Friday, April 1, 2022

原油先物相場の下落及びロシアとウクライナの停戦交渉進展による回復基調

 







1.3月の株式市場

3月の株式市場は前半がロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁の悪影響が続いたものの、後半になり前向きな停戦交渉が期待されたこと先物原油相場の下落が見られるなどで、回復基調となりました。主要な動きは以下の通りでした。

3月1日:ウクライナ情勢の悪化と欧米の経済制裁でロシアが信用危機に陥る可能性も意識され、株式から債券に資金を動かす動きが広がり、、598ドル安(1.76%減少)。

3月2日:ロシアが停戦協議を再開するとの意向を表明したとの報道を受け、地政学リスクの緩和を期待した買いが入り、596ドル高(1.79%増加)。

3月3日:航空機のボーイングが大幅安となり、ウクライナ情勢を巡る先行き不透明感から、様子見の投資家が多く、97ドル安(0.29%減少)。

3月4日:ウクライナ情勢の緊迫化への懸念から投資家のリスク回避姿勢が強まり、景気敏感株や消費関連株への売りが目立ち、180ドル安(’0.53%減少)。

3月7日:シアへの経済制裁に伴うエネルギー高が世界景気を冷やすとの懸念が広がり、797ドル安(2.37%減少)。1月4日に付けた過去最高値からの下落率は10.8%で、調整局面入りの目安となる10%を超えた。

3月8日:バイデン大統領がロシアからの石油や天然ガスの輸入を禁止すると発表し、エネルギー需給が逼迫し、インフレが米景気を冷やすとの懸念が強まり、185ドル安(0.56%減少)。

3月9日:米原油先物相場の大幅下落でインフレや景気減速への懸念が和らぎ、消費関連など幅広い銘柄が買い直され、654ドル高(2.00%増加)。

3月10日:2月の消費者物価指数が7.9%と1月の7.5%より拡大し、インフレ警戒が改めて強まり、ハイテク株を中心に売りが優勢で、174ドル安(0.34%減少)。

3月11日:ロシアとウクライナの対話が停戦に向けて前進しているとの期待から買いが先行したが、ロシア軍の攻撃が拡大しているとの報道から、230ドル安(0.69%減少)。

3月14日:15-16日のFOMCの会合を控えて、米長期金利が2019年7月以来の水準に上昇しハイテク株に売りが出たものの、原油先物相場が下落し、景気減退へン警戒感が薄れて、1ドル高。

3月15日:原油先物相場が連日で大幅に下落し、インフレ懸念が和らぎ、諸費関連株やハイテク株など幅広い銘柄が買われ、599ドル高(1.82%増加)。

3月16日:ウクライナとロシアの停戦交渉の進展や中国政府の景気刺激策への期待が高まり、景気敏感株を中心に買いが優勢で、519ドル高(1.55%増加)。

3月17日:ロシアの外貨建て国債の利払いが実施されてたと伝わり、ロシアの債務不履行の懸念がやや和らぎ、幅広い銘柄に買いが優勢で、418ドル高(’1.23%増加)。

3月18日:FRBの高官の発言を受け、米金融政策を巡る不透明感が薄れて、ハイテク株を中心に買い直しが優勢で、274ドル高(0.80%増加)。週間上昇率は’5.5%で1年4か月ぶりの大きさ。

3月21日:FRBのパウエル議長が今後のFOMCで大幅な利上げに踏み切る可能性を示唆したことから、金融引き締めを警戒し、幅広い銘柄に売りが膨らみ、202ドル安(0.58%減少)。

3月22日:利上げ加速の観測から米長期金利が上昇し、金融株の追い風になったことや好決算のナイキが大幅に上昇、他の消費財関連に影響し、254ドル高(0.74%増加)。

