Tuesday, February 1, 2022

FRBの金融正常化に揺れる市場







1.1月の株式市場

1月の株式市場は長期金利の上昇と共に、高株価収益率のハイテク株を中心に売りが広がったものの、月末に長期金利の上昇が一巡するとハイテク株が再び上昇するなど、不安定が目立ちました。主要な動きは以下の通りでした。

1月3日:米景気ン回復基調が続くとの期待や年金基金オ新しい流入もり、英気敏感株を中心に上昇、ハイテク株の一部も買われ、247ドル高(0.68%増加)。

1月4日:新型コロナウイルスの感染が拡大しても、米経済の回復は続くとの期待から、景気敏感株を中心に買いが優勢で、215ドル高(0.59%増加)。

1月5日:FOMCの議事要旨を受けてFRBが金融政策の正常化を前倒しで進めるとの見方から、米長期金利が上昇、ハイテク株など高株価収益率の銘柄に売りが広がり、393ドル安(1.07%減少)。

1月6日:FRBが金融政策の正常化を急ぐことへの警戒感から、売りが優勢となり、171ドル安(0.47%減少)。

1月7日:FRBが金融政策の正常化を前倒しするとの警戒感から相場の重荷が続いたが、雇用市場の改善から米経済回復が続くとの期待で、景気敏感株に買いが入り、5ドル安(0.01%減少)。

1月10日:FRBが金融引き締めを前倒しするとの’観測が投資家の心理の重荷で、1時600ドル近く下げたが、長期金利が一服するとハイテク株買い戻され、163ドル安(0.45減少)。

1月11日:FRB議長の議会証言後に米長期金利の上昇が一服し、高株価収益率のハイテク株を中心に買い直され、183ドル高(0.51%増加。

1月12日:昨年12月の米消費者物価指数の上昇率が同月比7.0%と市場予想並みに留まり、米長期金利が一時低下、高株価収益率のハイテク株を中心に買いが優勢で、38ドル高(0.11%減少)。

1月13日:金融政策の正常化が早期に進むとの警戒感から、高株価収益率のハイテク株が売られ、177ドル安(0.49%減少)。

1月14日:14日発表の昨年12月の米小売売上高が市場予想を下回り、消費者関連株を中心に売りが出たこと、四半期決算を発表したJPモルガンが大幅安で、他の金融株にも波及し、202ドル安(0.56%減少)。

1月18日:米長期金利が一時1.87%と前週末に比べ0.09%増加し、相対的な割高感が意識された高株価収益率のハイテク株が売られ、決算内容が嫌気されたゴールドマン・サックスも大幅に下げ、金融株全体が売られて、543ドル安(1.51%減少)。

1月19日:前週発表の昨年12月の米小売売上高が前月比で減少したのを受けて、米景気への強気の見方が後退、景気敏感株を中心に売られ、340ドル安(0.96%減少)。

1月20日:米長期金利の上昇一服を背景にハイテク株などで買いが先行したが、買い一巡後は景気敏感株を中心に売りが膨らみ、313ドル安(0.86%減少)。

1月21日:四半期決算を発表したネットフリックスが急落、来週以降に決算発表を控える主力ハイテク株の売りが広がり、かつFRBの早期の金融引き締めが米景気の減速につながるとの見方で、売りが優勢で、450ドル安(1.30%減少)。

1月24日:FRBの金融政策正常化への警戒感やウクライナ情勢の緊迫化から売りが先行し、一時下げ幅は1115ドルに達したが、午後にハイテク株を中心に押し目買いが入り、引き間際に上昇に転じて、99ドル高(0.29%増加)。

1月25日:FOMD会合を明日に控え、金融引き締めの積極化を警戒した売りが優勢で、ウクライナ情勢の緊迫化も重荷となり、67ドル安(0.19%減少)。

1月26日:午前中は前日発表されたマイクロソフトの四半期決算が好調で500ドル強上昇したが、FOMCの結果が発表され、議長の記者会見が始まると長期金利が上昇、急速に伸び悩み、130ドル安(0.38%減少)。

1月27日:前日のFOMCで金融引き締めに前向きな方針が示されたが、引き締めのペースには不透明感が強く、金政策の先行きが読めず、7ドル安(0.02%減少)

