Wednesday, September 1, 2021

量的緩和縮小の年内開始を意識し始めた市場








1.8月の株式市場

8月の株式市場は新型コロナウイルス感染拡大の懸念が続いている中で、FRBによる量的緩和縮小の年内開始も意識され始めて、後半に市場が不安定な動きが目立ちました。主要な動きは以下の通りでした。

8月2日:米長期金利の低下を受けて景気減速の懸念が高まり、キャタピラーやアメリカンエキスプレスなど景気敏感株を中心に売りが広がり、97ドル安(0.28%減少)。

8月3日:米長期金利の低下を受けて、資本財や金融などの景気敏感株を中心に買いが優勢となり、278ドル高(0.80%増加)。

8月4日:ADPが発表した7月の全米雇用レポートで、非農業部門の雇用者数が前月比33万人増と市場予想を大幅に下回り、雇用回復の遅れが警戒されて投資家に景気減速を意識させ、キャタピラーやスリーエムなど景気敏感株が売られ、323ドル安(0.92%減少)。

8月5日:新型コロナの感染拡大は依然警戒されているが、入院患者数や死亡者は少なく、経済活動が正常化する流れは続くとの見方が改めて広がり、景気敏感株などを中心に幅広く買い直され、272ドル高(0.78%増加)。

8月6日:6日発表の7月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比943,000人増で市場予想の850,000人を上回わり、失業率も5.4%へ低下、景気回復の期待で、144ドル高(0.41%増加)。

8月9日:中国など世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、景気の不透明感が増して売りが優勢で、107ドル安(0.30%減少)。

8月10日:1兆ドル規模の超党派のインフラ投資法案が米議会上院で可決し、景気回復を支えるとの期待が浮上、素材や資本財などの景気敏感株が買われ、163ドル高(0.46%増加)。

8月11日:11日朝発表の7月の米消費者物価指数が前月比0.3%と6月の0.9%上昇を大きく低下、これを受けて米長期金利も低下、FRBのテーパリングの動きが後退、投資家の安心感につながり、220ドル高(0.62%増加)。

8月12日:新型コロナウイルス感染拡大で経済活動の正常化が遅れるとの懸念で景気敏感株に売りが出たが、夏場以降に出遅れていたハイテク株に見直し買いが入り、15ドル高(0.04%増加)。

8月13日:米長期金利の低下を受けて、高株価収益率のハイテク株に一角が上昇、デイズ二ーも買われ、ダウ平均を押し上げ、16ドル高(0.04%増加)。

8月16日:午前中は中国の景気減速やアフガニスタンの地政学リスクの高まりから売りが先行したが、午後に入り、医療保険やヘルスケア関連株が買われ、110ドル高(0.31%増加)。

8月17日:7月の小売り売上高は前月比1.1%減と市場予想より落ち込み、米景気回復の鈍化が懸念され、小売株や景気敏感株を中心に売られ、282ドル安(0.79%減少)。

