Monday, March 1, 2021

長期金利の上昇に揺れる米国の株式市場









1.2月の株式市場

2月の株式市場はバイデン政権による追加経済対策の期待もあり、2月の終わりの週まで株高基調が続きましたが、2月22日と25日に米長期金利が急上昇したことから、両日とも高い株価収益率の銘柄を中心に売りが広がる展開になりました。主要な動きは以下の通りでした。

2月1日:前週まで市場の混乱を招いていた個人の投機的な売買が弱まり、買いが優勢であったことやISMの米製造業景況指数が58.7と50を上回ったことで、ダウは229ドル高(0.76%増加)

2月2日:ゲームストップなど個人投資家の投機的な買いで高騰していた銘柄が大幅に続落、相場が安定化すると同時に、追加の経済対策への期待も高く、476ドル高(1.57%増加)。

2月3日:バイデン政権が財政調整法を活用して単独で追加経済対策を成立させる手続きを進めており、米長期金利が上昇し、金融株が買われ、36ドル高(0.12%増加)。

2月4日:新規失業保険申請件数は779千人で市場予想の830千人を下回ったことや下院が2021会計年度の予算議案を可決したことで、上院で単独で追加経済対策を成立する道が開かれたことで金融などの景気敏感株が上昇、332ドル高(1.08%増加)。

2月5日:5日発表の1月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は49,000人で市場予想に届かなかったが、米上下両院が予算決議案を可決したことで、バイデン政権の追加経済政策が成立に向けて前進したとの見方で、92ドル高(0.30%増加)。

2月8日:米国の追加経済対策が早期に成立し、景気回復を後押しするとの期待から買いが優勢で、景気敏感株を中心に上昇し、238ドル高(0.76%増加)。

2月9日:前日に過去最高値を更新したことから、景気敏感株に利益確定売りが出たが、一方で、民主党が単独で大型の経済対策を成立させるとの観測で、10ドル安(0.13%減少)。

2月10日:インフレ圧力の弱さから。金融緩和の長期化が予想されることや米企業決算の好調さから、62ドル高(0.20%増加)。

2月11日:前日に過去最高値を更新しており、年初から上昇が目立っていた景気敏感株の一角に利益確定売りが出て、7ドル安(0.02%減少)。

2月12日:新型コロナウイルスのワクチン普及や米政府による追加経済対策の成立で、景気回復が早まるとの期待から買いが優勢で、金融や素材等の景気敏感株が上昇、28ドル高(0.09%増加)。

2月16日:追加経済政策の早期成立や新型コロナウイルスのワクチン普及への期待から買いが優勢であったが、長期金利の上昇を受けて主力ハイテク株の一角が売られ、64ドル高(0.20%増加)。

2月17日:FRBによる金融緩和策が長期化するとの観測が押し上げ、ベライゾンや’シェブロンなどの出遅れた銘柄が上昇し、90ドル高(0.29%増加)。
2月18日:週間の米失業保険申請件数は861千件で市場予想の773千件を上回り、雇用回復の勢いが鈍いことや長期金利の先高観測で、ハイテク株が売られ、120ドル高(0.68%減少)。

2月19日:米政府の追加経済対策や新型コロナウイルスワクチンの普及が景気回復の後押しするとの期待の中で、長期金利が上昇し、1ドル高(0.00%)。

2月22日:米長期金利の上昇で売りが先行したが、米国の追加経済対策や経済活動正常化期待で、27ドル高(0.09%増加)。ナスダックは341ドル下落(2.46%減少)。

2月23日:米長期金利の上昇を受けてハイテク株を中心に売りが先行したが、パウエル連銀議長が午前の議会証言で金融緩和の長期化を示唆したことで、上げに転じ、16ドル高(0.05%増加)。

2月24日:J&Jの開発するコロナウクチンがFDAの承認を受け経済が正常化するとの期待から、金融や石油株などの景気敏感株を中心に買いが広がり、425ドル高(1.35%増加)。

2月25日:米長期金利が一時1.61%と昨年2月以来の水準に上昇し、相対的に割高感が意識されやすい株価収益率(PER)の高い銘柄が売られ、投資家心理が悪化し、景気敏感株にも売りが広がり、560ドル安(1.75%減少)。