1月28日:市場予想を上回る四半期決算を発表したアップルとビザが買われて指数を押し上げ、米長期金利の低下で高株価収益率のハイテク株が買い直され、565ドル高(1.65%増加)。

1月31日:今年に入り下落が目立っていたハイテク株を中心に買いが入り、相場全体を押し上げ、取引終了にかけて上げ幅を広げる展開となり、406ドル高(1.17%増加)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が1月7日に発表した12月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比199,000人の増加で、市場予想の420,000人の増加を大きく下回りました。10月の雇用者数の確定値は648,000人で102,000 人の増加、11月の改定値は249,000人で、39,000人の増加となりました。なお、11月の失業率は3.9%で、前月より0.3%下がりました。労働参加率は61.9%で、前月より0.1%増加しました。12月の時間当たり賃金上昇率は前月比で19セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が53,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が43,000人の増加、製造業が26,000人の増加、建設業が22,000人の増加、輸送・倉庫業が19,000人の増加となりました。

 

3.長期金利上昇と調整相場

ハイテク株が多いナスダックの総合指数は1月21日に4日間連続で続落し、前日比2.7%安の13,769ドルで終えました。1月に入ってからの下落率は12.0%に達します。これは2008年1月のリーマンショックが起きた時を上回り、過去50年間で最悪のペースになります。今年に入ってからのハイテク株売りはFRBの金融引き締めへの警戒感が一因であり、今回のように長期金利が上昇すれば、ハイテク株など高株価収益率の相対的な割高感が意識されやすくなります。

しかし、最近は金融引き締めが即株安とはならない状況になっています。直近の3回の利上げ局面でもナスダック指数は変動を伴いながらも上昇基調が続きました。中央銀行が利上げする時は基本的に景気が強い時であり、堅調な企業業績が株価を支えることになります。それは金融緩和が株価を押し上げる金融相場から、企業収益に基づく業績相場に移行するのが過去のパターンでした。

今回の場合、ハイテク株は事情が異なるようです。新型コロナウイルスまん延の影響で在宅勤務や巣ごもり消費が広がり、企業のデジタル化が一気に進みました。多くのハイテク企業の成長はピークを過ぎた可能性があります。ナスダック市場の時価総額上位100社の売上高営業利益率は過去1年間で平均20%で、バブルのピークであった2000年1月の19.3%を上回っており、過去最高の記録となっています。また、昨年の1株当たり売上高は21%増と11年振りの高い伸び率でした。この点、昨年までのハイテク株高は金融相場に業績相場が重なったと見るべきなのかもしれません。金融相場だけの調整過程であれば、金利上昇への警戒が薄れば株価も下げ止まるでしょう。しかし、業績相場の調整も同時に始まっているのであれば、金利上昇が止まってもハイテク株の売りは続くことになります。いずれにしても、1月25-26日に予定されているFOMCでのテーパリングの前倒し決定後の相場の動きが、それを判断することになると思われます。

 

4.量的緩和終了と近い将来の利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が1月25-26日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。経済活動と雇用の指標は引き続き強さを増している。パンデミックによる打撃が最も大きかった産業はこの数か月改善しているが、直近のコロナウイルス感染の急増で影響を受けている。雇用増はこの数か月堅調で、失業率は大きく下がっている。パンデミックと経済再開に関連した需給の不均衡が、引き続き高い物価上昇率に寄与している。経済及び米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般に依然として緩和的だ。

景気の動向は依然としてウイルスの拡大状況に左右されている。ワクチン接種の普及と供給制約の改善が引き続き経済活動と雇用の拡大、およびインフレの低下を助けると見込んでいる。経済の先行きへのリスクは、ウイルスの親変種がもたらすリスクを含め、残っている。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0-0.25%に据え置くことを決定した。インフレ率は2%をはるかに上回っており、労働市場も強いことから、FF金利の目標レンジを引き上げることがまもなく適切になると予測する。

FOMCは、毎月の資産購入ペースを引き続き減らし、3月上旬に終了することを決定した。2月から、国債保有を少なくとも月200億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月100億ドル増やす。12月後半からは、国債保有を少なくとも月600億ドル、ローン担保証券を少なくとも月300億ドル増やす。FRBが行っている証券の購入と保有は、円滑な市場機能と緩和的な金融情勢の促進を助け、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。