8月18日:午後に公表された7月のFOMCの議事要旨で年内の量的緩和縮小の開始が示され、金融緩和の縮小を警戒した売りが優勢で、383ドル安(1.08%減少)。

8月19日:前日に発表されたFRBの議事要旨で量的緩和の縮小の前倒しが、景気後退への警戒を起こさせ、景気敏感株への売りが目立ち、67ドル安(0.19%増加)。

8月20日:業務ソフトの値上げを発表したマイクロソフトが業績期待で高値を更新、消費関連株や景気敏感株の一部にも押し目買いが入り、226ドル高(0.65%増加)。

8月23日:ファイザーとビオンテックが共同開発した新型コロナワクチンがFDAで正式承認され、感染拡大の懸念が軽減され、216ドル高(0.61%増加)。

8月24日:新型コロナウイルスのワクチン普及で、経済再開が期待され、景気敏感株を中心に買いが優勢となり、31ドル高(0.09%増加)。

8月25日:新型コロナウイルスのワクチン普及や米政権の大型財政支出による景気拡大を期待した買いが優勢で、39ドル高(0.11%増加)。

8月26日:高値警戒に伴う利益確定売りが優勢となり、アフガニスタン情勢を巡る地政学リスクの高まりも加わり、192ドル安(0.54%減少)。

8月27日:パウエル連銀議長のジャクソンホール会議での講演で、当面は緩和的な金融環境が’続くとの見方から、投資家の心理が改善し、243ドル高(0.69%増加)。

8月30日:米長期金利の低下を受けて、金融株が売られた一方、高株価収益率のハイテク株は上昇し、減少幅が限られて、56ドル安(0.16%減少)。

8月31日:8月の米消費者信頼感指数が113.8と前月から大きく低下し、個人消費の伸びが懸念され、また月末で利益確定売りも出やすく、39ドル安(0.11%)。



2.米国の雇用状況 
米労働省が8月6日に発表した7月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比943,000人の増加で、市場予想の850,000人の増加を上回りました。5月の雇用者数の確定値は614,000人で31,000 人の増加、6月の改定値は938,000人で、88,000人の増加となりました。なお、7月の失業率は5.4%で、前月より0.5%下がりました。労働参加率は61.7%で、前月より0.1%上がりました。7月の時間当たり賃金上昇率は前月比で11セント増加しました。部門別では観光・ホテル業が380,000人の増加、教育関連サービス業が261,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が60,000人の増加、輸送・倉庫業が50,000人の増加、その他のサービス業が39,000人の増加、そして製造業が27,000人の増加となりました。 


3.米インフラ投資法案が上院で可決

米議会上院は8月10日に1兆ドル規模の超党派インフラ投資法案を可決しました。与党民主党と野党共和党の議席が50ずつで拮抗する中、共和党の一部議員が同調し、賛成票は69票になりました。増税に反対する共和党との合意を優先し、企業増税で財源を賄う政権の構想はこの法案では見送られ、超党派法案は新型コロナウイルス対策の未使用財源などを財源に見込んでおり、CBDは財政赤字が10年間で約2560億ドル拡大する恐れを指摘しています。

上院民主党は別途、教育や子育て支援、気候変動対応などに10年間で3.5兆ドルの財政を投じる枠組みを固める予算決議の民衆党単独での可決を目指しています。しかし、9月に本格化する下院での審議は、政府債務上限の引き上げ・凍結問題も絡んで、見通しにくし状況です。

 

4.量的緩和縮小は年内開始が適当が大勢

FRBは8月18日に7月27-28日のFOMC会合での議事要旨を公開しました。その中で、大半の参加者が、経済が彼らの予想通りに幅広く発展するなら、年内に資産購入ベースの縮小を始めるのが適切になるだろうと明記されました。一部の参加者は労働市場の回復が量的緩和の縮小開始の条件である更なる著しい進展にはほぼ遠いとして、量的緩和の開始は2022年初めが適当との緩解を表明しました。この点、9月初めに公表される8月の雇用統計で労働市場の着実な増加が確認できれば、9月下旬の次回FOMCで量的緩和縮小の開始決定に結びつく可能性があります。また、多くの参加者は量的緩和縮小の環境が整うこと利上げ時期の開始との間には、機械的な関連性はなく、量的緩和縮小の開始時期を早めれば、資産購入額の減額ペースをより緩やかにできるため、金融環境が過度に引き締まることを妨げることとの見解を示しました。なお、この日は金融緩和の縮小を警戒した売りが優勢で、ダウ平均は383ドル安(1.08%減少)となりました。

