Saturday, October 1, 2022

FRBの金融引き締めの長期化と株価の下落傾向

 







1.9月の株式市場

9月の株式市場はFRBによる金融引き締めの長期化への警戒感から株価の下落傾向が一層強まりました。主要な動きは以下の通りでした。

9月1日: FRBの金融引き締め長期化への警戒感から売りが先行したが、8月の雇用統計の発表を2日に控えて持ち高調整の買いが入り、146ドル高(0.46%増加)。

9月2日:2日発表の8月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比315,000人増で市場予想並みであったが、金融引き締めの長期化が景気を冷やすとの観測自体は変わらず、338ドル安(1.07%減少)。

9月6日:FRBを含む世界の主要中央銀行による積極的利上げへの警戒感が相場の重荷となり、173ドル安(0.55%減少)。

9月7日:相場下落が続いた後で、短期的に売られすぎたと見た買いが幅広い銘柄に入り、436ドル高(1.40%増加)。

9月8日:このところ相場が大きく下落した後で、短期的な戻りを見込んだ買いが優勢で、193ドル高(0.61%増加)。

9月9日:FRBによる大幅利上げ観測の織り込みが進み、8月中旬以降下げがきつかったハイテク株や景気敏感株を中心に買われ、377ドル高(1.17%高)。

9月12日:8月中旬以降の調整局面で下げがきつかったハイテク株や景気敏感株を買い直す前週の流れが続いて、230ドル高(0.71%増加)。

9月13日:朝方発表の8月の米国消費者物価指数が市場予想を上回る8.3%の水準となり、FRBの利上げ加速を警戒した売りが強まり、1276ドル安(3.94%減少)。

9月14日:前日に今年最大の下げを記録したとあって、押し目買いも入りやすく、30ドル高(0.10%増加)。

9月15日:FRBが利上げを加速するとの警戒感からハイテク株を中心に売られ、173ドル安(0.56%減少)。

9月16日:RBの急激な金融引き締めが米景気を一段と悪化させるとの見方が強まり、景気敏感株や消費関連株を中心に売りが優勢で、139ドル安(0.45%減少)。

9月19日:FRBが金融引き締めを長期化するとの見方から米長期金利が一時。11年振りの高水準を付けて売りが先行したが、売り一巡後は前週の反動で短期的な戻りを見込む買いが優勢で、197ドル高(0.64%増加)。

9月20日:FRBの金融引き締め観測を受けて、米長期金利が11年振りの高値を付け、株売りを促し、313ドル安(1.01%減少)。

9月21日:FRBは21日のFOMCで0.75%の利上げを決定、一段と金融引き締めが米景気の悪化を招くとの懸念から、景気敏感株を中心に売りが拡大し、522ドル安(1.70%増加)。

9月22日:FRBによる大幅利上げの継続が米景気を冷やすとの警戒感から売りが続いて、107ドル安(0.35%減少)。

9月23日:FRBの大幅利上げが米景気後退を招くとの懸念が強まり、加えて米欧の長期金利上昇もあり、486ドル安(1.62%減少)。

9月26日:欧米の中央銀行の大幅利上げ方針を背景に、米長期金利が一時3.9%と12年振りの水準に上昇し、幅広い銘柄に売りが出て、330ドル安(1.1%減少)。

9月27日:世界的な金融引き締め観測から、米長期金利が4%に迫り、相対的な割高感を意識した売りが株式市場に出て、126ドル安(0.43%減少)。

9月28日:英中央銀行が英長期国債を購入すると発表し、欧米の長期金利が大幅に低下、株式の割高感が薄れ、幅広い銘柄に買いが入り、549ドル高(1.88%増加)。

9月29日:米長期金利が再び上昇して、ハイテク株を中心に売りが広がって、458ドル安(1.54%減少)。

9月30日:世界の中央銀行による急速な金融引き締めが景気を冷やし、企業収益を圧迫するとの見方から幅広い銘柄に売りが出て、500ドル安(1.71%減少)。9月の下落率は2784ドル(8.8%)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が9月2日に発表した8月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比315,000人の増加で、市場予想の範囲内に留まりました。6月の雇用者数の確定値は293,000人で105,000人の減少、7月の改定値は526,000人で、2,000人の減少となりました。8月の失業率は3.7%で、前月より0.2%悪化しました。労働参加率は62.3%で前月より0.2%上昇しました。8月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別では専門・ビジネスサービス業が68,000人の増加、へルスケア業が48,000人の増加、小売業が44,000人の増加、製造業が22,000人の増加となりました。