3月23日:米原油先物相場が5%以上と大幅に増加し、高インフレが景気を冷やすとの警戒感から消費関連株を中心に売りが優勢で、449ドル安(1.29%減少)。

3月24日:原油先物相場が4%近く下げる場面があり、ガソリン高が米消費を抑えるとの警戒感が後退、朝方発表の週間米新規失業保険件数も市場予想を下回り、349ドル高(1.02%増加)。

3月25日:米原油先物相場が上昇し石油株が買われ、米長期金利の上昇を受けて金融株の一部も上昇し、153ドル高(0.44%増加)。

3月28日:原油安を受けて消費関連株銘柄の一角が買われた他、ハイテク株が買い直され、取引終了にかけて上げに転じて、95ドル高(0.27%増加)。

3月29日:ロシア国防省がウクライナの首都キエフでの軍事活動を縮小すると発表、停戦交渉の進展を期待して、幅広い銘柄が買われて、338ドル高(0.97%増加)。

3月30日:ウクライナ情勢の不透明感や米原油在庫の減少などで米原油先物が3%強上昇したことなどから、消費関連やハイテク株が利益確定売りに押されて、65ドル安(0.19%減少)。

3月31日:3月後半以降の急激な上昇を受け、月末と四半期末が重なったこともあり、幅広い銘柄に利益確定の売りが優勢で、消費関連やハイテク株の下げが目立ち、550ドル安(1.56%増加)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が3月4日に発表した2月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比678,000人の増加で、市場予想の440,000人の増加を大きく上回りました。12月の雇用者数の確定値は588,000人で78,000 人の増加、1月の改定値は481,000人で、14,000人の増加となりました。1月の失業率は3.8%で、前月より0.2%下がりました。労働参加率は62.3%で、前月より0.1%増加しました。1月の時間当たり賃金上昇率は前月比で1セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が179,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が95,000人の増加、医療関係業が64,000人の増加、建設業が60,000人の増加、輸送・倉庫業が48,000人の増加、小売業が37,000人の増加、製造業が36,000人の増加となりました

 

3.バイデン大統領の一般教書演説

バイデン大統領は3月1日に連邦議会の上下両院合同会議で初の一般教書演説を行いました。その中で、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領を独裁者と非難した上で、米国はウクライナの人々と共にあると連帯を表明しました。内政面の重点政策に時間を割くことが多い一般教書演説ですが、バイデン大統領は演説の冒頭からロシアのウクライナ侵攻に言及し、世界平和を擁護する指導者としての姿を強調しました。対ロ経済制裁では、新たにロシア機の米領空通過禁止を発表すると共に、制裁に伴うエネルギー価格の高騰を抑制するため、各国と足並みをそろえ、3000万バーレルの米戦略石油備蓄を放出することを明らかにしました。

内政面では、昨年だけで850万人以上の新規雇用を創出したと誇示した上で、経済成長率は年5.7%と過去40年近くで最も力強い成長であったと強調しました。一方、インフレ率が約40年振りの高い伸びとなっていることを踏まえて、物価‘制御が最優先課題と述べ、超党派の協力を呼びかけました。加えて、インフラ投資が米国を変革し、21世紀の中国との競争に打ち勝つ道を開くことになると語りました。新型コロナウイルスに関しては、我々が普通の日常へ戻りつつあるとの見方を示しつつ、ワクチン接種への協力などを求めました。

 

4.利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が3月15-16日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。

経済活動と雇用の指標は引き続き強さを増している。雇用増はこの数か月力強く、失業率は大きく下がっている。物価上昇率はパンデミックに関連した需給の不均衡、エネルギー価格の高騰、広範に及ぶ物価上昇圧力を反映して、高止まりしている。

ロシアによるウクライナ侵攻が、人々と経済に甚大な苦難をもたらしている。米経済への影響は不透明だが、短期的には侵攻とそれに関する事象が、更なる物価上昇圧力をもたらし、経済活動の重荷になる可能性が高い。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。金融政策のスタンスを適切に引き締めることで、労働市場の強さを保ったまま、インフレは目標の2%に戻ると予測する。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0-0.25%に引き上げることを決定した。更に誘導目標レンジの引き上げの継続が適切になると予期している。加えて、今回の会合で、国債とローン担保証券の保有を減らし始めると予測する。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。セントルイス連銀のブラート総裁は、0.5%の金利引き上げを主張して反対票を投じた。