2月26日:投資家の慎重姿勢が強まり、持ち高調整や利益確定目的の売りが優勢で、金融や日用品などの景気敏感株が売られ、470ドル安(1.50%減少)。

  
2.米国の雇用状況

米労働省が2月5日に発表した1月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比49,000人の増加で、市場予想の100,000人の増加を大きく下回りました。11月の雇用者数の確定値は264,000人で72,000 人の減少、12月の改定値はマイナス227,000人で、87,000人の増加となりました。なお、12月の失業率は6.3%で、前月より0.4%下がりました。労働参加率は61.4%で、前月より0.1%上昇しました。12月の時間当たり賃金上昇率は前月比で6セント増加しました。部門別では専門・ビジネスサービス業が97,000人の増加したものの、小売業が135,000人の減少、観光・ホテル業が61,000人の減少となりました。

3.バイデン政権の追加経済対策と長期金利上昇の懸念

バイデン政権が追加経済対策として取りまとめる法案の総額が1.9兆ドル近くになるとの見通しが高まるにつれ、一部のエコノミストにはインフレ圧力の懸念を示すものも出てきています。代表的なエコノミストはサマーズ元財務長官で、米国経済が成長路線に回帰しつつある中で、更なる活性化のために巨額の財政出動を行えば、この30年で経験しなかったようなインフレ圧力を形成しかねないと警告しました。この意見は議会での共和党の主張にも共通しており、財政赤字拡大の懸念に加え、経済が底離れする段階では、財政出動は重点項目に絞って行うことで十分な景気浮揚効果が期待できるとしています。

この見方に反論したのがクルーグマン博士で、新型コロナウイルスによって破壊された経済の需給ギャップはあまりに大きく、バイデン政権による追加経済対策の規模への懸念は当たらないとしています。また、イエレン新財務長官も就任以来、何百万人もの失業者が溢れている現状への危機感から、財政政策で大きく動く必要性を唱え、連邦議会に速やかな行動を呼びかけています。

こうした意見の違いに加えて、最近の金融市場で気になるのはの長期金利が急上昇していることで、2月25日には10年物米国債利回りは上昇の目安とされた1.25%を一気に超え、1.61%まで上昇しました(その日のダウは560ドル安)。また、30年物米国債利回りも上昇を続け、FRBのインフレターゲットとされる2%を超え、2.19%まで上昇しました。その影響は株式市場にも影響を与え、株価収益率(PER)が高すぎるとされるハイテク株を中心に市場での売り圧力が強まっています。

一方、連銀のパウエル議長は2月23日の上院銀行委員会での公聴会で、最近の長期金利上昇は経済再開や経済成長への市場の期待の表れであるとして、当面は静観する姿勢を示しました。また、一部のエコノミストによるインフレ懸念についても、2020年に急低下した反動で今年は上振れする可能性があるものの、長続きするようなものではないとの1月末のFOMCでの結論を強調しました(下記の議事録参照)。


4.FOMCの長期金融緩和策維持の背景

FRBは2月17日に、1月26-27日に行われたFOMCの会議議事要旨を公表しました。それによると、執行部が2021年4-6月期にインフレ率が2%を超えるとの予測を提示、理由として新型コロナ危機が深刻になった2020年4月にインフレ率は大幅に鈍化しており、2021年にはその反動が予想されるとしました。しかしながら、同時に、インフレ率は2021年末には再び2%を下回って終わるとの見通しを示しました。パウエル連銀議長などの会議参加者も一時的なインフレと、底流としての物価の動向を区別することが重要として、物価の上昇は長続きしないと結論づけました。そして、FRBは一定期間、緩やかにインフレ率が2%を上回ることを当面の目標とするが、その時期は2023年以降と分析しています。このために、金融政策面でも、全ての会議参加者が現行の低金利政策と資産購入ベースの維持を支持したとしています。FRBが金融緩和縮小論を警戒するのは長期金利の上昇を招くことを警戒していることがあり、金利の急上昇は景気回復に水を差さないように、慎重に出口論に対応していくものと見られます。

                   (2021年3月1日: 村方 清)

 

 

 

 

Monday, February 1, 2021

株価高騰に見る投機的取引拡大と警戒的な動き







1.1月の株式市場

1月の株式市場はバイデン政権への政策期待もあり株価上昇傾向が続きましたが、その一方、個人投資家の投機的な取引が引き起こしている面も指摘され、市場の警戒感から月末に大きく下落することになりました。主要な動きは以下の通りでした。

1月4日:5日のジョージア州の上院決戦投票を前に、持ち高調整や利益確定売りが優勢だったこと及び新型コロナウイルス感染拡大から、383ドル安(1.25%減少)