 

3.インフレの持続とFRBによる利上げ加速懸念

9月13日公表の8月消費者物価指数は前年同月比8.3%上昇と前月の8.5%から減速しましたが、市場予想の8.0%を上回りました。特に、エネルギーと食品を除くコア指数の上昇率は6.3%と7月の5.9%から加速し、市場予想の6.0%を上回りました。家賃などの住居費が上昇幅を拡大した他、医療サービスや教育サービス、自動車整備なども軒並み加速しました。労働力不足がサービス業の人件費コスト上昇を招き、それが消費者向けの価格に転嫁されています。

FRB関係者の参加者の多くは9月20-21日に開くFOMCの利上げ幅について具体的に言及していませんが、市場関係者の多くは0.75%の利上げを確実視しています。同時に、参加者の政策金利見通しも上方修正される公算が大きくなっています。6月段階の見通しは22年末が3.4%、23年末が3.8%でしたが、9月に0.75%の利上げをすれば年内に2つの会合を残して、3.0-3.25%に達するため、上方修正は必至になっています。一部では年内に4%を超える予測になっています。

いずれにしても、急速な利上げ効果は時間差で実体経済にマイナスの影響を与えることになると見られるだけに、今後の利上げにより株式市場が一層の不安定さを増すことが懸念されます。

  

4.0.75%の利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が7月26-27日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。

最近の消費と生産の指標は緩やかな伸びを示している。雇用はこの数か月堅調に増加し、失業率は低いままだ。物価上昇率はパンデミックに関連した需給の不均衡、食品・エネルギー価格の高騰、広範に及ぶ物価上昇圧力を反映して、高止まりしている。

ロシアによるウクライナ侵攻が人々と経済に甚大な苦難をもたらしている。侵攻と関連する事象が更なる物価上昇圧力をもたらし、グローバルな経済活動の重荷となっている。FOMCはインフレリスクを強く注視している。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを3.0-3.25%に引き上げることを決定した。誘導目標レンジの引き上げの継続が適切になると予測している。加えて、5月に発表した「バランスシートの規模削減のための計画」に述べた通り、国債、機関債、ローン担保証券の保有を削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、FOMCは引き続き、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げるリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する用意がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮する。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバー全員の賛成による。

FOMCの決定は0.75%の利上げで事前予想通りの内容でした。しかし、パウエル議長がFOMC会合後の記者会見で、仕事が終わるまで金融引き締めを続けるとの考えを改めて強調したことで、市場では金融引き締め長期化で経済的ダメージが今後強まるとの見方を改めて意識し、522ドル安(1.70%減少)になりました。

      (2022年10月1日: 村方 清)

 

Thursday, September 1, 2022

FRBの過度な金融引き締めによる市場の不安定さ








1.8月の株式市場

8月の株式市場は供給サイドに大きな原因がある現在のインフレ問題に対して、連銀が需要サイドに焦点を当てた過度な金融引き締め政策に固執することで、市場の不安定度が一層増しています。主要な動きは以下の通りでした。

8月1日: 前週までの上昇で短期的過熱感が意識され、利益確定売りが優勢で、米中間の地政学的リスクの高まりも投資家心理の重荷となり、47ドル安(0.14%減少)。

8月2日:ペロシ下院議長が2日に台湾を訪問し、米中間の緊張の高まりを懸念した売りが出て、402ドル安(1.23%減少)。

8月3日:米サプライマネジメント協会が発表した非製造業景況感指数が56.7と市場予想に反して上昇、米中関係への過度な懸念もひとまず和らぎ、416ドル高(1.29%増加)。

8月4日:7月の雇用統計発表前に投資家の様子見ムードが強く、方向感に欠ける相場展開であったが、米原油先物相場が続落し、86ドル安(0.26%減少)。

8月5日:5日発表の7月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比528,000人増で市場予想の258,000人を大きく上回り、景気後退への懸念がやや和らぎ、77ドル高(0.23%増加)。

