住宅建設業協会の4月の住宅指数が前月比で2ポイント低下して42となったこと、ニューヨーク連銀の4月の製造業景況指数が前月比で市場予想の5.0に対して3.05となったこと、さらにボストンマラソンの爆破事件で、266ドル安(1.76%減少)。
4月16日:3月の住宅着工件数が年換算で前月比7%増の103万6000戸であったことや金相場が反発したことを受けて158ドル高(1.08%増加)。
4月17日:インテルやバンク・オブ・アメリカなどの4半期決算を受けて、米企業業績への警戒感が強まり、売りが優勢で、138ドル安(0.94%減少)。
4月18日:雇用や製造業の関連指標が悪化に加えて、モルガンスタンレーなどの決算が低調であったことから、81ドル安(0.56%減少)。
4月23日:米新築住宅販売件数が前月比1.5%増だったことやデュポンやトラベラーズ等の四半期決算が良好であったことから、152ドル高(1.05%増加)。
4月26日:政府発表の第1四半期GDPは市場予想に反し、前期比2.5%の増加に留まったが、7割を占める個人消費が3.2%の増加になったことから、12ドル高(0.08%増加)。
4月29日:3月の仮契約住宅販売指数が前月比1.5%増加したことやイタリアの新政権発足の見通しから、106ドル高(0.72%増加)。

2.小康状態を保った欧州市場
キプロス問題で揺れた3月に比べ、4月の欧州市場は政治的混迷が続いたイタリア、緊縮措置に対する国民の反発が強まっているポルトガル等を除けば、比較的に安定していました。

2月24日と25日の総選挙以来、連立政権樹立が難航しているイタリアでは任期切れとなっていた大統領に現職のナポリターノ大統領が4月22日に再選されました。大統領は就任演説の中で、主要政党による新政権の早期樹立を求めると共に、欧州連合との間に合意した緊縮措置を守る必要があることを強調しました。市場はこれを受けて、イタリアの10年物国債は2010年11月以来の低水準となる4.06%まで低下しました。そして、24日には首相に中道左派連合のレッタ前民主党副書記長を指名、組閣を要請しました。レッタ氏は民主党に属するものの、以前中道右派の旧キリスト教民主党に属していたこともあり、中道右派・自由国民との大連立内閣を組閣、4月29日に下院、30日に上院で信任されました。この結果、総選挙から2ヶ月ぶりに新政権が発足することになりました。当初、レッタ大連立政権は緊縮策の緩和を求める中道右派勢力も参加したため、市場では新政権が緊縮策を放棄するのではないかとの懸念が持たれました。しかし、30日午後にドイツを訪問し、メルケル首相との会談では財政再建の公約を守ることを宣言すると同時に、成長促進にも取り組む姿勢を示し、メルケル首相も一定の理解を示したこことが伝えられています。

一方、ポルトガルについては、欧州連合がポルトガル政府の受け入れ可能な歳出削減や構造改革措置を提案するとの期待もあり、ポルトガルの10年物国債の利回りは今年1月末以来の6%を割り込みました。

また、経済情勢の悪化に歯止めがかからないスペインでは4月26日、景気低迷から脱するための経済計画を発表、GDPに対する財政赤字比を3%にする期限を2014年から2016年に延ばす一方、若者の企業や中小企業向けの規制緩和策を提案しました。欧州委員会は分析を進めた上で、5月29日に判断することになりました。

いずれにしましても、南欧諸国の経済困難は依然続いている状況ですが、新たな経済問題が米国の株式市場に大きな悪影響を与えることはありませんでした。

3.大統領の2014会計年度の予算教書
オバマ大統領は4月10日、財政赤字の削減と将来的成長の確保の両方を実現するものとして、3兆7700億ドル規模の2014会計年度(2013年10月から2014年9月)の予算教書を議会に提出しました。今回の予算教書で、2014年度の財政赤字は2013年度の9730億ドルから7440億ドルに減少し、GDPに対する比率は4.4%に低下する見通しとなっています。また、3月1日に始まった強制的歳出削減に代えて、今後10年間で財政赤字を1兆8000億ドル追加削減することを提案しました。歳入面では年収100万ドル以上の富裕層に最低30%の税率を課税したり(バフェット・ルールの適用)、年間25万ドル以上の世帯に税額控除の上限を設定したり、更にプライベートエクィティ会社の幹部が受取るキャリード・インタレストの税額控除廃止などで、5800億ドルの税収を得ることができるとしています。一方、歳出面では物価上昇の算定方式を変更することで、社会保障費の伸びを抑えたり、医療保険制度の改革を通じて4000億ドルの削減を目指すとしています。