パウエル連銀議長は8月27日の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」の冒頭で講演しました。その中で、「ここ数か月、労働市場の見通しはかなり明るくなった」と指摘、インフレの加速は「一時的な影響を受けているものの、インフレは更なる進展を満たしている」と明言し、量的緩和縮小の開始への条件が整いつつあることの認識を示しました。その一方で、「5%台の失業率を依然として高すぎる」と指摘、加えて感染が拡大するデルタ株を「直近のリスク」として注視する姿勢を示しました、このため、量的緩和の縮小を今後のFOMCの会合のどの時期に決断するかは明言しませんでした。また、FRBが急激に金融引き締めに動くのではないかという市場の懸念を和らげるために、今後の資産購入の縮小の時期とペースは、利上げの時期に関する直接的なシグナルを伝えることを意図したものではないと語りました。その上で、量的緩和の縮小時期について、年内に開始するのが適当であろうとの見解を表明しました。

           (2021年9月1日: 村方 清)

 

 

  

Sunday, August 1, 2021

新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大で不安定性が増す市場









1.7月の株式市場

7月の株式市場はコロナウイルス、特に感染力が強いデルタ株の経済に与える影響が懸念されるにつれ、中旬以降は市場の動きも不安定になりました。また、今後連邦政府の債務上限問題が市場に影響を与える恐れがあります。主要な動きは以下の通りでした。

7月1日:新たな四半期に入り、新規の投資資金が流入するとの期待から、ナイキやアメリカンエキスプレスなと消費関連株が買われ、131ドル高(0.38%増加)。

7月2日:2日発表の6月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比850,000人増で市場予想の706,000人を上回ったものの、失業率は5.9%と5月から0.1%上昇したため、金融緩和の早期縮小論が後退し、ハイテク株が上昇し、153ドル高(0.44%増加)。

7月6日:6月のISMの非製造業景況感指数が60.1と前月から3.9ポイント低下し。米景気回復がピークアウトしつつあるとの見方から、金融や資本財は売りが出て、209ドル安(0.60%減少)。

7月7日:米長期金利が一時1.3%を下回り、主力ハイエク株が上げを主導して、104ドル高(0.30%増加)。

7月8日:世界で新型コロナウイルス感染拡大が収まらず、景気回復が遅れかねねいとの見方が広がり、260ドル安(0.75%減少)。

7月9日:米長期金利の低下が一服し、金融株など景気敏感株を中心に買い戻され、448ドル高(1.30%増加)。

7月12日;4-6月期決算の発表シーズンを前に金融株が中心に先回りの買いが入って、126ドル高(0.36%増加)。

7月13日:航空機のボーイングが大幅安となったことや4半期決算を発表したJPモルガンなどの大手金融株が売られ、107ドル安(0.31%減少)。

7月14日:パウエル連銀議長は14日に下院金融サービス委員会で証言し、政策変更には’景気回復が一段と進む必要があると述べ、市場では緩和的な金融政策が当面続くと受け取られ、44ドル高(0.13%増加)。

7月15日:ハネウエルなど好材料が出た銘柄や好決算のユナイテッドヘルスなどが買われ、54ドル高(0.15%増加)。

7月16日:新型コロナウイルス感染拡大への警戒感から投資家心理が悪化し、幅広い銘柄に売りが優勢で、299ドル安(0.86%減少)。

7月19日:アジアを中心に感染力の強いデルタ株の感染拡大が続き、米国でも新規感染者数が1日当たり3万人に迫り、景気の先行き不透明感から売りが膨らみ、726ドル安(2.09%減少)。

7月20日:前日に今年最大の下落となった反動で、短期的な戻りを機体下買いがボーイングやアメリカンエキスプレスなどの景気敏感株を中心に広がり、550ドル高(1.62%増加)。

7月21日:米長期金利の低下一服を受けて、JPモルガンなどの金融株や化学のダウや航空機のボーイングなどの景気敏感株が買われ、286ドル高(0.83%増加)。

7月22日:22日発表の週間新規失業保険申請件数が419,000件と市場予想の350,000件を上回ったことで、長期金利が低下、景気敏感株に売りが出たが、来週発表の主力ハイテク株に業績期待の買いが入り、25ドル高(0.07%増加)。

