Thursday, July 3, 2025

中東情勢の一時的な緊迫化を回避し、回復軌道に乗せた株式市場


 




1.6月の株式市場

 6月の株式市場は中旬にイスラエルトとイランの軍事衝突を巡り、一時的に緊迫度が増しましたが、停戦合意を受けて、再び回復軌道となりました。主要な動きは以下の通りでした。

62日:ハイテク株の一部に買いが入った他、貿易交渉の進展期待が投資家の支えとなり、35ドル高(0.08%増加)。

63日:米企業による人口知能開発の加速が意識されて、半導体を中心に買いが入り、214ドル高(0.50%増加)。

64日:トランプ政権の高い関税が米景気に悪影響を及ぼすとの懸念を強める経済指標の発表を受け、92ドル安(0.21%減少)。

65日:トランプ大統領とテスラのCEOのマスク氏の関係悪化が表面化したことで、テスラ株が急落し、投資家心理が悪化、108ドル安(0.25%減少)。

66日:朝方発表の5月の雇用統計で、非農業部門の雇用者数は前月比139,000人の増加で、市場予想の125,000人を上回り、平均時給も前月比0.4%上昇で市場予想の0.3%を上回り、主力株を中心に買いが入り、443ドル高(1.04%増加)。

69日:このところの株高で高値警戒感が意識され、取引終盤に小幅な下落に転じて1ドル安。

610日:半導体やハイテク株の一部が買われて投資家心理を支え、105ドル高(0.25%増加)。

611日:このところ上昇していたハイテク株の一角に利益確定売りが出て、1ドル安。

612日:11日夕にオラクルが発表した決算や見通しがAI需要の強さを示し、ハイテク株や半導体株の一角に買いが入り、102ドル高(0.23%増加)。

613日:イスラエルとイランを巡る中東情勢の緊迫化を受けて、リスク回避の株売りが優勢で、770ドル安(1.79%減少)。

616日:イスラエルとの軍事衝突を巡り、イランが事態の沈静化に動き始めたとの報道から、原油先物相場が下落し、投資家心理が改善して、317ドル高(0.75%増加)。

617日:核開発問題を巡るイスラエルとイランの軍事衝突や米政府の関与を巡って緊張が高まり、投資家のリスク回避姿勢が強まり、299ドル安(0.70%減少)。

618日:FRB18日まで開いたFOMC会合で政策金利を据え置き、パウエル議長も利下げを急がない姿勢を改めて示し、主力株の一角に売りが優勢となって、44ドル安(0.10%減少)。

620日:イスラエルとイランの軍事衝突を巡り、外交努力による仲介が進んでいることが支えとなり、35ドル高(0.08%増加)。

623日:米国による核施設への攻撃を受けたいrンの報復が限定的なものに留まっているところから、米げにゅ先物相場が急落し、投資家心理を支えて、375ドル高(0.88%増加)。

624日:イスラエルとイランの停戦合意を受けて投資家心理が大幅に改善したため、585ドル高(1.37%増加)。

625日:前日に主要株価指数がそろって大幅高となった後で、短期的な持ち高調整の売りが優勢となり、107ドル安(0.24%安)。

626日:中東情勢を巡る懸念が後退したことで投資家心理が改善し、主力株への買いを支えた。人工知能(AI)関連の銘柄の上昇が続いたことで、404ドル高(0.94%増加)。

627日:政府が通商交渉の合意に向けた進展に楽観的見解を示したことで、株式市場は続伸し、432ドル高(1.02%増加)。

630日:米国とカナダの貿易交渉が進展するとの期待から、投資家心理が改善。景気敏感など出遅れ感のあった銘柄にも買いが広がり、相場上昇を支え、276ドル高(0.62%増加)。月額で1824ドル高で、2カ月連続。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が6日に発表した5月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比139,000人で、市場予想の125,000人を上回りました。3月の雇用者数の確定値は120,000人で65,000人の減少、4月の改定値は147,000人で、30,000人の減少でした。5月の失業率は4.2%で、前月と同じでた。労働参加率は62.4%で、前月より0.2%減少しました。3月の時間当たり賃金上昇率は前月比で15セント増加しました。部門別ではヘルスケア門が62,000人の増加、レジャー・ホテル部門が48,000人、ソーシャル・アシスタンス部門が16,000人の増加、政府部門が22,000人の減少となりました。