1月5日:5日発表の米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数が60.7と前月より改善したことや新型コロナウイルスワクチンの普及を受け、景気敏感株を中心に買いが優勢で、168ドル高(0.56%増加)。

1月6日:ジョージア州の米上院決選投票で民主党候補が2議席を獲得し、上下両院の過半数を制するとの見方が強まり、経済拡大策が見込まれることで、438ドル高(1.44%増加)。

1月7日:民主党が大統領と上下両院の過半数を取ることが決定し、追加の経済政策の期待と昨年12月のISM非製造業景況感指数が57.2で前月から上昇したことで、212ドル高(0.69%増加)。

1月8日:朝方発表の12月の雇用統計で雇用者数が前月比14万人減となったが、民主党政権が経済支援策実施する可能性が高く、業績期待で主要ハイテク株が買われ、57ドル高(0.18%増加)。

1月11日:主要株指数は前週末まで連日で最高値を更新しており、主力ハイテク株を中心に利益確定売りが優勢で、89ドル安(0.29%減少)。

1月12日:バイデン政権による経済対策への期待などから石油や金融株などの景気敏感株が買われ、60ドル高(0.19%増加)。

1月13日:現在の株価は過去最高値にあり、上昇が目立っていた景気循環株に利益確定売りが出て、8ドル安(0.03%減少)。

1月14日:バイデン次期政権が14日に発表する追加経済対策への期待から買いが先行したが、取引終了にかけて、発表内容を見極めたいムードが広がり、69ドル(0.22%減少)。

1月15日:バイデン次期政権が14日夜に1.9兆ドル規模の追加経済対策案を発表したが、反応は乏しく、12月の小売売上高が前月比0.7%減と予想を下回り、177ドル安(0.57%減少)。

1月19日:バイデン次期政権が掲げる大型の経済政策やワクチン普及への期待から、景気敏感株やハイエク株が買われ、116ドル高(0.38%増加)。

1月20日:バイデン氏が米国大統領に就任し、大型の経済対策の成立や新型コロナウイルスワクチンの普及が進むとの観測から、258ドル高(0.83%増加)。

1月21日:前日に過去最高値を更新したことで利益確定売りが取引終了にかけて強まり、12ドル安(0.04%減少)。

1月22日:バイデン政権が提案する1.9兆ドル規模の経済政策に反対する議員が多くなっているとの報道が伝えられ、早期成立の不透明感が強まり、179ドル安(0.57%減少)。

1月25日:米製薬大手のメルクがコロナワクチンの開発を中止すると発表、ワクチン普及に不透明感が漂い、経済正常化の遅れへの懸念から、37ドル安(0.12%減少)。

1月26日:新型コロナウイルスの新規感染者の急増で世界的に景気回復が鈍るとの見方が広がり、売りが優勢で、23ドル安(0.07%減少)。

1月27日:FOMCが政策金利と量的緩和緩和の現状維持を決めたものの、業績悪化のボーイングのみならず、主力ハイテクや半導体株に売りが広がり、634ドル安(2.05%減少)。今年最大の下げ。
1月28日:前日に今年最大の下げとなった反動と個人投資家の過度な投機的な売買を制限する動きが広がり、300ドル高(0.99%増加)。

1月29日:新興ネット証券のロビンフッドが価格変動の大きい銘柄に対する取引制限を緩和、個人投資家の投機的な取引への警戒感から幅広い銘柄に売りが出て、621ドル安(2.03%減少)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が1月8日に発表した12月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比140,000人の減少で、市場予想の100,000人の増加を大きく下回りました。10月の雇用者数の確定値は654,000人で44,000 人の増加、11月の改定値は336,000人で、91,000人の増加となりました。なお、11月の失業率は6.7%で、前月と同水準でした。労働参加率は61.5%で、前月同水準でした。12月の時間当たり賃金上昇率は前月比で23セント増加しました。部門別では専門・ビジネスサービス業が161,000人の増加、小売業が121,000人の増加、建設業が51,000人の増加となったものの、観光・ホテル業が498,000人の減少、民間教育業が63,000人の減少となりました。


3.バイデン政権発足

民主党のバイデン氏は1月20日に第46代大統領に就任しました。バイデン政権は優先的な政策課題をコロナ対策、経済再生、気候変動、人種平等、米国の世界的な地位回復などとしており、これらの分野で就任初日から多くの大統領令に署名を行い、トランプ政権からの政策転換を推進しています。初日に大統領令が署名されたのは、世界保健機関からの脱退の撤回、パリ協定の復帰、イスラム諸国を対象の入獄制限の緩和、国境の壁建設の中止などが含まれます。