8月8日:先週発表の7月の雇用統計が市場予想を大幅に上回り、米景気への懸念が後退したことで、29ドル高(0.09%増加)。

8月9日:半導体大手の業績予想の下方修正が相次ぎ、ハイテク株への売りが優勢となり、58ドル安(0.18%減少)。

8月10日:朝方発表の7月のCPIは前年同月比8.5%と前月の9.1%から鈍化し、市場予想の8.7%も下回り、コア指数も5.9%にとどまり、FRBによる利上げ加速の観測が後退し、535ドル高(1.63%増加)。

8月11日:11日発表の7月の米卸売物価指数が0.5%下落と市場予想の0.2%上昇に反して低下、FRBが利上げを急ぐとの観測が後退、但し長期金利の上昇もあり、27ドル高(0.06%増加)。

8月12日:インフレのピークアウトを示す経済指標が相次ぎ、FRBが利上げペースを弱めるとの期待が相場を押し上げ、424ドル高(1.27%増加)。

8月15日:インフレがピークアウトして、FRBがりあげペースを弱めるとの見方や原油先物相場が大幅に下落して、151ドル高(0.45%増加)。

8月16日:小売り大手の決算が市場予想を上回り、消費関連銘柄や景気敏感株が買われて、

240ドル高(0.71%増加)。

8月17日:景気敏感株やハイテク株などに目先の利益を確定する目的の売りが優勢で、米長期金利も上昇し、172ドル安(0.50%増加)。

8月18日:前日公表のFOMC議事要旨を受け、利上げペースが減速するとの観測が買いを支えて、19ドル高(0.06%増加)。

8月19日:7月中旬から上昇基調が続いており、短期的な利益確定売りが優勢で、加えて、米長期金利の上昇もあり、292ドル安(0.86%減少)。

8月22日:FRBが積極的な金融引き締めを継続するとの観測が改めて強まり、幅広い銘柄に売りが出て、643ドル安(1.91%減少)。

8月23日:FRBが金融引き締めを続けるとの警戒感が強く、売りが優勢となり、154ドル安(0.47%減少)。

8月24日:前日までの3日連続で1000ドル余り下げており、短期的押し目買いが入り、59ドル高(0.18%増加)。

8月25日:上昇基調にあった米長期金利が低下し、株式の相対的な割高感が和らぐとみた買いが優勢で、323ドル高(0.98%増加)。

8月26日:パウエル連銀議長がジャクソンホール会議で講演し、インフレ抑制を最優先に利上げを続ける方針を改めて強調、米景気の一段の悪化を懸念した売りが幅広い銘柄に広がり、1008ドル安(3.03%減少)。

8月29日:米連銀議長の26日の講演会での金融引き締め長期化観測が強まり、米景気の一段の悪化を懸念した売りが続き、184ドル安(0.57%減少)。

8月30日:NY連銀総裁が30日のイベントで金融引き締めを来年まで続ける必要があると述べ、金融引き締めが長期化するとの懸念から、308ドル安(0.96%減少)。

8月31日:31日もFRB高官からタカ派寄りの発言が聞かれ、金融引き締めの予想以上の長期化が懸念されて、280ドル安(0.88%減少)。8月のダウ平均は月間で1,335ドル安(4.1%減少)で、特に最後の4営業日で1,781ドル安となった。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が8月5日に発表した7月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比528,000人の増加で、市場予想の258,000人の増加を大きく上回りました。5月の雇用者数の確定値は386,000人で2,000人の増加、6月の改定値は398,000人で、26,000人の増加となりました。7月の失業率は3.5%で前月より0.1%改善しました。労働参加率は62.1%で前月より0.1%下落しました。7月の時間当たり賃金上昇率は前月比で15セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が96,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が89,000人の増加、へルスケア業が70,000人の増加、建設業が32,000人の増加、製造業が30,000人の増加となりました。

 