3. 米消費者物価指数は52.4%上昇

米労働省が11日に公表した5月の消費者物価指数は前月同月比の上昇率が2.4%となり、市場予想を下回って鈍化しました。エネルギーと食品を除くコア指数では2.8%上昇しました。伸びは4月と同じで、市場予想の2.9%を下回りました。

トランプ政権は2月から中国製品への関税を順次引き上げました。4月には大規模な相互関税を公表し、10%の基本税率を5日から適用しました。同月3日には25%の自動車関税も発動しました。

FRBは相次ぐトランプ政権の関税政策と物価への影響を見極めるために、当面は利下げを見送る方針で、1718日に開くFOMCでも政策金利の据え置きが確実視されています。

 

46月のFOMC会合

FOMC会合617-18日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました。純輸出の振れがデータに影響を及ぼしたものの、最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大し続けていることを示唆している。失業率は低水準に留まり、労働市場の状況は堅調なままである。インフレ率はいくぶん高止まりしている。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。経済見通しに関する府果実性はお一時より減少したものの、依然として高い水準にある。FOMC2つの責務の双方に対するリスクに細心の注意を払っている。

この目標を支えるために、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.254.5%に据え置くことを決めた。FF金利の目標レンジの調整を検討する際、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびリスクのバランスを慎重に評価する。

FOMCは、国債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減する。。FOMCは雇用の最大化を支援し、インフレを2%目標に戻すことに強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。

決定はパウエル議長、ウィリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。

トランプ政権の関税政策はなお流動的で、FRBは依然として様子見の姿勢を崩していません。同時に公表した経済も通しでは、年内の利下げ予想を前回3月時点と同じ2回にしました。FRBが利下げを急がない姿勢を姿勢を改めて示したことで、主力株の一部に売りが優勢で、44ドル安(0.10%減少)となりました。

       (202573日:村方 清)

Sunday, June 1, 2025

トランプ政権の関税政策の進展による株式市場の回復


 







1.5月の株式市場

 5月の株式市場は512日に米国と中国が相互に課した相互関税を115%引き下げることで合意したこともあり、回復基調となりました。主要な動きは以下の通りでした。

51日:マイクロソフトなど主力ハイテク株の一角が決算発表をきっかけに大幅高となり、相場を支え、84ドル高(0.20%増加)。

52日:同日朝発表の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数が前月比177千人増加し、市場予想の130千人増を上回ったものの、失業率は4.2%と前月の同水準で、労働市場の底堅さを示した他、米中貿易摩擦が緩和に向かうとの期待から投資家心理を支えて、564ドル高(1.38%増加)。

55日:米政権の関税政策への警戒心が根強く、相場の重荷となり、99ドル安(0.23%減少)。

56日:FOMCの結果公表を7日に控え、主力株に持ち高調整や利益確定目的の売りが出て、390ドル安(0.95%減少)。

57日:FRB7日まで開いたFOMCで米政権による関税政策を念頭に経済の見通しを巡る不確実性がさらに高まっているとの懸念から3回連続で利下げを見送ったにもかかわらず、米国と中国との貿易問題を巡る閣僚級の協議に入る決定したことへの期待で、284ドル高(0.69%増加)。

58日:米英の関税交渉が成立したのに加え、米中貿易摩擦が緩和に向かうとの期待が投資家心理を支えて、254ドル高(0.61%増加)                           

59日:主力株の一部に利益確定や持ち高調整の売りが出て、119ドル安(0.28%減少)。   

512日:米国と中国が互いに課したした追加関税を115%引き下げることで合意し、両国間の貿易戦争の激化に対する懸念が和らぎ、1161ドル高(2.81%増加)。                

513日:同日朝に発表の4月の米消費者物価指数は前年同月比2.3%と市場予想を下回ったものの、CEOの交代と収益見通しの撤回を発表したユナイテッドヘルス・グループが大幅安となり、指数を押し下げ、270ドル安(0.64%減少)。                         