バイデン政権は1月21日に「新型コロナ対応とパンデミック対策のための国家戦略を発表し、政権発足から100日で1億回分のワクチン接種、公共機関でのマスク着用化や検査拡大による感染抑制、学校再開などの政策目標を掲げました。

また、経済再生には1月14日に発表した米国救済計画には、家計向けの1人当たり1,400ドルの直接給付、州・地方政府に対する財政支援、失業覇権の拡充などを織り込みました。

バイデン政権は上下両院で与党民主党が過半数を占める安定政権ですが、両院とも与野党の議席数が拮抗しているため、政権運営では野党共和党のみではなく、与党民主党の左派にも配慮する必要があり、議会での調整手腕が評価されたバイデン大統領の手腕が問われることになります。


4.FOMCの金利据え置き

FRBは1月26-27日にFOMC会合を開き、金利据え置きと米国債を制限なく購入する量的緩和策などの維持を決めました。会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練のときに米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定化の目標を推進するためにあらゆる手段を使うことを約束する。新型コロナウイルスの流行は米国と世界中に甚大な人的・経済的困難をもたらしている。経済活動と雇用はここ数カ月は緩やかになっており、パンデミックによる打撃がもっとも大きかった産業に弱さが集中している。弱い需要と先の石油価格の下落が、消費者物価の上昇率を押し下げている。経済および米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般的に依然として緩和的だ。

景気の動向は、ワクチン接種の進捗も含め、ウイルスの拡大状況に大きく左右される。現在続いている公衆衛生の危機は、引き続き、経済活動、雇用、インフレにとって大きな重荷となり、経済見通しにとって深刻なリスクとなる。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ率を目指す。そうすることで、インフレが長期的に平均2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。

これらの成果が出るまで金融政策の緩和的なスタンスを維持することを予測している。

FOMCは(政策金利である)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0~0.25%に据え置くことを決定した。労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致する水準に達し、インフレが2%に上昇、当面2%をやや上回るところで軌道にのるまでこの目標レンジの維持が適切と予測する。

雇用最大化と物価安定の目標に向けてさらなる大きな前進を遂げるまで、FRBは国債保有額を少なくとも月800億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル引く続き増やす。こうした資産購入は円滑な市場機能を維持し、緩和的な金融情勢を促進し、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策のスタンスを調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成を妨げるリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力・

インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

決定はパウエル議長及びウィリアムズ副議長を含む11人のメンバー全員の賛成による。

今回の決定は、会合後の記者会見でパウエル議長が指摘したように、新型コロナウイルスの拡大で、景気回復のペースを緩やかになっているとの認識で、現状のゼロ金利政策を維持すると同時に、米国債などを大量に買い入れる量的緩和の指針を強化して、米国債などの購入を完全雇用と物価安定に近づくまで継続すると表明したことにあります。市場の反応は前向きであったものの、ボーイングやAMDなどが予想以上に悪化した4半期決算を発表、それが主力ハイテク株にも影響、634ドル安で最大の下げ幅となりました。 

  

 (2021年2月1日: 村方 清)

  

Friday, January 1, 2021

コロナ感染者急増下での期待先行相場







1.12月の株式市場

12月の株式市場は11月末の感謝祭休暇後のコロナウイルス感染者急増といった深刻な状況にもかかわらず、2つのワクチンの緊急使用、英国とEUの新自由貿易協定の合意、そして米国での追加経済対策の成立などで、市場が好感、期待先行による上昇相場の継続となりました。主要な動きは以下の通りでした。

12月1日:新型コロナウイルスのワクチン実用化への期待から、景気敏感株を中心に買いが入り、ダウ平均は185ドル高(0.63%増加)。

12月2日:英国政府が米ファイザーの新型コロナウイルスワクチンを承認し、ワクチンの実用化が世界経済の正常化を後押しするとの見方から、60ドル高(0.20%増加)。

12月3日:追加の経済対策の早期成立の期待から買いが優勢となったが、午後にかけて、ファイザーなどの新型コロナウイルスのワクチンが計画した規模では供給できないことが伝わり、上げ幅を縮小し、86ドル高(0.29%増加)。