3.米消費者物価は8.5%上昇で3カ月ぶりに鈍化

米労働省が10日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.5%上昇しました。ガソリン価格が前月から下がり6月の9.1%から縮小しました。事前の予想では8.7%の上昇でしたが、伸び率は3か月ぶりに縮小しました。エネルギーと食品を除く指数の上昇率は前年同月比5.9%で前月から横ばいとなりました。

その一方、家賃を中心とする住居費の価格が5.7%上昇し、粘着性のある家賃や外食の価格が下がりにくい傾向を示しています。アトランタ連銀はそうした粘着価格を集めて作った消費者物価指数は6月に年率5.6%に達し、今後のインフレ圧力になることを懸念も生じています。

 

4.7月のFOMCの議事要旨

FRBは8月17日に7月26-27日に開いたFOMCの議事要旨を公表しました。今回の会合では2回連続となる0.75%の利上げを決定したが、参加者はどこかの時点で利上げを減速することが適切」との点で一致していましたが、今後は経済指標に応じて柔軟に対応する姿勢を強調しました。

今回の会合では参加者全員が更なる金融引き締めが求められているとの見方を共有した一方、多くの参加者は経済に影響が広がる時間差をあることを指摘して、必要以上に引き締めてしまう可能性もあるとしました。

FRBは3月に0.25%の利上げでゼロ金利政策を解除して以降、会合毎に利上げペースを上げてきました。パウエル議長は0.5%の利上げを実施した5月会合の記者会見で、6,7月も同じ幅の利上げを続けると強く示唆したが、物価上昇率の加速が止まらず、6月には約27年振りとなる0.75%の利上げを迫まれました。7月会合前にも強いインフレ指標が出ましたが初めて利上げ幅の加速が止まりました。こうしたことを踏まえ、参加者は先行きの金融政策により慎重になっています。

 

5. FRB議長はジャクソン会議で金利引き上げ継続を表明                    

FRBのパウエル議長は8月26日の経済シンポジウム「ジャクソン会議」で講演し、高インフレの抑制についてやり遂げるまでやり続けなければならないと利上げ継続を改めて表明しました。また、講演の直前に米商務省が発表した7月の個人消費支出物価指数は前年同月比6.3%上昇しましたが、パウエル議長は1カ月の改善でインフレ率が低下していると確信するには程遠いと指摘しました。

同時に、利上げは家計や企業の痛みをもたらすと言及した一方、金融引き締めが過度に景気を冷やすリスクについて懸念が出ているが、議長は価格の安定がなけば経済は誰のためにも機能しないと明言しました。

加えて、歴史的な教訓として例示したのが、早期の金融緩和で高いインフレの長期化を招いた1970年代で、現在の高インフレが長引けが長引くほど、高い物価上昇率が続くという予想が定着するとの懸念を示し、インフレ抑制を優先する決意を強調しました。

来年の利下げ転換を織り込んだ以上の動きを念頭に、歴史は時期尚早な金融緩和を強く戒めているとけん制しました。

これを受けて、市場では金融引き締めの長期化観測が強まり、米景気の一段の悪化を懸念した売りが幅広い銘柄に広がり、ダウは1008ドルの下落となりました(下落幅は今年3番目の大きさ)。

        (2022年9月1日: 村方 清) 

Monday, August 1, 2022

FRBによる金利再引き上げと景気後退への懸念









1.7月の株式市場

7月の株式市場はFRBがインフレへの警戒から7月27日に2度目の0.75%の金利引き上げを決定しました。しかし、同時に景気後退への懸念から過度な引き上げはないとの見方が強まり、市場も好感、株式市場は月末は回復基調となりました。主要な動きは以下の通りでした。

7月1日: 米長期金利が低下し、ハイテク株の一部が買われた他、景気動向に業績が左右されにくいディフェンシブ株が上昇し、322ドル高(1.05%増加)。

7月5日:米景気が後退局面に入るとの懸念が強まり、資源や金融など景気敏感株を中心に売りが広がり、129ドル安(0.42%減少)。

7月6日:FRBが午後に公表したFOMC'の議事要旨は新たな材料に乏しく、タカ派的な内容を警戒していた投資家の安堵感から、70ドル高(0.23%増加)。

7月7日:前日に3カ月ぶりの安値を付けた原油相場が大幅に反発するなど、リスク資産全体が膨らみ、中国が景気対策として巨額のインフラ投資に動くとの観測も改善につながり、347ドル高(1.12%増加)。

