Monday, May 1, 2023

景気の減速懸念と地域金融機関の経営不安再燃に揺れた米国市場









1.4月の株式市場

4月の株式市場は、FRBの急速な金利引き上げによる地域銀行の経営不安問題が再燃、景気への悪化も懸念され、不安定な展開になりました。主要な動きは以下の通りでした。

4月3日:原油先物相場が大幅高となり、資源関連株を中心に買いが入り、加えてディフェンシブ株も上昇し、相場を押し上げ、327ドル高(0.98%増加)。

4月4日:4日発表の2月の米雇用動態調査求人件数が市場予想以上に減り、米景気の減速を示したものと受け取られ、199ドル安(0.59%減少)。

4月5日:ADPの雇用レポートで非農業部門の雇用者数が前月比14万5千人増と市場予想を下回り、非製造業指数も51.2%と市場予想を下回り、景気懸念が重荷になったが、ディフェンシブ株に買いが入り、80ドル高(0.24%増加)。

4月6日:6日発表の週間の米新規失業保険申請件数は22万8000件と市場予想を上回ったものの、ADPの3月の米雇用レポートがさえない内容であったため、売りが出たが、長期金利の低下でハイテク株が買われて、3ドル高(0.01%増加)。

4月10日:前週末発表の3月の雇用統計を受け、米景気悪化への過度な懸念が和らぎ、景気敏感株に買いが入り、101ドル高(0.30%増加)。

4月11日:米景気の先行き不安が後退し、景気敏感株の上昇がダウ平均を押し上げ、98ドル高(0.29%増加)。

4月12日:3月21-22日のFOMCの議事要旨が発表され、金融不安の経済的な悪影響が改めて意識され、相場の重荷となり、38ドル安(0.11%減少)。

4月13日:13日発表の米卸売物価指数が前月比で0.5%下がり、FRBの利上げ打ち止めが近いとの見方から、ハイテク株や消費財関連株が買われ、383ドル高(1.14%増加)。

4月14日:朝方にFRBの理事が一段の利上げに前向きな姿勢を示したことで、一部の銀行株を除いて、景気が冷え込むとの警戒から、幅広い銘柄に売りが出て、143ドル安(0.42%減少)。

4月17日:17日発表のニューヨーク連銀の製造業景況指数は10.8と3月のマイナス24.6から大きく改善し、これを受けて景気敏感株の一角が買われて、101ドル高(0.30%増加)。

4月18日:決算発表をしたゴールドマン・サックスとジョンソン・ジョンソンが下落して、指数を押し下げ、11ドル安(0.03%減少)。

4月19日:インフレ圧力の根強さを背景に欧米の中央銀行の金融引き締めが続くとの観測から株式相場の重荷になり、80ドル安(0.23%減少)。

4月20日:テスラ、アメリカン・エクスプレスなどの主要企業が減益決算を発表し、企業業績への不透明感が強まり、110ドル安(0.33%減少)。

4月21日:四半期決算を発表した日用品のプロクター・アンド・ギャンブルが3%高となったことで、ダウ平均を下支えして、22ドル高(0.07%増加)。

4月24日:主力ハイテク企業の決算発表をピークを迎え、加えて経済指標の発表も控えて、様子見ムードが強く、66ドル高(0.20%増加)。

4月25日:地域銀行で大規模な資金流出が明らかになり、景気への悪影響が及ぶのではないかとの不安が再燃して、消費財や景気敏感株に売りが広がり、345ドル安(1.02%減少)。

4月26日:米中堅銀行のファーストリパブリックバンクの経営不安が再燃し、米銀の貸し渋りが米景気を冷やすとの懸念が強まり、229ドル安(0.68%減少)。

4月27日:前日に決算を発表したメタプラっトフォームズが急伸し、他のハイテク銘柄にも買いが及んで、524ドル高(2.43%増加)。

4月28日:午前発表の米経済指標が市場予想を上回り、米国景気の先行きへの懸念が和らぎ、272ドル高(0.80%増加)。

 