12月4日:朝方発表の11月の米雇用統計が245,000人で、市場予想の450,000人を大きく下回り、追加経済対策が成立するとの期待が高まり、景気敏感株を中心に買いが広がり、249ドル高(0.83%増加)。

12月7日:全米で新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、経済活動の制限が予想以上に大きいとの見方から、143ドル安(0.49%減少)。

12月8日:英国で新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、経済活動の正常化が進みやすくなるとの期待から、買いが優勢で、104ドル高(0.35%増加)。

12月9日:追加経済対策の与野党協議に進展が見られないことや英国でファイザーのワクチンへの副作用の懸念が出て、投資家心理が悪化、105ドル安(0.35%減少)。

12月10日:追加経済対策を巡る与野党協議が難航していること、週間の新規失業者保険申請件数も市場予想を上回る85.3万件で、景気敏感株を中心に売りが優勢で、70ドル安(0.23%減少)。

12月11日:米国で新型コロナウイルスのモデルナのワクチンが近く承認されるとの見方がある反面、追加の経済対策を巡る与野党協議が進展せず、47ドル高(0.16%増加)。

12月14日:米国の新型コロナ・ウイルスの感染者や死者数が高水準で続いており、ロックダウンが再度導入されるとの観測から、投資家心理が冷えて、185ドル安(0.62%減少)。

12月15日:追加経済対策を巡る米与野党協議が進展するとの観測や新型コロナウイルスのワクチン普及への期待から、景気敏感株を中心に買いが広がり、338ドル高(1.13%増加)。

12月16日:11月の米小売売上高が前月比1.1%減と市場予想の0.3%以上となり、連銀による量的緩和長期化の期待にも拘らす、年末商戦は想定より悪いと受け取られ、45ドル安(0.15%減少)。

12月17日:追加の米経済対策の早期成立期待と米連銀の金融緩和の長期化で、買いが強まり、149ドル高(0.49%増加)。

12月18日:短期的な相場の過熱感を警戒した売りが優勢であったことや追加の経済対策を巡る与野党協議の不透明感も加わり、124ドル安(0.41%減少)。

12月21日:新型コロナウイルスの変異種への懸念から朝方に一時400ドル超下落したが、午後には米政府の追加経済対策への期待から買いが優勢になり、37ドル高(0.12%増加)。

12月22日:米議会が9000億ドル規模の追加経済対策を可決したが、目先の材料が出尽くしたとの見方や英国の新型コロナウイルスの変異種の拡大で、201ドル安(0.67%減少)。

12月23日:米ファイザーが来年7月までに1億回分の新型コロナウイルスワクチンを追加供給する契約を締結したことを受けて、ワクチン普及への期待が高まり、114ドル高(0.38%増加)。

12月24日:英国とEUは24日新たな自由貿易協定(FTA)で合意、英国のEU離脱を巡る不透明感が後退、投資家心理が改善し、70ドル高(0.23%増加)。

12月28日:米政府による追加の経済対策ガトランプ大統領の署名で27日に成立、市場が好感し、アップルなど主力ハイテク株が軒並み上昇し、204ドル高(0.68%増加)。

12月29日:前日に過去最高値を更新したこともあり、短期的な利益確定売りが優勢で、現金給付を1人600ドルから2000ドルへ増額する法案の期待が後退し、68ドル安(0.22%減少)。

12月30日:英製薬のアストラゼネガとオックスフォード大が開発した新型コロナワクチンが承認され、景気回復を後押しするとの見方から、74ドル高(0.24%増加)。

12月31日:朝方は売りが先行したが、新型コロナウイルスのワクチン普及で来年は景気が回復に向かうとの期待から、197ドル高(0.65%増加)。


2.米国の雇用状況

米労働省が12月4日発表した11月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比245,000人の増加で、市場予想の450,000人を大きく下回りました。9月の雇用者数の確定値は711,000人で39,000 人の増加、10月の改定値は610,000人で、28,000人の減少となりました。なお、11月の失業率は6.7%で、前月と比べて0.2%改善しました。労働参加率は61.5%で、前月から0.2%減少しました。11月の時間当たり賃金上昇率は前月比で9セント増加しました。部門別では運輸・倉庫業が145,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が60,000人の増加、ヘルスケア関連業が46,000人の増加、製造業が27,000人の増加となりました。