FRBはFOMC会合を通じてほぼ3年振りとなる利上げを決定したが、タカ派的な内容であったものの、今後の道筋が示されたとして、幅ひろい銘柄に買いが優勢となり、ダウ平均価格は519ドル高(1.55%増加)となりました。                                 

        (2022年4月1日: 村方 清)

Tuesday, March 1, 2022

ロシアのウクライナ侵攻と対ロ経済制裁で不安定化する市場









1.2月の株式市場

2月の株式市場は、前半がFRBの金融引き締めに長期金利の上昇で、後半はロシアのウクライナ侵攻による対ロ経済制裁の影響で、大きな下降基調になりました。主要な動きは以下の通りでした。

2月1日:先週来、戻りが急ピッチであったハイテク株に利益確定売りが出た一方、相対的に上昇が鈍かった景気敏感株が買われ、273ドル高(0.78%増加)。

2月2日:前日夕に好決算を発表したアルファベットが大幅高となり、ハイテク株の一角に買いが波及し、224ドル高(0.64%増加)。

2月3日:決算と併せて発表した業績見通しが市場予想を下回ったメタプラットフォームズ(旧フェイスブック)が急落し、ハイテク株に売りが広がり、518ドル安(1.45%減少)。

2月4日:4日発表の1月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比467,000人増で市場予想を大幅に上回り、FRBが積極的に金融引き締めを進めるとの見方が強まり、21ドル安(0.06%減少)。

2月7日:新型コロナウイルス感染者数が大きく減少、経済活動正常化の恩恵を受ける銘柄を中心に買いが入り、一方でFRBによる金融引き締めの警戒感も強く、1ドル高(0.00%)。

2月8日:好調な四半期業績を発表したアムジェンが大幅高となり、米長期金利の上昇で金融株も買われ、相場を支えて、372ドル高(1.06%増加)。

2月9日:米長期金利の低下を受けて、高株価収益率の高いハイテク株が買い直され、米国の新型コロナウイルス感染者数の減少を受けて、消費関連株も買われ、305ドル高(0.86%増加)。

2月10日:1月のCPIは前年同期比7.5%と市場予想の7.2%を上回り、FRBが金融引き締めを急ぐとの見方が広がり、526ドル安(1.47%減少)。

2月11日:ロシアのウクライナ侵攻への警戒が強まったことやインフレ加速を背景にFRBが金融引き締めを急ぐとの見方も加わり、503ドル安(1.43%減少)。

2月14日:ウクライナ情勢の緊迫化で警戒した売りが優勢で、下げ幅は一時400ドルを超えたが、過去2日間で1000ドルほど下げたことから、終値は172ドル安(0.59%減少)。

2月15日:ロシアがウクライナの国境付近からの軍隊の一部撤収を発表したことで、地政学リスクの後退で投資家心理が改善し、幅広い銘柄に’押し目買いが入り、423ドル(1.22%増加)。

2月16日:ウクライナ情勢への警戒感が続いたが、FRBの1月のFOMCの議事要旨の公表による新たな情報が無く、下げ幅を縮小し、55ドル安(0.16%減少)。

2月17日:バイデン大統領が2月17日に記者団へロシアがウクライナに侵攻する可能性が非常に高いと述べたことを受けて、ロシアと欧米の対立が激化するとの見方が強まり、リスク回避の売りが出て、622ドル安(1.78%減少)。

2月18日:ウクライナ情勢を巡る警戒が続き、株式相場の重荷で、233ドル安(0.68%減少)。

2月22日:ロシアはウクライナ東部の一部地域の独立を承認し、同地域への軍の派遣を決定、バイデン大統領がロシアに対する大規模な金融・経済制裁に踏み切ると表明し、リスクを回避した売りが優勢で、483ドル安(1.42%減少)。