FRBは26日のFOMCで、2%を超える物価と力強い労働市場を踏まえ、政策金利の誘導目標の引き上げが間もなく適切になると予想するとし、次回3月の会合での利上げ開始を示唆しました。併せて、バランスシートの規模縮小難に関する方針を公表しました。パウエル議長の記者会見が始まると長期金利が上昇、売りが優勢となり、ダウは130ドル安(0.38%減少)で終わりました。

            (2022年2月1日: 村方 清)

 

  

Sunday, January 2, 2022

オミクロン型は限界的影響との見方で上昇傾向に戻る市場








1.12月の株式市場

12月の株式市場は、月半ばまで新型コロナウイルスの変異型オミクロン型への警戒的な見方が優勢でした。しかし、後半からオミクロン型は感染力を強いものの、重症化しないとの専門家の見解が多くなるにつれ、再び上昇傾向に戻りました。主要な動きは以下の通りでした。

12月1日:前日に大幅安となった反動で大きく上昇したが、米国で新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の初の感染者が確認され、感染拡大を警戒した売りが引けにかけて下げ幅を拡大し、462ドル安(1.34%減少)。

12月2日:新型コロナウイルスの変異型オミクロン型の感染拡大や連銀の量的緩和縮小の加速への懸念から2日間で1100ドル下落の反動から、幅広い銘柄に自律反発狙いの買いが優勢で、618ドル高(1.82%増加)。

12月3日:世界各地でオミクロン型の感染者が相次いで確認され、感染拡大への懸念が投資家心理を冷やし、高株価収益率のハイテク株を中心に売りが優勢で、60ドル安(0.17%減少)。

12月6日:新型ウイルスの変異型であるオミクロン型に対する懸念がやや後退し、景気敏感株を中心に上昇、過去4週間連続下落の反動もあり、647ドル高(1.87%増加)。

12月7日:オミクロン型のまん延が米景気の悪化につながるとの懸念が後退し、景気敏感株を中心に買いが入り、492ドル高(1.40%増加)。                        12月8日:オミクロン型の感染拡大への懸念が後退し、消費関連株に買いが入ったものの、大きく上昇した後のことから利益確定の売りも出て、35ドル高(0.10%増加)。

12月9日:英国政府がオミクロン型の感染拡大を受けて規制を強化したことや上げ相場をけん引してきた景気敏感株やハイテク株の一部が利益確定売りに押され、1ドル安(0.00%減少)。

12月10日:11月のCPIは前年同月比6.8%上昇と39年ぶりの高い伸びとなったが、市場では想定内と受け取られ、インフレ加速を警戒した売りは強まらず、買いが優勢となり、216ドル高(0.60%増加)。

12月13日:新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン型の感染拡大への警戒感から景気敏感株を中心に売りが優勢で、319ドル安(0.89%減少)。

12月14日:11月の卸売物価指数の上昇率が前年同月比9.6%と市場予想を上回り、FRBによる利上げ前倒し観測が広がり、ハイテク株を中心に売りが広がり、107ドル安(0.30%減少)。

12月15日:FRBは14-15日のFOMC会合で、テーパリング(量的緩和縮小)の加速決定や利上げ前倒しを示唆した結果を受けて、市場では想定通りと評価、先行きの不透明感が払拭されたことで、383ドル高(1.08%増加)。

12月16日:2月15日のFOMCでFRBが金融引き締めに前向きの姿勢を示したことで、ハイテク株を中心に売りが優勢で、30ドル安(0.08%減少)。

12月17日:金融緩和縮小に伴う株式市場への資金の流入’の低下や新型コロナウイルス感染拡大の警戒感から、景気敏感株を中心に売りが優勢で、618ドル安(1.48%減少)。

12月20日:世界的にオミクロン型の感染が拡大し、行動規範の強化による景気への懸念が急激に高まり、433ドル安(1.23%減少)。

12月21日:オミクロン型の感染拡大で前日まで3日連続で1000ドル近く下落した反動で、消費財関連株に買いが優勢で、561ドル高(1.60%増加)。

12月22日:22日発表の12月米消費者信頼感指数は115.8と前月より改善したことやFDAがファイザー社の新型コロナウイルスの飲み薬の緊急使用を承認したことを受けて、消費者心理が改善し、261ドル高(0.74%増加)。

12月23日:オミクロン株の感染による入院や重症化のリスクが低いとの調査結果が相次いで、投資家心理が改善、機械や素材などの景気敏感株を中心に買いが入り、196ドル高(0.55%増加)。