今回の予算案について、オバマ政権側は歳入増と歳出削減のバランスがとれた手法と訴えていますが、共和党のベイナー下院議長は歳出削減を増税と抱き合わせる必要はなく、1兆8000億ドルの削減の内、1兆2000億ドルは強制削減によって実現されるので、実質的な削減は6000億ドルに過ぎないと批判しています。いずれにしましても、3月1日より強制削減が実施され、政府職員の解雇問題や景気への悪影響が出ているだけに、議会は今回の予算案を踏まえ、2014年度会計年度の予算案成立に向けて、早急に動き出すことが求められています。

4.日米の金融緩和策が助長する株式市場のバブル化
3月末以降、米国株が市場最高値を更新し続け、米国では連銀の量的緩和策について縮小や廃止という出口論が盛んになっています。 4月3日にはサンフランシスコ連銀のウイリアムズ総裁が月ベースの新規雇用者数が20万人を越える状態が今後数ヶ月も続くのであれば、米国連銀の資産購入措置は今夏から次第に縮小し、年末までに終了すべきと見解を明らかにしました。こうした中で、日本の中央銀行である日銀の黒田新総裁が4月4日に発表した大規模な金融緩和措置は米国市場でも様々な見方を呼ぶことになりました。今回の日銀の金融緩和は質的にも量的にも、従来の政策とは異なっています。第1に金融政策の目標を金利からお金の量(マネタリーベース)に変えると同時に、資産購入による資金供給量を2012年末の138兆円から2年間で約2倍の270兆円まで増加させると明言しました。加えて、長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買い入れの残存期間を2倍以上に延長することを決定しました。こうした大規模な量的緩和政策は市場に大きな影響を与え、円が97円に低下したこともあり、株価も1万3000円台を回復しました。

日銀による今回の量的緩和策は米国の連銀が過去4年間行なってきた量的緩和策との比較で見れば何ら新しい措置はなく、違いを上げるとすれば日米の経済規模の比較からして、日銀の量的緩和策は大きすぎること、2年間は継続すると期間を明示したことにあります。これは日本での過去の経験から、規模の大きさと長期の期間を示し、市場への驚きを与える効果を狙ったものと見られます。その意味で、現時点で、それなりのインパクトを与えたということができます。

しかし、その一方で、債券市場では長期の国債金利が大幅に低下し、買い手が出にくくなるなどの悪影響を与えることになりました。また、翌週の米国市場では円安と金利安になった日本の債券市場から、外国の機関投資家のみならず、日本の機関投資家も海外シフトを強めるなどの期待から、米国の債券市場でも金利が低下、米国の株式市場が活況を呈するなどの効果をもたらしました。また、市場では日本が導入した長期間の大胆な量的緩和策により、米国の連銀も簡単に量的緩和策を変更できなくなったとの過度な期待感を招く結果になってしまいました。但し、ダラス連銀のフィッシャー総裁は4月4日に日銀が日本で導入した緩和策の如何にかかわらず、米国の連銀は量的緩和策の限界を認識した上で、あるべき方向へ持っていくことが必要との見解を述べました。

現在、米国で連銀の量的緩和策の継続について議論が分かれてきているように、量的緩和策の実体経済への影響は相当低下してきているのが実情です。グローバル化の影響による先進国経済の低迷で、米国内での実需が少ない時に、マネーサプライを増加させても、経済成長や雇用に与える影響は限定的で、株式市場だけが中央銀行による資金供給によって株価の高値が形成されているのは市場原則に基づく株式市場の動きを歪めているように見られます(短期間で株価が急騰した日本の株式市場も同様)。4月に米国企業の第1四半期の決算が発表されましたが、コスト削減効果による収益率の向上はあったものの、売り上げは市場予想を下回るところ企業が多く、5-6%の株価下落調整が必要との見方が強まる要因となっています。更に、もし中央銀行の行過ぎた金融緩和策によって、リスク投資商品とされる株式市場に安定利回りを求める一般の銀行預金や年金基金の資金が大量に流れるようなことがあれば株式市場は投機性が強まり、過去何回も経験してきたように、暴落の危険性も高まることになります(1980年代後半の日銀による低金利政策がもたらした1990年末のバブル経済の崩壊及び2000年代前半にグリーンスパン連銀議長が主導した低金利政策がもたらした2007年9月以降の住宅不動産バブル破綻による深刻な金融不況)。

本来あるべきは、政府と議会が政治的な決断により根本的な構造改革を実行して、財政収支の健全化に向かって道筋をつけることであり、中央銀行の役割は伝統的な金融政策で株式や債券市場を安定化させていくことが求められています。その意味で、中央銀行による大規模な量的緩和策が通貨価値の下落や株式市場のバブル化を助長させたり、財政機能の一部を担うようなことは国全体の金融と財政のバランスの不健全性を導いているように見られます。その結果、後で生じるバブル崩壊という大きな副作用を避けるためにも、現時点から縮小、やがて廃止に向かうことが必要になってきているように思われます。
             (2013年5月1日:  村方 清)