2月23日:ロシアが東部の親ロシア派支配地域に派兵を決めたことを受け、ウクライナ政府は非常事態宣言を発令する方針となるなど情勢が不透明感を増しており、幅広い銘柄に売りが膨らみ、465ドル安(1.36%減少)。

2月24日:ロシアのウクライナ侵攻で投資家心理が悪化し、一時859ドル安となったが、その後ハイテク株に’押し目買いが入り、取引終了間際に上昇に転じ、92ドル高(0.28%増加)。

2月25日:ロシアがウクライナとの停戦交渉に応じる構えを示し、紛争の長期化が避けられるとの期待が高まり、ハイテク株が買われた前日に続き、景気敏感株やディフェンシブ株にも買いが広がり、835ドル高(2.51%増加)。

2月28日:欧米がロシアの銀行を国際決済網の国際銀行間通信協会(SWIFT)から締め出す方針を打ち出し、制裁強化が世界経済を冷やしかねないとの見方から、166ドル安(0.49%減少)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が2月4日に発表した1月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比467,000人の増加で、市場予想の150,000人の増加を大きく上回りました。11月の雇用者数の確定値は647,000人で398,000 人の増加、12月の改定値は510,000人で、311,000人の増加となりました。1月の失業率は4.0%で、前月より0.1%上がりました。労働参加率は62.2%で、前月より0.3%増加しました。1月の時間当たり賃金上昇率は前月比で23セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が151,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が86,000人の増加、小売業が61,000人の増加、輸送・倉庫業が54,000人の増加、地方政府の教育関連業が29,000人の増加となりました。


3.3月利上げと加速視野の1月のFOMC会合

FRBは2月16日に1月25-26日のFOMC会合での議事要旨を公開しました。その中で、物価上昇が定着し、雇用が力強い現在の状況では金利を引き上げる時期が来たのと見方で参加者が一致していることがわかりました。同時に、インフレが今年を通じて和らぐと引き続き予想しているものの、鈍化が無ければ、速いペースで金利を引き上げる用意があるとの立場も示しました。

しかし、1月のFOMCは米国が新型コロナウイルス感染拡大のピークに近い時期に開かれたこともあり、当局者が特定の道筋に固執しているを示す兆候はありませんでした。議事要旨は政策の適切な道筋は経済・金融情勢、及び見通しへの影響と見通しを巡るリスクに左右されると強調しました。その上で、利上げとバランスシートの縮小の双方を検討していく中で、毎回の会合で適切なスタンスを評価していくとしています。いずれにしても、今回の会合では3月の利上げと、状況によってはその後の追加利上げも視野に入れ始めたというのが市場の反応になったと見られています。


4.ウクライナ介入によるプーチンの執念とロシアの代償

2月21日にロシアのプーチン大統領は新ロシア派が支配するウクライナ東部の一部地域に一方的な独立を承認し、ウクライナ全地域へのロシア軍派兵を決めました。プーチン大統領はその演説の中で、ウクライナはロシアと一体であるとの旧ソ連時代の時代錯誤的な歴史観と価値観にとらわれ、同時にウクライナに影響を及ぼそうとする西側諸国への被害妄想でした。ロシアによるウクライナ侵攻までの動きを見ると、米国に北大西洋条約機構(NATO)へ東方拡大の要求が求め、拒否されると、東部2州のロシア住民保護の名目にウクライナ全域への侵攻を始めました。

過去にも、プーチン大統領は夏季の北京五輪が行われた2008年8月に、紛争状態にあったジョージアの親ロシア系住民を守る目的で同国のアブハジアと南オセチアに軍を投入し、その後、独立を承認しています。更に、2014年にはソチ五輪の直後にウクライナ領クリミア半島の併合を決めました。