7月8日:8日発表の6月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比372,000人増で市場予想の250,000人を上回り、FRBの金融引き締めへの警戒感から、46ドル安(0.15%減少)。

7月11日:中国の新型コロナウイルスの感染再拡大による行動規制の強化とロシアからの欧州への天然ガス供給の停止が相場の重荷となり、164ドル安(0.52%減少)。

7月12日:13日の6月の米消費者物価指数の発表を控えて、取引終盤にかけてインフレ警戒の売りが強まり、193ドル安(0.62%減少)。

7月13日:朝方発表の6月の米消費者物価指数の上昇率が9.1%と市場予想を上回り、FRBの金融引き締め加速を警戒した売りが出て、209ドル安(0.67%減少)。

7月14日:前日の6月の消費者物価指数に続き、14日発表の6月の卸売物価指数も前月比1.1%上昇と市場予想を上回った。FRBが7月のFOMCで1.0%の利上げを決めるとの観測がくすぶり、急速な金融引き締めが景気を冷やすとの見方が先行、143ドル安(0.62%減少)。

7月15日:朝方発表の米小売売上高は前月比1.0%増と予想以上に増え、ミシガン大学の消費者期待インフレ率も低下しFOMCが7月末のFOMC会合で1%の利上げを決めるとの見方が後退、幅広い銘柄に買いが入り、658ドル高(2.11%増加)。

7月18日:アップルが経済下振れに対応するために、複数部門で人材採用と支出を抑えると発表したことで企業業績への警戒が強まり、他の大手のIT株も下落、全体で216ドル安(0.69%減少)。

7月19日:FRBの急激な利上げが米景気を冷やすとの警戒感が後退、景気敏感株やハイエク株など幅広い銘柄に短期的戻りを見込む買いが入り、754ドル高(2.43%増加)。

7月20日:6月の米中古住宅販売件数が2年ぶりに低水準になるなど米経済指標の悪化が続き、FRBの急激な利上げ観測が後退、主力ハイテク株が前日に続き大幅に上昇、48ドル高(0.15%増加)。

7月21日:市場予想を上回る米主要企業の決算発表が多く、売り一巡後は企業業績の好調さを意識した買いがハイテク株を中心に入り、ダウ平均は162ドル高(0.51%増加)。

7月22日:欧米の景気悪化を示す経済統計の発表を受け、リスク資産である株式を売る動きが強まり、138ドル安(0.43%減少)。

7月25日:FRBの急激な利上げへの警戒感が薄れ、株が買われた先週までの流れを引き継ぎ、91ドル高(0.28%増加)。

7月26日:ウォールマートが25日に業績見通しの引き下げを発表し、消費を巡る懸念から消費財関連株に売りが広がり、229ドル安(0.71%減少)。

7月27日:FRBは27日のFOMC会合で0.75%の利上げを決めたが、記者会見で先行きの金融引き締めペースの鈍化を見込む発言をしたことで、市場は好感し、436ドル高(1.37%増加)。

7月28日:2022年4-6月のGDPがマイナス0.9%で、2四半期連続のマイナスとなり、FRBが利上げペースを緩めるとの期待が強まり、幅広い銘柄が買われ、332ドル高(1.03%増加)。

7月29日:前日夕発表のアップルとアマゾンのなどの決算が好調で、投資家心理が改善、加えて大幅増収増益の石油のシェブロンも買われて、316ドル高(0.97%増加。

 

 

2.米国の雇用状況

米労働省が7月8日に発表した6月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比372,000人の増加で、市場予想の250,000人の増加を上回りました。4月の雇用者数の確定値は368,000人で68,000人の減少、5月の改定値は384,000人で、6,000人の増加となりました。6月の失業率は3.6%で前月と同じ水準でした。労働参加率は62.2%で前月より0.1%下落しました。6月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別では専門・ビジネスサービス業が74,000人の増加、レジャー・観光業が67,000人の増加、ヘルスケア業が57,000人の増加、輸送・倉庫業が36,000人の増加、製造業が29,000人の増加となりました。