2.米国の雇用状況

米労働省が4月7日に発表した3月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比236,000人の増加で、市場予想通りでした。1月の雇用者数の確定値は472,000人で32,000人の減少、2月の改定値は326,000人で15,000人の増加でした。3月の失業率は3.5%で、前月から0.1%減少しました。労働参加率は62.6%で前月より0.1%増加しました。3月の時間当たり賃金上昇率は前月比で9セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が72,000人の増加、政府部門が47,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が39,000人の増加、ヘルスケア業が34,000人の増加となりました。


3.利上げ停止も議論した3月のFOMC議事要旨

FRBは4月12日に、3月21-22日に開いたFOMCの議事要旨を公表しました。その中で、米地銀の相次ぐ破綻などで金融システム不安が高まったことを踏まえ、一部の参加者が利上げの見送りを検討していたことを明らかにしました。

これらの参加者は利上げを見送ることで、銀行業界の動向やこれまでの金融引き締めの影響などについて評価する時間をより多く確保できると指摘しました。その一方、多くの参加者はFRBなどによる金融安定の取り組みが銀行業界の状況を落ち着かせ、短期的な経済活動やインフレのリスクを軽減するのに役立っていると評価しました。このため、FOMCは全会一致で0.25%の利上げ実施を決めました。利上げは9回連続で、政策金利の指標であるフェデラルファンド金利を4.75-5%になりました。

3月時点のFOMCのシナリオでは、残り1回0.25%の利上げ実施を想定します。現時点では、5月2-3日のFOMC会合で利上げに動く確率は7割程度と見込まれています。

 

4.バイデン大統領の2024年選挙出馬宣言

バイデン大統領は4月25日に、2024年大統領選挙で再選を目指し、民主党候補として戦う意向を表明しました。 バイデン大統領はツィーターで動画を投稿して出馬を表明、その冒頭で前大統領の支持者が連邦議会を襲撃した場面を流し、前大統領の支持議員を映すのに合わせ、MEGA(Make America Great Again)の過激派が自由の根幹を奪おうとしていると語りました。

一方、前大統領のトランプ氏はバイデン氏との対決姿勢を鮮明にして、現職として挑んだ2020年大統領選挙の雪辱を果たそうとすることをもくろみ、24日はジョーバイデンを打ち負かして、経済を救い、ともに米国を再び偉大にしようと訴えました。民主党には有権者の賛否が割れるトランプ前大統領がバイデン政権を批判すればするほど支持層の結束が強まるとの期待があります。

共和党支持者の中にはトランプ前大統領に代わって、現フロリダ州知事のデサンティス氏を出馬することに期待するものもいます。しかしながら、デサンティス氏の極端な保守主義がフロリダ州では通用しても、全米でどこまで支持が広がるかは疑問視されており(現在はLGBTや税特例の扱いを巡って、ウォルトディズニー社と争いを継続中)、トランプ氏に代わって、共和党の大統領候補になれるかは依然、不透明です。

          (2023年5月1日: 村方 清)

  

Saturday, April 1, 2023

銀行破綻がもたらすFRBの利上げの見直し



 






1.3月の実績

3月の株式市場は3月10日に米中堅銀行のSVBが経営破綻したことで、インフレ抑止のためのFRBの利上げペースに見直しの動きが出て、月末にかけて株式市場の改善傾向をもたらしました。主要な動きは以下の通りでした。 

3月1日: FRBの利上げ長期化観測から長期金利が4%台に上昇する場面があり、株式市場の上昇を抑えて、5ドル高(0.02%増加)。

3月2日:1日夕に発表した決算と業績見通しが市場予想を上回ったセールスフォースが大幅高となり、ダウ平均を押し上げ、342ドル高(1.05%増加)。

3月3日:アトランタ連銀の総裁が3月21-22日のFOMCで0.25%の利上げに強く賛成すると発言したことを受けて、大幅利上げへの警戒感が後退、ハイテク株を中心に買いが広がり、389ドル高(1.17%増加)。’