しかしながら、今回は全面侵攻後3日間で、ロシアは戦車146台、装甲車706台など、全体戦力の30-50%近くを失ったとされています。こうした状況になった背景として、以下のような点が指摘されています。

―ウクライナの戦闘意識の高さ                                 ロシア軍はウクライナを3方面から大規模に侵攻すれば、ゼレンスキー大統領を含むウクライナ政府の指揮系統は短期に瓦解すると仮定していたが、ゼレンスキー大統領を中心にウクライナ国民は老弱男女を問わず、ロシアに対する戦意力が極めて高く、厳しい抵抗にあっていることがあげられます。

―ロシア軍の大隊戦術団の限界と低い戦闘意識                           ベラルーシからキエフに進軍したロシア軍の多くは、当初はベラルーシとの共同演習に参加したとの認識であったものの、プーチン大統領が突然、ウクライナ東部の2州だけでなく、ウクライナ全域への侵攻という予想外の展開で、目的を含め、大義名分のない戦闘になってしまっていることがあります。

―西側の支援                                         米国とNATOはウクライナへの派兵をしていないものの、2014年以降、54億ドルに渡る多額の軍事援助を行っており、ジャベリン対戦車ミサイル、ステインガー地対空ミサイルなどがロシア軍の戦車や装甲車への大量攻撃に高い効果を与えています。                                   

こうした軍事的侵攻の停滞だけでなく、経済や金融制裁の分野でも、米欧日が結束してロシアの制裁を実行しています。米国は2月21日時点では、独立した地域との新規投資や貿易に米国人が関与することを禁じるとの制裁措置を発表しました。しかし、22日にはロシアの大手金融機関2社などを対象に第1弾の金融・経済制裁に踏み切ると表明しました。まず、ロシアの大手金融機関2社を対象とするほか、ロシアの国債や政府機関債などソブリン債を対象に包括的な制裁を実施し、ロシア政府を西側の資金調達から切り離すことになります。また、ロシアのエリート層とその家族も制裁の対象になることを明らかにしました。同時に、ドイツのシュルツ首相は独ロを結ぶ新しいガスパイプライン「ノルドストリーム2」の認可手続きを停止することを表明、ロシアに強い警告を与えました。加えて、2月27日にはこの戦争に加担しているロシアの一部銀行に対する国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除を決定しました。

経済や金融での制裁は効果が高く、ロシアのルーブルが一時30%以上下落、これへの対応策として、ロシア中銀が金利を9.5%から20%へ引き上げることを決定、ロシアの企業や国民に厳しい経済困難に与えることになりました。

今後、ロシアがウクライナへの軍事的攻勢を高める動きと同時に、米欧日による厳しいロシアへの経済・金融制裁の効果がロシアのプーチン政権の不安定化につながってくるかにも注目していく必要があります。

       (2022年3月1日: 村方 清)

 

Tuesday, February 1, 2022

FRBの金融正常化に揺れる市場







1.1月の株式市場

1月の株式市場は長期金利の上昇と共に、高株価収益率のハイテク株を中心に売りが広がったものの、月末に長期金利の上昇が一巡するとハイテク株が再び上昇するなど、不安定が目立ちました。主要な動きは以下の通りでした。

1月3日:米景気ン回復基調が続くとの期待や年金基金オ新しい流入もり、英気敏感株を中心に上昇、ハイテク株の一部も買われ、247ドル高(0.68%増加)。

1月4日:新型コロナウイルスの感染が拡大しても、米経済の回復は続くとの期待から、景気敏感株を中心に買いが優勢で、215ドル高(0.59%増加)。

1月5日:FOMCの議事要旨を受けてFRBが金融政策の正常化を前倒しで進めるとの見方から、米長期金利が上昇、ハイテク株など高株価収益率の銘柄に売りが広がり、393ドル安(1.07%減少)。