7月23日:経済活動の再開を追い風に市場予想を上回る好決算が相次ぎ、消費関連やハイテク株の上昇が目立ち、238ドル高(0.68%増加)。

7月26日:主力ハイテク株の決算発表を前に、好決算を期待した買いが優勢となり、アルファベットやフェイスブックなどが上昇いて、83ドル高(0.24%増加)。

7月27日:前日まで連日で過去最高値を更新、目先の利益を確定する売りが優勢で、かつ中国政府によるインターネット企業への規制強化もあり、86ドル安(0.42%減少)。

7月28日:フロリダやテキサスなど経済規模の大きな州でデルタ株の感染拡大が増加し、経済活動正常化の動きが遅れるとの懸念から、128ドル安(0.36%減少)。

7月29日:朝方発表の21年4-6月期のGDP速報値は前期比率で6.5%増と市場予想の8.4%増を下回り、早期に量的緩和の縮小に動くとの観測が後退し、株式市場に資金流入が続くとの見方から、景気敏感株が買い戻され、154ドル高(0.44%増加)。

7月30日:29日夕に四半期決算を発表したネット通販のアマゾンドットコムが急落し、主力ハイテク株に波及した他、月末とあって持ち高調整の売りが景気敏感株の一部に目立ち、149ドル安(0.42%減少)。7月のダウ平均は月間で1.3%高となった。

2.米国の雇用状況
米労働省が7月2日に発表した6月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比850,000人の増加で、市場予想の700,000人の増加を上回りました。4月の雇用者数の確定値は269,000人で9,000 人の減少、5月の改定値は583,000人で、24,000人の増加となりました。なお、6月の失業率は5.9%で、前月より0.1%上がりました。労働参加率は61.6%で、前月と同じ水準でした。6月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別では観光・ホテル業が343,000人の増加、教育関連サービス業が155,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が72,000人の増加、その他のサービス業が56,000人の増加、介護や他の社会サービス業が32,000人の増加、卸売り業が21,000人の増加、そして製造業が21,000人の増加となりました。


3.米政府債務上限問題

米議会予算局は7月21日に議会が対策を講じなければ10月にも資金が枯渇すると警告しました。連邦政府の借入限度は法律で定められており、現在はトランプ前大統領と議会が2019年7月に2年間の停止で合意しました。米政府としては8月から借金を増やせなくなるために、政府閉鎖や米国債の債務不履行を避けるには、議会の承認を得て上限を引き上げるか、適用を停止する必要があります。もし、議会が対策を講じずに上限が復活した場合、財務省は公的年金基金への拠出を制限するといった緊急措置でやりくりをしなければならなくなります。

これに関連して、イエレン財務長官も7月23日にペロシ下院議長や与野党指導部に書簡を送り、議会が8月2日までに連邦政府債務上限の引き上げ、もしくは一時停止に動かなかければ、緊急措置として、7月30日正午に州・地方政府向け特別国債の発行を停止するとして、この停止は債務上限停止もしくは引き上げられるまで継続すると警告しました。

連邦議会は伝統的に歳出関連法案に追加する形で債務上限を設けてきました。2019年7月の債務上限は約22兆ドルで、債務上限は上限復活時の債務残高に合わせて設定される仕組みで、現在は上限となる債務総額は28兆ドル台に膨らんでいます。過去には適用停止で対応したこともあります。

米政府は超党派で進めているインフラ投資法案に債務上限の適用停止を盛り込んだり、民主党単純過半数で法案を可決する道を開く財政調整措置を活用する中で債務上限を引き上げたりするシナリオを想定しますが、これらの重要法案の審議が滞れば、債務上限問題の解決が長引いて市場の動揺も避けられなくなります。

 