3.FOMCの金利据え置き 

FRBは12月15-16日にFOMC会合を開き、金利据え置きと米国債を制限なく購入する量的緩和策などの維持を決めました。会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練のときに米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定化の目標を推進するためにあらゆる手段を使うことを約束する。新型コロナウイルスの流行は米国と世界中に甚大な人的・経済的困難をもたらしている。経済活動と雇用はここ数カ月は引き続き回復しているが、依然として今年初めの水準を大きく下回っている。弱い需要と先の石油価格の下落が、消費者物価の上昇率を押し下げている。経済および米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般的に、依然として緩和的だ。

景気の動向は、ウイルスの拡大状況に大きく左右される。現在続いている公衆衛生の危機は、短期的には引き続き、経済活動、雇用、インフレにとって大きな重荷となり、中期的には経済見通しにとって深刻なリスクとなる。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ率を目指す。そうすることで、インフレが長期的に平均2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。

これらの成果が出るまで金融政策の緩和的なスタンスを維持することを予測している。

FOMCは(政策金利である)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0~0.25%に据え置くことを決定した。労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致する水準に達し、インフレが2%に上昇、当面2%をやや上回るところで軌道にのるまでこの目標レンジの維持が適切と予測する。

雇用最大化と物価安定の目標に向けてさらなる大きな前進を遂げるまで、FRBは国債保有額を少なくとも月800億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル引く続き増やす。こうした資産購入は円滑な市場機能を維持し、緩和的な金融情勢を促進し、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策のスタンスを調整する今後の時期と規模を判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成を妨げるリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力・インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

決定はパウエル議長及びウィリアムズ副議長を含む10人のメンバー全員る。

今回の決定は、現状のゼロ金利政策を維持すると同時に、米国債などを大量に買い入れる量的緩和の指針を強化して、米国債などの購入を完全雇用と物価安定に近づくまで継続すると表明したことにあります。新型コロナウイルスの感染再拡大がで雇用が悪化しており、長期の金融緩和を宣言して景気回復期待をつなぎ留めるようにしたのが特徴です。市場の反応は前向きであったものの、米小売売上高が市場予想を大きく下回ったことで、米景気の下振れリスクが懸念され、45ドル安となりました。


4.英国とEUが通商協定で合意 

12月24日に英国とEUは新たな自由貿易協定(FTA)を巡る交渉で合意しました。今回の合意により、条件を満たす英EU間の全品目・全数量の貿易で関税ゼロが維持される見通しとなりました。但し、FTAでは優遇関税の対象となる品目の原産地が限定されるため、英・EU以外の国からの原材料の比率が大きい製品は21年1月1日以降に関税がかかる可能性があります。

また、英EU間での人の移動や移住も厳しくなります。英国側は1月1日以降、これまで自由に移住を受け入れていたEU市民を他の外国人と同様に扱うことになります。これにより、英国は年収や英語力などに基づいたポイントで移民希望者を評価する仕組みを導入し、一定基準以下の低技能の労働者を受け入れないことになると見られています。

今回、英国の主権の回復を目指す英国側といいとこ取りを認めないEUの主張が真正面からぶつかり、交渉が難航しました。特に、英国が英国が政府補助金など産業政策でEUルールに従う公正な競争原理の確保や英海峡でのEU漁船の扱いなどで対立が続いていました。

こうした状況の中で、新型コロナの感染拡大が双方に妥協を促す決定打となりました、特に英国は12月2日に新型コロナの変異種の感染が拡大し、ロンドンの都市封鎖を迫られ、かつドイツやフランスが英国との往来を制限したことで人や物資の移動に混乱が生じていたことが大きな要因となりました。

これにより、英EU離脱の移行期間である年内中に双方が議会での承認や暫定適用の手続きを済ませれば、懸念されていた年明けからの経済活動の混乱は回避されることになりました。


5.トランプ大統領、追加経済対策法案と2021会計年度歳出法案に署名 

トランプ大統領は12月27日に米議会が可決した9000億ドルの新型コロナウイルス対策法案と1兆4000億ドル規模の2021会計年度歳出法案に署名、両案が成立しました。これにより、現在暫定予算で動いている連邦政府の一部機関が29日から閉鎖される事態は回避されることになりました。

トランプ大統領は署名に際し、個人向け給付金の額を600ドルから2000ドルに置き換える法案を採決することを議会に求め、下院は民主党が主導して28日に2000億ドルの増額法案を採択しました。しかしながら、上院では2000億ドルへの引き上げに反対の共和党が多数派で両院を通過する可能性は低いと見られます。        

       (2021年1月1日: 村方 清)