514日:米中貿易摩擦の緩和を期待した買いが続いた後で、持ち高調整の売りが優勢で、89ドル安(0.21%減少)。                                    

515日:米長期金利の低下で株式の相対的な割高感が後退し、投資家の買いが優勢で、272ドル高(0.64%増加)。                                    

516L前日まで8日像楽していたユナイテッドヘルス・グループに買いが入り、ダウ平均を押し上げ、332ドル高(0.78%増加)。                            

519日:米長期金利の上昇が一服したことで、投資家が株式の押し目買いに動いて、137ドル高(0.32%増加)。                                     

520日:前日に3月上旬以来の高値を付けた後で、主力株に持ち高調整や利益確定の売りが広がり、115ドル安(0.26%減少)。                              

521日:財政悪化を巡る懸念から米長期金利が一段と上昇、金利上昇が株式の相対的な割高感を高めるとの見方から、株売りが膨らみ、817ドル安(1.91%減少)。              

522日:米連邦議会が22日朝に、トランプ減税の恒久化を含む減税法案を可決したことで、財政赤字の拡大が意識され、1ドル安(0%)。                        

523日:トランプ大統領が23日に欧州連合に対して50%の関税をかけると表明したことで、関税を巡る不透明感が意識され、主力株を中心に売りが出て、256ドル安(0.61%増加)。     

527日:トランプ大統領が欧州連合に対する追加関税の発動時期の延期を表明し、貿易摩擦への懸念が幾分後退して、741ドル高(1.78%増加)。                      

528日:エヌビディアの四半期決算を控えて持ち高調整の売りが主力株にでたことに加えて。FRBが公表した67日に終了したFOMCの議事要旨で利下げに慎重な姿勢が改めて示されて、245ドル安(0.57%減少)。                                  

529日:米裁判所が28日にトランプ政権が導入した関税の一部差し止めを命じ、関税引き上げへの毛買いが後退との見方とエヌビディアが四半期決算で上昇し、117ドル高(0.28%増加)。  530日:30日発表の米個人消費支出物価指数は前月比で2.1%上昇と市場予想を下回り、インフレへの懸念が後退、主力株に買いが入り、54ドル高(0.12%増加)。ダウは月間で1600ドル高。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が2日に発表した3月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比177,000人で、市場予想の130,000人を上回りました。2月の雇用者数の確定値は102,000人で15,000人の減少、3月の改定値は185,000人で、43,000人の減少でした。3月の失業率は4.2%で、前月と同じでした。労働参加率は62.6%で、前月より0.1%増加しました。3月の時間当たり賃金上昇率は前月比で6セント増加しました。部門別ではヘルスケア門が51,000人の増加、運輸・倉庫業部門が29,000人の増加、金融部門が14,000人の増加、ソーシャル・アシスタンス部門が8,000人の増加、政府部門が9,000人の減少となりました。

 

3.5月のFOMC会合

FOMC会合が56-17日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました。純輸出の振れがデータに影響を及ぼしたものの、最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大し続けていることを示唆している。失業率はここ数カ月、低水準で安定しており、労働市場の状況は堅調なままである。インフレ率はいくぶん高止まりしている。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。経済見通しを巡る不確実性は高まっている。FOMC2つの責務の双方に対するリスクに細心の注意を払っている。失業率の上昇と物価上昇率のリスクが高まったと判断している。

この目標を支えるために、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.254.5%に据え置くことを決めた。FF金利の目標レンジの調整を検討する際、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびリスクのバランスを慎重に評価する。

FOMCは、国債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減する。。FOMCは雇用の最大化を支援し、インフレを2%目標に戻すことに強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。

決定はパウエル議長、ウィリアムズ副議長を含む12人のメンバーの賛成による。

トランプ政権の高関税政策が景気と物価に与える影響を見極めるために、3会合連続で利下げを見送ったことになります。

 

4.米消費者物価42.3%上昇、市場予想を下回るも先高観は強い見通し

米労働省が13日発表した4月の米消費者物価指数はゼ年同月比の上昇率が2.3%となり、市場予想の2.4%を下回りました。エネルギーと食品を除くコア指数は2.8%上昇で、伸びは予想通りで、3月と同水準でした。

今後上昇が見込まれるのは、関税の影響を受けやすいモノの価格で、4月には0.1%上昇しました。トランプ政権は42日に大規模な相互関税を打ち出し、米中関係はその後、報復関税の応酬に発展したものの、512日に互いに課していた追加関税を一時的に115%下げることに合意しました。供給網の混乱懸念は和らいだと歓迎する声が上がる一方で、インフレ見通しに殆ど影響を与えないとの 見方もあります。特に、中国からの輸入品にかかる追加関税は依然30%が続くことになります。

                                    (202561日:村方 清)