1月6日:FRBが金融政策の正常化を急ぐことへの警戒感から、売りが優勢となり、171ドル安(0.47%減少)。

1月7日:FRBが金融政策の正常化を前倒しするとの警戒感から相場の重荷が続いたが、雇用市場の改善から米経済回復が続くとの期待で、景気敏感株に買いが入り、5ドル安(0.01%減少)。

1月10日:FRBが金融引き締めを前倒しするとの’観測が投資家の心理の重荷で、1時600ドル近く下げたが、長期金利が一服するとハイテク株買い戻され、163ドル安(0.45減少)。

1月11日:FRB議長の議会証言後に米長期金利の上昇が一服し、高株価収益率のハイテク株を中心に買い直され、183ドル高(0.51%増加。

1月12日:昨年12月の米消費者物価指数の上昇率が同月比7.0%と市場予想並みに留まり、米長期金利が一時低下、高株価収益率のハイテク株を中心に買いが優勢で、38ドル高(0.11%減少)。

1月13日:金融政策の正常化が早期に進むとの警戒感から、高株価収益率のハイテク株が売られ、177ドル安(0.49%減少)。

1月14日:14日発表の昨年12月の米小売売上高が市場予想を下回り、消費者関連株を中心に売りが出たこと、四半期決算を発表したJPモルガンが大幅安で、他の金融株にも波及し、202ドル安(0.56%減少)。

1月18日:米長期金利が一時1.87%と前週末に比べ0.09%増加し、相対的な割高感が意識された高株価収益率のハイテク株が売られ、決算内容が嫌気されたゴールドマン・サックスも大幅に下げ、金融株全体が売られて、543ドル安(1.51%減少)。

1月19日:前週発表の昨年12月の米小売売上高が前月比で減少したのを受けて、米景気への強気の見方が後退、景気敏感株を中心に売られ、340ドル安(0.96%減少)。

1月20日:米長期金利の上昇一服を背景にハイテク株などで買いが先行したが、買い一巡後は景気敏感株を中心に売りが膨らみ、313ドル安(0.86%減少)。

1月21日:四半期決算を発表したネットフリックスが急落、来週以降に決算発表を控える主力ハイテク株の売りが広がり、かつFRBの早期の金融引き締めが米景気の減速につながるとの見方で、売りが優勢で、450ドル安(1.30%減少)。

1月24日:FRBの金融政策正常化への警戒感やウクライナ情勢の緊迫化から売りが先行し、一時下げ幅は1115ドルに達したが、午後にハイテク株を中心に押し目買いが入り、引き間際に上昇に転じて、99ドル高(0.29%増加)。

1月25日:FOMD会合を明日に控え、金融引き締めの積極化を警戒した売りが優勢で、ウクライナ情勢の緊迫化も重荷となり、67ドル安(0.19%減少)。

1月26日:午前中は前日発表されたマイクロソフトの四半期決算が好調で500ドル強上昇したが、FOMCの結果が発表され、議長の記者会見が始まると長期金利が上昇、急速に伸び悩み、130ドル安(0.38%減少)。

1月27日:前日のFOMCで金融引き締めに前向きな方針が示されたが、引き締めのペースには不透明感が強く、金政策の先行きが読めず、7ドル安(0.02%減少)

1月28日:市場予想を上回る四半期決算を発表したアップルとビザが買われて指数を押し上げ、米長期金利の低下で高株価収益率のハイテク株が買い直され、565ドル高(1.65%増加)。

1月31日:今年に入り下落が目立っていたハイテク株を中心に買いが入り、相場全体を押し上げ、取引終了にかけて上げ幅を広げる展開となり、406ドル高(1.17%増加)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が1月7日に発表した12月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比199,000人の増加で、市場予想の420,000人の増加を大きく下回りました。10月の雇用者数の確定値は648,000人で102,000 人の増加、11月の改定値は249,000人で、39,000人の増加となりました。なお、11月の失業率は3.9%で、前月より0.3%下がりました。労働参加率は61.9%で、前月より0.1%増加しました。12月の時間当たり賃金上昇率は前月比で19セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が53,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が43,000人の増加、製造業が26,000人の増加、建設業が22,000人の増加、輸送・倉庫業が19,000人の増加となりました。

