1.2月の株式市場
2月の株式市場はトランプ政権による相次ぐ関税措置の発表が米国のインフレ懸念を引き起こし、不安定な展開となりました。主要な動きは以下の通りでした。
2月3日:トランプ政権が週末にカナダやメキシコ、中国に対し関税を引き上げる方針を発表し、米経済や企業収益へのく影響が懸念され、その後メキシコとの間で関税発動の延期で合意されたものお、123ドル安(0.27%減少)。
2月4日:市場予想を上回る決算発表のハイテク株の一部が買われ、134ドル高(0.30%増加)。
2月5日:ISMの1月の非製造業景況感指数が52.8と市場予想の54.3より悪化し、米景気の減速を示すと受け止められ、米長期金利がいt団と低下、317ドル高(0.71%増加)。
2月6日:7日に1月の米雇用統計が発表されるのを控え、主力株に利益確定売りが出て、126ドル安(0.28%減少)。
2月7日:トランプ政権の関税政策の影響で米消費者のインフレ予想が急上昇し、FRBの利下げが’一段と遠のくとの見方から、売りが優勢で、444ドル安(1%減少)。
2月10日:決算を発表したマクドナルドなどが5%近く上昇、エヌビディアなどにも買いが集まり、167ドル高(0.37%増加)。
2月11日:CPIの発表を前に様子見姿勢が強く、コカ・コーラなどの主力株が市場予想を上回る決算内容を発表したことで、123ドル高(0.28%増加)。
2月12日:朝発表の1月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが3.0%と市場予想を上回ったことを受けて、物価高止まりの警戒感が強まり、225ドル安(0.5%減用)。
2月13日:トランプ大統領が13日に、貿易相手国に同水準の関税を課す相互関税の導入を指示する覚書に署名したが、直ちに関税を課すものではないことから、過度な懸念が薄れて、343ドル高(0.77%増加)。
2月14日:14日発表の1月の小売売上高は前月比0.9%減となり、経済活動の弱さを示すものと受け止められ、高止まりする金利の影響への警戒感も加わり、165ドル安(0.37%減少)。
2月18日:朝発表の製造業調査で米景気の底堅さが隠された一方、インフレ再燃に対する警戒感から買いを控える動きも見られて、10ドル高(0.02%増加)。
2月19日:ディフェンス株の一角に買いが入ったものの、トランプ米政権の関税政策への警戒感が相場の重荷となり、71ドル高(0.20%増加)。
2月20日:追加関税が米消費者に負担となる見方に加えて、ウォルマートが慎重な収益見通しを発表して投資家心理を冷やしたことで、451ドル安(1.01%減少)。
2月21日:同日発表の2月の米購買担当者景気指数が総合で50.4と1月の52.7から低下し、23年9月以来の低水準tなり、1月の米中古住宅販売件数も前月比で4.9%減で、市場予想の2.6%減を下回るなど景気減速の懸念に加え、ユナイテッドヘルスのメディケアプランの請求を巡り米司法省の調査に乗りだすなどの動きもあり、749ドル安(1.69%減少)。
2月24日:前週後半の2営業日で1200ドル程下げた後で、自律反発を見込んだ買いが主力株に入ったが、半面、悪材料の一部の大型ハイテク株に売りが出て、33ドル高(0.07%増加)。
2月25日:四半期決算を発表したホーム・デポに買いが入り、ディフェンス株にも買いが優勢で、160ドル高(0.36%増加)。
2月26日:トランプ大統領がEUに対して関税を課す考えを示したことで、貿易戦争や世界経済への悪影響を警戒した売りが出て、188ドル安(0.43%減少)。
2月27日:トランプ大統領が27日にカナダとメキシコからの輸入品に予定通り関税を課す考えを示し、中国にも追加関税を課す方針で、先行き不透明感が広がり、194ドル安(0.44%減少)。
2月28日:米長期金利が低下し、株式の相対的な割高感が薄れたことで、主力株に買いが入り、601ドル高(1.39%増加)。ダウ平均は月間で703ドルの下落>
2.米国の雇用状況
米労働省が2月7日に発表した1月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比143,000人の増加で、市場予想の170,000人を下回りました。11月の雇用者数の確定値は261,000人で49,000人の増加、12月の改定値は307,000人で、51,000人の増加でした。12月の失業率は4.0%で、前月より0.1%低下しました。労働参加率は62.6%で、前月より0.1%上昇しました。1月の時間当たり賃金上昇率は前月比で17セント増加しました。部門別ではヘルスケア門が44,000人の増加、小売り業部門が34,000人の増加、政府部門が32,000人の増加、ソーシャル・アシスタンスタス部門が22,000人の増加となりまsた。
3.米消費者物価指数は1月3.0%上昇、4カ月連続で加速
米労働省が12日公表した1月の米消費者物価指数は前年同月比で3.0%の上昇で、市場予想の2.9%を少し上回りました。エネルギーと食品を除くコア指数も前年同月比で3.3%の上昇で、これも市場予想をやや上‘回りました。
直後の金融市場はFRBの利下げが難しくなるとの見方から、長期金利の指標となる米10年物国債利回りは上昇し、一時4.6%代半ばと3週間ぶりの高水準を付けました。
米政権は2月4日から中国製品への関税を10%引き下げました。カナダやメキシコからの輸入品にかける25%の関税は3月4日から、鉄鋼・アルミ製品への’25%関税は3月12日から’発動する予定です。輸入品への関税は米国内に転嫁される公算が大きいと見られています。米ミシガン大学の消費者調査で短期的な物価見通しを示す1年先の予想インフレ率が1-2か月で計1.5%上昇するなどのすでに影響が出ています。
FRBのパウエル議長は2月11日に米連邦議会上院の議会証言で、インフレ率は鈍化傾向にあるものの依然としてやや高止まりしているとして警戒感を示しました。FRBは24年9月から12月まで計1%の利下げを実施しましたが、今後の金融引き締めをさらに緩めるかどうかの判断には十分時間をかける考えと見られます。
(2025年3月1日: 村方 清)