Thursday, May 1, 2025

トランプ関税が招く景気減速への懸念と株式相場の不安定性








1.4月の株式市場

4月の株式市場はトランプ大統領が42日に相互関税を発表して以来、インフレと景気減速の懸念から、株式市場の不安定化が増しました。主要な動きは以下の通りでした。

41日:1日発表の3月の米サプライマネジメント協会の製造業景況感指数が49.03カ月振りに50を割り込んだことで、関税政策の不透明感を背景に投資家心理が悪化しているとの見方から、12ドル安(0.02%減少)。

42日:米政府効率化省に関するk度な警戒院が後退、米政権の「相互関税」の詳細を前に、様子見の投資家も多く、株買いを促し、235ドル高(0.56%増加)。

43日:トランプ大統領が2日夕に発表した「相互関税」が市場の想定よりも厳しい内容となり、世界経済の悪化や貿易戦争への警戒が強まり、関税引き上げが収益の逆風¥になる銘柄を中心に売りが広がり、1679ドル安(3.97%減少。

44日:同日朝発表の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数が前月比228千人増加し、市場予想の140千人増を上回ったものの、失業率は4.2%と前月の4.1%増から上昇し、強弱入り交じる内容であったが、トランプ大統領が2日夕に発表した「相互関税」対して、中国が米国への報復措置として34%の追加関税をかけると発表し、関税の応酬による景気や企業収益の悪化を懸念した売りが膨らみ、2231ドル安(5.50%減少)。ダウは週間で3269ドル下げ、週間の下げとして、新型コロナ禍の20203月以来の大きさとなった。

47日:米政権による関税政策が世界経済の落ち込みや貿易戦争の激化につながるとの見方から、主力株に売りが続き、349ドル安(0.91%減少)。

48日:主力株に自律反発を期待した買いが先行したが、勢いは続かず、米国による相互関税が予定通りに9日に発動されるのを踏まえ、貿易摩擦の悪化や経済の先行き不透明感が根強く、次第い売りに転じて、320ドル安(0.84%減少)。

4月9日:トランプ大統領が9日午後に、同日に発動した相互関税を一部の国・地域で90日間停止すると表明したことで、世界景気の悪化に対する警戒が後退し、2963ドル高(7.87%増加)。

410日:トランプ政権の対中関税が累計で145%となることがわかり、米中貿易摩擦の激化が懸念され、1015ドル安(2.49%減少)。

411日:ボストン連銀の総裁が金融市場が混乱した場合、FRBが対応する手段があると発言したことで、市場支援の期待感から、619ドル高(1.56%増加)。

414日:トランプ政権が11日、相互関税の対象から電子関連商品を除外たことで、関税引き引き上げを巡る過度な警戒が後退し、312ドル高(0.77%増加)。                

415日:前日までの2営業日で900ドル余り上昇した後で、持ち高調整の売りが出やすく、156ドル安(0.38%減少)。                                  

416日:パウエル連銀議長が16日の講演で、金利引き下げに慎重な見方を示したことで、株江売りの勢いが強まり、700ドル安(1.73%安)。                       

417日:17日朝発表の四半期決算が市場予想を下回ったユナイテッドヘルスグループが急落し、527ドル安(1.32%減少)。                                

421日:トランプ大統領がFRBに対して、再び政策金利の引き下げを求めたことで、FRBの独立性が損なわれ、米国の信認が揺らぐとの警戒感が広がり、972ドル安(2.48%減少)。      

422日:ベッセント財務長官が同日、中国との貿易摩擦が緩和に向かうとの認識を示したことで、前日に大きく下げた後で、主力株に見直し買いが入り、1017ドル高(2.66%増加)。    