3月6日:7-8日の連銀議長の議会証言を控えて様子見ムードが強く、買いの勢いは弱く、40ドル高(0.12%増加)。

3月7日:パウエル連銀議長が7日の議会証言で利上げの加速や利上げ長期化の可能性を示したことで、金融引き締めの警戒感が強まり、幅広い銘柄に売りが出て、575ドル安(1.72%減少)。

3月8日:前日に大幅に下げた反動でハイテク株や景気敏感株などには押し目買いが入ったが、FRBの利上げ再加速を警戒して買いの勢いは弱く、58ドル安(0.18%減少)。

3月9日:朝方発表の週間新規失業保険申請件数は211,000人で市場予想の195,000人を上回ったことで、FRBの利上げ再加速の懸念が高まり、543ドル安(1.72%減少)。

3月10日:10日発表の2月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比311,000人増で市場予想の225,000人を大きく上回ったものの、米中堅金融機関のSVB傘下の銀行が破綻、金融システム全体への波及への警戒感がら、345ドル安(1.07%減少)。

3月13日:米国で銀行の破綻が相次ぎ、金融システムを巡る不安の高まりを背景に銀行株が中心に売られ、91ドル安(0.28%減少。

3月14日:米銀の破綻を契機に売り込まれた金融株の一角が急反発、投資家心理が改善して、336ドル高(1.06%増加)。

3月15日:スイスの金融大手クレディ・スイス・グループの経営不安から欧州株式市場が大幅安となり、米市場にも金融株を中心に売りが広がり、281ドル安(0.87%減少)。

3月16日:経営不振の米地銀のファースト・リパブリック・バンクを米大手銀行11行が支援するとの観測から金融システム不安が和らぎ、372ドル高(1.17%増加)。

3月17日:米地域銀行の経営不安が続く中、銀行の融資態度の厳格化につながり、景気を冷やすとの見方から、株が売られ、385ドル安(1.19%減少)。

3月20日:経営難に陥っていたクレディ・スイス・グループをスイスのUBSが買収することで合意、金融システムが不安定化するとの懸念が和らぎ、383ドル高(1.20%増加)。

3月21日:米金融当局が金融不安のの拡大防止策を続けるとの観測が強まり、金融株や景気敏感株など幅広い銘柄が買われて、316ドル高(0.98%増加)。

3月22日:3月21-22日に開かれたFOMC会合で0.25%の利上げを決め、従来の引き締め姿勢を維持、景気悪化のリスクが高まったとの見方から、売りが優勢で、530ドル安(1.63%減少)。

3月23日:FRBの利上げ停止が近いとの観測からハイテク株を中心に買われて、75ドル高(0.23%増加)。

3月24日:24日にセントルイス地区連銀の総裁が金融ストレス抑制に前向きの見方を示し、金融システム不安による景気悪化への過度の警戒が和らぎ、ディフェンシブ株を中心に買いが広がり、132ドル高(0.41%増加)。

3月27日:経営破綻したシリコンバレーバンクの引受先が決まり、破綻処理の進展を好感した買いが優勢で、194ドル高(0.60%増加)。

3月28日:金融システムへの過度な不安が後退したものの、ハイテク株やディフェンシブ株への売りが重荷となり、38ドル安(0.12%減少)。

3月29日:米欧の金融システムへの不安が一段と和らぎ、消費財関連や金融株などに買いが入り、323ドル高(1.0%増加)。

3月30日:今週は新たに経営不安に陥る金融機関が出ておらず、金融システム不安が収束しつつあるとの見方が相場の支えとなり、141ドル高(0.43%増加)。

3月31日:朝方発表の2月の米個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率が市場予想を下回り、FRBの利上げが長引くとの懸念が和らぎ、415ドル高(1.26%増加)。

 
 

2.米国の雇用状況

米労働省が3月10日に発表した2月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比311,000人の増加で、市場予想の225,000人を大きく上回りました。12月の雇用者数の確定値は260,000人で21,000人の増加、1月の改定値は504,000人で13,000人の減少でした。2月の失業率は3.6%で、前月から0.2%増加しました。労働参加率は62.5%で前月より0.1%増加しました。2月の時間当たり賃金上昇率は前月比で8セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が105,000人の増加、小売業が50,000人の増加、政府部門が46,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が45,000人の増加、ヘルスケア業が44,000人の増加、建設業が24,000人の増加となりました。