4.量的緩和縮小への議論を継続したFOMC会合

FOMC会合が7月27-28日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練の時に米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定の目標を推進するために、あらゆる手段を使うことを約束する。

新型コロナウイルスワクチン接種の進捗と力強い政策支援を受け、経済活動と雇用の指標は引き続き強さを増している。パンデミックによる打撃が最も大きかった産業も改善を示しているが、完全には回復していない。物価上昇率は、主に一時的な要因を反映して上昇した。経済及び米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般に依然として緩和的だ。

景気の動向は、依然としてウイルスの拡大状況に左右されている。ワクチン接種の普及により、公衆衛生の危機が景気に及ぼす影響は引き続き小さくなる可能性が高いものの、経済の先行きへのリスクは残っている。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ達成を目指す。そうすることで、インフレ率が長期的に平均で2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。

これらの成果が出るまで、金融政策の緩和的なスタンスを維持すると予測している。

FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0-0.25%に据え置くことを決定した。労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面は2%をやや上回るところで軌道に乗るまで、この目標レンジを維持することが適切と予測する。

FOMCは昨年12月、雇用最大化と物価安定の目標に向けてさらなる大きな前進を遂げるまで、国債保有を少なくとも月800億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル増やし続けると表明した。その後、経済はこれらの目標に向けて前進しており、今後複数の会合で進捗の評価を続ける。こうした資産購入は円滑な市場機能と緩和的な金融情勢の促進を助け、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。

FRBは今回のFOMCで金融政策の現状維持を決め、会合後の記者会見で、パウエル連銀議長は量的緩和の縮小(テーパリング)に開始に向けて、今後複数の会合で経済情勢の進捗を確認すると表明しました。これについては想定の範囲内であったものの、新型コロナウイルスのインド型の感染拡大による世界経済の先行き懸念から、売りが優勢で、ダウ平均は128ドル安(0.36%減少)となりました。

              (2021年8月1日: 村方 清)

Thursday, July 1, 2021

FRBの量的緩和縮小論に揺れる市場


 







1.6月の株式市場

6月の株式市場は6月15-16日に開催されたFOMCで物価の急激な上昇を理由に、量的緩和の縮小(テーパリング)に言及したことから、直後は大幅に下落しました、しかし、その後、FRB内部でも否定的な見方も伝えられ、再び上昇傾向に転じています。主要な動きは以下の通りでした。

6月1日:米サプライマネジメント協会(ISM)が6月1日に発表した5月の米製造業景況感指数が61.2と先月から上昇したことや新型コロナワクチンの普及が進み、旅行・レジャーを中心に経済亜活動の再開を後押しするとの見方が強まり、46ドル高(0.13%増加)。

6月2日:経済活動の正常化への期待が強く、消費関連や石油株など景気敏感株に買いが優勢であったが、過去最高値への警戒感もあり、25ドル高(0.07%増加)。

6月3日:市場予想を上回る米経済指標が相次ぎ、長期金利が上昇、これを受けて金融株が買われた半面、高株価収益率のハイテク株が売られて、23ドル安(0.07%減少)。

6月4日:4日発表の5月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比559,000人増で市場予想の671,000人を下回り、量的緩和の縮小観測が後退し、米長期金利が低下、ハイテク株など高株価収益率株が買われ、179ドル高(0.52%増加)。

6月7日:最初は買いが先行したが、次第に景気敏感株の一部が利益確定目的の売りに押されて相場の重荷となり、126ドル安(0.36%減少)。

6月8日:ダウ平均が過去最高値に近づき、高値警戒感で売りが出て、30ドル安(0.09%減少)。

6月9日:5月7日に付けた過去最高値が近づき、高値警戒感から売りが優勢だったことや明日の5月CPI発表を控えて持ち高調整の売りが出て、153ドル安(0.44%減少)。