423日:トランプ大統領がFRBのパウエル議長の解任を否定したことを受けて、主力株に買いが広がり、420ドル高(1.07%増加)。                            

424日:トランプ政権が貿易政策で、対中姿勢を緩和したとの観測が投資家心理を改善し、ハイテク株の一部が買われ、487ドル高(1.22%増加)。

425日:米政権による関税政策を巡り、貿易相手国との鉱床が進んでいるとの期待から、相場を支えて、20ドル高(0.05%上昇)。                            

428日:トランプ政権と貿易相手国の関税交渉が進展するとの期待が相場を押し上げ、114ドル高(0.28%増加)。                                    

429日:米国と貿易相手国との関税交渉の進展期待が引き続き相場を支えて、300ドル高(0.74%増加)。                                     

430日:同日発表の202513月期の米国GDPが前期比年率で0.3%減と3年ぶりにマイナス成長となったことや4月の全米雇用レポートで非農業部門の雇用者数が前月比62,00人と市場予想を大きく下回ったことで、トランプ政権による急激な関税措置の悪影響と見られたが、同時に、3月の米個人消費支出物価指数も前月比で横ばいで、FRBの5月会合で利下げもありうるとの見方も出て、相場を支えて142ドル高(0.34%増加)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が4日に発表した3月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比228,000人で、市場予想の140,000人を上回りました。1月の雇用者数の確定値は111,000人で14,000人の減少、2月の改定値は117,000人で、34,000人の減少でした。テ氏関税の領が3月の失業率は4.2%で、前月より0.1%上昇しました。労働参加率は62.5%で、前月より0.1%増加しました。3月の時間当たり賃金上昇率は前月比で9セント増加しました。部門別ではヘルスケア門が54,000人の増加、ソーシャル・アシスタンス部門が24,000人の増加、小売部門が24,000人の増加、運輸・倉庫業部門が23,000人の増加、政府部門が4,000人の減少となりました。


3.米国の米消費者物価指数は3月が2.4%上昇、鈍化傾向

米労働省が10日に発表した3月の消費者物価指数は前年同月比の上昇率が2.4%で、市場予想の2.5%を下回りました。勢いは2カ月連続で鈍りました。エネルギーと食品を除くコア指数の前年同月比の上昇率は2.8%で、市場予想の3.020下回りました。

トランプ政権の高関税政策によって景況感は急速に悪化しています。政権が関税の引き上げを本格化したのは4月以降で、自動車関税が3日に発動した他、全世界からの輸入品に一律10%が上乗せされる関税が5日から導入されました。相互関税のうち9日に発動したのは一部で90日間の一時停止を発表しましたが、5日の導入分だけでも平均関税率は大きく上昇する見込みです。

FRBは時間をかけて続く物価の上昇感想が人々の長期的な物価感を変えてしまう事態を警戒しており、利下げには慎重な姿勢を示しています。

                   (202551日: 村方 清)

 

 

Tuesday, April 1, 2025

トランプ政権の相次ぐ関税措置と株式市場の不安定化

 









1.3月の株式市場

3月の株式市場は, トランプ政権による43日からの相互関税を含む相次ぐ関税措置への懸念から、株式市場の不安定化が増加しました。主要な動きは以下の通りでした。

33日:半導体輸出規制を巡る懸念を背景にエヌビディアが大幅安となり、米政権による関税政策や景気の先行きに対する不安も投資家心理を冷やして、650ドル安(1.48%減少)

34日:トランプ政権が34日からカナダとメキシコの輸入品に対して関税を発動し、中国には追加関税を引き上げたことへの対抗措置に伴う貿易戦争や経済への悪影響を懸念した売りが広がり、670ドル安(1.55%減少)。

35日:前日に発動したカナダとメキシコ向けの追加関税25%について、北米自動車産業向けに1カ月の猶予期間を設けることになり、相場を支えて、485ドル高(1.1%増加)。

36日:トランプ政権による関税政策を巡る不透明感が根強く、主力株に売りが膨らんdことや、米景気減速への懸念もあり、428ドル安(0.99%減少)。                                 

37:同日発表の2月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比151,000人増で、市場予想の160,000人から170,000人を下回り、FRBが景気を下押しするとの見方が強まり、223ドル高(0.52%増加)。        

310日:米景気やトランプ政権による関税政策の不透明感から、株売りが広くがり、890ドル安(2.07%減少)。                                     

311日:トランプ大統領による関税政策の不透明感を背景に、主力株に売りが出て、478ドル安(1.14%減少)。                                                          

312日:トランプ政権による関税政策や貿易摩擦への警戒感が引き続き相場の重荷で、83ドル安(0.19%減少)。                                     

313日:トランプ大統領による関税政策の不透明感から景気懸念が拡大し、株売りが優勢で、537ドル安(1.30%減少)。                                              

314日:米政府の繋ぎ予算が成立することになったことや前日までにダウ平均が2000ドル近く下げていたことへの自律的反発で、675ドル高(1.65%増加)。                

317日:同日発表の小売り指標が強弱まちまちの内容となり、個人消費を巡る過度な懸念が後退し、景気敏感株を中心に買いが広がり、353ドル高(0.85%増加)。              

318日:前日までの2営業日で1000ドル余り上昇した後で、主力株に持ち高調整の売りが優勢となり、260ドル安(0.62%減少)。                                                                                                                                              3月19日FRB19日まで開いたFOMC会合で2025年に2回利下げをする見通しを維持したことで、投資家心理に安心感を与え、383ドル高(0.92%増加)。                                                                                                                                    3且20日 :トランプ政権の政策への警戒が強く、相場の重荷となり、11ドル安((0.03%減少)。