 

3. 米銀の金融破綻とクレディスイス問題

3月10日に米国のシリコンバレーバンクの経営破綻が伝わり、この前日から米欧の金融市場の様相は大きく変わりました。12日には米政府・財務省などが例外措置として、破綻銀行の預金全額保護などの緊急対策を実施しました。その後、他の中小銀行にお預金流出が及ぶとの懸念がくすぶり、米国の株式市場では中小銀行の大幅下落が続きました。この影響は欧州にも及び、スイス大手銀行のクレディスイスにも波及して同行の株価か急落、そして、スイス政府と中銀による強権が発動され、19日にはUBS銀行が救済合併するに至りました・

今回の金融問題が2008年のリーマンブラザースの破綻に端を発する金融危機と異なるのは、当時の金融危機は2009年3月に米政府による大手銀行の資本への政府資金の投入が実現して、米政府が金融システムを守る政府対応が実現するまで収まらず、経済活動にも大きな影響が及びました。

スイス政府はUBS銀行との合併に金融システムを保つ決断を早々に行いました。この意味で、金融システムを麻痺させる対応が回避されたという点で、2008年の金融危機とは大分異なっています。

 

4.0.25%の利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が3月21日と22日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。最近の指標では消費と生産が緩やかに増加している。ここ数か月、雇用の増加は堅調で、失業率は低水準にとどまっている。インフレ率は鈍化したが、依然として高い水準にある。

米国の銀行システムは健全で回復力がある。最近の動向は家計や企業の信用状況を厳しくし、経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼすと見られる。これらの影響の度合いは不透明だ。FOMCはインフレリスクを引き続き注視している。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.75-5%に引き上げることを決定した。今後入ってくる情報を注視し、金融政策を評価する。

インフレ率を長期的に2%に戻すのに十分な金融政策スタンスを達成するために、いくらか追加の政策決定が適切かもしれない。将来の目標レンジの引き上げ幅を決めるにあたり、金融政策の累積的な引き締め、金融政策や経済活動がインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。さらに、以前計画に示されているように、国債、機関債、ローン担保証券の保有量の削減を継続する予定だ。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが現れた場合、金融政策のスタンスを適切なものに調整する用意がある。労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮する。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバー全員の賛成による。

米銀の相次ぐ破たんを受けていったん政策金利を据え置くとの見方もあったが、高インフレの抑制を優先させました。記者会見したパウエル議長は銀行不安への対応策に言及した上で、銀行システムは健全で強靭であると強調、その上で、前回会合以降に出てきた労働市場や物価の指標が想定以上に強かったことから利上げの継続を決定したと説明しました。こうして、FRBが従来の引き締め政策を維持したことで、市場では景気悪化のリスクが高まったとして、景気敏感株や消費財関連株への売りが目立ち、ダウ平均は530ドル安(1.63%減少)となりました。

             (2023年4月1日: 村方 清)

  

Wednesday, March 1, 2023

インフレ懸念によるFRBの利上げ継続と株式市場の悪化

 









1.2月の実績

2月の株式市場は小売り大手の業績不振や見通しの悪化に加え、米個人消費支出も市場予想よりも高く、インフレ収束には時間がかかり、FRBの利上げ継続への懸念が強まり、下落傾向となりました。主要な動きは以下の通りでした。

2月1日: FOMCの結果発表後は利上げ継続が意識され、500ドル超の下げ幅を広げたが、FRBのパウエル議長の会見中に急速に下げ渋り、上げに転じて、7ドル高(0.02%増加)。

2月2日:業績懸念の後退や長期金利の低下でハイテク株が買われた半面、ダウ平均構成銘柄の比重が大きいヘルスケア株などが売られ、39ドル安(0.11%減少)。

2月3日:3日発表の1月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比517,000人増で市場予想の200,000人を上回り、FRBによる利上げ停止の期待が後退し、128ドル安(0.38%減少)。