12月27日:消費の堅調さを示すデータの発表を受けて米経済への楽観論が強まり、ハイテク株を中心に買いが優勢で、352ドル高(0.98%増加)。

12月28日:新型ウイルスが拡大しても、米経済への悪影響は限られるとの見方から景気敏感株を中心に買いが優勢で、96ドル高(0.26%増加)。

12月29日:新型コロナウイルスの感染拡大による米景気への悪影響は避けられるとの見方から、消費関連株への買いが優勢で、90ドル高(0.25%増加)。

12月30日:朝方は消費関連株を中心に買いが先行したが、取引終了にかけて利益確定目的の売りが優勢で、91ドル安(0.25%減少)。

12月31日:29日に過去最高値を更新したこともあり、利益確定売りが優勢で、60ドル安(0.16%減少)。2021年全体では5,731ドル上昇(18.7%増加)。3年連続の上昇で、上昇額は過去最高。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が12月3日に発表した11月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比210,000人の増加で、市場予想の530,000人の増加を大きく下回りました。9月の雇用者数の確定値は379,000人で67,000 人の増加、10月の改定値は546,000人で、15,000人の増加となりました。なお、11月の失業率は4.2%で、前月より0.4%下がりました。労働参加率は61.8%で、前月より0.2%増加しました。11月の時間当たり賃金上昇率は前月比で8セント増加しました。部門別では専門・ビジネスサービス業が90,000人の増加、輸送・倉庫業が50,000人の増加、製造業が31,000人の増加、輸送・倉庫業が54,000人の増加、小売業が22,000人の増加、レジャー・観光業や医療・介護業は殆ど変わりませんでした。

 

3.量的緩和縮小の加速を決めたFOMC会合

FOMC会合が12月14-15日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練の時に米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定の目標を推進するために、あらゆる手段を使うことを約束する。

新型コロナウイルスワクチン接種の進捗と力強い政策支援を受け、経済活動と雇用の指標は引き続き強さを増している。パンデミックによる打撃が最も大きかった産業はこの数か月改善しているが、引き続きウイルスの影響を受けている。雇用増はこの数か月堅調で、失業率は大きく下がっている。パンデミックと経済再開に関連した需給の不均衡が、引き続き高い物価上昇率に寄与している。経済及び米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般に依然として緩和的だ。

景気の動向は依然としてウイルスの拡大状況に左右されている。ワクチン接種の普及と供給制約の改善が引き続き経済活動と雇用の拡大、およびインフレの低下を助けると見込んでいる。経済の先行きへのリスクは、ウイルスの親変種がもたらすリスクを含め、残っている。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0-0.25%に据え置くことを決定した。インフレ率はしばらく2%を上回っており、労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致するまでは、この目標レンジを維持することが適切と予測する。

インフレ動向と労働市場の一段の改善を受けて、毎月の資産購入ペースを、国債は月額200億ドル、ローン担保証券は月額100億ドルずつ減らすことを決定した。1月から、FOMCは国債保有を少なくとも月400億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月200億ドル増やす。12月後半からは、国債保有を少なくとも月600億ドル、ローン担保証券を少なくとも月300億ドル増やす。総資産購入を毎月同様のペースで減らしていくことが適切になると判断しているが、景気見通しの変化があれば購入のペースを調整する用意がある。FRBが行っている証券の購入と保有は、円滑な市場機能と緩和的な金融情勢の促進を助け、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。

FRBは15日のFOMCで、米国債などの資産を購入する量的緩和縮小(テーパリング)の加速を決めました。終了時期の想定を2022年6月から3月へ前倒しし、22年中に計3回の政策利上げを織り込んでいます。これはインフレが長引き、1カ月前に始めたばかりの緩和縮小を速める異例の軌道修正を迫られたことになります。債の償還分も再投資するなど、当面は緩和的な金融環境が続くことになります。市場では今回の米金融政策のタカ派的転換は適切との見方も多く、ダウは383ドル高(1.08%増加)で終わりました。


4.米国の債務上限引き上げ法案が成立

バイデン大統領は12月16日に連邦政府の借入限度額を定めた債務上限を引き上げる法案に署名し、同法が成立しました。債務上限引き上げについては、10月に一時的に4,800億ドルを引き上げる法案が成立していましたが、イエレン財務長官が12月15日にその資金も枯渇すると指摘し、議会に遅くとも同日までの引き上げを求めていたもので、ギリギリでデフォルトが回避されることになりました。