 

3.長期金利上昇と調整相場

ハイテク株が多いナスダックの総合指数は1月21日に4日間連続で続落し、前日比2.7%安の13,769ドルで終えました。1月に入ってからの下落率は12.0%に達します。これは2008年1月のリーマンショックが起きた時を上回り、過去50年間で最悪のペースになります。今年に入ってからのハイテク株売りはFRBの金融引き締めへの警戒感が一因であり、今回のように長期金利が上昇すれば、ハイテク株など高株価収益率の相対的な割高感が意識されやすくなります。

しかし、最近は金融引き締めが即株安とはならない状況になっています。直近の3回の利上げ局面でもナスダック指数は変動を伴いながらも上昇基調が続きました。中央銀行が利上げする時は基本的に景気が強い時であり、堅調な企業業績が株価を支えることになります。それは金融緩和が株価を押し上げる金融相場から、企業収益に基づく業績相場に移行するのが過去のパターンでした。

今回の場合、ハイテク株は事情が異なるようです。新型コロナウイルスまん延の影響で在宅勤務や巣ごもり消費が広がり、企業のデジタル化が一気に進みました。多くのハイテク企業の成長はピークを過ぎた可能性があります。ナスダック市場の時価総額上位100社の売上高営業利益率は過去1年間で平均20%で、バブルのピークであった2000年1月の19.3%を上回っており、過去最高の記録となっています。また、昨年の1株当たり売上高は21%増と11年振りの高い伸び率でした。この点、昨年までのハイテク株高は金融相場に業績相場が重なったと見るべきなのかもしれません。金融相場だけの調整過程であれば、金利上昇への警戒が薄れば株価も下げ止まるでしょう。しかし、業績相場の調整も同時に始まっているのであれば、金利上昇が止まってもハイテク株の売りは続くことになります。いずれにしても、1月25-26日に予定されているFOMCでのテーパリングの前倒し決定後の相場の動きが、それを判断することになると思われます。

 

4.量的緩和終了と近い将来の利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が1月25-26日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。経済活動と雇用の指標は引き続き強さを増している。パンデミックによる打撃が最も大きかった産業はこの数か月改善しているが、直近のコロナウイルス感染の急増で影響を受けている。雇用増はこの数か月堅調で、失業率は大きく下がっている。パンデミックと経済再開に関連した需給の不均衡が、引き続き高い物価上昇率に寄与している。経済及び米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般に依然として緩和的だ。

景気の動向は依然としてウイルスの拡大状況に左右されている。ワクチン接種の普及と供給制約の改善が引き続き経済活動と雇用の拡大、およびインフレの低下を助けると見込んでいる。経済の先行きへのリスクは、ウイルスの親変種がもたらすリスクを含め、残っている。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0-0.25%に据え置くことを決定した。インフレ率は2%をはるかに上回っており、労働市場も強いことから、FF金利の目標レンジを引き上げることがまもなく適切になると予測する。

FOMCは、毎月の資産購入ペースを引き続き減らし、3月上旬に終了することを決定した。2月から、国債保有を少なくとも月200億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月100億ドル増やす。12月後半からは、国債保有を少なくとも月600億ドル、ローン担保証券を少なくとも月300億ドル増やす。FRBが行っている証券の購入と保有は、円滑な市場機能と緩和的な金融情勢の促進を助け、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。

FRBは26日のFOMCで、2%を超える物価と力強い労働市場を踏まえ、政策金利の誘導目標の引き上げが間もなく適切になると予想するとし、次回3月の会合での利上げ開始を示唆しました。併せて、バランスシートの規模縮小難に関する方針を公表しました。パウエル議長の記者会見が始まると長期金利が上昇、売りが優勢となり、ダウは130ドル安(0.38%減少)で終わりました。

            (2022年2月1日: 村方 清)