6月10日:10日発表の5月の米消費者物価指数は前月比5%増と加速したものの、特定品目の大幅な上昇の影響が大きく、長期金利の上昇にはつながらなかったことから、ハイテク株の一部に買いが入り、19ドル高(0.06%増)

6月11日:ダウ平均は過去最高値圏にあり、高値警戒感の売りも出て上値は重く、来週のFOMCの結果を待ちたいとの投資家の姿勢もあり、13ドル高(0.04%増加)。

6月14日:ダウ平均が最高値にあり、15-16日のFOMCを前に持ち高調整の売りが出て、85ドル安(0.25%減少)。

6月15日:16日のFOMCの結果発表を前に、様子見ムードが強まり、過去最高値圏で推移していることから、持ち高調整の売りが優勢で、94ドル安(0.29%減少)。

6月16日:FOMCが午後に発表したFOMCの結果を受け、金融政策の正常化が予想以上のペースで進むとの見方が広がり、売りが優勢で266ドウ安(0.77%減少)。

6月17日:前日のFOMCで2023年に2回の利上げが予想されるとして、景気過熱やインフレを見込んだ取引を手しまう動きが広がり、210ドル安(0.62%減少)。

6月18日:FRBが利上げ開始を前倒しするとの観測が強まり、金融緩和の縮小が想定以上のペースが進めば、景気を抑制し、株式市場への資金流入が細くなるとの見方から売りが広がり、533ドル安(1.58%減少)。

6月21日:前週の大幅な下げは過剰反応との見方が出て、世界経済の力強い回復が株高をさ支えるとの見方が広がり、587ドル高(1.76%増加)。

6月22日:FRBのパウエル議長が議会証言で早期利上げを懸念させる発言がなく、投資家の安心感につながり、主力ハイテク株が買われ、69ドル高(0.20%増加)。

6月23日:前日のパウエル連銀議長の議会証言を受けて買いが先行したが、今週に入り上昇が目立っていた景気敏感株の一角に利益確定売りが出え、71ドル安(0.21%減少)。

6月24日:バイデン大統領が上院の超党派議員グループとインフラ投資法案で合意したと表明し、

インフラ支出拡大への期待が高まり、322ドル高(0.95%増加)。

6月25日:前日に好決算を発表したナイキがダウ平均をけん引、株主還元策強化の期待から金融株も買われ、237ドル高(0.69%増)

6月28日:物価上昇は一時的との見方が広がり、米長期金利が低下、景気敏感株を中心に売りが優勢で、151ドル安(0.44%減少)。

6月29日:29日発表の米消費者信頼感指数は前月比7.3ポイント高い127.3で、市場予想を上回り消費関連株が買われたが、ダウは過去最高値圏にあり、上値は重く、9ドル高(0.03%増加)。

6月30日:朝方発表の雇用関連指標が市場予想を上回り、米労働市場の改善に伴う景気回復期待から、景気敏感株や消費関連株の買いが目立ち、211ドル高(0.61%増加) 


2.米国の雇用状況 
米労働省が6月4日に発表した5月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比559,000人の増加で、市場予想の671,000人の増加を下回りました。3月の雇用者数の確定値は785,000人で15,000 人の増加、4月の改定値は278,000人で、12,000人の減少となりました。なお、5月の失業率は5.8%で、前月より0.3%下がりました。労働参加率は61.6%で、前月から0.1%減少しました。5月の時間当たり賃金上昇率は前月比で15セント増加しました。部門別では観光・ホテル業が292,000人の増加、教育関連サービス業が124,000人の増加、介護や他の社会サービス業が46,000人の増加、製造業が23,000人の増加となりました。  

3.金融緩和縮小を示唆したFOMC会合

FOMC会合が6月15-16日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練の時に米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定の目標を推進するために、あらゆる手段を使うことを約束する。 