議会では、前日の14日に上院で賛成50、反対49で法案が通過していました。上院での法案可決には本来60票が必要ですが、この債務上限問題に限って単純過半数での議決を可能とする法案が成立していたことから、与野党勢力が拮抗する中でも可決が可能になりました。上院での可決後に、同法案は下院に送られ、15日未明の下院での採決の結果、賛成221、反対209で可決しました。今回に新たに付加された債務限度は2兆5,000憶ドルで、現在の債務上限の28兆9,000億ドルに追加されます。この水準は2023年初めごろまでの連邦政府の資金需要に対応できる見通しです。

                  (2022年1月2日: 村方 清)

  

Wednesday, December 1, 2021

コロナウイルス変異株のオミクロン型に揺れる株式市場









1.11月の株式市場

11月の株式市場は前半が米景気や企業業績改善に対する期待感が強く、上昇基調を続けましたが、11月26日に世界保健機関が南アフリカで発見されたコロナウイルス変異株の深刻さを発表して以降は、各国でも警戒感が強まり、大幅な下落となりました。主要な動きは以下の通りでした。

11月1日:米景気や企業業績に対する楽観が広がり、株買いを支えたものの、3日にFOMCの結果発表を控えて様子見ムードも強く、朝買いの一巡後は伸び悩み、94ドル高(0.26%増加)。

11月2日:市場予想を上回る米企業の決算発表が続き、米景気の底堅さを意識した買いが入ったが、3日のFOMCの結果発表を控えて様子見ムードも強く、上値は重く、139ドル高(0.39%増)。

11月3日:FOMCが2-3日の会合で市場の予想通りに11月から量的緩和縮小(テーパリング)の開始を決めたが、利上げに慎重な姿勢を示したことで安心感が広がり、105ドル高(0.29%増加)。

11月4日:4日の債券市場で米長期金利が一時1.50%と前日終値から大幅に低下し、JPモルガンなど金融株が軒並み下落、33ドル安(0.09%減少)。

11月5日:5日発表の10月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比531,000人増で市場予想の450,000上回り、米国の景気回復への期待感から、204ドル高(0.56%増加)。

11月8日:米議会下院が11月5日に1兆ドル規模のインフラ投資法案を可決したことを受け、政策の恩恵で収益が拡大すると見られる銘柄を中心に買いが優勢で、104ドル高(0.29%増加)。

11月9日:前日まで連日で過去最高値を更新したため、上昇が目立つ景気敏感株を中心に利益確定売りに押され、112ドル安(0.31%減少)。

11月10日:11月10日発表の米消費者物価指数の上昇率が前年同月比で6.2%になり、市場では利上げの時期が前倒しになるとの見方が強まり、240ドル安(0.66%減少)。

11月11日:前日に市場予想を下回る決算を発表したディスニーが大幅安となり、ダウ平均を大幅に下げ、159ドル安(0.44%減少)。

11月12日:米長期金利が落ち着いた動きとなり、主力ハイテク株への見直し買いが続き、指数を押し上げ、179ドル高(0.50%増加)。

11月15日:米長期金利が上昇し、高株価収益率銘柄のハイテク株の一角に相対的な割高感を意識した売りが出て、13ドル安(0.04%減少)。

11月16日:米国小売り売上高は前月比1.7%増と市場予想以上に伸び、消費が景気回復を後押しするとの見方が広がり、55ドル高(0.15%増加)。

11月17日:目先の利益を確定する売りが優勢で、クレジットカードのビザが大幅安となったことも重なり、211ドル安(0.58%減少)。

11月18日:前日夕に四半期決算を発表したシスコシステムズが大幅に下落、アメリカンエキスプレスなども下げて、60ドル安(0.17%減少)。

11月19日:新型ウイルスの感染再拡大で、欧州景気の回復が’遅れるとの見方が投資家心理の悪化につながり、269ドル安(’0.05%減少)。

11月22日:バイデン大統領がFRBのパウエル議長を再任する方針を発表し、金融政策の安定性を期待した買いが優勢であったが、米長期金利の上昇で高株価収益率のハイテク株に売りが広がり、17ドル高(0.05%増加)。