2月6日:労働市場の需給逼迫を背景にFRBによる早期の利上げ停止や利下げ転換の観測が後退し、売りが出て、35ドル安(0.10%減少)。

2月7日:パウエル連銀議長のインタビューが警戒したほどタカ派寄りではなかったと受け止められ、買い直しが優勢で、266ドル高(0.78%増加)。

2月8日:FRBの高官発言がタカ派寄りと受け取られ、利上げの早期停止観測や年内の利下げ期待が後退、売りが優勢で、208ドル安(0.61%減少)。

2月9日:前週末の強い米雇用統計を受け、米長期金利が上昇し、高株価収益率の銘柄を中心に売りが優勢で、249ドル安(0.73%減少)。

2月10日:雇用の強さは米景気の底堅さを映しており、景気後退は避けられるとの見方から買いを促し、169ドル高(0.50%増加)。

2月13日:14日に発表される1月の米消費者物価指数にインフレ鈍化の期待から、ハイテク株を中心に買われ、377ドル高(1.11%増加)。

2月14日:朝方に発表された1月のCPIは前月比0.5%上昇し、市場予想を上回り、FRBによる利上げ継続の観測が強まり、157ドル安(0.46%減少)。

2月15日:1月の小売売上高は前月比0.3%増と市場予想を上回り、FRBの利上げが続くとの観測から売りが先行したが、その後は米景気は強いとの楽観から買いが入り、39ドル高(0.11%増加)。

2月16日:1月のPPIは前月比0.7%上昇と前月から上昇に転じて、早期の米利上げ休止観測が後退、株売りが優勢となり、431ドル安(1.26%減少)。

2月17日:今週発表の米物価指数がインフレ圧力の根強さを示し、FRBによる早期の利上げ休止観測が後退したものの、指数への寄与度が大きいディフェンシブ株への資金シフトが見られ、ダウ平均は午後にかけて、圧力を強め、130ドル高(0.39%増加)。

2月21日:米小売大手の決算や見通しが市場予想を下回り、米景気や企業業績への先行き不透明感が広がり、697ドル安(2.06%減少)。

2月22日:午後発表のFOMCの議事要旨でFRBの利下げ転換が遠のくとの警戒感から、株式市場の重荷となり、85ドル安(0.26%減少)。

2月23日:2日間で780ドル下げた反動で、自律反発を見込んだ買いが入り、109ドル高(0.33%増加)。

2月24日:1月の米個人消費支出は前年同月比4.7%上昇、市場予想の4.4%を上回り、FRBによる利上げ停止の時期が遠のくとの警戒感から幅広い銘柄に売りが出て、337ドル安(1.02%減少)。

2月27日:前週に1000ドル余り下落した後で、売られすぎと見た押し目買いが入ったことや長期金利が下げに転じたために、72ドル高(0.22%増加)。

2月28日:FRBの利上げが長く続くとの観測から、米長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が意識され、232ドル安(0.71%減少)。ダウは2か月間で1429ドル下落(4.19%減少)。


 
2.米国の雇用状況

米労働省が2月3日に発表した1月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比517,000人の増加で、市場予想の200,000人を大きく上回りました。11月の雇用者数の確定値は296,000人で34,000人の減少、11月の改定値は260,000人で37,000人の増加でした。12月の失業率は3.4%で、前月から0.1%減少しました。労働参加率は62.4%で前月より0.1%増加しました。12月の時間当たり賃金上昇率は前月比で10セント増加しました。部門別ではレジャー・観光業が128,000人の増加、専門・ビジネスサービス業が82,000人の増加、政府部門が74,000人の増加、ヘルスケア業が58,000人の増加、小売業が30,000人の増加、建設業が25,000人の増加となりました。

 

3.0.25%の利上げを決めたFOMC会合

FOMC会合が1月31日と2月1日に開催され、会合後の声明要旨で以下のようなことが伝えられました。最近の消費と生産の指標は緩やかな伸びを示されている。ここ数か月、雇用の増加は堅調で、失業率は低水準にとどまっている。インフレ率はやや鈍化したが、依然として高い水準にある。