新型コロナウイルスの感染は、米国ではワクチン接種の普及で減ってきている。この進捗と力強し政策支援を受け、経済活動と雇用の指標は強さを増している。パンデミックによる打撃が最も大きかった産業は依然弱いが、改善を示している。物価上昇率は、主に一時的な要因を反映して上昇した。経済及び米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般に依然として緩和的だ。景気の動向は、ウイルスの拡大状況に大きく左右されている。ワクチン接種の普及により、公衆衛生の危機が景気に及ぼす影響は引き続き小さくなる可能性が高いものの、経済の先行きへのリスクは残っている。 

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ達成を目指す。そうすることで、インフレ率が長期的に平均で2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。これらの成果が出るまで、金融政策の緩和的なスタンスを維持すると予測している。 

FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0-0.25%に据え置くことを決定した。労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面2%をやや上回るところで軌道に乗るまで、この目標レンジを維持することが適切と予測する。

雇用最大化と物価安定の目標に向けてさらなる大きな前進を遂げるまで、FRBは国債保有を少なくとも月800億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル引き続き増やす。こうした資産購入は円滑な市場機能と緩和的な金融情勢の促進を助け、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。

パウエル議長は会合後の記者会見で、FOMCは資産購入策について議論することを決めたとして、量的緩和の縮小(テーパリング)に言及しました。これにより、市場はFRBが緩和的な金融政策の縮小に向けて準備を始めたとの見方が広がり、ダウ平均は266ドル安(0.77%減少)となりました。


4.バイデン政権がインフラ投資計画で上院超党派グループと合意

バイデン大統領は6月24日に、上院超党派グループとホワイトハウスで会談し、5年間で約9730億ドルを充てるインフラ投資計画で合意しました。バイデン政権が当初提案していた総額2兆ドル規模から大幅に縮小したものの、超党派での法案成立に向けて前進しました。合意したのは民主党10名と共和党11名のグループがまとめた計画で、道路や橋、水道、高速通信網などインフラ事業に5年間で約9730億ドル、8年間で1兆2090億ドルを投じる内容で、約5790億ドルの新規歳出が含まれています。 

今回のインフラ投資計画の財源は米国歳入庁の課税強化や過去に成立した新型コロナウイルス経済対策の未使用分で賄う予定です。バイデン政権は当初、法人税を現行の21%から28%に引き上げることを提案しましたが、共和党は譲れない一線と増税に反対したため、見送った経緯があります。

米国の高速道路の半分以上が建設から50年以上が経過するなど、インフラ網の老朽化が進んでいるものの、従来の政権はインフラ投資計画をが党派対立に阻まれて実現できなかっただけに、今回、バイデン政権が超党派の合意に漕ぎつけた政治的成果は大きいと見られます。 

その一方、法案可決への道のりは険しいものがあります。超党派法案は、道路や橋などの伝統的なインフラ投資に重点を置き、バイデン政権が提案した住宅や地域福祉など人的インフラへの投資は削除しました。環境や福祉政策を重視する民主党左派はこれに反発しており、超党派案が民主党議員の反対で否決される恐れもあります。民主党内の分裂を避けるために、バイデン政権と民主党指導部は超党派安に盛り込まかた気候変動対策や子育て教育支援を柱とする1.8兆ドル規模の格差是正計画を別の大型歳出法案としてまとめる構えです。しかし、大型歳出法案は、法人増税や富裕層増税など財源とする計画のために共和党の賛成は見込めません、このため、法案採決に原則60票の賛成が必要な上院で、過半数での可決が可能となる財政調整措置と呼ばれる特別措置を活用し、50席で成立可能な民主党単独での可決を目指そうとしています。 

但し、民主党の一部穏健派は民主党単独採決には難色を示しており、民主党が上院で50票の賛成票を確保できるかは不透明な情勢です。バイデン氏は必要な票を確保できる保証はないものの、議会や上院がどのように機能するかを理解しており、今後も柔軟な交渉を通じて法案成立を目指す考えを示しています。

          (2021年7月1日: 村方 清)