11月23日:パウエル連銀議長の続投の見通しを受けて、米長期金利が更に上昇し、金融株が買われた半面、高株価収益率のハイテク株は売られ、195ドル高(0.55%増加)。

11月24日:長期金利の上昇一服で金融株が売られて相場の重荷となる一方、米景気の回復期待から景気敏感株の一部に買いが入るなど方向感に乏しく、9ドル安(0.03%減少)。

11月26日:南アフリカで新型コロナウイルスの新たな変異株が見つかったことで、アジアや欧州に株式相場が大幅下落した流れが米国にも及び、905ドル安(2.53%減少)。

11月29日:新型ウイルスの変異型オミクロン型の感染拡大への警戒感から26日に905ドル安となった反動で、目先の反発を見込んだ投資家がハイテク株を中心に押し目買いをして、292ドル高(0.68%増加)。

11月30日:パウエル連銀議長の議会証言を受けて、米金融政策の正常化が’想定より早く進むとの見方と新型コロナの変異株オミクロン型の感染拡大懸念が高まり、652ドル安(1.86%減少)。


2.米国の雇用状況

米労働省が11月5日に発表した10月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比531,000人の増加で、市場予想の400,000人の増加を大きく上回りました。8月の雇用者数の確定値は483,000人で117,000 人の増加、9月の改定値は312,000人で、118,000人の増加となりました。なお、10月の失業率は4.6%で、前月より0.2%下がりました。労働参加率は61.6%で、前月と変わりませんでした。9月の時間当たり賃金上昇率は前月比で11セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が164,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が100,000人の増加、製造業が60,000人の増加、輸送・倉庫業が54,000人の増加、建設業が44,000人の増加、ヘルスケア業が37,000人の増加、小売業が35,000人の増加となりました。

 

3.量的緩和縮小の開始を決めたFOMC会

FOMC会合が11月2-3日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。FRBはこの試練の時に米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定の目標を推進するために、あらゆる手段を使うことを約束する。

新型コロナウイルスワクチン接種の進捗と力強い政策支援を受け、経済活動と雇用の指標は引き続き強さを増している。パンデミックによる打撃が最も大きかった産業はこの数か月改善しているが、夏場のコロナウイルスの感染増で回復ペースが落ちた。物価上昇率は、主に一時的な要因を反映して高まっている。経済及び米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般に依然として緩和的だ。

景気の動向は依然としてウイルスの拡大状況に左右されている。ワクチン接種の普及と供給制約の改善が引き続き経済活動と雇用の拡大、およびインフレの低下を助けると見込んでいる。経済の先行きへのリスクは残っている。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ達成を目指す。そうすることで、インフレ率が長期的に平均で2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。

これらの成果が出るまで、金融政策の緩和的なスタンスを維持すると予測している。

FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0-0.25%に据え置くことを決定した。労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面は2%をやや上回るところで軌道に乗るまでこの目標レンジを維持することが適切と予測する。

昨年12月以降、FOMCの目標に向けて経済はさらなる大きな前進を遂げたことから、毎月の資産購入ペースを、国債は月額100億ドル、ローン担保証券は月額50億ドルずつ減らし始めることを決定した。今月後半から、FOMCは国債保有を少なくとも月700億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月350億ドル増やす。12月後半からは、国債保有を少なくとも月600億ドル、ローン担保証券を少なくとも月300億ドル増やす。総資産購入を毎月同様のペースで減らしていくことが適切になると判断しているが、景気見通しの変化があれば購入のペースを調整する用意がある。FRBが行っている証券の購入と保有は、円滑な市場機能と緩和的な金融情勢の促進を助け、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成のリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む11人のメンバーの賛成による。

FRBは20年3月に量的緩和を再開し、米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券を月400億ドル購入している。これを11月から購入月額を米国債100億ドル、担保証券50億ドルの敬50億ドル減らしていく計画を正式に決めました。順調であれば8カ月で購入額はゼロになり、22年6月でテーパリングは終了します。しかし、テーパリングで徐々に絞っても追加の資産購入は続くこと、更に満期となる米国債の償還分も再投資するなど、当面は緩和的な金融環境が続くことになります。また、利上げについても、パウエル議長は記者会見で今は利上げする時期ではないと繰り返し明言したことから、市場で事前に強まっていた利上げ早期化の観測が和らいだこともあり、ダウ平均は105ドル高(0.29%増加)で終えました。