ロシアによるウクライナ侵攻が甚大な人的・経済的苦境を引き起こし、世界の不確実性を高める要因っている。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるために、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.5-4.75%に引き上げることを決定した。

インフレ率を長期的に2%に戻すのに十分な金融政策スタンスを達成するために、誘導目標レンジの継続的な引き上げが適切になると予測している。

将来の利上げペースを決めるにあたり、金融政策の累積した引き締め、金融政策や経済活動がインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。さらに、以前計画に示されているように、国債、機関債、ローン担保証券の保有を削減を継続する。FOMCはインフレを2%目標に戻すことを強く注力している。

金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が景気見通しについて与える影響を注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが現れた場合、金融政策のスタンスを適切なものに調整する用意がある。労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮する。

今回の決定はパウエル議長やウイリアムズ副議長を含む12人のメンバー全員の賛成による。

FOMCの決定は0.25%の利上げで事前予想通りの内容でした。声明では、継続的な引き上げが適切との前回の表現を維持したために、500ドル強の下げ幅を広げましたが、パウエル議長の記者会見でこれまでの金融引き締めの効果で、昨年の米経済の伸びは大幅に減速したの認識を示しました。加えて、質疑応答で、インフレ鎮静化のプロセスが始まったといえると述べたことで、ダウは上昇に転じて、7ドル高(0.02%増加)になりました。

 

4. バイデン大統領の一般教書演説

バイデン大統領は2月7日午後9時に連邦議会の上下両院合同会議で内政・外交方針を示す一般教書演説に臨みました。バイデン氏は演説で、格差是正や財政再建に向けて富裕層に最低税率を設けることを提案しました。1月から1%の税率導入された企業の自社株買いへの課税を4倍にする考えを示しました。加えて、アップルやグーグルなどの巨大IT企業への規制強化も訴えました。反トラストの執行を強化すると同時に、IT大手が自社製品を不当に有利にすることを防止するための超党派の法案を可決するように呼びかけました。共和党内には政府が企業活動に介入することに慎重な考えが多く、ねじれ議会で法整備を実現する道は険しいと思われます。

バイデン氏は気候変動対策について言及するなか、我々は少なくとも10年は石油を必要とするとの原稿にない一文を入れました。これについて、エネルギー業界に近い共和党に歩み寄る姿勢を見せたと受け止める声もあります。

また、政府債務の上限引き上げ問題についても、野党の共和党に協力を求めました。

一方、外交面では2月24日にロシアによる侵攻から1年になるウクライナへに支援継続を約束しました。共和党内に米国経済を優先させるためにウクライナへの巨額予算を見直すべきとの意見があることについて、会場に招いたウクライナ大使に対して、米国は結束してウクライナを支援することを約束しました。加えて、中国との競争に勝つには米国が結束しなければならないとして、与野党が一致して中国に対峙すべきことを促しました。

バイデン大統領は2024年の大統領選挙に立候補するかどうかを明確にしていませんが、今回の一般教書演説は再選出馬に意欲が示す内容で会ったことは間違いありません。

 

5.インフレ率の高止まりと米利上げの継続

2月24日に発表された1月の米個人消費者支出(PCE)は変動が大きい食品とエネルギーを除くコア指数が前年同月比で4.7%上昇し、市場予想の4.4%を上回りした。

この結果、米債券市場では長期金利が上昇し、一時は前日比0.09%高い3.97%を付けました。これにより、長期金利の上昇の影響を受けやすい高株価収益率のハイテク株への売りが目立ち、ソフトウェアのマイクロソフトとオンラインショッピングのアマゾンが2%以上の下落となりました。

一方、市場では今回、インフレ率が高まったことで、高インフレの沈静化にはまだ時間がかかり、FRBによる利上げ停止の時期が遠のくとの警戒感から幅広い銘柄に売りが出て、ダウは337ドルの下落(1.02%の減少)となりました。

         (2023年3月1日:村方 清)