  

3.米消費者物価大幅上昇                                                                

米労働省が7月13日に発表した6月の消費者物価指数は前年同月比で9.1%上昇、市場予想の8.8%を上回りました。前月比でも1.3%上昇と伸びは加速しており、米連銀制度理事会(FRB)が3月以降3回に渡って実施してきた利上げは、景気過熱を抑えるまでに至っていません。また、景気減速もしくは後退も、物価面からはまだ確認されていません。

なお、外的要因に左右されやすい食料・エネルギーを除くコア指数は前年同月比5,9%の上昇で、6カ月ぶりに6%を割り込みました。但し、賃金の動きを反映しやすいサービス価格が加速を続けている以上、金融政策についてはさらなる引き締めが必要であることに変わりはない。

こうした消費者物価の動向を受けて、米連邦公開市場委員会(FOMC)が7月会合で従来想定されていた0.75%ポイントではなく、歴史的水準の1ポイントの引き上げになるのではないかとの見方も一部に出てきました。

 

4.0.75%の利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が7月26-27日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。

最近の消費と生産の指標は鈍化している。ただ雇用はこの数か月堅調に増加し、失業率は低いままだ。物価上昇率はパンデミックに関連した需給の不均衡、食品・エネルギー価格の高騰、広範に及ぶ物価上昇圧力を反映して、高止まりしている。

ロシアによるウクライナ侵攻が、人々と経済に甚大な苦難をもたらしている。侵攻と関連する事象が更なる物価上昇圧力をもたらし、グローバルな経済活動の重荷となっている。加えて、中国の新型コロナウイルス関連の都市封鎖が、供給網の乱れを更に悪化させる可能性がある。FOMCはインフレリスクを強く注視している。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを2.25-2.50%に引き上げることを決定した。さらなる誘導目標レンジの引き上げの継続が適切になると予測している。加えて、5月に発表した「バランスシートの規模削減のための計画」に述べた通り、国債、機関債、ローン担保証券の保有を削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、FOMCは引き続き、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げるリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する用意がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバー全員の賛成による。

FOMCの決定は0.75%の利上げで事前予想通りの内容でした。パウエル議長がFOMC会合後の記者会見で、金融引き締めの効果が経済とインフレにどう影響しているかを評価しながら、利上げペースを緩めることが適切になるだろうとして、秋以降の利上げ幅縮小を期待した買いが広がり、ダウは436ドル高(1.37%増加)となりました。

 

5.米国のGDPは2四半期連続のマイナス成長                                              
米商務省が7月28日に発表した4-6月期のGDPは年率換算で0.9%減少し、2四半期連続のマイナス成長となりました。マイナス成長が続いた最大の要因はGDPの7割を占める個人消費の減速が強まったことで、4-6月期の個人消費は1.0%増と1-3月期の1.8%増に比べて減速しました。景気の回復で賃金は上がっていたが、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギーや食料品が値上がりし、購買力が低下している。コンファレンスボードの消費者信頼度指数も子の1年余りでリーマン危機に次ぐ落ち込みを記録している。

FRBは相次ぐ利上げで、インフレの沈静化を狙うが、落ち着く兆しは見えていません。

その一方で、急激な利上げはGDPの主要項目である住宅投資や設備投資の逆風になっています。1-3月期の住宅投資は0.4%増であったのに対して、4-6月期の住宅投資は前期比14.0%減の大幅の落ち込みとなりました。設備投資も、1-3月期は10.0%増であったのに対し、4-6月期は0.1%の減少に転じました。銀行融資の金利上昇や人手不足などを理由に、企業が生産設備の建設プロジェクトを延期している例が多くなっています。

米国での景気後退の懸念が高まったことで、11月に中間選挙を控えるバイデン政権やFRBは難しい立場に置かれています。個人消費を冷やすインフレを抑制するために利上げを急げば、景気の悪化を一段と深刻にさせる恐れがあります。一方で財政出動や金融緩和といった景気刺激策は高い水準にあるインフレを一段と加速しかねません。インフレ抑制を優先させながら、景気後退に陥らない政策が必要になっています。

      (2022年8月1日: 村方 清)