321日:トランプ政権の関税政策への不透明感から一時500ドル余り下落したが、その後、42日からの相互関税について柔軟に対応する用意があるとの発言で、32ドル高(0.07%増加)。  

324日:トランプ政権の関税政策を巡る過度な警戒が後退し、主力株に買いが広がり、598ドル高(1.42%増加)。                                    

325日:トランプ政権の関税政策が警戒されたほど広範囲ではないとの観測が浮上したことで、4ドル高(0.01%増加)。                                                                                                                                             3月26日:トランプ政権が42日から輸入する外国の車に対して25%の関税を課すことを発表したことで、自動社株を中心に売りが出て、133ドル安(0.31%減少)。            

3月27日:トランプ大統領が26日夕方に輸入自動車への25%の追加関税を発表したことで、関税を巡る不透明感や貿易戦争への警戒感が相場の重荷となり、155ドル安(0.37%減少)。         

328日:同日発表の米個人消費指数は前月比0.3%上昇で市場予想と一致したものの、食品とエネルギーを除くコア指数は0.4%と市場予想の0.3%を上回り、ミシガン大学の3月の消費者態度指数も57.0と下方修正され、市場予想の57.9も下回ったことで、消費者の景況感悪化に加えて、米政権による関税政策が米国の物価上昇につながるとの見方から、716ドル安(1.69%減少)。   

331日:トランプ政権の関税政策が米景気を押し下げるとの警戒心が強い中、月末・四半期末による機関投資家の資産配分調整の株買いが入り、418ドル高(1.00%増加)。ダウ平均は2カ月連続で下落して、月間で1839ドルの下落。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が37日に発表した2月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比151,000人の増加で、市場予想の160,000 から170,000人を下回りました。12月の雇用者数の確定値は323,000人で16,000人の増加、1月の改定値は125,000人で、18,000人の減少でした。1月の失業率は4.1%で、前月より0.1%上昇しました。労働参加率は62.4%で、前月より0.2%減少しました。2月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別ではヘルスケア門が52,000人の増加、金融部門が21,000人の増加、運輸・倉庫業部門が18,000人の増加、ソーシャル・アシスタンス部門が11,000人の増加、政府部門が10,000人の減少、小売り業部門が6,000人の減少となりました。

 

3.3月のFOMC会合

FOMC会合が318-19日に開催され、会合後の声明要旨で以下のことが伝えられました最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大し続けていることを示唆している。失業率はここ数カ月、低水準で安定しており、労働市場の状況は堅調なままである。インフレ率はいくぶん高止まりしている。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。経済見通しを巡る不確実性は高まっている。FOMC2つの責務の双方に対するリスクに細心の注意を払っている。

この目標を支えるために、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.254.5%に据え置くことを決めた。FF金利の目標レンジの調整を検討する際、FOMCは入ってくるデータ、進展する見通しおよびリスクのバランスを慎重に評価する。

FOMCは、国債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減する。4月から、FOMCは国債の月間償還上限額を250億ドルk50億ドルに減らすことで、保有国債の削減ベースを減速する。FOMCは機関債と住宅ローン担保証券の月間償還上限額を350億ドルに維持する。FOMCは雇用の最大化を支援し、インフレを2%目標に戻すことに強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。

決定はパウエル議長、ウィリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。ウオラー理事は政策金利の据え置きは指示したが、国債の削減ベースを現状のまま維持することを希望し、反対票を投じた。

今回のFOMCによる金利据え置きは、織り込み済みであったものの、今後の利下げについて2025年に2回利下げをする見通しを維持したことで、投資家の安心感が強まったことで、393ドル高となりました。


4.米消費者物価指数は2月2.5%上昇

米労働省が28日公表した2月の米個人消費支出は前年同月比で2.8%の上昇で、市場予想の通りでした。エネルギーと食品を除くコア指数も前年同月比で2.8%の上昇で、これは市場予想の2.7%をやや上回りました。

FRBは先行して公表される消費者物価指数(CPI)よりPCE物価指数を重視しています。2月のCPIは市場予想を下回り5カ月ぶりに前年同月比の上昇率が鈍化していました。FRBは関税などの影響を見極めるため、当面は利下げを見送る姿勢を維持します。

          (202541日: 村方 清)