 

4.バイデン大統領、インフラ投資法案に署名

バイデン米大統領は15日、5年間で総額1兆ドル(約114兆円)規模のインフラ投資法に署名し、同法が成立しました。政権が掲げる経済政策の柱の一つで、上院は8月、下院は11月5日にいずれも超党派の賛成多数で可決していました。2020年の大統領選から「米国の結束」を訴えてきたバイデン氏にとっては、公約を一つ達成したことになります。

同法は道路、橋、電力、鉄道、高速通信網などのインフラ整備に約5500億ドルを新規投資する内容で、連邦政府のインフラ投資額は5年にわたり約25%増え、米国土木学会が試算するインフラ投資の不足額のほぼ半分をカバーすることになります。

バイデン氏が3月に発表した当初計画は8年間で総額2兆ドル規模でしたが、規模や内容で野党・共和党に譲歩を重ね、超党派合意を実現しました。バイデン氏は「国を前進させる唯一の方法は、妥協と合意だ。我々は国民のために民主主義を機能させた」と超党派で成立させた意義を強調しました。 

インフラ投資法の成立を受け、バイデン政権は、経済政策のもう一つの柱である気候変動・社会保障関連に10年間で総額1・75兆ドルを投じる大型歳出法案の成立を目指すことになります。ただ、与党の民主党内で、社会保障への大型歳出を求める左派と、財政規律を重視する穏健派の対立が続き、法案のとりまとめが依然難航しています。


5.パウエル連銀議長の再任

バイデン大統領は11月22日にFRBのパウエル連銀議長を再任する方針を決定しました。同時に、次期議長の有力候補であったブレイナード理事を副議長に指名する方針を表明しました。市場で新型コロナウイルス危機を大過なく乗り越えたパウエル氏が再任するとの見方が大勢であったが、民主党内の急進左派は気候変動や金融規制への取り組みが不十分であったと批判、また、パウエル氏がトランプ前大統領の指名を受けた議長であることにも不満が強く、ウォーレン上院議員はパウエル氏の再任を阻止すると公表しています。

多様性の実現を掲げる民主党政権にとって、金融政策の方向性ではパウエル議長と一致し、民主党政権で国際担当の財務次官などの要職を歴任した女性のブレイナード氏起用は大きいものでした。但し、米経済は高インフレの長期化という難しい局面に直面しており、金融政策は量的緩和の縮小を始めて正常化への転換期にありまし。この点、バイデン政権としては、党派色を超えてパウエル氏を続投させ、経済政策運営の安定性を求めるべきとの最終的な判断がなされたと見られます。


6.コロナ変異株のオミクロン型の脅威

世界保健機関(WHO)は11月26日に南アフリカで見つかった新型コロナウイルス株をオミクロン型と名付け、最も警戒レベルが高い変異株に分類しました。多くの変異を持ち、ワクチンが効きにくい性質に加えて、高い感染力を持つ可能性が指摘されています。既に、オミクロン型は英国、ドイツ、オランダなどの欧州だけでなく、カナダやオーストラリアにでも感染者が見つかり、各国で渡航制限措置が相次いで発表されています。また、株式市場でも欧州やアジアだけでなく、米国でも11月26日にダウは905ドルの下落(2.53%減少)、11月30日も500ドルの下落(2.10%減少)となりました。

ウイルスは感染した人間の体内で増殖する際に遺伝情報のコピーミスを起こし、これが変異とされています。新型コロナの感染拡大が続く限り、変異は避けて通れず、感染力や病原性を高める懸念がある変異を持つウイルスが変異型として警戒されます。オミクロン型が特徴的なのは、従来の変異型に比べて、一度にたくさんの変異が蓄積していることにあります。この理由として、南アフリカはエイズウイルスの感染者が多い地域であり、免疫が働かない免疫不全の人がウイルスに長期に渡って感染し、増殖を繰り返した可能性が指摘されています。

今後については、オミクロン型の特性について、データの詳細な研究と分析が必要になりますが、同時に既存ワクチンメーカーの方でも、従来のワクチンの有効性や新たな調整が必要であるかをを分析していくことになります。いずれにしても、株式市場へのオミクロン型の影響については、こうした研究と分析結果を待たねばならず、当面の間は不安定な動きが続くことになります。       

           (2021年12月1日: 村方 清)